Lunatic(旧・春秋零下)   作:四月朔日澪

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水面

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「シンちゃん、好きです。付き合って下さい」

 

それは放課後の図書室でのことであった。同級生の瑠奈と委員の仕事をしていたときであった。俺は戸惑った。瑠奈は確かに俺に優しいしクラスでも聖母のような存在だ。でも、付き合う...想像がつかなかった。

 

「少し...少し考えさせてくれないか?」

 

「うん!幾らでも待つよ。」

 

その様子を木原は憎々しく見ていた

 

「.........チッ..シンは私のなのに...抜け駆けなんて許さない...」

 

**************

 

プールに来てから1時間ほどが経ったときだ。

 

「麻莉、もう帰るのか?」

 

麻莉はそっぽを向いて更衣室に向かった。

 

「シンちゃん一緒に帰らないの?」

 

「一緒に帰らないと行けないほど小さくないだろ。もう高学年なんだし」

 

「でも....あ、まーちゃん」

 

麻莉が前に立っていた。不機嫌そうにこっちを見ていた。

 

「にぃ、帰ろ。アイス買いたい」

 

「まだ仕事あるし、お金渡すから...」

 

「こっちは大丈夫だよ。一緒に帰ってあげて」

 

「済まない。今度ちゃんとするから許してくれ」

 

麻莉に引っ張られ、プールサイドを上がった。

 

「...........ほんと邪魔。あいつがいなきゃシンちゃんは...」

 

学校を出ようとしたとき、校門に茶色がかった髪にショートカットの少女がいた。

 

「シン!やっぱりここにいた。今日一緒に勉強するって約束だったじゃない」

 

「あっ木原そんな約束してたっけ?」

 

実際そんな約束はしていない。事実木原はずっと眞一のことを遠くから見ていたのだから。

麻莉が眞一の裾を無言で引っ張る。そして後付けのように「アイスはいいから帰ろ」と言った。麻莉は木原の事が苦手である。何かにつけて眞一と木原がくっつく事を妨害している。

 

「一旦家に帰ってからそっち向かうよ。」

 

「わかった。早く来てよね。わざわざ学校まで出向いたんだから」

 

「そうだ!アイスおごってやるよ。妹も食べたいみたいだし」

 

木原も誘うと麻莉は足早に去ろうとした。

 

「麻莉、アイスはいいのか?」

 

「いらない」

そう言い、麻莉は木原の答えを待たずに帰っていった。

 

「気をつけて帰れよ…それじゃ駄菓子屋によってから木原の家に行こうか」

 

「私もいいや。早く家にいこ」

2人は家に向かった。木原の家は眞一の家とは歩いて10分ほどの所にある。昔からそれぞれの家を行き来していた。

 

「勉強道具何も持ってきてないけどいいのか?」

 

「どうせ勉強なんてする気ないでしょ」

 

木原はゲーム機の電源を入れた。

 

「今日こそはシンに勝つんだから」

 

「ほう。俺に勝とうなんて100年早い」

 

格闘ゲームをここ数年木原とやっている。あまりにも弱いので手加減すると「真剣にやってよね」と怒ってくる。何勝負かしていると木原が口を開いた。

 

「そういえば、なんで私のことは名前で呼ばないの?」

 

「だってそれは...」

 

「同じルナだから?」

 

木原るな、それが彼女の名前だ。桑野瑠奈と同じ名前である。別に意識などしていなかったが桑野の方を「瑠奈」と呼び、木原は「木原」と呼んでいた。

 

「じゃあ、なんで私は苗字なの?ねぇ?」

珍しくつまらない事で詰問してきた。小学生の頃は名前で読んでいたが、今呼ぶのは恥ずかしい。

「...」

 

「理由がないなら私をルナって呼んでよ。くーじゃなくて私を」

 

「別に呼び方なんて...」

 

「関係あるよ!くーのこと名前で呼ぶのはくーがシンのこと好きだから?」

「ちげーよ..」

言い終わる前に木原は核心をついてきた。俺は強く反論できなかった。

 

「それに『あのこと』を忘れたわけじゃないよね?」

「...」

俺と木原は『あのこと』で縛られている。それは決して破ってはならないことだ。

 

「ほら、分かったら呼んでみて?るなって。私のことを」

木原は不敵な笑みを浮かべる。

「る、るな...」

「シン♡」

 

久しぶりに呼ぶ幼馴染の名前はどうも違和感を禁じ得なかった。




クーラー病にかかってしまって更新が遅れたことを謝ります...明日は摂氏0℃の方を更新します
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