Lunatic(旧・春秋零下)   作:四月朔日澪

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摂氏0℃より書きやすかったり...私の田舎がベースだからか


湖面の月

夏休みはまだまだ始まったばかりだ。それを示すのがこのラジオ体操カードである。表裏面とあり、もう幾つ体操をすれば夏休みが終わるかが分かる。

眞一は朝に弱いので朝早いラジオ体操など行きたくないのだが、麻莉に「にぃ、行く」と叩き起こされ眠い目を擦りながら神社の境内に向かう。

 

「おはようシンちゃん、まーちゃん」

 

「おあおう(おはよう)」

 

眞一は生あくびをしながら返した。麻莉も朝なのにクラスの子に元気よく挨拶をする。

 

「おはよう、シン。珍しいわねあんたが早起きするなんて」

木原は朝から元気だった。まぁなんとなくわかる気がするが。

 

「麻莉に叩き起こされたんだよ..」

 

「そんなこと言っちゃダメだよ。まーちゃんもシンちゃんと行きたかったんだよ」

 

「チッ...いいこぶりやがって(ボソッ

 

ふーん、まぁ夏休みなんだしこれを気に健康的な生活をしなさいよ」

 

「勘弁してくれ...低血圧なのに」

「まぁ安心しなって。2学期になったらまた私が起こしに来るから」

夜ふかしはしないのだが、朝は苦手だ。学校があるときはいつも木原に起こしてもらう事が日課になっている。

 

「.......にぃ、はじまる」

 

木原と談笑をしてると麻莉が遮るように手を引っ張って体操場所に誘導した。

 

『今日は栃木県......緑がとても美しく空気がとても美味しいです...』

 

「シンちゃん、ラジオ体操の中継場所にうちの村は来るかな??」

 

「来ないだろ。田舎だし」

 

うちの村は村民合わせて2000人未満である。一番大きな体操場所である総合運動場でも流石に中継になど来ないだろう。

 

「シン!ちゃんとやりなさいよ」

 

木原が突っかかってきた。別に俺が悪いわけじゃないのに

 

『右左3、4大きく腕を振って...〜』

 

腕を振る運動で木原を見る。現在進行で発達中のたわわは大きく揺れている。男子中学生がラジオ体操に行くためにはこれくらいの楽しみがないといけない。

 

「シン!どこ見てんのよ。このヘンタイ!」

 

「バッ...見てねぇよ」

 

「ふんっ」

 

嫌われてしまっただろうか。もう一度木原を見ると、

 

「シン....その、別に怒ってないから..」

 

「るな...そのごめん」

 

「いいよ、シン♡」

 

「シンちゃん、いつからるなのこと名前で呼び始めたの?いつも木原って言ってるのに」

 

瑠奈も木原をるな、と呼んでいる。俺が名前で呼ぶことにとても驚いていた。そりゃそうだよなぁ昨日から呼び始めたんだもの..

 

「ずっと前から呼んでたわよ。ね?シン?」

 

「シン」の言葉の圧が凄かった。別にいつから呼んでてもいいと思うんだが..

 

「う、うん」

 

肯定とも否定ともとれる返事をした。これで嘘はついていない。が、木原は凄く不満そうだった。

 

「そーなんだー。瑠奈とるなで訳わからないねー」

 

瑠奈はあっけらかんに答えた。瑠奈はそういうことには固執しないからな。

 

「.....」

 

木原が無言で体操をしていたのは逆に不気味だった。

ラジオ体操第二までやらされ時刻は6:40だった。NHKニュースが流れるなか、小学生がおじさんにスタンプを押してもらっていた。

 

「シン...終わったら旧校舎まで来て」

 

「ご飯食べ終わってからじゃ...」

 

「すぐ来い」

普段の木原とは違い、殺気立っていた。触らぬ神に祟りなしだ。黙って従おう。

「..分かったよ」

 

「にぃ、帰ろ」

 

「麻莉、先に帰ってて」

 

「いや」

 

「きは...るなと用があるんだ」

 

麻莉はため息をつき、家の方向へと向かった。俺は木原の後をついていき旧校舎の裏に向かった。

旧校舎というのは尋常小学校の跡で神社のすぐそばにある。それらが集まって今ある小学校になったと聞く。

木原は足を止め眞一に立ち向かう。

 

「なんであんな曖昧な返事したの?シン」

 

目が怒っていた。手には地面に落ちていた木の棒を持って。

 

「そ...それは瑠奈に嘘をつきたくなくて」

 

「るなは私でしょ!くーのことを名前で呼ぶなっ」

 

木原は思いっきり棒で俺の頭部を叩いてきた。

 

「痛っ....」

 

「だってくーも言ってたよね?紛らわしいって。じゃあ、私のことをるなって呼ぶんだからくーは桑野でいいよね?」

 

「る...桑野は他意はなかったと思うぞ...別に一緒でも」

 

木原はもう一度木の棒を振り上げた

 

「私が嫌なの!私はシンにとって特別な存在じゃなきゃ...いつもくーと比べられてきた...でもシンは私の良い所を褒めてくれた...だから私だけ見てよ!シン」

 

「やめて!」

 

草かげから麻莉が現れた。木原の目の前に立ちはだかる。

 

「にぃをいじめちゃだめ!....にぃ、帰るよ。」

 

俺は麻莉に手を引かれながら帰路についた。振り向くと木原は泣き崩れていた。

 

「嫌われちゃった.....ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい...

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