不良少女(仮)   作:茜崎良衣菜

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私はあなたが好き。

 

 

 

 

朝日先輩はいつだって厳しい。沙綾や有咲、りみりんにおたえ、紗夜先輩たちには優しいのに私にかけるのはいつも優しいとは反対に近い。別に話しかけて無視されたりはしないしよく相談に乗ってくれるいい先輩、なんだけど少しくらい優しい言葉をかけてくれてもいいじゃんと思うのが本音。

本人に言ったことは一度もない。それを言っても変わらなさそうだし、そもそも今の師匠と弟子という関係は嫌いではないから。

変わってほしくないから私は今日もいつものように接する。明るく笑顔で先輩の隣でギターを教えてもらう。それ以上の望みはなかった。

 

その関係性を終わらせた(変えた)のは朝日先輩。

私の誕生日の日に見せた真っ赤な顔が忘れられない。

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

「朝日せんぱーい」

 

「んー」

 

「いつまでゲームしてるつもりなんですかー」

 

「もうちょいかな」

 

 

 

今日は私の誕生日前日で、前々から朝日先輩の家でデートの約束をしていた。

紗夜先輩と日菜先輩はそれぞれバンド練習とお仕事があるらしくて私が家に来た時にはもういなかった。

 

朝日先輩と二人きり。そんなドキドキするシチュエーションなのに、朝日先輩はずっとネットゲームばかりやっている。

朝日先輩が外は暑いから室内がいいって言ってたのに。家にいたらいたでゲームしかしていない。私のことを呼んでおいて放っておくなんて酷い話だ。

ずっと朝日先輩の隣に座ってパソコンの画面を覗いているだけだけだから疲れてしまった。話しかければ返事はしてくれるのにどうしてゲームをする手を止めてはくれないのか不思議で仕方ない。

 

 

 

『朝日さん!次はどのクエスト行きますか?』

 

「そうだね。どうしよっか」

 

 

 

そのうえあこと通話しながらゲームをしているのだ。

隣の私には目も向けてくれないのにあことは楽しそうに話している。嫉妬しないわけがなくて。

 

 

こんなにかわいい恋人が隣にいるのに。

そんなことを思って恥ずかしくなった。

 

近づいて、朝日先輩の肩に頭を預ける。朝日先輩の肩が揺れた気がした。

 

 

 

「……構ってほしいの?」

 

「わかってるんじゃないですか……」

 

 

 

ゲームをしていた視線が私に向く。その表情には笑みがあって窓から差す夕日に照らされてキレイで、やられたと思った。

 

 

 

「香澄にしては遅かったな。もっと早く言われると思ってた」

 

 

 

あこに一言謝罪の言葉を告げて朝日先輩は通話を切った。パソコンを閉じて私と向き合う。

ゲームをしていながら通話をしていたのは私を嫉妬させるため。朝日先輩、私を嫉妬させるためにわざとゲームに集中してたんだ。それに気づくのが家に来てから何時間も経った後だなんてあまりにも遅い。やっぱり朝日先輩は私よりも上手だ。

 

 

 

「もうゲームしなくていいんですか?」

 

「嫉妬してるかわいい恋人がいるのに放っておくわけないだろ?」

 

 

 

おいで、なんて言って両手を広げる。それに飛び込んだ。

温かくて、落ち着く。背中に回された手。それが腰に伸びて、引き寄せられる。いつもよりも近すぎる距離に心臓がうるさかった。

 

 

 

「……あさひせんぱいのばか」

 

「ははっ。抱きしめられて最初の言葉がそれかよ」

 

「……私よりもゲームを優先する人はきらいです」

 

「私は香澄のこと好きだけど?」

 

 

 

その言葉に胸が熱くなる。返事の代わりにさっきよりも強い力で抱きつく。

何を思ったのか朝日先輩は私の髪に手を伸ばす。何故か私の髪を解き始めた。不思議に思って顔上げれば優しい顔をした朝日先輩と目が合う。

 

 

 

「やっぱお前、髪下ろしてもかわいいな」

 

 

 

それを笑顔で言うんだからこの人は。顔に熱が集まるのを感じる。思わず目を逸らした。

しかし先輩はそれが嫌だったのか頬に手を当て少し強引に目を合わせさせる。引き込まれそうな澄んだその瞳から目が離せなかった。

 

 

 

「香澄」

 

 

 

段々近づく距離に自然と目を閉じた。触れる柔らかな感覚に幸せを感じる。何度も何度も角度を変えて触れられて、さっきまでのことなんてどうでもよくなっていた。我ながら単純だと思う。

 

 

 

「好きだ」

 

 

 

熱い熱いその視線に、私は今日も溺れていく。

 

 

 

 

♢♢♢

 

 

 

予定になかったお泊り会が開かれたのは次の日をまたぎそうな時間になってから。急いで家に連絡をして寝巻は朝日先輩のものを借りて同じベッドに入った。

明日はお昼からポピパの練習がある。それまではゆっくりできる。

数時間前とは違って朝日先輩は私の話を一から楽しそうに聞いてくれた。それもあってかいつも以上に楽しくて仕方ない。

 

 

 

「朝日先輩、明日練習が終わってからどこかに行きませんか」

 

「行くってどこに?」

 

「うーん……私の家?」

 

「今日と変わらないと思うぞ?」

 

「それでもいいです。だって朝日先輩は外に出たくないんですよね?」

 

「人を引きこもりみたく言うんじゃねぇよ」

 

「違うんですか?」

 

「そう思われてたとか悲しいんだけど」

 

「冗談ですよ」

 

 

 

笑う私。いつもなら呆れているであろう先輩も今日は仕方ないなーと言って甘やかしてくれる。なんだなんだ言って私の誘いに乗ってくれる朝日先輩だけど今日はいつも以上に私に甘いみたいだ。

 

 

 

「あっ……」

 

「朝日先輩?」

 

 

 

声を漏らす朝日先輩に首を傾げる。何かをその瞳に映したようで企んだような笑みを浮かべた。

 

 

 

「香澄」

 

「はい?」

 

「誕生日おめでとう」

 

「ぁ……」

 

 

 

もう、次の日になっていたみたい。楽しい時間が過ぎるのはあっという間だ。そして新たな歳が始まるのもあっという間だった。

スマホが慌ただしく震えだす。多分中身は私宛てのお祝いメッセージ。嬉しかった。だけど返信はすべて明日になると思う。

 

 

 

「一番最初は私がお祝いしたかった」

 

 

 

そんなことを言われてしまったら他のものに目移りなんてできなかった。

嬉しくて幸せで朝日先輩が私の恋人であるという事実を再確認して。

あぁ、こんなに幸せでいいのかな。なんて、柄にもなく思う。

 

 

 

朝日先輩に抱きついて目を閉じる。いつもより安らかに眠れる気がした。

 

 

 

「大好きです……」

 

「……ああ。私も」

 

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