もしもロボ子さん(達)とそんな関係だったら   作:バタースコッチ

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貴女が居たから俺は

知らないうちに人を好きになっていた、そんな経験は無いだろうか?

ある程度の人はそういう事もあるだろう。

その人の事を好きになるだけで、普段出来なかった事も出来たりするものだ。

例えば、好きな人が居る学校を受験して、偏差値が高かろうとそこを受かったり。

だが、それでもし好きな人と偶然会ったらどうだろうか?

普通に話す人もいるだろう、びっくりして言葉が出なかったりもあるだろう。

狙ってその学校を受験してるのだから、遅かれ早かれ出会うのは必然である。

なのに…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれ?○○くんだ、ここに入ってたんだね」

 

「あ、あぅ…ロボ子姉…その…」

 

 

このザマである。

彼女はロボ子、周りからはロボ子さんと呼ばれている。

そして俺は彼女の事をロボ子姉と呼んでいる、別に家族という訳でも無い。

ロボ子姉は、従姉だ。

歳の差は3つといったところか、既にロボ子姉は成人している。

噂だと7つ上の彼氏が居るとか、俺は…生まれてから1度もそういうのは居ない。

気弱だし、何かに秀でている訳でも無い。

ただ、ロボ子姉と同じ学校に行きたくて必死に…なっただけだ。

入学してからはずっとクラスで最下位、周りからもバカにされている。

 

 

「○○くん、勉強はどう?ここ結構難しいからさ、また前みたいに」

 

「い、いいよ…ほっといてくれ…!」

 

 

俺はその場から走ってしまった、恥ずかしかった。

ロボ子姉の顔を見るだけでドキドキしてしまう。

その後の講義は頭に入らなかった、ずっと顔は熱いままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

 

誰も居ない部屋に帰る、この学校に行きたいが為に、もとい…ロボ子姉に会いたいが為にあの学校に行き始めた。

だが、既に講義の内容も分からず、教師にさえ自主退学を勧められる始末だ。

俺は何であの学校に行ってるのか…ただ、ロボ子姉と一緒に居たかっただけなのに。

今日学校に行き始めて、初めてロボ子姉に会って、話せるかと思ったらあの体たらく、俺自身情けなくなってきた。

 

 

「もう寝よう」

 

 

俺は夕飯もそこそこに布団に入る。

ただ会いたいからってだけでは…ダメだったのだろうか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、俺は学校をサボってしまった。

単位も危ないが、今日は行きたくなかった。

学校の周りには小さな商店街に、ゲームセンターがある。

一応の娯楽は揃っているらしい。

学校には行かないが、勉強はしないと本当に危ない為、教科書等一式持ってカフェに向かう事にした。

 

 

「アイスコーヒー1つで」

 

 

席につき、勉強を開始する。

が、全然進まない。

どの教科も分からないが、英語は特に分からない。

 

 

「訳が分からねぇ…何だこれ」

 

「そこはね、初めて見た時からあなたの事が好きでした、私と付き合ってくれませんか?だよ」

 

 

声のする方へ顔を向けると、そこにはロボ子姉が居た。

 

 

「ロボ子…姉!?」

 

 

カフェでは静かにしなければいけなかったが、突然の事で大声を上げてしまい店員に注意された。

 

 

「ごめんね、あんまり真剣にやってたからつい。

でもどうしたの?この時間まだ講義とかあったはずだけど?」

 

「ロ、ロボ子姉こそ…何でこんなとこに居るんだよ、そっちこそ講義は良いのかよ?」

 

「ボクはもう単位昨年で殆ど取ってるからね、多少は余裕あるんだ。でも○○くん入ったばかりでしょ?最初のうちにサボると大変だよ?」

 

「お、俺は…別に…ほっといてくれよ」

 

「もぅ、でもそういうとこ可愛いね♪」

 

 

ロボ子姉は俺の頬をつついてくる、嬉しい感情もあるが、恥ずかしいという気持ちが大きくなる。

 

 

「や、やめろよ!」

 

「あっ…」

 

 

ロボ子姉の手を退けようと振り払うと、アイスコーヒーまで倒してしまった。

いや、それだけならまだ良い。

ロボ子姉の洋服にアイスコーヒーがかかってしまった。

 

 

「ご、ごめ…」

 

「あちゃ、大丈夫だよ、熱かったら流石に危なかったけどね、跡が残ったりとかしたらお嫁に行けなくなっちゃうし」

 

 

後半部分は何故かいたずら顔な気がした、俺は「じゃあ俺が嫁に貰う」なんて言いたかったが、そんな事は言えなかった。

 

 

「でもこのままじゃシミになっちゃうか、どうしよう…?」

 

「…こっち」

 

「え?あっちょっと」

 

 

俺は早々に片付け、ロボ子姉の腕を掴み自宅へ向かう。

こうなってしまったのは俺の責任、せめて洗濯くらいはしなきゃいけないと思った。

 

 

「こんなもんしか…無いけど…」

 

「ううん、ありがとう」

 

 

渡したのはジャージ、ファッションに興味無く着れれば何でも良い感覚だったからこんな物しか無かった。

今思えば少しは流行の物買っておけば良かったと後悔している。

 

 

「ほんと、ごめん」

 

「気にしなくていいのに」

 

「…適当に、くつろいでて良いから、俺、向こうに居るから」

 

「あ、○○く」バタン

 

 

ロボ子姉が呼び止めてたが、それを無視してドアを閉める。

ずっと大好きだったロボ子姉が来てるというのに、これである。

ただ単に恥ずかしいだけだが、きっとロボ子姉には冷たい奴と思われてるかもしれない。

 

 

「勉強…しなきゃ…」

 

 

机に向かい、勉強を始める。

カフェではロクに進まなかった為、また1からのやり直しだ。

 

 

「初めて見た時からあなたの事が好きでした、私と付き合ってくれませんか?か…」

 

 

俺がロボ子姉を好きになったのは、別に一目惚れって訳じゃなかった。

ただ、ロボ子姉はずっと優しかった。

ロボ子姉が大好きだった皿を割っちゃった時も、怒らないで「大丈夫?怪我してない?」が最初だったし、その後も「大丈夫、怒ってないよ。怪我無くて良かった」と言うくらいだった。

ロボ子姉が入ってるのを知らずに風呂に入った時も「あれ?一緒に入る?」なんて返ってきたものだ。

 

 

 

 

 

 

いつからだろうか?

俺がロボ子姉に素直になれなくなったのは。

好きって自覚し始めてから、真っ直ぐにロボ子姉の顔を見る事が出来なくなっていた。

 

 

「この気持ちに気付いた時に伝えられたら、良かったのかな」

 

 

机に飾られた写真を、俺は無意識に手に取っていた。

この写真になら、俺は…

 

 

「ロボ子姉、好きだ」

 

 

 

 

 

「ボクが何だって?」

 

「!?」

 

 

振り向くとロボ子姉が居た。

 

 

「な、何勝手に…!」

 

「ずっとノックしたよ?でも反応無いし、鍵開いてたから。ごめん」

 

「い、いや…こっちこそ、ごめん」

 

「あれ?これって昔の写真だね、懐かしいね!」

 

 

ロボ子姉が俺に近寄り、密着する。

既に服は乾燥まで済んでいたらしく、ロボ子姉はカフェで会った服装になっていた。

普通の洗剤を使っていたはずなのに、何故かいい匂いがする。

これが女性特有の何とかなのだろうか…

 

 

「この頃は○○くん可愛かったなぁ、今も可愛いけどね」

 

「男に可愛いは…無いだろ…」

 

「そう?でも可愛いんだもん」

 

「ちょっ!やめ…」

 

 

ロボ子姉は突然抱き着いてきた、柔らかい感触が全身を包み込んでいて、色々危ない。

 

 

「は、離れてくれよ…!」

 

「えへへ〜、恥ずかしがって可愛いなぁ」

 

「とにかく、勉強すんだから出てってくれよ、服も乾いてるみたいだし、これで鍵閉めて、ポストに鍵は返してくれれば良いから」

 

 

今ロボ子姉とずっと居ると、勉強に集中出来ない。

嬉しいのに、素直になれない。

 

 

「分かったよ…洗濯ありがとうね、また学校で」

 

 

ロボ子姉は俺から鍵を受け取り、部屋を出て行った。

出て行ったのに、俺は勉強をする気が起きなかった。

 

 

「くそっ…何で…何で…!」

 

 

どうして本当の事を言えないのか…嬉しかったのに、どうして…

 

 

 

 

 

「○○くん…」

 

 

 

 

 

気が付いたら寝ていた、机に突っ伏していた、日付も変わっていた。

夢の中でも俺はロボ子姉に告白出来なかったみたいだ。

臆病なのか、恥ずかしがり屋なのか、もう俺には分からなくなっていた。

 

 

今日は流石に学校に行った、単位取れないと余計バカにされるから。

でも、学校で俺は不穏な噂を聞いてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ロボ子さんがストーカーに付きまとわれてると…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日の講義も頭に入らなかった、元々最初の段階から分からなかったのだ、今の講義を聞いても分かる訳無い。

それに、今日は余計に頭に入らないと思う、ロボ子姉の事だ。

ロボ子姉にストーカー…有り得ないと思った。

ロボ子姉には彼氏が…居るし。

だが、ロボ子姉が彼氏と一緒に居るところを見た事が無い。

単にロボ子姉の事をあんまり見てないからかもだが。

 

 

今日の講義が全て終わる、やる事も無いので自宅に帰ろうとする。

校門の前で誰かがこちらを見ていた。

ロボ子姉だった。

 

 

「あ、○○くん、あのね?」

 

「なんだよ、ほっといてくれって言ったじゃん」

 

 

俺はまた顔を背けてしまう、後ろめたい事は何も無いのに。

ただロボ子姉の事が、好きなだけなのに。

 

 

「あのね、ちょっと付き合って欲しいんだ」

 

「は…?」

 

 

 

 

 

渋々着いて行った場所は、この前のカフェだった。

それも、一番人目につかない席に誘導された。

 

 

「何でこんなとこに来たんだよ」

 

「うん、あのね…?」

 

 

俺はこの時、ロボ子姉のお願いを聞かなければ良かったと心の底から思った。

それは、俺にとっては…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ボクと、付き合って欲しいんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌週、俺は登校の支度をして玄関のドアを開ける。

そこにはロボ子姉、いや…ロボ子がそこには居た。

 

 

「おはよう、○○くん」

 

「おはよう、ロボ…子…」

 

「何かぎこちないね笑 なるべく早く慣れてね?」

 

「…」

 

 

俺とロボ子は付き合い始めた、いや…付き合うフリを始めたと言った方が正しい。

こうなった経緯は、この前のカフェでのロボ子の発言、付き合って欲しい…だ。

理由を話すと、歳上の彼氏は居なかったらしい。

彼氏は噂が作り出したものだったようだ、それを聞いて俺はどこかほっとしてしまっていた。

そして、もう1つの噂…ストーカーの件、これは本当だったらしい。

俺と学校で会うより前から頻繁にでは無いが、ストーカーの気配を感じていたらしい。

それが俺と会ってからなのか、ストーカーの気配が強くなってきたとの事。

ここ最近何度かストーカーを目撃もしたらしい、だがちゃんとは見れていない、後ろ姿のみだ。

警察に相談した方が良いのだが、聞く耳を持たなかったらしい。

警察は何か起きてからじゃないと大抵動かないというのが本当どうしようも無いと思う。

事件を未然に防ぐのも立派な仕事の内だと思うのだが…

話が逸れた、そして俺に相談を持ちかけたのは、話せる相手が俺しか居なかったらしい。

他の友達も居たが、迷惑をかける事になるからと。

俺には…良いのだろうか…

 

 

「じゃ、行こうか」

 

「あ、うん…!?」

 

 

ロボ子は俺の右腕に抱き着いてきた、柔らかい感触が感じられる。

そして俺の顔も熱くなってきた、嬉しさなのか、恥ずかしさなのか分からない。

 

 

「どうしたの?」

 

「い、いや、何でも、ない」

 

「変な○○くん」

 

 

その後右腕に抱き着かれながら登校した、動きにくかったと同時に、ちょっと幸せでもあった。

だが、これは仮初なのだ、本当に付き合っては、無いのだ。

だからこそ、俺はこの頼みを聞いて良かったのか悩んでいる。

幸せでは…あるのだが…

 

 

昼休みも一緒に食べるようになった、普段は一人で食べているからか、誰かと食べるだけで楽しかった。

流石に「あーん」まではしなかったが…それでも楽しかった。

 

 

下校時は、いつものカフェで勉強会をした、主に俺の。

全体的に点数が低く、このままでは本当に単位が取れなく留年もしくは退学になるレベルだった。

俺自身ロボ子に勉強を教わるのは避けたかったが「付き合ってるフリして貰ってるんだし、それくらいはしてあげたい」だそうだ。

やはり先輩なのか、的確なアドバイスを受けながら最初の方で教わる文法や知識を身に付ける事が出来た。

これを応用すれば今やってる範囲までは何とか追いつくそう、最初は嫌だったのに、今ではこの「付き合ってるフリ」の関係が心地良く感じていた。

そんな日常が1週間続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

1週間経った頃、ロボ子の家にロボ子宛の手紙が届いた。

差出人は不明で、赤い文字で全て書かれていた。

[キミは私のものだ、絶対に他の男にはワタサナイ]と…

とりあえずは警察に相談する材料が増えた為、一応は相談に行った。

が、警察は頼りにならない。

解決までは暫く時間がかかるだろう、それを待っていたらロボ子はずっとストーカーに怯えながら過ごさなければいけない。

好きな人が悲しんだり苦しむ姿を見たい人は、おそらくそんなに多くは無いだろう。

俺は見たくない側だ、だから…

 

 

「ロボ子、今日は別の道で帰らない…?」

 

「どうしたの?急に」

 

「あえて人気の無い道に行く」

 

「え!?そんな事したら」

 

「つけていたらおそらく、襲いに来るかもね、俺を」

 

 

俺は自らを餌にする事にした、ストーカーは俺に対して相当な憎しみを持っているだろう、それを利用する。

警察が解決してくれるならそれが手っ取り早かったが、遅かれ早かれ襲われるなら先に手を打つ。

 

 

「大丈夫、一応厚めの本とかを腹に入れとくから」

 

「でも…」

 

「俺は、ロボ子姉の笑った顔を1日でも早く見たいんだよ」

 

 

この時また俺は、ロボ子の顔を見る事が出来なかった、また背けてしまった。

でも不思議と顔は熱くない、自然に言葉を出せた。

 

 

「○○くん…」

 

「心配しないでくれ、任せて」

 

「…うん、でも無理はしないで?」

 

「あぁ、大丈夫」

 

 

下校時、もう少し暗くなってからの方がストーカーは現れると予想し、ゲームセンターで少しは時間を潰す事にした。

クレーンゲーム、ホッケー、そしてレースゲーム、色々なゲームで遊んだ。

クレーンゲームはお互い結構下手で、ぬいぐるみ1つ取るのに樋口さんが飛ぶくらいまでいってしまった、流石に使い過ぎたと反省だ。

ホッケーは、ロボ子の見た目は意外とおっとりしてるが、反射神経抜群であっさりと負けてしまった、恐るべし…

レースゲームは、アイテムを駆使して相手を蹴散らせるので、俺にもチャンスがあった。

あえてロボ子の後ろにつきアイテムで攻撃する、そして追い抜き勝つ。

ロボ子は納得いかない顔だったが、既に使った金額が金額なだけに抑えてもらった。

 

 

ゲームセンターを出ると外はもう暗く、闇に紛れてストーカーも出やすいくらいになっていた。

今日で決着を付けたい、それだけを頭に残す。

ゲームセンターで浮かれていた頭を切り替える。

 

 

「○○くん」

 

「行こう」

 

 

俺とロボ子はいつもとは違うルートで帰る、街灯も少ない暗い道。

念の為ロボ子には携帯を常に手に持ってもらい、何時でも警察に連絡出来るようにしてもらっている。

狙われるならおそらく俺だ、だが俺は死ぬつもりは無い。

ロボ子には…指一本触れさせない。

 

 

 

 

 

気配を感じる、ストーカーだろうか?

ロボ子に顔を少し向けると顔が青くなっている。

 

 

「ロボ子、もしかして」

 

「…うん、この感じ、間違いないよ」

 

 

ビンゴらしい、その日のうちに出てくるとは思わなかった。

ストーカーを捕まえて、万事解決にするんだ。

 

 

「おい!居るんだろ?分かってんだ、出て来い!」

 

 

普段から強い言葉はあまり使わないようにはしている、俺はそんな柄では無いから。

だがこの場合、強い言葉を使わなければ出てこないだろう。

 

 

「…」

 

「出たな」

 

「え…?何で…?」

 

 

ロボ子はとても驚いた様子だった、まるで信じられないとでも言うかのように。

 

 

「ロボ子さん…何故そのような男を」

 

「帝くん…」

 

「私はずっと貴女の事を」

 

 

ストーカー、もとい帝が近付いてくる、俺はロボ子の前に出て庇う立ち位置になる。

 

 

「お前か…お前がロボ子さんを狂わせたのか…私はずっとロボ子さんの事を見続けていた、入学した時からずっとね。

お前とは年季が違うんだよ、あぁ…ロボ子さん…私の女神…それなのに…ソレナノニ…ソンナオトコハコロシテワタシトイッショニ…」

 

 

ダメだ、コイツとは話しても無駄なようだ。

ロボ子は完全に怯えきっている、脚も震えて動くに動けなさそうだ。

本格的に覚悟を決めなくてはいけなくなった。

 

 

「アァァァァァ!死ねぇぇぇぇぇ!」

 

「くっ!」

 

 

帝はナイフを取り出し襲いかかって来る、俺はゲームセンターで手に入れたぬいぐるみで防御する。

本当ならこんな事には使いたくなかった、折角2人で頑張って手に入れたぬいぐるみなのだ、大切にしたかった。

だがこんな状況ではそんな事も言ってられない、すまないぬいぐるみ…

 

 

「邪魔だァァァァァァ!」

 

 

帝はぬいぐるみごとナイフを捨て、新しいナイフを取り出した。

そして俺目掛けて襲いかかる、手元には防御出来る物は無い、覚悟を決めた。

 

 

「ぐぅ…」

 

「○○くん!」

 

「ヒャハハハハ!死ねぇぇぇ!」

 

 

帝のナイフが俺の腹部に刺さる、厚めの本を入れているはずなのにそれを貫通している。

痛みがジワジワとくる、今すぐにでも倒れたい、だが俺は倒れずに声を上げた。

 

 

「逃げろ!ロボ子!早く!」

 

「○…○くん…!」

 

「逃がさないよ…ロボ子さん…」

 

 

刺したナイフを引き抜かれ、血が飛び散る。

引き抜かれた拍子に身体がよろける、このまま倒れたらどれだけ楽だろうか、それでも倒れる訳にはいかない。

俺が倒れたら、ロボ子に危険が及ぶ。

だから…

 

 

「ぐぁぁぁぁ!お前の相手は俺だぁぁぁ!」

 

「あぁぁぁぁぁ!」

 

 

帝にタックルをし、ナイフを弾く。

動く度に傷が痛むが、何かの分泌物だろうか?痛みが少し感じなくなってきた。

ロボ子との距離もタックルで少し出来た、後は俺が守ってロボ子が通報で、終わりだ。

 

 

「も、もし、もし?いま、スト、おそ…」

 

 

電話出来てるようだがあてに出来そうに無いか…

 

 

「クソ…死ねよ…早く死ねよぉぉぉぉ!!!」

 

 

帝はナイフを振りかざしてくるも動きがどんどん単調になっていく、単調になるにつれて避けやすくなる。

だが、俺はよろけてしまいナイフがまた刺さる。

 

 

「ぐっうぅ…」

 

「死ね!死ね!死ね!」

 

「あっ…あぁ…○○くん…やだ…やだぁぁ!」

 

 

ロボ子の悲痛な叫びが聞こえる、俺はロボ子にそんな顔して欲しくない、そんな声を出して欲しくない。

ただ、笑っていて欲しいんだ…

 

 

「はぁ…はぁ…」

 

「ロボ子…逃げ…ろ…」

 

「う、うぅ…」

 

 

俺はとうとう倒れてしまった、ロボ子はその場で泣いてるだけで、逃げなかった。

俺は逃げて欲しかった、このままだとロボ子にも危険が及ぶ。

そんなのは…嫌だ…

 

 

「さぁ…ロボ子さん…ワタシト…」

 

「ま…ちやがれ…」

 

 

残りの力で帝の足を掴む、今にも力尽きそうな力で。

 

 

「離せ!死に損ないが!」

 

 

掴む手を離される、複数の刺傷から血が溢れてくる、意識も薄くなっていく。

何故か今ロボ子との思い出が頭に浮かんでくる、走馬灯…だろうか…うっすらと声も聞こえる。

 

 

「おい!そこで何をやっている!」

「こちら△△、現場に到着しました、被疑者発見確保します」

 

「クソッ離せ!私は…私は!」

 

「大丈夫ですか!声は聞こえますか!」

 

「○○くん!お願い、目を開けて!ねぇ!」

 

 

あぁ…やっと…来てくれたんだな…これでロボ子姉も…安心する…

心配しないでよロボ子姉、ちょっと疲れたから、寝るだけだから…

 

 

 

 

 

俺の意識はそこで途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こ、こは…」

 

「○○くん?」

 

 

目を向けると、ロボ子姉が涙を浮かべながらこちらを覗いていた。

 

 

「良かった…本当に良かった…!」

 

 

ロボ子姉はそのまま泣きながら俺に抱き着いた。

ただ、身体中あちこち痛い為あまり強くは…

 

 

「痛っ…ロボ子姉、落ち着いて、ちゃんと、生きてる、から」

 

「ご、ごめんね、でも良かったよ…うっ…うぅ…」

 

 

ロボ子姉をあやしてから、俺が寝てた間の事を聞いた。

まず、帝は逮捕された。

ナイフを所持していたし、俺を刺したし、ストーカーの事も追求されるだろう。

俺の状態だが、何ヶ所も刺されていて出血が酷かったそう。

後少し遅かったら手遅れになっていたかもしれないらしい。

ついでにだが、俺の単位は足らなくて既に留年もしくは退学コースらしい。

学校曰く、事件に巻き込まれたのは不幸だったが、普段から頑張っていれば万が一事件に巻き込まれていても単位は足りていた、との事…何も言えなくなってしまう…

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、○○くん」

 

「…?」

 

「本当に、ありがとう」

 

「お礼を言われる事じゃないよ、良かったね、ロボ子姉」

 

 

ロボ子姉はまた泣いてしまう、泣いた顔より、笑った顔が見たい。

俺はロボ子姉が笑っていて欲しいから、協力したんだ。

 

 

「ロボ子姉、泣かないで、笑って?泣いてばかりだと、気持ちが沈んじゃうから」

 

「うん、うん…」

 

 

それから2週間、ロボ子姉はお見舞いに来てくれた。

最初の1週間で、車椅子で動く事が出来るようになり、2週間目で何とか歩けるようになった。

回復がとても早かったらしく、そこから数日後には退院出来た。

学校は退学するつもりだ、ロボ子姉に教わって何とかいけるかと思ったが、単位が足りないし留年する余裕も無い。

それに、フリとはいえロボ子姉と付き合えた。

幸せな経験が出来た、悔いも後悔も無い。

後は、ロボ子姉の幸せを祈るだけで、良い…

 

 

 

 

 

「お世話になりました」

 

 

退学届を出して、学校を後にする。

どこかでバイトでもしようか?

 

 

「○○くん」

 

「ロボ子姉」

 

「行っちゃうの?」

 

「うん、ロボ子姉と会えてから凄い楽しかったよ、ありがとう」

 

 

今ならちゃんと顔を見て話せる、何で今更なんだろうか。

もっと前から、せめて付き合ってるフリの時に顔を見て話せられていたら、まだ良かったのに。

 

 

「帝くんから守ってくれた時の○○くん、かっこよかったよ」

 

「…ありがとう」

 

 

俺は今どんな顔をしてるのだろうか、嬉しいのだろうか、それとも複雑な顔をしてるのだろうか…

ロボ子姉の言葉を、素直に受け取れなくなっている。

 

 

「ボクね」

 

「?」

 

「誕生日、なんだ」

 

「そっか、お誕生日おめでとう、ロボ子姉」

 

「誕生日プレゼント…欲しいなって…」

 

「誕生日プレゼントか」

 

 

困った事になった、誕生日を忘れていたから何もプレゼントなんて用意していない。

 

 

「良いよ、あんまり金無いけど」

 

「ううん、多分ね、お金はかからないと思うんだ」

 

 

助かった、治療費でかなりの金が消えてしまったからプレゼントを買う余裕がそこまで無い。

割と切実だし、生活もあるから死活問題だった。

 

 

「じゃあ、言ってみてよ」

 

「うん、あのね…?

 

 

 

 

 

ボクの彼氏になって欲しいんだ」

 

 

 

 

 

「……はい?」

 

 

誕生日プレゼントで、あまりお金かからないとなると飯奢ってとか、ケーキ食べたいとか、そんなもんかと思ったが…彼氏…?

 

 

「ちょ、ちょっと待ってよ。何で?またフリをするの?」

 

「違うよ、ボクは○○くんが好きなんだ。

もう憶えてないと思うけどね、キミが小さい頃に、ボクと結婚するんだって、何度も言ってくれたんだよ。

ボクはそれが凄い嬉しかった、あまりにも小さい時の話だから、普通は鵜呑みにしないけどね、ボクはしちゃってたよ。

それに、ボクを帝くんから守ってくれてる時の○○くん、本当にかっこよくて、あんな状況だったのにドキドキしてた。

ボクの事を身体を張って、こんなに守ってくれてるんだって。

○○くんが搬送されて眠り続けてる時、ずっと傍に居たいって思った。

流石に面会時間とかもあるから無理だったけどね。

目が覚めてから、少しでも一緒に居たいってなった、○○くんの傍に居ると胸の奥が満たされる感じになる、それでいて胸の奥がキュッて締め付けられる。

これからも、一緒に居たい。ずっとずっと、一緒に居たい。

誕生日だからって、図々しいって分かってる。それでも…」

 

 

ロボ子姉の想いに俺も応えたい、でも俺は…

 

 

「ロボ子姉…俺は…俺は…!」

 

「ううん、ごめんね、こんな事急に言われても困るだけだよね。

今のは忘れて?またね…!」

 

 

ロボ子姉は学校の方へ戻って行く、これでさよならは嫌だ、俺だってロボ子姉の事が好きなのに。

声に出せ、俺…!

ロボ子姉を呼び止めろよ…!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ロボ子姉!!!」

 

「○○…くん…?」

 

「俺もロボ子姉の事大好きだ!本当なら今すぐにでも付き合いたい。でも、今の俺じゃダメなんだ。だから、だから待っててくれ!

どれくらい待たせるか分からない、でもきっと、ロボ子姉と隣を歩くに相応しい人間になるから!だから、だから…!!」

 

「…うん!うん!ボク、待ってるから!ずっと待ってるからね!!」

 

 

 

 

 

この時付き合わなかったのは俺の意地でもあった。

今付き合ったら、確実にロボ子姉にばかり頼ってしまう。

そんなのはダメだ、もっと対等に、並び立ちたい。

だから…頑張るんだ、もっともっと、頑張るんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校を辞め15年、俺は独学で学んだ。

色んな参考書を購入し、片っ端から勉強をしたのが10年。

長い年月ではあったが、苦では無かった。

俺の心には何時もロボ子姉が居る、それだけで頑張れた。

残りの5年でその職に就くための所謂修行…だろうか?の期間だった。

あの学校はある職業の育成校みたいなとこだったから、考えが変わっていなければあるいは…

 

 

「さて、と…とうとうだ、やっと隣を歩く事が出来る、かな」

 

 

俺は目の前の建物のドアを開け、どの部屋に居ても聞こえる声で話した。

 

 

 

 

 

「失礼します!今日からここ[高性能法律事務所]でお世話になります、○○です、よろしくお願い致します!」

 

 

 

 

 

これが俺の、新たな一歩だ。

隣を歩いていけるようになるから、もうちょっとだけ、待ってて…

 

 

 

 

 

「ふふっようこそ、ううん…おかえりなさい、かな…?○○くん、ボクの大好きで、大切な人」

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