不良少女(仮)   作:茜崎良衣菜

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誕生日おめでとう。大好き。


私だけの先輩。

 

 

 

朝日先輩は外見が少し怖いから勘違いされがちだ。

本当は優しくてとっても面倒見がいいのに関わったことのない子たちにはそれが何一つ伝わらない。

故にクラスメイトの幾人かから質問されることはあった。

 

 

 

「どうしてそんなに氷川先輩と仲がいいの?」

 

 

 

どうしてと言われても困った。そのたびにその答えを考える。

 

仲良くなれたのは朝日先輩の心に寄り添えたから。言わば過去の私の功績だ。

出会い方は衝撃的なものだったけど、きっと自己犠牲の精神みたいなものが私と似ていると思ったから。妹さんたちに対する強い想いに胸を打たれ助けあげたいと考えたのかもしれない。実際のところ助けるよりも助けられてばかりだけど。

 

 

朝日先輩はかっこいい。

いつも私と話している時の真面目な表情。

道を歩く時はいつの間にか車道側を歩いているし一緒にご飯を食べに行けば大抵ご馳走してくれる。

色々な朝日先輩を見てきた。

 

そのうえで一番かっこいいと思うのはギターを弾いている瞬間。

真剣な眼差し、しなやかに動く指先、揺れる髪、流れる汗、楽しそうに笑う口元、鳴り響くのは魂のこもったメッセージ。

どれを取っても私の中では一番でそのかっこよさに何度だって見とれてしまう。

沙綾と呼ぶ声に胸の高鳴りは抑えられない。

 

 

そんなかっこいい朝日先輩のことが私は好きで好きで仕方なかった。

 

 

 

 

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

 

パン屋の朝は早い。私の家では父さんが一番早く起きて店に並べるパンの準備をする。それを手伝うのが私の日常。それもあってか平日休日関係なしに他の大多数の高校生よりは早起きの自信があった。

 

目が覚めて充電していたスマホを見ればそこにはいつもと同じ起床時間が表示されていた。起き上がって伸びをすれば掛けていた毛布が下がる。

ふと隣を見て笑みが零れた。

 

すやすやと規則正しい寝息を立てているのは私の大好きな人。この時期にしては随分薄着だ。私が毛布を剥ぎ取ってしまったがためにそのダメージを受けたのか猫のように身体を小さく丸めていた。

ゆっくりベッドから降りて肩の位置まで毛布を掛ける。無邪気で少しだけ幼い寝顔。ぷにぷにと頬を軽く押してみても特に反応はない。

 

 

 

「……かわい」

 

 

 

口から漏れた言葉と共に私はおでこにキスを落とす。

そしてリビングへと向かった。

 

 

 

 

 

今日、朝日先輩の家には私たちしかいない。

紗夜先輩はRoseliaの合宿、日菜先輩はパスパレのお仕事で昨日から地方に行っている。家に一人だけってこともあってか朝日先輩は私を家に招いたのだ。お泊まり自体は何度もあったけど二人きりというのは初めてだったから緊張したのは私だけの秘密。

 

スマホで昨日の夜に来ていた連絡に返信をする。テレビをつけてニュース番組を見ていた。

 

30分くらい時間を潰したところで台所にかかっていたエプロンをつける。

冷蔵庫を覗いて食材を確認すれば朝日先輩たちはちゃんと自炊しているからか食材がそこそこ入っていた。

朝は軽くていいよね?

そう思って卵とウィンナーを取り出した。フライパンをコンロの上に乗せ火をつける。温まったところに油を入れフライパンになじませ焼いていく。

その間にトースターに食パンを二枚並べた。

 

 

 

「さーや……」

 

「あ、おはようございます朝日先輩」

 

「眠い……」

 

「ならもう少し寝ててもいいですよ?私朝ご飯が出来たら起こしに行きますから」

 

 

一瞬火から目を離して眠たそうに目を擦る想い人にそう言った私は再度視線をフライパンに戻した。

椅子を引く音がする。朝日先輩は二度寝しないで起きることを選んだようだ。

 

 

 

「……沙綾」

 

「はい?ちょ、朝日先輩!?」

 

 

 

名前を呼ばれ返事をしたら背中に人の感覚。お腹に腕を回されギュッと抱きしめられた。突然のことに動揺した私は手に持っていたお箸を落としそうになる。朝日先輩はそんなこと気にしていないみたいで私の肩に頭を乗せたまま動かなかった。

 

 

 

「あ、あの……朝日先輩?離れてほしいんですけど……」

 

 

 

私の呼びかけに朝日先輩は何も言わない。

この状況が嫌なわけじゃないけど火を使っているから危ない。料理も進まない。それに私の心臓が早く動きすぎて死んじゃいそうだった。

 

もう一度名前を呼ぶ。すると朝日先輩は顔を上げて視線を私以外の場所に向けて小さな声で言った。

 

 

 

「……なんだよ。私に抱きしめられるの嫌なのかよ」

 

 

 

なにそれかわいすぎ。これは料理してる場合じゃない。

私は火を止めて朝日先輩を剥がす。そして正面から抱きついた。

また私の肩に頭を埋める。その頭を撫でてやれば肩をグリグリされた。少しだけ痛い。けど朝日先輩のやることだから嬉しい。

 

 

 

「好きだよ沙綾」

 

 

 

急にそんなことを言うのは反則じゃないだろうか。

 

 

 

「……今日は、素直なんですね」

 

「……私が普段、素直じゃないみたいに言うなよ」

 

「事実じゃないですか」

 

 

 

くぐもった声がくすぐったくて笑った。それが不服だったのか朝日先輩は顔を上げて私を見る。

それがキリッとしたかっこいい姿で目が離せない。

 

 

 

「沙綾が好きだって気持ちは全部素直に伝えてきたし」

 

 

 

だからずるいんだって。

まっすぐなそれに私は朝日先輩に抱きついた。きっと真っ赤に染まっているであろう顔を見られたくなくて先輩の胸におでこを押しつける。

 

 

 

「沙綾、顔見せて」

 

「い、嫌です」

 

「なんで?」

 

「絶対顔真っ赤ですから。見せたくないです」

 

「私は見たいんだけどなー」

 

 

 

いくらお願いされたって見せる気はない。

そう決意を固めたのに。

 

 

 

「私は沙綾のこと好きなんだけど、沙綾は私の顔が見たくないんだー」

 

 

 

そんなこと言われたら私の決意が揺らいじゃう。

 

 

 

「ね、沙綾。本当に見ちゃダメ?」

 

 

 

優しい口調に、応えざるを得なかった。

ゆっくりと顔を上げる。ふんわり微笑んだ朝日先輩がそこにいた。

 

 

 

「かわいい」

 

「っ……」

 

 

 

今の私にその言葉は破壊力抜群で顔にもっと熱が集まる。顔を逸らしたくても朝日先輩が両手で抑えているから逸らせない。逸らしたくない。

 

 

どちらともなく唇を重ねた。たった数秒。そうはずなのに幸せが私を満たしていく。

 

 

 

「大好きだよ沙綾」

 

「私もです」

 

「それから誕生日おめでとう。沙綾が生まれてきて、私の隣にいてくれて、私は幸せだよ」

 

「っ……それはずるいですよ」

 

「さぁ、何の話かな」

 

 

 

二人して笑いあって、貴方を離さないと誓って、また唇を重ねて。

こんな日常が永遠に続くことを信じた。

 

 

 

「これからもよろしくお願いします。

朝日先輩のこと大好きです!」

 

 

 

 

 

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