幻想郷で嫁探しする鬼の話   作:社畜マークII

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鬼に金棒

人里から人が消える、慧音は最近多発している神隠しについてかなり思い悩んでいた。今、主に居なくなっている人間は大人だ、朝起きたときに家族や友人が忽然と姿を消していたという。誰が何のために、人間の仕業ならまだいい、しかし妖怪ならば。その場で一息つくこと無く食われてしまうだろう。もし寺子屋の子供たちにまで被害が及べばと思うと気が気でない。妹紅や村を守ってくれている守衛などが巡回をしてくれてはいるが依然として犯人は見つかっていない、まるで()のような犯人だ、と人里では噂されている。

 

博麗の巫女はまだ幼く、妖怪の賢者に相談したところですげなく協力は断られてしまうと確信していた。そうなるとこの事態に対処出来るものは限られてくる、その中で人格的に問題の無い奴となるともっと数は少なくなり、慧音は強者特有の人格破綻に対して思わず深いため息をつかざるを得なくなった。しかし落ち込んでもいられない慧音は阿求邸に向かう、阿求ならば必ず何か最適解を見つけてくれると考えたからだ。そして阿求は思案顔でこう言った。

 

「それならば鬼童丸様に頼られては?」

 

鬼童丸、聞いたことのある名前だと慧音はその名前の主の顔を思い起こす。確か人里に何回か来ていた鬼の妖怪だったな、と完全に顔を思い出せはしなかったが寺子屋の子供達に飴や麩菓子といった甘味を配っているなんとも種族の気質とは乖離した者だとその時は考えていたことを思い出した。確かに優しそうだったし人格者ではあると思うが実力は如何程なのだろうか、ただ優しいだけの妖怪にはこの事件は解決出来ないと思うが。

 

「鬼童丸様の人間友好度は高ですが、危険度は極高です。八雲紫レベルの大妖怪と言えるでしょう」

 

驚いた、あんな温和な雰囲気を醸し出しておいてそんな実力を隠し持っていたとは。能ある鷹は爪を隠すとはまさにこのことだな、ならば次はその者の居場所を聞きたいと阿求に迫った。しかし阿求は少し困ったような顔をする。それを聞くか…という顔にしか見えないところを見ると定住の地を持たない妖怪なのだろうか。鬼に多いとは聞くがそれならば探しに行こう、こっちが頼む側なのだからそれぐらいはするのは当然の事だ。

 

慧音はそう阿求に伝えると出ていった、後に残った阿求はせっかちで直情型の友人に対して呆れたような顔をする。あんな性格だから男性が尻込みをしてしまうというのに勿体無いと場違いなことを考えてしまう阿求。確かに鬼童丸は定住の地を持たないが探そうと思えば探せる、かなり時間と手間がかかるので言いよどんでしまったが、それを伝えようとしたのだ、だというのに行ってしまった。ため息をつきつつも、まあ後で妹紅辺りに伝えれば何とかなるだろうと楽観的に考え、読書に戻る阿求。性格が真逆と言っていいほどに離れている二人だが存外上手くいっている(?)ようだ。

 

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「お兄ちゃん、幸せだね」

 

「フラン」

 

「ふふっ、でももうお兄ちゃんって呼べないや」

 

「そうだな」

 

「これからも私を幸せにしてね、あなた」

 

「あぁ、約束する」

 

 

「何してるの、貴方達」

 

「お姉様が一生出来ないであろう結婚式をお兄ちゃんと二人で想定して幸せに浸ってるの!」

 

「フランって私のこと嫌い?」

 

「…えへへっ!」

 

「泣きそうだわ」

 

フランは今日も可愛いなぁ(白目)おままごとを口実にお姉様を貶めているところをみるとこの子もスカーレット家の人間なんだなぁ…と思ってしまう。あと旦那役をするのすごくドキドキする、どっちかというと通報されないかとかそっちの緊張感だけど。けどこんなことをするってことは少しはフランも結婚願望とかあるんだなぁ、まあ400年生きてたらそれぐらい考えるか。

 

レミリアはフランとお喋りが出来て嬉しいようだが辛辣な一言で半泣きになっていた、もうそろそろ普通に仲直りしてくれ。

 

「ところで鬼童丸」

 

「なんだ」

 

「最近人里で神隠しが起きてるの知ってた?」

 

「神隠し?」

 

「ええ、犯人の容姿、性別、年齢。何一つ掴めてないらしいのよ、人里に起きたことだから私には関係ないことだけどこんな事件が起きると少し推理魂に火がつくわね」

 

「人里には守護者である藤原妹紅や自警団が居るというのにそれは奇妙な話だな」

 

「あら、随分とそいつらを信頼しているのね」

 

「藤原妹紅は完全な不老不死を持っている、自警団は長年人里を守っていた経験がある。この二つがあれば今まで人里の守護は絶対だった」

 

「完全な不老不死ねぇ…」

 

「まあいくらでも対処法はあるがな、ひとまず話を戻そう。そんな人里で堂々と神隠しなど出来る者はかなり限られてくる。能力的なもので言えば紫、幽々子、あとは咲夜もだがこれは無いな」

 

「あら、私達のことを信用してくれてるのね」

 

「お前がそんなちまちましたことするわけないだろう、やるならもっと派手に何か異変を起こす」

 

「ふふっ、まあそうね」

 

「そうなるとあとは…」

 

そんなことを話していると部屋の扉が開いた、咲夜が開けたようだ。何かあったのだろうか、そう思っているとこちらにスタスタ歩いてきた。どうやら俺に用があるようだ。

 

「鬼童丸様、貴方にお客様です」

 

「急に訪ねてきて本当にすまない、私は白沢慧音という。貴方に聞いてほしい話があるんだ」

 

おっぱいでかい姉ちゃんが訪ねてきた…まさか俺のファンか?(自意識過剰)

 

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白沢慧音は緊張していた、目の前の鬼から発せられる純粋な闘気にあてられたからだ。それでも人里を救うために話を持ちかける慧音。どれだけ健気に人里を思っているかが誰の目から見ても明らかだろう。

 

「それで貴方に人里の異変を解決する為に力を貸して欲しいんだ」

 

「そうか、別に構わないぞ」

 

「そうか…確かに難しいとは思っていたが…っていいのか!?」

 

拍子抜けだった、もっと渋られるかと考えていた慧音。後が無くなればこのまだ男性経験の無い身体を差し出すことだって考えていたというのに。

 

「ああ」

 

「人間友好度高は伊達じゃないんだな…」

 

「あと謝礼はいらん」

 

「それは私もわかっている、希望したものを貴方に送ろう…って謝礼もいらんのか!?」

 

「ああ、だが犯人がわかった場合俺一人で戦う」

 

「それは…大丈夫なのか?」

 

 

「大丈夫か大丈夫ではないかと聞かれたら大丈夫では無いな。恐らくこれは───萃香の仕業だ」

 

「萃香、というのは…あの伊吹萃香か」

 

「鬼の四天王の伊吹萃香だ」

 

「だが…動機はなんだ?そんなことを唐突にする者なのか?」

 

「いや、萃香は良くも悪くもずる賢い。普段なら絶対にしないだろうよ」

 

「なら…何故?」

 

 

 

「恐らくこの異変は、俺をおびき寄せるための餌だ」

 

 

 

「なっ!?」

 

「へぇ…その伊吹萃香とかいうのは貴方の命を狙ってでもいるの?」

 

「多分な」

 

「なら私も行くわ、そいつを一緒に殺すから、ね?」

 

「私も行くよ!お兄ちゃんを狙うなんて許せない…」

 

「ダメだ、絶対に来るな」

 

「何でよ」

 

「そして、もし俺が萃香に殺されたとしても萃香を殺さないでやってくれ」

 

「無理ね、紅魔館の全勢力をもって最も惨い殺し方をするわ」

 

「やめろ」

 

「無理よ」

 

 

「やめろと言っているだろう」

 

「っ!!」

 

慧音を含めこの部屋にいる全てのものが一瞬で悟る、この男には指一本触れることが出来ないと。そこには先程まで居た優しい鬼の姿は無く、どこまでも暴力的で凶悪的な鬼が居た。

 

「っ…なによ…私達がどれだけ貴方を心配してるかわかってるの!?」

 

「そうだよ…一緒に戦わせてよ…お兄ちゃん…」

 

「ダメだ、ここは譲れない」

 

「何で…そこまで…」

 

「俺がまいた種を俺がどうにかするのは自然なことだろう?」

 

「ならっ!一緒に背負わせてよ!フラン、お兄ちゃんのこともっと助けたいもん!」

 

「フラン、もう決めたことだ。変えることは無い」

 

鬼童丸にすがりつくフランの横で、レミリアは俯きながらも覚悟を決めた顔で鬼童丸に向き直った。

 

「鬼童丸」

 

「何だ」

 

 

「絶対に生きて、帰ってきなさい」

 

 

「当たり前だ、死んでたまるか」

 

「ならもう私から言うことはないわ」

 

「何でっ!お姉様も一緒にお兄ちゃんを止めてよ!」

 

「フラン、鬼童丸は死なないわ。だから大丈夫」

 

「何でそんなことわかるのよっ!!」

 

 

「自分の愛した男を無条件で信じることが出来るのが良い女なのよ、フラン」

 

 

「でも…」

 

「一緒に信じましょう?フラン」

 

「っ、わかった…」

 

 

「フラン、帰ったら何がしたいか考えておいてくれ」

「うん…!!」

 

「じゃあ、行ってくる」

 

「行ってらっしゃい…」

 

「慧音、人里に案内してくれ」

 

「…ああ」

 

 

慧音は後悔してはいない、止められるかどうかは別としてもこんなに優しい味方が居るのだ。絶対に何とかしてくれると確信していた。

 

 

==================================================

 

人里の皆が寝静まった夜、萃香が現れるとされている時刻が迫っている。そんな時にもんぺを着た白髪で赤眼の少女が現れる。

 

「鬼童丸、久しぶりだな」

 

「妹紅か、今日はよろしく頼む」

 

「ああ、こちらこそよろしく」

 

「元気にしてたか?」

 

「相変わらず不老不死でクソ元気だよ、お前は?」

 

「今は少し気分が悪いな」

 

「はっ、お仲間がまさかこんなことをしてるとはね」

 

「慧音から聞いたのか?」

 

「ああ、一応防衛に当たるからね。敵の情報は聞いておかないと」

 

そう言ったあと妹紅はジーッと鬼童丸の顔を見つめる、そしてガバッと顔を両手で掴んだ。

 

「戻るなよ?」

 

「ああ、善処する」

 

「善処じゃなくて約束しな、私はもう友達のあんな姿見たくないもんでね」

 

「約束する」

 

「なら良し、私も持ち場に着く」

 

「ああ、すまないな」

 

「いいってことよ」

 

後ろ手でこちらに手を振る妹紅をみると、俺なんかよりよっぽど男前だと感じる。あんな友人を持てて俺は幸せ者だな。そんなことを考える、ここからはふざけ無しの本気で事に当たらなければならない。萃香はかなり強い、鬼としての心意気を持ちながら柔軟性を忘れない。それは鬼の中でも異端と言える、しかし強い。俺は勝てるだろうか、いや勝つんだ。フランやレミリアにもう一度会うために。

 

『鬼童丸!宴は楽しいな!』

 

『鬼童丸!美味しい酒を見つけたんだ!』

 

『鬼童丸、人間は変わってしまったな…』

 

『鬼童丸!私は、お前のことが…』

 

思えば俺は萃香に本気で向き合ったことはあったのだろうか、いつも可愛い奴だとは思っていた。妹分のようなものでちょこちょこ後ろをついてくる様は見ていて微笑ましいものだった。だが今日その妹分と本気で殺しあわなければならない。悲しくてやるせなくて情けない、だからこそ俺一人でやらねばならない。

 

 

「そうだろ?萃香」

 

「そうだね、鬼童丸」

 

 

二つの拳がぶつかり合い、空気が弾け飛んだ。後にその戦いは鬼や人間達の間で語り継がれていくものとなる、鬼が産んだ『天災』レベルの戦いとして。

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