不良少女(仮)   作:茜崎良衣菜

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これは自業自得の罰ゲームだよ。

 

 

 

勉強を始めて早二時間が経った。さすがに長時間の勉強は集中力が切れるため一度休憩を入れることにした。

あこちゃんが超喜んでいた。

本来なら友希那も喜ぶ、というか一息入れたいところだっただろうけどそれは私がそれを阻止していた。

理由は__。

 

 

 

「朝日、休憩中なのに問題を解かせようとするのは止めてくれないかしら」

 

「お前に休憩が存在するわけねぇだろボケ」

 

 

 

誰が今までの時間目を離したら曲作りを始めていたやつに休憩なんて与えるかよ。

まだ大量にある問題のうち三問しか解けてないだろ。というかその問題も全部途中で諦めて私が解説したやつじゃねぇか。

 

 

 

「ま、まあまあ。落ち着きなよ朝日」

 

「このままだとこいつ確実に赤点だけどいいのか?」

 

「それは……よくないけど」

 

「なら止めるなよ」

 

 

 

赤点取って困るのは誰だと思ってるんだ。

ため息をつく。乱暴に頭を掻けば紗夜がお茶を注いでくれた。これで落ち着けということらしい。

それを一気に飲み干し、私は再度友希那と向き合う。

 

リサが作ってくれたクッキーを食べ、リサが入れた紅茶を飲んで一息ついている。

何もしてないのにどうしてこいつは優雅に過ごしているんだろうと真面目に思った。

 

このままじゃ一向に勉強は進まないし、やっぱり友希那は勉強する気がないし、正直お手上げ状態だ。

 

 

 

「……なあ、私帰っていい?」

 

「ダメです。私たちだけでは手に負えないので」

 

 

なんで紗夜は私だったら手に負えると思ってるんだよ。私だって手に負えないわ。

 

ていうかりんりんも紗夜も教えることがメインになってて自分の勉強が捗ってるようには見えない。これはどうにかしないとりんりんと紗夜の成績が下がる可能性あるな。

まあ、紗夜がそんなヘマするとは思わないけど。

 

何がなんでも勉強しなきゃいけない状況を作れればいいんだけど……。

 

 

 

「そういえばみんな今日の夕飯どうする?うちで食べてく?」

 

「え!?リサ姉が作ってくれるの?」

 

「うん。そのつもりだよ?」

 

「わー!リサ姉の手料理だ!楽しみだなぁ!」

 

「ありがたいお話ですけど今井さんに迷惑ではないですか?」

 

「全然。むしろ誰かのために作る方が作りがいがあるってもんだよ。なんなら泊まってってもいいし?」

 

「あっ……!」

 

 

 

そうだ。その手があった。この方法ならこいつに、こいつらの勉強が捗るかもしれない。

 

 

 

「……どうか、しましたか……?」

 

「いや、なんでもないよ。リサ、料理なら私も手伝うぞ」

 

「え、朝日って料理できたの?」

 

「できるも何も家で普段料理してんの私だぞ?」

 

「そうだったの?」

 

「ええ。私たちよりも姉さんの方が上手なのでつい任せる形に……」

 

「そうなんだ。それならお願いしようかな〜」

 

「りょーかい。紗夜、友希那の勉強見てて。りんりんとあこちゃんは頃合い見て再開してね」

 

「わかったわ」

 

「はーい!」

 

 

 

個々に頷き、返事をするのを見送って私は部屋から出ようとする。そこで一つ聞き忘れていたことを思い出して部屋を覗き込んだ。

 

 

 

「そう言えば苦手なものってあったりする?」

 

「あこ、ピーマンが苦手で……」

 

「……私は、セロリが……」

 

「はいよ」

 

 

 

それだけわかれば十分だ。そう思い私は先にキッチンに向かったリサを追いかけるように階段を下りた。

キッチンに着けばリサは既にエプロンを身に着けていて冷蔵庫の中を探っている様子だった。せっせと材料をキッチンに並べていく。

 

 

 

「この材料、カレーか?」

 

「正解。材料見ただけでわかっちゃうなんて、さすが普段から料理してるだけのことはあるね」

 

「カレーの材料くらいみんな見慣れてるだろ。誰でもわかるっての」

 

「あははっ。確かにそうかも」

 

 

 

リサに渡されたエプロンを身に着け私は食材を切っていく。炒めるのはリサの担当。いつも一人で作ってる分、手慣れた者二人でやった時の速さは比べ物にならない。

とりあえずにんじんは普通に使う半分の量にしておいた。

 

 

 

「あれ?にんじん余らせないで全部使っていいよ?」

 

「あーいやー。全部は使わなくていいかな。後々紗夜に怒られそうだし」

 

「え?もしかして紗夜ってにんじん苦手なの?」

 

 

 

やっぱ、紗夜がにんじん苦手って聞いたら驚くよな。あいつのイメージ、めちゃくちゃ好き嫌いとか苦手だから残すって行動嫌いそうなのに。

 

 

 

「すっごく意外……」

 

「そういうと思ったよ」

 

「紗夜はにんじんが苦手なんだね。覚えとこ」

 

「そういうリサは何か苦手な食べ物あるのか?あと友希那も」

 

「友希那はゴーヤかな。後味苦いの嫌いみたいで。ちなみにアタシは食べ物の苦手はないんだけどグリーンスムージーが苦手」

 

 

 

ほーなるほどね。

友希那はゴーヤ、リサはグリーンスムージー、紗夜はにんじん、りんりんはセロリで、あこちゃんはピーマンね……って、ちょいまて。

 

 

 

「本当なら好き嫌いさせないように苦手なもの入れておきたいんだけどね。ちょうどゴーヤもセロリもピーマンもあるし。まあカレーに入れるにはちょっとって感じだから入れないけどね」

 

 

 

グリーンスムージーは一旦置いておくとして、ゴーヤ、にんじん、セロリ、ピーマンっていくらなんでも野菜に集中しすぎだろ。

なんだこの野菜苦手集団。あんだけいい演奏できるのに嫌いな食べ物ただのガキじゃないか。

 

 

 

「どうしたの朝日。頭抱えて」

 

「……なんでもない」

 

 

 

まあ、そのおかげで私のやりたいことは簡単にできそうだしいいか。

 

 

 

「なあリサ」

 

「んー?どうしたの?」

 

「冷蔵庫にある食材なんだけど、後で勝手に使っても大丈夫か?」

 

「まあ、今日はお父さんもお母さんも帰って来ないから別に大丈夫だけど何に使うの?」

 

「まあ、色々な」

 

 

 

リサの了承も取れたし完璧だ。私の策に抜かりはない。

 

 

 

「カレー、もうそろそろできるしあいつら呼んで来いよ。あとは私がやっとくからさ」

 

「……ねえ朝日。何か企んでない?」

 

「企むって何を?」

 

「……まあ、気のせいならいいけど」

 

 

 

リサは他のメンバーを呼ぶために部屋に戻った。

一人取り残された私はため息を零し呟いた。

 

 

 

「全く……察しのいいやつは嫌いだよ。…………なんてね」

 

 

 

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

 

 

誰かの家で食卓を共にする、なんて家族以外だと久しぶり。しかもこんな大人数というだけあって賑やかだ。いや、喋っているのは基本的にあこちゃんとリサくらい。紗夜と友希那とりんりんは適当に話すくらいだ。

だけど、なんだろうな。いつもの食卓では日菜がずっと喋っているし心地がよかった。

 

 

夕食を終えてみんなを部屋に戻した後、私は一人皿洗いをしていた。リサや紗夜は手伝うと言ってくれていたが友希那とあこちゃんの勉強を任せるために先に部屋に行ってもらった。

リサは「朝日がいないと教えられないんじゃ……」なんて心配していたけど、大丈夫だよ私が戻ったら嫌でもやらないといけなくなるし。その意味を知っているのは私だけ。

 

皿洗いが終わり次第私は準備を始める。

ミキサーはあったし勝手に使ってもいいだろう。

なんせテスト前で、あいつらはRoseliaの練習に穴をあけたくないんだからな。

多少強引な策であっても、文句は言わせないさ。

 

 

 

「あっ、朝日お疲れ様~」

 

 

 

部屋に戻れば勉強を始めて十分ほどしか経っていないのにも関わらず机の上に項垂れているあこちゃん、それにわたわたしているりんりん。ため息を吐きながらも参考書を開く紗夜に頭を悩ませているリサ、ゆっくり飲み物を飲んで何の焦りもない友希那。

何度見たって、カオスなことに変わりはなかった。リサは私が来たことに対して手を振りながら労いの言葉をかけてくれた。

 

ありがとう、けどごめんな。これからやることはお前らのためだから恨むなよ。

 

 

 

「姉さん?その緑の飲み物は一体……」

 

 

 

紗夜の問いに答えることはなく私は紗夜の持っていた参考書を手に取った。

 

 

 

「友希那。8のX乗=4は?」

 

「はい?」

 

 

 

にこにこしながら友希那を見る。友希那はわからないわ、とひと蹴りした。

 

 

 

「紗夜」

 

「x=3分の2ね」

 

「正解。というわけで不正解の友希那には罰ゲームだ」

 

「罰ゲーム?」

 

 

 

友希那、というか全員が首を傾げる。それを無視して私はさっき作っておいた緑の液体をコップに注いで友希那に手渡した。

 

 

 

「なによこれ」

 

「ああこれ?スムージーだよ。ただのスムージー。まあまずは一口飲んでから感想をどうぞ」

 

 

 

笑顔でそう言えば友希那はそれを飲んだ。リサの表情がなんとなく引き攣っているのは見なかったことにしておこう。

 

 

 

「うっ……!」

 

「み、湊さん!?」

 

「友希那さん!?どうしたんですか!?」

 

 

 

私の渡したスムージーを一口飲んだ友希那は苦しそうな声を上げた。それに心配そうなみんなの声が続く。

それに笑みが零れてしまう。

 

 

 

「ね、姉さん!湊さんに何を飲ませたのよ!?」

 

「何って、別に危険なものはなんも混ぜてねーよ。混ぜたもんはゴーヤ、にんじん、セロリ、ピーマン、あとは冷蔵庫にあった果物を少々。それを水ベースにミキサーで混ぜただけだよ」

 

 

 

私の言葉に全員が言葉を詰まらせた。信じられないものを見るような目だった。

 

 

 

「お前らの嫌いなもの、野菜に固まっててよかったよ。集めるの簡単だった」

 

「朝日、もしかしてさっき苦手なもの聞いたのって……」

 

「もちろんこのためだよ。今から出す問題、答えられなかったらこのグリーンスムージーを飲んでもらう。それが嫌なら全部正解することだな」

 

 

 

さすがにバカ相手に何も見ずにやれなんて鬼みたいなことは言わない。教科書でも何でも見て解けばいい。解けさえすれば問題なんてないんだから。

 

まあ、この歌姫様がどうなるかは知らないけど。

 

 

 

「さあ友希那。まずはそれ一気に飲み干しちゃおうか。話はそれからだ」

 

「あ、悪魔だ……」

 

「リサ、随分他人事じゃねえか?もちろん全員参加してもらう。今日は泊まり込みで勉強会だ」

 

 

 

逃がさないよ誰も。

そんな目を彼女たちに見せればそれぞれ嘆いていた。

 

本当は妹や妹ポジの子をいじめたくはないけど今回は別問題だ。

なんせ赤点を取って困るのはお前らなんだから。

 

誰かが赤点取ったら練習できないんだ。

だったらこういうのは連帯責任だろ?

 

 

 

「さあ、お前ら。勉強の時間だ」

 

 

 

ここから罰ゲームありきの勉強会が始まった。

どれほどこの罰ゲームを受けたくなかったのか紗夜とりんりんは全問正解をして回避、リサも意地で二問ミスまでに抑えた。

ただあこちゃんと友希那に関しては、案の定という感じだった。

 

 

後日返ってきたテストは全員どうにか赤点を回避しRoseliaの練習に支障をきたすことはなかった。

Roseliaの全員が安心したのと同時に私との勉強会を恐れることになったのはまた別の話。

私だって極限の状況じゃなかったらあんな強引なことしないのにな。

 

 

ちなみにグリーンスムージーは不味かった。

 

 

 

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