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「シンちゃん、好きです。付き合って下さい」
それは放課後の図書室でのことであった。同級生の瑠奈と委員の仕事をしていたときであった。俺は戸惑った。瑠奈は確かに俺に優しいしクラスでも聖母のような存在だ。でも、付き合う...想像がつかなかった。
「少し...少し考えさせてくれないか?」
「うん!幾らでも待つよ。」
その様子を木原は憎々しく見ていた
「.........チッ..シンは私のなのに...抜け駆けなんて許さない...」
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プールに来てから1時間ほどが経ったときだ。
「麻莉、もう帰るのか?」
麻莉はそっぽを向いて更衣室に向かった。
「シンちゃん一緒に帰らないの?」
「一緒に帰らないと行けないほど小さくないだろ。もう高学年なんだし」
「でも....あ、まーちゃん」
麻莉が前に立っていた。不機嫌そうにこっちを見ていた。
「にぃ、帰ろ。アイス買いたい」
「まだ仕事あるし、お金渡すから...」
「こっちは大丈夫だよ。一緒に帰ってあげて」
「済まない。今度ちゃんとするから許してくれ」
麻莉に引っ張られ、プールサイドを上がった。
「...........ほんと邪魔。あいつがいなきゃシンちゃんは...」
学校を出ようとしたとき、校門に茶色がかった髪にショートカットの少女がいた。
「シン!やっぱりここにいた。今日一緒に勉強するって約束だったじゃない」
「あっ木原そんな約束してたっけ?」
実際そんな約束はしていない。事実木原はずっと眞一のことを遠くから見ていたのだから。
麻莉が眞一の裾を無言で引っ張る。そして後付けのように「アイスはいいから帰ろ」と言った。麻莉は木原の事が苦手である。何かにつけて眞一と木原がくっつく事を妨害している。
「一旦家に帰ってからそっち向かうよ。」
「わかった。早く来てよね。わざわざ学校まで出向いたんだから」
「そうだ!アイスおごってやるよ。妹も食べたいみたいだし」
木原も誘うと麻莉は足早に去ろうとした。
「麻莉、アイスはいいのか?」
「いらない」
そう言い、麻莉は木原の答えを待たずに帰っていった。
「気をつけて帰れよ…それじゃ駄菓子屋によってから木原の家に行こうか」
「私もいいや。早く家にいこ」
2人は家に向かった。木原の家は眞一の家とは歩いて10分ほどの所にある。昔からそれぞれの家を行き来していた。
「勉強道具何も持ってきてないけどいいのか?」
「どうせ勉強なんてする気ないでしょ」
木原はゲーム機の電源を入れた。
「今日こそはシンに勝つんだから」
「ほう。俺に勝とうなんて100年早い」
格闘ゲームをここ数年木原とやっている。あまりにも弱いので手加減すると「真剣にやってよね」と怒ってくる。何勝負かしていると木原が口を開いた。
「そういえば、なんで私のことは名前で呼ばないの?」
「だってそれは...」
「同じルナだから?」
木原るな、それが彼女の名前だ。桑野瑠奈と同じ名前である。別に意識などしていなかったが桑野の方を「瑠奈」と呼び、木原は「木原」と呼んでいた。
「じゃあ、なんで私は苗字なの?ねぇ?」
珍しくつまらない事で詰問してきた。小学生の頃は名前で読んでいたが、今呼ぶのは恥ずかしい。
「...」
「理由がないなら私をルナって呼んでよ。くーじゃなくて私を」
「別に呼び方なんて...」
「関係あるよ!くーのこと名前で呼ぶのはくーがシンのこと好きだから?」
「ちげーよ..」
言い終わる前に木原は核心をついてきた。俺は強く反論できなかった。
「それに『あのこと』を忘れたわけじゃないよね?」
「...」
俺と木原は『あのこと』で縛られている。それは決して破ってはならないことだ。
「ほら、分かったら呼んでみて?るなって。私のことを」
木原は不敵な笑みを浮かべる。
「る、るな...」
「シン♡」
久しぶりに呼ぶ幼馴染の名前はどうも違和感を禁じ得なかった。
クーラー病にかかってしまって更新が遅れたことを謝ります...明日は摂氏0℃の方を更新します