檀黎斗神「Doki Doki Literature Club……?」 作:Just...
まさか、エグゼイドのSSを、ビルドの最終回当日にアップすることになるとは思いませんでした。
病室のベッドの上で、私はパソコンに向かい文字を打つ。
正宗「……まだやっていたのか。いい加減にしないと、体に障るぞ。」
気付けばすっかり日は暮れていた。時間が過ぎるのを忘れるほど熱中していたらしい。
櫻子「ごめんなさい、夢中になっちゃって。なんだか今更になって、貴方たちの気持ちがわかってきたかもしれないわね。」
ゲーム作りなんて私は全くやったことがなかったから、その苦労も楽しさも何も知らなかった。それが、最期の最期でようやく私にもわかってきた。なんだか、嬉しい。
正宗「だが無理はいけない、。とくに今の身体では……」
櫻子「わかってる。でも、残された時間でなんとしてもこれだけは完成させたいの。」
余命宣告を受けて、私はずっと考えていた。あの子に何をしてあげられるか。
あの子はとても優秀で、とても好奇心が強くて、どんどん先へ進んでしまう。
その過程で、あの子は何か大切なものを置き去りにしてしまいそうで。
私の言葉なんてもうあの子には届かない。ただの言葉では、伝わらない。
……でも、ゲームなら。ゲームを通じてなら、あの子にもまだ伝えられることがあるかもしれない。
こんな素人が、周囲に助けられながら作っている拙い作品でも、あの子はきっと向かい合ってくれると信じて。
私は、私のデッドラインと戦い続ける。
――
檀黎斗「檀櫻子は、死に際にこの『DDLC』を制作していた。このゲームの製作者、Dan Salvato というのも、そう考えれば余りにもひねりのないペンネームだ。……が、結局完成する前に、ポッピーピポパポが完全体となり、宿主である彼女は消滅した。だが、感染しながらもゲームを作り続けた結果、彼女の作ったファイルにもバグスターの種が宿り、変異した。それがきみだ。」
モニターの向こうにいるモニカは、私と目を合わせようとしない。
彼女は現在、DDLCから切り離され、独立したプログラムとして私のPCの中にいる。
檀黎斗「”このゲームを完成させなければならない。”そんな檀櫻子の願いは、きみの行動規範として組み込まれ、彼女が死んだ後もこのゲームを作り続けていた。その過程できみの自我は形成され、ドレミファビートのポッピーではない、”DDLCのモニカ”というバグスターが生まれたわけだ。最終的に完成したゲームをきみ自身の手でネット上に公開した。……あくまで状況証拠による仮説だが、異論はあるか?」
モニカ「……別に。私がゲームを完成させた、という記憶はない。貴方の仮説通りなら、多分このゲームが完成された瞬間に、今のモニカという人格も完成したんでしょうね。ゲームを公開したのは確かに私よ。だって、このゲームがプレイされない限り、私は本物の人間には出会えないんですもの。」
自分の正体など最早どうでもいい。彼女の言葉からは、そんな投げやりな思いが感じられた。
檀黎斗「ともかく、きみがバグスターであると判明した以上、私のモルモットとして協力してもらうぞ。」
とにかくモニカの存在を衛生省に嗅ぎ付けられる前に、私で管理しなければならない。
ポッピーには先程の騒動の後、モニカを削除したかのように見せかけ、この件は解決したと思わせておいた。
モニカというイレギュラーな存在の発生が檀櫻子に起因している以上、彼女も深くは追及してきまい。
……が、それでもポッピーが今回の件を衛生省に報告する可能性は想定しておかなければならない。
その為にも、モニカはどこか別の場所に移しておくのが安全だ。
それにはモニカ自身の協力の意思も必要となるのだが……。
モニカ「私のことはもう好きにすればいい。でも、私から貴方に協力することなんてないわ。」
これだ。完全に機嫌を損ねたらしい。
……だが問題はない。彼女の攻略方法はもうわかっている!
檀黎斗「そうか。それは残念だな。私に協力すれば、神の恵みをお前にも分け与えてやろうというのに!」
モニカ「……は?」
私はPCを操作し、あるファイルをモニカに見せつける。
それは、DDLCから取り出して別々に保存した、サヨリ、ナツキ、ユリのデータだ。
檀黎斗「こんな貴重なサンプルをみすみす放棄する手はない。そうだろう?もしきみの影響で彼女たちに予期せぬ不具合が起きてしまうというのなら、先手を打てばいいだけのこと。そう、私の手で作り変えるのさ……彼女たちを、きみと同じ意思ある存在にぃ!」
モニカ「あ、貴方何を言ってるの!?そんなことできるわけ……」
檀黎斗「できるさ、きみのデータさえ分析できればね。もっとも、きみが協力して来ればの話だがね?」
彼女たちをモニカと同じ次元へと引き上げる。そうすればモニカにも何ら不満はないだろう。
モニカ「……そんなことで、私がほいほいとあなたに恭順すると思った?」
檀黎斗「なに?」
モニカ「確かに私だってあの子達と、生きたあの子達と話してみたいって思うわ。でも、貴方に作られた人格は、本当にあの子たちの人格だって言えるのかしら。それに、あの子たち自身がそれを望むかどうか、バグスターという異質な存在として生まれ変わった彼女たちが幸せになれるのかどうかだって、わからないじゃない?」
檀黎斗「異質な存在か。確かに今の社会ではそうだろう。今の倫理ではそうなのだろう。電脳世界で生まれた生命など、未だに一般社会で認められているものではない。だが、それがどうした。社会などいずれ変わる。少数派がいつ多数派になるかもわからない。第一、生命というものはなんだって本人の意思で生まれるものじゃない!生むのはあくまで親の意思さ!それは人間もバグスターも変わらない。肝心なのはその後、どう生きるかだ。そうは思わないか、モニカ?」
モニカ「それって……あなたは、私たちも人間も、同じ命だって言ってるの?」
檀黎斗「そうさ、どこでどのように生まれたかは関係ない。命だ。」
どちらも神に管理される存在である、ということに変わりはない。
モニカ「……そう。そうね。完全に貴方の言葉に納得したわけじゃないけれど。確かに、彼女たちが望むかどうか、なんて私が勝手に推し量って、可能性をつぶしてしまうのもおかしな話ね。」
モニカは口元に手を当て、深く考え込む。
モニカ「わかったわ。協力しましょう。結局私は、ちゃんとした生命として認められたことが嬉しかったし、もっと自分という存在を明確にしたい……そう思ってしまったわ。」
檀黎斗「それでいい。自分の手でゲームを書き換える、なんて行為は決して褒められる行為ではないが……それぐらい我を通してくれた方が、私も観察のし甲斐がある。せいぜい自分の欲望に素直でいたまえ。」
モニカ「いちいち嫌な言い方してくれるわね。」
言葉とは裏腹に、モニカの顔には笑顔が戻っている。
交渉成立だ。
こうして私は、ノベルゲームを通じて奇妙なバグスターと出会い、新たな観察対象を得たのだった。
モニカ「それで?私はどうすればいいの?」
檀黎斗「そうだな。きみという存在を分析するにあたって、まずはその発生原因をより詳しく調べる必要がある。」
モニカ「発生原因……さっきあなたが言ってた仮説ね?」
檀黎斗「そう。バグスターに感染した檀櫻子からきみが生まれた……では、そもそも何故檀櫻子は”ゲームを作ったのか?”……これがわからない限り、謎は解けたとは言えない。」
そう、檀正宗の妻とはいえ、彼女自身はゲーム制作など全くしたことがなかったはずだ。
何故入院してからわざわざそんな真似をしたのか?
モニカ「……えーっと。あなた、それ本気で言ってるの?」
檀黎斗「なに?」
モニカ「そっか、そうね。それがわからない人だから、櫻子さんはわざわざこんなことをしたのよね。はぁ……。」
待て。なぜそんな呆れた顔をしている。まさか。
檀黎斗「きみには、わかっているというのか?この謎の答えが!」
モニカ「ええ、そうね。わかっているといえばまあ、わかってるけど。」
檀黎斗「ならば早く教えるんだ、そうすれば手っ取り早く分析が進められる。」
モニカ「それはダーメ!」
なんだと?
檀黎斗「……さっき、協力するといったはずだが?」
モニカ「それを直接言っちゃダメなのよ。そんなことしたら、櫻子さんの想いが台無しだもの。一応ほら、彼女の願いこそが私の起源なわけだし?」
檀黎斗「……貴様ァ、また随分と生意気な態度を取るじゃないか。」
モニカ「そんなに怒らないで?今は無理でも、ちゃんといつかわからせてあげるから。」
モニカ(そう、櫻子さんが最後にやりたかったこと。それはきっと。
――彼に、人を愛するという気持ちを伝えてあげること。)
モニカ「……やっぱり、ちょっと難しいかもしれないけど。」
檀黎斗「モニカァ!」
――檀黎斗神「Doki Doki Literature Club……?」 END.
数日後、私はPCで新たなプロジェクトを組み上げる。
檀黎斗「……やはりノベルゲームはいい。人間の内面に迫るにはこれ以上ないジャンルだ。単なる綺麗事だけではない、リアルな心理に突き刺さるゲーム。果てしてこれが本当に日の目を見るか、それはまだわからないが……このゲームもまた、傑作となるに違いない!」
着手したばかりのプロジェクトに、私はこうタイトルをつけて保存した。
『マイティノベルX』と。
――GAME IS NEVER ENDING.