麻莉に手を引っ張られるまま家に着いた。母には「どうしたの?そのケガ?」と聞かれたが「ボーっとしてたら木にぶつかって..」といった。麻莉は何か言いたげな目でこちらを見ていたが木原がしたと言わなかったことが不幸中の幸いだ。別に木原のことを怒っていない。ただ...
『嫌われちゃった...』
振り向いたときに見えた木原の姿が脳裏に浮かぶ...
その後、麻莉が手当てをしてくれた。手当てといっても絆創膏を貼ってくれただけだが、それも動物柄のかわいい。こういう柄物はすぐに剥がれやすいのであまり好きではないのだが...
「にぃ、行かないよね...?」
「えっ..」
「木原さんち」
木原の様子を見に行きたかった。このまますれ違ったままいたくない...そんな気持ちを見透かしたように麻莉は行かせたくないのか釘をさす。
「ダメだよ。にぃに酷いことしたんだから」
「....っ」
「ダメったらだめ...行ったら嫌いになる」
「......」
午前中は麻莉と宿題をしていた。木原のことで全く進まない。7月もあと2週間、ワークは終わらせてしまいたいがペラペラと捲ると手をつけていない頁がまだまだある。自由研究もあるのに...
午後、連れて行かれるようにプールに向かった。今日も瑠奈が補助員に来ていた。
「シンちゃんも毎日律儀だね〜...ってどうしたの?そのケガ」
「ははっちょっと打ってな..」
絆創膏の部分を軽く撫でる。瑠奈にも言えずプールを眺めるだけの時間が過ぎていく...
「シンちゃん、浮かない顔して何かあったの?」
「そ、そんな顔してるかな?」
急いで取り繕ったが瑠奈には誤魔化せなかった。
「るなと何かあったの?」
「.....っ、流石に瑠奈には嘘はつけないよな..実は」
木原に殴られたこと、瑠奈の発言によって起きたことを伏せて瑠奈に話した。
「そうなんだ。私のせいでもあるよね...シンちゃん、るなの家に行ってあげて。るなの傷を癒せるのはシンちゃんしかいないから..」
「...でも」
「まーちゃんのことなら安心して?私が送ってくから。それにまーちゃんに嫌われても私がその倍...ううん、その百倍愛してあげるから..」
「../お世辞でも嬉しいよ」
「本当なのにな...(ボソッ」
「え?」
「ほら、るなに家に行ってきて。」
「あぁ、また任せっきりでごめんな。」
「気にしないでよ。また今度私のうちに遊びに来てよ!」
「あぁ!」
眞一はプールを後にし、木原の家まで走った。
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「こんにちはー」
田舎は鍵がかかってない家庭がほとんどである。泥棒は見れば分かるし、在宅率が高いので施錠する必要性がないのだ。ゆえに人の家に上がるときはドアを開けて挨拶をする。
「あら、眞一くん。大きくなったわね」
「るなのお母さんこんにちは。るなはいますか?」
「それがね..朝帰ってきたら泣きながら部屋に入っていってそれから部屋から出てこないのよ」
「そう...ですか。るなの部屋に行ってもいいですか?」
「ええ。ゆっくりしていって」
「ありがとうございます。それではお邪魔します」
木原の部屋は2階あがってそばにある。部屋は重く閉ざされていた。
「...るな」
「.........」
返事はなかった。
「俺、今日のこと怒ってないから....朝すぐに謝りに行きたかったけど遅れてごめん....るなを泣かせちゃって..」
「入って...」
か細い声で木原は手招く。ドアを開ける、鍵はかかっていなかったようだ。
部屋は暗かった。カーテンが閉められていてしかも冷房も入っておらずサウナのような暑さだった。暗闇の中で木原を探していると、突然唇に柔らかい感触がした。
木原が俺にキスをしていた。首に手を回され、胸や脚が触れている。木原の目は焦点があっておらず吸い込まれるような眼だった。
クッチャバッチュヂュヂュ...
口内には塩味がした。木原から流れる汗が肌をつたい唇に寄せられる。肌も汗が滲んでいてベタベタしていた。
プハッ
「これで許してあげる..それと...私も気を起こしてごめん...くーだけがルナって呼ばれるのが許せなかっただけなの..だから嫌いにならないで..」
「嫌いになんかならないよ」
「じゃあ、好き?」
「き、嫌いじゃない..友人としては好きだよ」
言葉を濁した。
「...友達か..汗かいちゃった。シン、お風呂に入ろ」
「は?」