Lunatic(旧・春秋零下)   作:四月朔日澪

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ふと夢を見て思いついた。摂氏0℃終わるのか?終わりませんよ~

それでは第一話をどうぞ。


冷たい

垣根の向こうには見慣れた田んぼと山々が見える。見ていても面白くはないが縁側でこうしてアイスバーを食べているので目に入る。

 

「にぃ、アイス溶けてる」

 

小学生の妹が隣で甲斐甲斐しく太ももに滴った溶液を拭いてくれた。少し前ではなかったことだ。それまでの妹の態度というのは「うるせー馬鹿」と言われたり舌打ちされたりと第二反抗期のそれであった。

 

 

あの出来事が起きるまでは

 

その日を境に妹の態度は一変した。事あるごとに俺のそばにいるようになり、出掛けるときにもついてくるようになった。ただアベックのような付き添いとは温度が違う、監視だ。二度とあんな真似をしないように俺を監視する無機質なものだ。

 昼前というのにこの暑さだ。クーラーはあるが飾りと化しており、扇風機で我慢をするしかない。隣にいる妹のこめかみにも汗がにじんでいる。濡烏の長髪が見ていて暑そうだ。見ていると不思議そうに見返してきて目が合う。

 

「?」

 

「あ、いやお昼は冷蔵庫に入ってるって。」

 

反応するわけでもなく垣根に目線を向けアイスを食べていた。うんともすんともいうわけでもなく首を振ったりかしげるわけでもない、そんなやり取りが毎日続いている。一緒にいても寂しいというか虚しいというか...

 

「まりちゃーん」

 

引き戸が開く音が遠くからした。妹の友達のようだ。うちの田舎に小学校は一つしかなく全校生徒は100人にも満たない。なのでこのような田舎では同級生の全員と男女関係なく友達である場合が多い。

 

「いらっしゃい」

 

「宿題持ってきたよ!算数分かんないから教えて」

 

「いいよー私も理科が分からないから教えてー」

 

うん、いいよー。などと先ほどとは打って変わって無邪気に話している。俺の時だけつれない態度なのだ蚊帳の外だ。一緒にいるはずなのに疎外感、寂寥感....なんでこんな気持ちにならなければいけないのか。

 まぁ友達が来たんだ。木原の家にでも行こう、俺も全く宿題が進んでいないからな。

 

俺は手提げバッグに筆箱やら宿題を詰め込んだ。すると妹が近づいてきた。

 

「にぃ、どこ行くの?」

 

「ん?木原の家に」

行くところなんてたかが知れてるだろうと思うが。

 

「なんで?」

「勉強見てもらおうと思って。麻莉たちの邪魔になるだろうし」

「邪魔じゃないよね?みくちゃん」

「うん!」

麻莉は美久ちゃんに同意を求めるように訪ねた。美久ちゃんも無邪気に同意した。

 

「ほら、みくちゃんもそういってるし。それともどうしても行かないといけない理由でもあるの?」

 

なに知れぬ圧迫感が俺を襲う。妹の目は黒く濁っているように見えた。その眼窩には何をとらえているのだろうか。

 

「な.....ないけど」

 

「にぃは私のそばにいないとダメなんだから...

 

あの女ににぃは渡さない...(ボソッ」

 

俺は諦めて二人の傍らで宿題をしていた。繋ぎ留められたが別に勉強を見てもらおうという気もなく刻々と時間は過ぎていく。暇だから読書感想文の本でも読むか。

 

「お昼ごはん食べてから一緒にプールに行こー」

 

「うん!」

 

お昼になり二人はいったん別れた。集落というのは家が密集しており、歩いてすぐのところにいるので行き来は小学生でも楽である。美久ちゃんが帰ると妹は自分の分の昼飯を冷蔵庫から取り出しレンジにかけていた。もちろん俺の分を出してはくれない。別にして欲しいわけではないがついでにやってくれてもいいじゃないかと思う。

 ジャーからご飯をよそいで妹に渡す。会釈だけして温めたおかずに手をつけていた。俺は少し遅れて飯をとった。

 

昼食を終え、妹がプールに行く用意をする。こんな田舎では夏の娯楽など家でゲームをするかプールに行くかくらいである。しかし、家には爺様方がいるので外で遊べと五月蠅いので大抵みんなプールに行く。

 

「にぃ何してるの?行くよ」

麻莉はプールバッグを持って催促した。

 

「え?俺は家にいるよ」

「指導員の仕事は?」

「どうせ誰かいるだろ」

暑いのはごめんである。指導員は俺のような中学生がやることになっている。持ち回りではなく、自発的活動なので必ず行く必要はない。

 

「....いこ?」

麻莉はねだるように言ったが、乗り気にならない。

「んー」

 

優柔不断な態度を取っていると妹はつまらないおもちゃを見るような目で一瞥した後、何も言わず外に出た。取り繕うように行くよ。といったが妹は無視して小学校に向かう。不貞腐れてるのだろう。

 美久ちゃんと合流し、プールに向かう。俺はその前に学校にカギを取りに行った。

 

「こんにちは」

「おー元気にしてるかね」

「校長先生」

職員室に入ると小学校の校長先生がいた。

 

「麻莉ちゃんから話を聞いて心配したが元気そうでよかったよ」

 

「心配をおかけしてしまいすいません。プールのカギを借りに来たのですが」

 

「カギなら桑野くんが持って行ったよ」

 

「瑠奈が来てるのか...ありがとうございます。それでは失礼します。」

 

「あぁ桑野くんにも指導員お願いしますと言っておいて下さい」

 

桑野瑠奈は俺の同級生で弟も麻莉と同級生である。家庭的な性格で木原とは大違いだ。

 

「あ、シンちゃん」

プールサイドへ行くと瑠奈が監視台に座っていた。「代わるよ」といい、交代した。瑠奈は台の下、つまり隣に立っていた。

「すまんな。まかせっきりで」

 

「ううん。どうせ暇だし」

 

「指導員だって暇だろ」

 

「えーそんなことないよ。子供たち見てると元気をもらえるきがするしね」

瑠奈は聖母のようなほほ笑みで返した。

 

「年寄りみたいなことを言うな」

 

「まぁ本当はシンちゃんに会えるからだけど...(ボソッ」

 

「?」

 

小学生たちの声でかき消されて聞こえなかった。そのあと「あ、なんでもないよ」といっていたし大したことではないんだろう。指導員といっても25mプールで溺れるなんてほとんでないので基本暇な仕事である。交替で監視台に上って雑談をしていた。その一方、その様子を遠くから伺う少女がいた。

 

 

 

 

 

 

 

「...........チッ」




ありがとうございました。

夢を見て発案したとは言いましたが見た夢はもっと寂しい気持ちになったというか、妹たち(複数)が全くかまってくれないという悪夢でした...転んでもただは起きぬ四月朔日澪。
摂氏0℃もよろしくお願いします。
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