不良少女(仮)   作:茜崎良衣菜

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もう二度とやらないと誓った。

 

 

 

「「はぁ!?ドッキリ!?」」

 

「そうそう。全部ドッキリだよ」

 

 

 

森から抜け出し、「ドッキリ大成功!」の札を持ったリサと隣でやり切った表情をした千聖に目を丸くしていた二人を連れてみんなの元に戻った。

状況を知っている美咲は苦笑して、他のみんなは何事もなくて安心したという感じだった。

 

 

 

「全部……?」

 

「うん。全部。嫌な予感がするって言ったことも、少女が行方不明になったって話も、石が墓地だって思い込みも、全部嘘だよ」

 

「じ、じゃあ笑い声がするってのは……?」

 

「聞こえるわけないだろ?何の事件もないこの森で」

 

「本当に、全部嘘だったの?」

 

「だから、そうだって言ってるだろー?」

 

 

 

まさか私の演技力があんなに通じるだなんて。紗夜はまだしも日菜は芸能人でドラマの仕事とかもあったのに。これは千聖の言う通り、本当に芸能界デビューできるんじゃね?

私は調子に乗って高笑いをする。そんな私を見て二人は互いを見合わせた。いつものように微笑みを向け合う。こくりと頷き合った。

お、なんだ?仲直りしてくれたのかな?よかった。それならこんなことしたかいが――。

 

 

 

「覚悟してよおねーちゃん!!」

 

「今日という今日は許しませんよ姉さん!!」

 

「ちょっと待って想像してたのと違う!!」

 

 

 

鬼の形相で向かってくる二人に私は思わず逃げ出した。

二人はここ最近だと、いやこの十数年一緒に生活してきたが中々見ない表情をしていた。紗夜はまだしも日菜まで怖い顔するなんて想定外じゃん!?ほんと姉妹って怒った顔も似るんだね!?

さっきと状況は全く同じなのに、追いかけられている内容は全く違う。

 

 

 

「あ、有咲!助けて!」

 

「市ヶ谷さん!山吹さん!姉さんを捕まえてください!!」

 

「おいほんとに落ち着けって!話せばわかるから!!」

 

「そう思うなら逃げないでよ!!」

 

 

 

嫌だよだってまじでボコボコに殴られそうな勢いじゃん!

私は二人が怖すぎてポピパの中に逃げ込む。有咲やポピパのメンバーなら私を庇って二人のことを宥めてくれると信じていたから。

 

 

 

「頼む有咲!あの二人に話せばわかるって訴えてくれよ!」

 

「朝日先輩……」

 

 

 

有咲の背後から肩を掴み二人を説得してくれるように頼む。

有咲なら二人を落ち着かせることもできるだろう。二人だって後輩の言葉を無下にはできないはずだ。

 

 

 

「すみません朝日先輩」

 

「へ?」

 

 

 

振り返りながらなぜか謝罪をされた。そしてそのまま掴まれた腕。目を丸くする私に有咲はニコッという効果音がつきそうなとびっきりの笑顔を向ける。それが今は不気味で私の表情が引き攣った。

 

 

 

「さすがにこのドッキリはやりすぎだと思うので大人しく叱られてください。私だって、怒ってますから」

 

「……嘘だろ?」

 

 

 

有咲なら。そう思っていたのに。

そう思っていれば私の肩に手が置かれた。振り返れば似たような笑顔の沙綾が立っていた。目が笑っていなかった。マジで怖い。何も言わないのが何よりも怖い。

おたえは何かの遊びだと思ったのかもう片方の肩に手を置いていた。香澄は紗夜と日菜、そして有咲と沙綾を見て少し遠くでガタガタ震えている。りみちゃんは香澄のことを宥めながら苦笑するだけ。協力者であるリサと千聖に目を向けるが目すら合わせてはくれなかった。巻き込まれるのは嫌らしい。

私の味方をしてくれる人は誰もいないよう。

 

 

これは、確実に詰んだ。

 

 

 

「それじゃあ姉さん。話を聞かせてもらいましょうか?」

 

「い、いやだな~。紗夜も日菜も、怖い顔するなよ。二人は笑った方が……」

 

「おねーちゃん?」

 

「あ、はい。わかりました」

 

 

 

こういうドッキリは二度とやらないと心に誓った。

 

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

 

約束した時間に指定された普段行かないようなおしゃれなカフェに向かう。「いらっしゃいませ」「一名様ですか?」と店員さんの呼びかけ。「待ち合わせです」と告げれば一番奥の席で私の名前を呼び手を振る姿が見えた。そのまま店員さんに注文をお願いし、注文したものが運ばれるのを待つ。

運ばれるまでの間に軽く話をする。とは言え本題を切り出さず軽い世間話と言ったところ。

 

 

 

「それで日菜ちゃんと紗夜ちゃんがケンカしてる原因はわかったの?」

 

 

 

注文した紅茶を一口含み飲み込む。香りが良く渋くもないし飲みやすい。

カップをソーサーに戻した頃に集まったメンバーの一人である千聖はそう切り出した。

タイミングを見計らっていたのだろうか。会話が切れてちょうどよかった。

 

 

 

「それがわかってるならとっくに解決してるんだよ」

 

 

 

原因がわからないから困っているというのに。私は軽くため息をつく。

 

 

 

「朝日が泣きつくレベルだしそんなことだと思っていたわ」

 

 

 

当然のような反応。語弊があった。

 

 

 

「泣きついてねえよ。だいたい先に連絡してきたのは千聖の方だろうが」

 

「それはそうだけど今日呼び出したのは朝日じゃない」

 

「ちょいちょい。なんで会って早々ケンカするの?」

 

「「ケンカじゃないから」」

 

「おー息ぴったり」

 

 

私たちのことをなだめるリサはハモった声を聞いてパチパチと拍手する。

 

 

 

「二人までケンカしないでよ?紗夜とヒナだけで手一杯なんだから」

 

「紗夜のやつ練習の時どんな感じだ?」

 

「怖い顔してるよ。とは言っても話しかけたら普通に返してくれるし、まあムカついてますってオーラは出てるけどね」

 

 

 

感情が表情に出やすい子だと昔から思っていたけど、大丈夫かよ。コミュニケーション取る分には問題なさそうだけど雰囲気ぶち壊してないだろうか。普通に心配だ。

 

 

 

「それよりも問題はヒナだと思うよ?この間メッセージ送ったんだけどさ……」

 

 

 

そう言いながらリサはスマホを操作しその時の日菜とのトーク画面を見せてもらった。

 

 

 

『ヒナ?紗夜とケンカしたって聞いたんだけど何があったの?』

 

『さあ』

 

『さあって……』

 

『リサちーには関係ないよ』

 

『そんなこと言わないでよ。言いにくいことなの?』

 

『リサちーには言いたくない。絶対おねーちゃんの味方するから』

 

『え?それってどういう意味?』

 

 

 

メッセージはそこで切れていた。既読の文字はついているのに返していないのを見る限り日菜はこれ以上リサと話す気はないように思える。日菜がこんな中途半端にメッセージを終わらせることなんてほとんどない。だいぶ怒っているタイミングでメッセージを送ったのだろうか。

 

 

 

「これは、確かに日菜ちゃんらしくはないわね……」

 

「でしょ?だからアタシとしても気になって仕方なくて」

 

「そもそもリサが紗夜の味方をするってところもわけわかんないもんな」

 

 

 

絶対紗夜の味方になる確信が日菜にはあるというのか。だとしたらそれは一体なぜ。何かしらの形でリサもこのケンカに関わっているってことだろうか?

 

 

 

「お前はどう思う?」

 

「え?あ、あたしですか?どうと言われても……」

 

 

 

私たちだけで話していても埒が明かないと思い招集した最後のメンバーである美咲に話を振る。彼女は困惑した表情をしていた。一番遠い立ち位置だしまあその反応になっても仕方ないと思った。

 

 

 

「あ、あの……」

 

「ん?どうしたの美咲?」

 

「そもそもどうしてあたしが呼ばれたんですか?」

 

「なんでって?」

 

「だ、だって紗夜さんと日菜さんがケンカしてることだって朝日さんからの連絡で知ったばかりですし、呼ばれた理由が知りたくて……」

 

 

 

私の隣でアイスティーを飲みながら大人しくしていた美咲。だが呼ばれた理由がわからず先輩に囲まれていたから小さくなっていただけのようだ。

申し訳なさそうに見えた。そう言えば説明もろくにせず呼び出した私も悪いから反省する。

 

 

 

「ちゃんと説明するよ。それじゃあ本題に入ろうか」

 

 

 

今日はとある提案をするために三人を集めたのだ。これはどうしても私一人の力じゃ遂行できない。

 

 

 

「三人には紗夜と日菜を仲直りさせるために協力してほしいんだ」

 

「協力、ですか?」

 

「そうそう。協力、お願いできないかな?」

 

「アタシはいいよー。けど何する気なの?」

 

「そうね。内容次第では協力できないわよ?」

 

 

 

とりあえず内容を伝えないことには、特に千聖には協力してもらえないだろう。

そう思って作戦内容を事細やかに伝えていく。三人はコロコロと表情を変えながら私の話を聞いていた。

「なるほどね」と千聖が含みのある笑みを向ける。

「まじ?」とリサが疑うような顔をする。

「あ、ははっ」と美咲は頭を抱える。

納得しているかはさておき理解してくれていることはわかった。

 

 

 

「嘘がつけないやつだと実行する前に二人にバレかねないしお前らは適度に嘘くらいつけるだろ?」

 

「それは遠回しに私たちが嘘つきだって言っているのかしら?」

 

「おいおい悪いように捉えるなって」

 

「にしてもすごいこと考えたね朝日。アタシ隠し通せる自信ないよ」

 

「最悪紗夜と日菜にバレなようにしてくれればいいって」

 

「結構難しいこと言ってる自覚ある?」

 

 

 

リサは何とも言えない表情で頭を掻いていた。

 

 

 

「内容自体は理解できました。ですけどあたしが呼ばれた理由は全然見当つかないんですけど……」

 

「あーそれね。美咲には一つ相談したかったことがあってな」

 

「相談、ですか?」

 

「いやまあこれは美咲というよりこころの了承がいる話ではあるんだけどさ」

 

「は、はぁ?」

 

「今度、夏の終わりに五バンドの合同ライブやるだろ?それにかこつけて合宿開いてほしいんだよ」

 

「え?合宿ですか?」

 

 

 

想定外のことだったのか美咲とリサは目を丸くする。千聖には眉をひそめられた。

 

 

 

「そう。今度の合同ライブの最終確認だとか適当に理由つけて開催してほしいんだ」

 

「えっと、なんでそうなるんです?」

 

「あいつら、必要なかったら顔合わせようとしなくてさ。普通に打ち合わせするだけなら代表だけでも完結するし、あいつらは参加しない可能性の方が高いだろ?だから合宿を開いて、無理矢理にでも引き合わせるしかないと思ってさ。それに計画のことを考えてもそっちの方が助かるんだよ。

頼むよ美咲。こころに頼んでどうにかして合宿開催できるようにしてくれないか?」

 

「だ、だからって合宿ってだいぶぶっ飛んだことになってない?」

 

「というかそれ、完全にこころちゃん頼りの計画よね?さすがに他力本願すぎないかしら?」

 

「そればっかりは仕方ないだろ?さすがにどこかの宿泊施設予約するってなったら宿泊費いくらになると思ってるんだよ。だいたいこの時期だとどこもいっぱいだし」

 

 

 

無理言ってる自覚はあったけどこれくらい強引じゃないとどうにもできないと思った。それに合宿も別に悪い話ではないだろう。親睦深めるなり、切磋琢磨し合ったり、色々できるし。

 

 

 

「まあ合宿のことは多分、どうにかなると思いますよ。こころとかはぐみとか、提案したら絶対やるって言うので」

 

「お、まじ?なら頼むよ」

 

「合宿やるのはいいとしてさ、朝日はどうやって合宿に同行する気なの?これ合同ライブに出るメンバー以外が来たら変じゃない?」

 

「よく考えてみろよリサ。あいつら(Poppin'Party)が、特に香澄が、私のこと誘わないと思ってるのか?」

 

 

 

ありえないだろと言えばリサは納得した様子だった。

千聖はなんというか呆れた表情をしていた。

 

 

 

「ポピパと言えばですけど、市ヶ谷さんと山吹さんにはこの計画の話しなくてもいいんですか?」

 

「え?有咲と沙綾に?なんで?」

 

「なんでって、朝日さんと仲良いんですよね?実際学校内でもよく一緒にいるの見かけてましたし」

 

「あー。あいつらはさー、意外とお化けとか怖いもの苦手なんだよ。驚いてる顔とか見たいに決まってるじゃん?絶対かわいいし」

 

 

 

あるのはちょっとしたイタズラごころだけ。

 

 

 

「朝日って本当に……」

 

「あははっ……。これは紗夜も苦労するね」

 

「市ヶ谷さんが言ってたのってこういうことか……」

 

「え、何、どうした」

 

 

 

それぞれ苦笑いしていた。理由がわからずに首を傾げることしかできない。

 

 

 

「まあいいわ。とりあえず日程にある程度目途がついたら連絡してちょうだい」

 

「おう。頼んだぞ~」

 

「はいはい」

 

 

 

これで準備は整った。当日が楽しみでクスリと笑う。

私たちの一大プロジェクトが幕を開けた瞬間だった。

 

 

 

「それじゃあお腹も空いたことだしどこかに食べに行く?」

 

「そうね。近くのお店にでも行きましょうか」

 

「だな。何頼んでもいいぞ」

 

「あら朝日。奢ってくれるのかしら?」

 

「もちろん奢るよ。リサが」

 

「え!?アタシ!?」

 

「リサちゃんごちそうさま」

 

「ありがとうございますリサさん」

 

「ちょ、勘弁してよ朝日ー!!」

 

 

 

結局全額私が奢った。

 

 

 

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