不良少女(仮)   作:茜崎良衣菜

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買い食い、説教。

 

 

放課後、学校帰り。私は商店街のとある店を訪れていた。

店の扉を開けばパンの良い匂いが鼻の中をかけていく。それだけで腹の虫が鳴きだしそうだ。

 

 

 

「いらっしゃいませ朝日先輩」

 

「久しぶりだね沙綾」

 

 

 

レジの前で店番をしていた同じ高校に通う後輩の山吹沙綾(やまぶきさあや)は笑顔で挨拶してくれた。

沙綾とは中学の頃からの付き合いではあるが高校に入ってからは疎遠になっていたのだ。高校に入ってから中学の時よりも問題児になった私に最初は戸惑っていたけど慣れてくれたのかすっかり仲良しに戻っていた。

怖くないのかと聞けば「朝日先輩は変わってませんから」とのこと。

 

 

 

「今日も食料調達ですか?」

 

「そうだよ。じゃないと死んじゃうからね」

 

「メロンパンとチョココロネは焼き立てですよ」

 

「ならそれ貰うよ」

 

「毎度ありがとうございます」

 

 

 

焼き立てと言われたら買いたくもなる。そんな私の心情を見越して沙綾は薦めてくる。やっぱり商売上手だ。

トレイの上にメロンパンとチョココロネを置きつつ店内を見て回る。あいかわらず美味しそうな物ばかりで目移りしてしまう。

 

 

 

「新作ってもう出来たんですか?」

 

「いやまだだよ。ちょっとあいつらのこともあって進まなくてね」

 

 

 

沙綾も有咲同様私の家のことを知っている。

有咲の時と違って自分から曝け出したわけではくケガの手当てをしてもらった時に話すことになった感じだが。

 

 

 

「あーあからさまに暗くならないで。同情される方が嫌だから」

 

「そう言われても‥‥」

 

「いいの沙綾は気にしなくて」

 

 

 

あ、カレーパン美味しそう。

 

 

 

「先輩がそう言うならいいですけど、無理はしないでくださいね」

 

「無理って‥‥」

 

 

 

沙綾にだけは言われたくないから。という言葉を呑み込む。

私だって人にどうこう言えたものじゃない。

 

 

 

「沙綾、ちょっとこっち来て」

 

「え、なんですか?」

 

 

 

自分だって家族のために無茶するくせに。強がり。

呼べば少し納得のいかない表情の後輩。隣に来たところで彼女の頭に手を置いた。キョトンとした顔が視界に入る。

 

 

 

「心配しすぎ。私なら大丈夫だって」

 

「‥‥子ども扱い、しないください」

 

「はいはい。ごめんごめん」

 

 

 

「お会計お願いします」と言えばパンを一つ持って沙綾が戻ってきた。それも一緒に袋詰めされる。

 

 

 

 

「あれ、これ」

 

「私のおごりです。頑張ってください」

 

「ありがとう沙綾」

 

 

 

沙綾は慣れた手つきで一つの袋にまとめていく。

表示された金額を出して一つパンの多い袋を持った。

 

 

 

「じゃあまたね」

 

「はい。また学校で」

 

 

 

店の扉を開こうとドアノブに手をかけた時、沙綾の声が耳に届いた。

 

 

 

「先輩、新作楽しみにしてますね!」

 

「期待してて」

 

 

 

笑顔を見せて店から出た。涼しい風が頬を撫でる。

その追い風を受けながら家まで歩き始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢

 

 

「姉さん、今までどこに行ってたんですか」

 

「…あぁ、紗夜。ただいま」

 

「おかえりなさい。それでどこ行ってたんですか」

 

 

 

家に帰れば風紀委員長が仁王立ちで待っていた。腕を組み、表情は険しい。

激おこなのが手に取るようにわかる。

 

 

 

「どこって学校帰りにパン屋に寄っただけ。時間も遅くはないでしょ」

 

「学校?私は今日一度も姉さんが教室にいる姿を見ていませんが?」

 

「へえー奇遇だね。私も紗夜の姿を朝以外見てなかったよ」

 

「またサボりですか?」

 

 

 

なんだ、わかってるじゃん。いちいち言わせたいの?めんどくさいな風紀委員長。何も気にしなくていいのに。

 

 

 

「いい加減授業に出てください。進路に響きます」

 

「もうだいぶ響いてるし今更変わんないよ。テストは点取れてるんだしいいじゃん」

 

「よくないです。成績はテストだけで付けられるわけではないんですよ?わかってますよね」

 

 

 

母親のような説教に少し苛立ちが募る。

私がやっていることなのに理不尽だ。

 

 

 

「紗夜は真面目すぎ」

 

「姉さんは不真面目すぎです」

 

「真面目なのはつまらないからね」

 

「子供の悪足掻きだとは思わないんですか」

 

「悪足掻きで結構だよ」

 

 

 

紗夜の隣をすり抜ければ腕を掴まれた。やけに力が入っている。逃がさないとでも言いたげだ。

 

 

「…答えてください。なぜわざと相手を怒らせるようなことをするんですか」

 

「何の話?そんなことしてないよ」

 

 

 

聞いてもどうせ解決できやしない。

 

 

 

「ならどうして校則を知ったうえで破ったり私を怒らせるようなことを言ったりするんです」

 

「気のせいでしょ。自惚れはやめなよ」

 

 

 

紗夜にも日菜にも。だったら

 

 

 

「姉さんはなぜ変わってしまったんです。中学の頃はあんなに」

 

「紗夜には関係ないことだよ。気にするだけ時間の無駄だから」

 

「っ!時間の無駄って、私は姉さんを心配して!」

 

 

 

突き放してしまった方がいいと気が付いたから。

 

 

 

「しなくていい。紗夜はいつも通りに過ごしててよ」

 

「姉さん!」

 

 

 

紗夜の声を無視して自分の部屋へと戻り制服のままベッドに倒れ込む。

今日は仕事もオンラインゲームもやる気がない。

 

 

 

紗夜の表情は見れなかった。だってきっと悲しい顔をしているだろうから。

知っているのだ。紗夜が私との仲を元に戻そうとしていることは。

 

私はそれを拒否し続けている。

 

妹たちが自分から離れていくことは怖いくせに、自分は妹たちを遠ざける。今は絶対に離れないと自信を持っているがそれもいつまで続くかわかったもんじゃない。

もしかしたらあいつらとの縁を切る前に離れているかもしれない。

怖いのに、苦しいのに、辛いのに、私は茨の道に足を突っ込んで傷ついて。

 

 

 

 

 

本当にバカだな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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