不良少女(仮)   作:茜崎良衣菜

29 / 87
真相、確信。

 

 

 

「有咲ちゃんって朝日さんのこと好きだったんだね」

 

「盗み聞きなんてよくないと思いますよ松原先輩」

 

 

 

朝日先輩が出て行き一人になった屋上。そこに新たに現れた先輩はいつも通りの笑みを浮かべて私に近づいてくる。

さっきの朝日先輩みたいだなぁーとどうでもいいことを考えていた。

 

 

 

「聞いちゃったことに関しては謝るよ。だけど人を好きになることは悪いことじゃないんだし、そんなに警戒しないでよ」

 

「‥‥‥からかいたいだけなら出て行ってくださいよ」

 

 

 

朝日先輩に対する告白はとても曖昧に終わった。

正確には私が曖昧に終わらせた。

 

 

だって先輩の表情は完全に驚いたものだった。

先輩は察しが良い。だから紗夜先輩を庇う時も早かった。

 

なのに私の告白には驚いた。

 

朝日先輩と二人きりの時とか、特に咲祭の間。私はわりとあからさまに先輩にアピールしていたつもりだった。それなのに先輩は私の照れを、恥ずかしがり屋だからだと取っていたようだ。

完全に脈なし。それでも諦められないから、だから告白の返事は聞かずに曖昧にした。

いつか朝日先輩が私を好きになってくれると信じて。

 

 

けどそれを、人に見られていたことに関してはいい気はしない。その相手が口の堅そうな松原先輩だったとしても、私は松原先輩のことをよく知らないから。

 

 

 

「違うよ。本当に有咲ちゃんの告白を聞いたのは偶然。私は有咲ちゃんのこと探してたの」

 

「‥‥‥私を?」

 

「うん。有咲ちゃんに聞きたいことがあって」

 

 

 

聞きたいこと。松原先輩が私に?

大した接点もないうえに話したことも数回しかない。

そんな私に聞きたいこと?そんなの普通あるはずが__。

 

 

 

「朝日さんのことなんだけどね」

 

 

 

松原先輩が口にしたのは私たちの最初で最大の接点だった。

 

 

 

「有咲ちゃんは朝日さんのこと、どこまで知ってるの」

 

「え‥‥‥?」

 

 

 

質問の意図が分からなかった。ただ一瞬で松原先輩の雰囲気が変わる。真剣な眼差しで見つめられ脳が冴えた。

 

 

 

「それは、どういう‥‥‥」

 

「有咲ちゃんは知ってるんでしょ」

 

「何を‥‥‥」

 

「朝日さんの身体の傷のこと」

 

「ッ!?」

 

 

 

松原先輩の言葉を理解したくなかった。

朝日先輩の身体の傷のことはもちろん知っている。手当もしていたから。

けどどうしてそれを松原先輩が知ってるんだ。

 

 

 

「やっぱり知ってたんだね」

 

「‥‥‥なんで、松原先輩が」

 

「衣装合わせの時に見ちゃったんだ」

 

 

 

衣装合わせの時って、先輩が人前で肌を見せるわけないのに?

朝日先輩は傷のこと気にして最善の注意を払っている。そんな朝日先輩の傷なんか普通見られるわけないんだ。

 

なんでバレた。

 

 

 

「‥‥‥それを知って、松原先輩は何がしたいんです。もし、朝日先輩を傷つけるようでしたら許しませんよ」

 

「そんなことしないよ。言ったでしょ。朝日さんのことどこまで知ってるって。私は朝日さんのことが心配なの」

 

 

 

何を言っているんだと思った。朝日先輩のこと、何も知らないのに興味本位で聞いてきて。

心配なんて言いつつそんなのただの同情だ。

それに勝手に話すことはできない。だって朝日先輩が望んでいないから。話したところで何も解決できないから。

事実、私や山吹さんはずっと側にいるだけで何もできなかった。それどころか朝日先輩が傷ついている姿を見ていることしかできなかった。

そんな自分に腹が立つ。そしてもし他の人が協力して解決してしまったら私は何のために近くにいたかわからなくなるだろ。

 

 

 

「‥‥‥話すことなんて、ないですよ」

 

「そう言うってことは色々知ってるんだね」

 

「‥‥‥もう、出て行ってください」

 

 

 

私が話す気はないということがわかったのかしばらくして松原先輩は屋上から出て行った。

私はその場に座り込む。ただフェンスにもたれ夜空に輝く星を眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢

 

 

ただ気になっただけだった。

 

 

あの日見てしまった白い肌に目立つ痣。胸元からお腹にかけてあったそれに私は驚きを隠せなかった。

朝日さんはバツが悪そうに目を伏せて関係ないと言った。私は朝日さんを追いかけられなかった。

 

 

 

 

 

 

最初はケンカでできた傷なんだってそう考えていた。朝日さんの見た目とか態度って完全に不良って感じだから。

だけどもしそうなら朝日さんは傷を見られたことをあんなに嫌がるのかな。ってそう思った。

もちろん見られたくなかったものに変わりはないだろうけど、それでも私からしたらあの行動は不自然だった。

 

 

勝手なイメージかもしれないけどケンカでできた傷なら朝日さんは平然としている思った。

だって毎日包帯を巻いてるから。それはケンカの結果できたもの。本人が氷川さんにケンカだと言っているところを見たことがあったからこれは間違いない。他の生徒たちとの共通認識でもあるだろう。

 

でも朝日さんは目を伏せた。力なく衣装係だったクラスメイトを引き剥がした。

ケンカが理由ならそもそも逃げることもしなかっただろう。だって傷を見せなかったからあの場で言えばよかったんだ。「ケンカでできた傷を見せたくない」って。そうすれば私も彼女も納得した。けどそれをしなかった。あの瞬間ケンカって単語が出てこなかったのはきっとあの傷の原因がケンカじゃないから。だから焦っていたんだと思う。憶測にすぎないけど違うと確信できる何かはない。

 

 

氷川さんは何が原因で傷ができたのか知ってるのかな。でも朝日さんと氷川さんって校内でも言い争いばっかしてるし、朝日さんが氷川さんを遠ざける理由ってなんだろう。

 

 

 

触れ合ってみて朝日さんが優しい人だってことを知った。

面倒見がいいし困ってた私のことも助けてくれた。ただのクラスメイトに半ば無理矢理頼まれたことに最初は嫌そうにしてたけどけど最終的には協力してくれた。

朝日さんは、普通の人だってきっと面と向かって話したりしなかったら知ることはなかった。関わらなかったら何も思わなかったと思う。

 

けど関わってその優しさを知ってしまったら後には引けない。

気になったら知りたくなる性格だから。

 

 

 

「有咲ちゃんは朝日さんのこと、どこまで知ってるの」

 

 

 

核心に迫りたかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。