不良少女(仮)   作:茜崎良衣菜

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朝日、紗夜、日菜、誕生日おめでとう!!


第Ⅹ章 君たちといつもと違う日常を。
祝福の日。


 

 

 

明日は待ちに待った一年で一度の日。

大切な人のため私たちは奮闘する。

 

 

 

すなわち、誕生日である。

 

 

 

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

 

三月二十日。今日はいつも私たちのことを支えてくれている朝日先輩の誕生日だ。日頃から感謝しかしていない私たちはサプライズで誕生日パーティーを開こうとしていた。誕生日当日は平日だが朝日先輩が蔵に入り浸っているのはほぼ毎日だから問題ないだろう。

前日、朝日先輩と一緒に帰ったフリをした香澄と合流し、蔵の飾りつけをした。ケーキも朝日先輩の好きなチーズケーキを買った。プレゼントだってちゃんと用意した。準備は万端だ。

 

正直な話、私の選んだプレゼントを朝日先輩が気に入っていれるかだけが心配。

朝日先輩なら何をしても喜んでくれるだろう。けどそれじゃあなんか嫌だ。どうせあげるなら最高のプレゼントをあげたい。その想いが強くて色々悩んで決めたプレゼント。喜んでほしかった。

 

だから朝からドキドキでソワソワして香澄たちにまで不思議がられてしまった。放課後まで隠し通せる気がしない。

 

 

 

「お昼だよー!有咲行こう!」

 

「ちょ、香澄!引っ張らなくても行くっつーの」

 

 

 

クラスに顔を出したのは香澄。その後ろにはいつもの見慣れたメンバーが並んでいた。

そんなメンバーと他愛もない話をしながら廊下を過ぎ、中庭の特等席に陣取る。あとは朝日先輩が来られれば完璧なんだけど。

 

そんな時にポケットに入っていたスマホが鳴った。メッセージをくれたのは朝日先輩だった。

 

 

 

『悪い。クラスのやつらが誕生日会開いてくれて、そっち行けなくなった』

 

 

 

これが零時丁度に送ったメッセージの次に来るなんて誰が想像していたのか。

お昼、一緒に食べられると思っていたから少しショックだった。

 

 

 

「有咲?どうかしたの?」

 

「‥‥‥朝日先輩。今日の昼一緒に食べれないって」

 

「ええ!?私楽しみにしてたのに!」

 

「クラスで誕生日会してるんだと」

 

「残念だけどそれなら仕方ないね」

 

「‥‥‥そうだな」

 

「‥‥‥大丈夫?」

 

「‥‥‥別に、放課後には会えるだろ」

 

 

 

こんなことで寂しいとは言えなかった。否、言いたくなかった。からかわれるのが恥ずかしかったし、クラスメイトに嫉妬している自分の心の狭さに嫌気が差すから。

一番が私であるという事実に救われている。

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

結局午後の授業はずっと朝日先輩へのプレゼントに対する不安が頭をよぎっていた。

勉強にも手付かずのまま放課後を迎える。まあ別に学校の勉強に不安があるわけではないし予習も復習も改めてやれば大丈夫だが、今日のことは大丈夫な気がしない。

そんなことを思いながら帰りの支度をする。鞄を持って待ち合わせをしていた隣のクラスに足を運んだ。そこにはそのクラスの四人だけでなく朝日先輩もいた。HRが早く終わったのか。いつもより五分は早い。

 

 

 

「お、有咲来たな」

 

「はい。お待たせしました‥‥‥あの朝日先輩?その袋どうしたんですか?」

 

 

 

朝日先輩を見て一番最初に視線を送ったのは手に持っていた二つの紙袋だった。箱や包みが大きさはバラバラだが

大量に入っている。

私の問いに朝日先輩は頭を掻いた。困ったような表情をしていた。

 

 

 

「これ、全部誕生日プレゼントなんだよ。ほら昼に言ったろ誕生日会してもらったって。その時にもらったんだよ」

 

「そう、なんですか‥‥‥」

 

「さすがに多すぎだよな」

 

 

 

困ってはいたけど嬉しそうに笑う朝日先輩に胸が苦しくなった。

そうだ。人のいい朝日先輩が好かれないわけがない。だからクラスメイトの人たちも盛大に会を開いたんだろう。

 

 

朝日先輩は、私以外のプレゼントでも喜んだ。もしかしたら本気でほしかったものがその中に入っていたのかもしれない。私のものよりも気にいるプレゼントがあるかもしれない。そもそも私のプレゼントなんていらないのかもしれない。

 

そんなことはない。朝日先輩は私のことが一番だって言ってくれた。だから私のプレゼントでも喜んでくれるはずだ。

嬉しそうな顔をされて不安になるだなんて、私はいつからこんなにも心の狭い女になってしまったんだろう。そんな面倒な自分が嫌になる。

 

 

 

「んじゃ、蔵行くか」

 

「そうですね」

 

 

 

蔵に向かうまでもその不安は解決しなくて、時々私を見て心配そうな顔をする朝日先輩にぎこちなく笑った。

 

 

 

 

 

 

サプライズの誕生日会は、簡潔に言うと成功した。

朝日先輩は驚いてくれたしケーキも喜んでくれた。ただそんな朝日先輩の表情を見る度に私の不安は増えていく。

私だけ喜んでもらえなかったら‥‥‥そんな妄想ばかりがよぎっていい反応をしてくれる未来が見えなかった。

 

ケーキを食べて雑談して、そしてとうとう本題である。待ちに待った、朝日先輩へのプレゼント贈呈式だ。

 

 

 

「朝日先輩!これ私とおたえとりみりんとさーやからです!」

 

「ギターの弦とピック?」

 

「はい!朝日先輩と言えばやっぱりギターじゃないですか!」

 

「私のイメージがそれなのはここでだけだけどな」

 

「それとエフェクターです」

 

「こ、これ私が前に見て欲しいって思ってたやつじゃん!高かっただろ?」

 

「私たちと、あと花音先輩で割り勘しました」

 

「朝日先輩が喜ぶと思ったのでちょっとだけ奮発しちゃいました」

 

「ありがとうめっちゃ嬉しい!大切にする!」

 

 

 

そうだよな。朝日先輩相手ならギター関連のもの渡せば絶対安心だったのに。なんで思いつかなかったんだろう。

てか数人で割り勘って手があったか。それ完全に見落としてたな。

 

 

 

「それから、プレゼントはあと一つあるんですよ」

 

「まだあるのか?」

 

「はい。ね、有咲」

 

「‥‥‥え?」

 

 

 

沙綾がニヤッと笑って私の背中を軽い叩いた。香澄も似たようなことをしている。おたえはいつも通りでりみだけが苦笑いしている。え、待って何怖い。

 

 

 

「朝日先輩」

 

「「「「プレゼント、フォーユー!」」」」

 

「ぬわっ!」

 

「っ!?」

 

 

 

四人の言葉と共に押された私の身体。突然のことで朝日先輩の胸に飛び込む。朝日先輩はしっかり抱きとめてくれて、感じた温もりに熱が集まった。

 

 

 

「私たちからのもう一つのプレゼントは今日一日有咲を好きにしていい権利です!」

 

「はあ!?」

 

 

 

香澄が言い放ったとんでもない発言に抱きとめられたまま反応する。少し声がこもってしまった。朝日先輩から離れて後方にいた香澄たちに文句をつける。

 

 

 

「なんだよそれ!私は聞いてないぞ!?」

 

「言ってないもん」

 

「有咲。プレゼントは私って言っときなよ」

 

「誰が言うか!!」

 

 

 

いくらなんでも悪ノリが過ぎるだろ。朝日先輩だって呆れて何も言ってな‥‥‥。

 

 

 

「あ、朝日先輩!?」

 

「ねえ、本当に有咲のこと好きにしていいの?」

 

「はい。もちろんです!」

 

「ならそのプレゼントもらう」

 

「ちょっ!」

 

 

 

 

後ろから抱きしめられた私は身動きが取れなくてただ顔を赤くして戸惑うことしかできない。とは言え、朝日先輩が私を欲しいと言ってくれたのは嬉しい限りだ。それを察したのかやけに嬉しそうな他のメンバーの表情。恥ずかしいから今すぐ出て行ってほしい。

 

 

 

「それじゃあプレゼントも渡し終わったし帰ろうか」

 

「そうだね」

 

「邪魔者は退散しよう」

 

「またね有咲ちゃん」

 

「嘘だろ!?」

 

 

 

普段の気持ちは伝わらないのにどうしてこういう時は伝わるのか不思議で仕方ない。というかいつもなら嬉しい二人キリがこんなに気掛かりなのは初めてだった。

 

 

 

「‥‥‥なんだよ有咲。私と二人きりは嫌なのかよ」

 

「い、嫌じゃないです‥‥‥」

 

 

 

珍しく拗ねた声を出す朝日先輩にキュンとした。

 

 

 

「有咲いちゃつくなら私たちがいなくなってからにしてよ」

 

「今すごくコーヒー飲みたい気分」

 

「ああもう!茶化すなら帰れ!」

 

 

 

言ってしまったと思った。しかし出てしまったものはどうしようもない。

蔵から出て行く後ろ姿をただ目で追うことしかできなかった。

 

 

 

「‥‥‥あ、あの朝日先輩。そろそろ離してくれませんか?」

 

「いやだ」

 

 

 

香澄たちがいなくなった途端にさっきよりも強くなった力。私から離すのも切なくてそのままにしておいた。

しばらくしてやっと離してくれた朝日先輩。嬉しそうだった。

 

 

 

「ねえ有咲。有咲からプレゼントは?私、まだもらってないよ」

 

「‥‥‥気に入ってくれるかわかりませんけど」

 

 

 

私はおそるおそる鞄から手のひらに収まるくらいの箱を朝日先輩に渡した。

 

 

 

「開けていい?」

 

「はい」

 

 

 

包装を丁寧に外して箱を開く。中身を見て驚いたような表情をしていた。

 

箱の中身はネックレス。シルバーで指輪が二つクロスしているようなもの。お店で見つけた瞬間に絶対朝日先輩に似合うと思った。

気に入ってくれただろうか。視線を朝日先輩に向ければ目がキラキラしていた。おもむろに首に着けた。

 

 

 

「似合ってる?」

 

「はい。とっても」

 

 

 

予想通り綺麗だった。つい見とれてしまう。

 

 

 

「ありがとう有咲。嬉しいよ」

 

 

 

私の心配はその幸せそうな笑顔を見て杞憂だと知った。

今日見たどんな表情よりも嬉しそうな顔に胸がいっぱいになった。思わず涙が零れてしまう。

 

 

 

「あ、有咲!?」

 

「よかったぁ‥‥‥」

 

 

 

朝日先輩に正面から抱きつけば抱きしめられ頭を優しく撫でられる。

 

 

 

「好きだよ有咲。大好き」

 

「わ、たしも‥‥‥大好きです」

 

 

 

 

お誕生日おめでとうございます。

これからもずっと私の先輩でいてくださいね。

 

 

 

 

 

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