『映透君は……今学期、私のクラスに転入して来た、真紅君よ…』
『え………』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー通学路で千聖ちゃんと別れた私は、家に帰って着替えもせずにベッドに横になっている。まだ千聖ちゃんから聞かされた事が、頭の中をグルグルしている。今日は頭をよく使う日だ。
「転入して来た人がいるとは知ってたけど…まさか映透君だったなんて…」
A組の方に行く用事も特に無かったし、千聖ちゃんとは廊下とかで話をしてたから全く気にしてなかった…
「でも、もしクラスに行って映透君に話しかけても、結果は変わらなかっただろうな…それに、真紅…か。どうして名前、変えちゃったんだろう…」
考えていると、スマホが鳴りだした。誰からだろうと思ってスマホを手に取ると、画面には『千聖ちゃん』の文字が。どうしたんだろうと思って受諾ボタンを押す。
「もしもし、千聖ちゃん?どうしたの?」
『彩ちゃん、ごめんなさい。急に。さっきの事なんだけど…語弊があったから訂正しようと思って』
「語弊って?」
「確かに私が見たのは真紅君よ、でも、彼が映透君とは限らないって事』
「じゃあどうしてその真紅って人が映透君だと思ったの?」
千聖ちゃんは少しの間を置いた。何かあるのかと思ったけど、私には何なのか分からなかった。
『……ただ、あなたから聞いた情報と一致していたからよ。だから、彼が映透君と確定するには、まだ早いんじゃないの?』
「そう…なのかな?」
実際、私もそう思う。でも、あんな悲しい顔をさせてしまった罪悪感が、私を急かしてくる。「早く謝れ」って。だから、違う可能性があったとしても、私は目の前にある可能性に賭けたい。
『実を言うとね、彩ちゃん。私が手伝ったのは、判断するためなの』
「判断?」
さっきより少し低いトーンで言う千聖ちゃん。なんだか背中に寒気がした気がする。
『彩ちゃん…あの人は一体何なの?』
「…………てんて」
『…彩ちゃんに対してどんな影響を与える人物なのか。それを決めるために、今日は手伝ったの』
「………それで、どうだったの?」
『まだ確信はしてない。でも…彼は少なからず、あなたに悪影響を与えるわ。もし、真紅君が映透君だったならの話だけどね』
その言葉は、私を何とも言えない気持ちにさせた。映透君はそんな人じゃないって、言いたいのに。私は黙って千聖ちゃんの話を聞く事しか出来なかった。
『……嫌なら思いをさせたなら、謝るわ、ごめんなさい。でも、現に今日のレッスンは普段しないミスをしていたわ』
「………うん」
『…しばらく、気持ちの整理が必要ね。私の方でも、なんとかしてみるわ。それじゃあね、彩ちゃん。おやすみなさい』
「…うん、おやすみ、千聖ちゃん」
耳からスマホを離すと私は、何も考えられなくなった。確かに千聖ちゃんの意見ももっともだ。…これは幼馴染故の一種の贔屓なのかもしれない。勝手に考えて、勝手に決めて、勝手に批判する。長い年月が経ったのだから、何かしら性格が変わっていてもおかしくないのに。昔のままだと期待して、正当化しようとする。最悪だ、最低だ。私が…嫌になる…
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー「ハァッ、ハァッ、ハァッ……クソッ!」
壁を思い切り殴りつける。脆い壁だったのか、拳が当たった場所を中心に円形に割れていた。
「何でだ…!何でだ…!何で俺は逃げ出した!」
狭い通路に声が響き渡り、その場に座り込む。あの時、彩ちゃんから逃げ出した俺は来た道をそのまま戻って脇道の路地裏に入った。長い道のりを走ってきたので、心臓がバクバクと休息を求めようとしてくる。今はその申請を受け入れて暫しの休息を取ることにした。
「はあ…せっかく会えたっていうのに…また、ふりだしか…」
この1週間、いや、小学生の頃からお礼を言おうと思っていたにもかかわらず、俺は昔の名前を聞いただけで逃げ出す始末。このままでは、お礼を言うどころか、話すことすら出来ない。話にならないとは、この事か。
「…とりあえず、家に帰ろう。何もする気が起きねぇ」
そう言って路地裏を出る。その時、殺気を感じた。白いシャツを着た男が、右にいる。俺は、その男を知っている。忘れるわけがない。忌々しいーー
「久しぶりだな…映透」
「もう会いたくねぇんだけどな…兄弟」
ーー俺の希望を潰した、張本人。
まーた新しいキャラですよ、それにオリ。ま、多少はね?
書く気があったらどんどん書けるんだけど、1回書かなかったら書けなくなってく。負の輪廻ですね(?)