不良少女(仮)   作:茜崎良衣菜

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正義を突き通すために。

 

 

 

「朝日先輩!」

 

 

 

沙綾に支えられながら身体を起こしていく。ソファに背を預けた。

 

 

 

「どこやられました!?手首だけですか!?」

 

「……落ち着け沙綾……っ大丈夫だから」

 

「大丈夫なわけないですよね!こんな時まで強がるのはやめてください!」

 

「沙綾退け。私がやる」

 

 

 

そう言って救急箱を持った有咲は私の手を取った。道具を出して手首を固定される。湿布が熱をもった手首に染み渡った。

 

 

 

「とりあえず二週間は安静に……と言いたいところですけど」

 

「無理な相談だろうね。今日は特にきついと思うし」

 

「誰かの家に泊まるのは……」

 

「帰らなかったらお前らまで被害がいきそうだから却下」

 

「そんなこと言ってる場合なんですか!」

 

「私はお前らを傷つけてまで傷つきたくないわけじゃないからな」

 

 

 

私は立ち上がった。そして視界に入った三人のことを思い出す。

驚愕に歪んだ顔。ほんと、見せたくなかったな。

私はおもむろに立ち上がって蔵の外に出た。当然、家に戻るために。

 

 

 

「朝日先輩!!」

 

 

 

蔵から出ると名前を呼ばれすぐに掴まれた手。

 

 

 

「離せ有咲。私は帰る」

 

「ダメです。まだ帰しません」

 

 

 

腕を有咲に掴まれる。わざとなのか右手を掴まれたせいで下手に動けない。

 

 

 

「離せよ有咲」

 

「今帰ったらどうなるかわかってますよね」

 

「今か後かの差だよ。それなら今でいい」

 

「それ私たちが許すと思ってるんですか」

 

「逆に聞くけど、なんで止めようとするの」

 

 

 

これは単純に疑問だった。有咲と沙綾は私の事情を知っているのに、この後何をされるか知っているのに、どうして止めようとする。私はそんなこと頼んでいない。むしろ二人に、他のやつらに迷惑が掛からないようにしてるのにどうして。

 

 

 

「それはこっちのセリフです!何されるかわかっててみすみす帰せるわけ」

 

「だったら私の邪魔するのかよ!頼んでねえだろ引き留めろなんて!」

 

「私はただ先輩に傷ついてほしくないだけです!なんでわからないんですか!!」

 

「わかってたまるか!これは私の問題だろ!」

 

「先輩の問題だって言うなら私たちに知られないところでやってください!心配かけておいて気にするなとかふざけてるんですか!」

 

「放っておけばいいだろ!私なんか気にしなければお前らは普通に生きていけるんだから」

 

 

「いい加減にしろよ!!!」

 

 

 

 

 

胸倉を掴まれた。キッ!と睨まれた。

突然のことに動揺して何も言えなくなる。

 

 

 

「なんで私たちが朝日先輩のこと気にしてると思ってるんだ!朝日先輩のことが好きだからだ!!朝日先輩のことが何よりも大切だからだ!!なんでそれがわからないんだよ!ずっと近くにいたくせに!!」

 

「ッ!?」

 

 

 

有咲の目から涙が零れる。

ズルイだろ。そんな風に泣かれたら私は。

 

 

 

「……朝日先輩。たとえ家のことだったとしても一人で抱え込まないでください。困ったことがあったらちゃんと相談してください。なんだって受け止めます。どんなことだって力になります。

 

だから、もう勝手に傷つくのだけはやめてくれよ」

 

 

 

 

でも……いくら泣かれたって私は私の意見を曲げる気はない。

 

だってそうだろ。私があいつらのサンドバッグになり続けていれば紗夜や日菜、こいつらにだって被害はいかないんだから。そりゃ必死にもなるよ。短い時間ではあるけどこいつらといる時間は楽しくて幸せで私の日常の一部になってたんだ。それを守るためならなんだってする。この身体がいくら傷つけられてもその方が楽なんだよ、精神的に。

むしろこいつらが傷つけられる方が私は嫌だ。そうなるくらいなら私はなんだってしてやる。

それだけこいつらは私にとって大切な存在になったから。

 

 

私はお前らが私のせいで傷つけられる可能性があるって言うなら、二度とお前らとは関わらない。絶対に。

 

 

 

 

 

「…………いいから離せ。私は、もうここには来ない」

 

 

 

 

 

私は、自分のために動く。ならPoppin’Partyのメンバーが何と言おうと私は私の正義を貫けばいい。

胸が痛むのなんて、気のせいだ。

 

 

私は有咲の元から逃げ出した。

 

 

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

大人に近づくにつれて自分が情けないと思うことが増えた気がする。

朝日先輩と有咲がいなくなった蔵で私は自分の力のなさを実感していた。

 

 

結局朝日先輩が痛めつけられているのを見ていることしかできなかった。

手当てをしたのは有咲。朝日先輩を追いかけたのだって有咲。多分今朝日先輩の話を聞いてるのだって。

私は、先輩の役に立ちたいのに一番何もできていない。ただ告白して先輩を困らせただけ。側にいるのに何もしていない愚か者だ。

 

 

 

「……さーや」

 

「…………何」

 

「……さーやと有咲は、朝日先輩のこと知ってたの」

 

 

 

香澄が控えめに聞いてくる。私はそっと目を逸らした。

朝日先輩と両親のことは聞いても面白いことはない。むしろ心が苦しくなるだけ。それでも香澄たちは。

 

 

 

「あ、有咲ちゃん……!」

 

 

 

蔵の階段から有咲が降りてくる。その隣に朝日先輩はいなかった。

 

 

 

「……有咲、朝日先輩は?」

 

「……」

 

 

 

有咲は何も言わなかった。有咲なら連れ戻せると思ったのに。

 

 

 

「……悪い。今日は、もう解散。早く帰ってくれ」

 

 

 

有咲は悲しげな目でまっすぐに私たちを見つめていた。

 

 

 

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