「シン..お風呂入ろ」
「は?」
まだ突然のキスから頭の整理がついてないというのにとんでもないボディブローを食らったような気分だ。
「私、汗でベタベタだからさ...」
「なら、一人で入ればいいじゃないか。俺は帰るよ..」
「待って...帰らないでよ....」
木原は今にも泣きそうな声を出し、帰ろうとする俺の腕を掴んだ..
「........帰らないで」
「はぁ....分かったよ。待ってるから入ってこいよ」
「一緒に入ろうよ着替えはお父さんのがあるし」
「バカっ何言って...」
「何恥ずかしがってんのよ。つい最近まで一緒に入ってたじゃない」
「お前..俺はもう中学生だぞ。女となんて入らねぇよ」
「....」
木原は笑顔から一点真剣な目をした。
「な、なんだよ」
木原は俺に顔を近づけてきた。
「..シン、絆創膏取れかけてる...」
「え?ああ別にいいよ。大した怪我じゃないし」
「ダメだよ。膿んだりしたらどうするのよ..私がやったんだから手当てさせて...
でもぉその前に体をきれいにしないとねっ!」
冷静な口調で話したかと思えば取ってつけたようにいつもの調子に戻った。
「分かった、分かったよ。風呂に入ればいいんだろ、入れば..ったく。でも、お前と一緒はごめんだぜ」
「もう正直じゃないんだから..私は別に気にしないのになぁ...」
木原は見せつけるようにランニング(女性のはノースリーブというのか)の襟を掴んでヒラヒラさせている。雨粒のような汗が流れていてとても興奮した。
「俺が気にするんだよ..ほら下に下りるぞ。お母さん心配してたぞ」
「はーい」
木原は間延びした返事で階段を下りる。
「あら、眞一くんるなを引きずり出してくれたんだ」
階段を下りるとすぐに台所を出てきたのだろう木原の母と出会った。
「はい...」
「お母さん、シンとお風呂に入るからお父さんの服出してあげて」
「おい、誰もお前と入るなんて!」
「お父さんの着替えじゃブカブカじゃないかしら...ちょうどいい男物を探してみるわ」
いや、お母さんまず一緒に入ろうとしてることに何か疑問を持ってください...聞こえてなかったのか?いや、俺は突っ込んだし木原は何気に腕を組んできてるし..
「ほら、シン行こ..」
「ちょっ....るな」
俺は木原と背向かいに着替えていた。狭いというのと先に入らせれば一緒に入らなくて済むと考えて木原が着替えるまで待っていたら「何してるの?シン早く着替えなよ」と言われた。逃れる術は無くなった。
こうなった木原は止められない。とっとと体を洗って上がってしまおう...
チラっと後ろを見ると木原はブラウスを外そうとしていた。肉付きのいい背中と美しい背骨が目に入る。タグを外そうと手を後ろに回していた。
「シンー先に入ってていいよー」
「え?ああ」
見ていたことはバレていないようだ。男の着替えなんてすぐに済むのでノロノロしてるのを待ってると勘違いしたのか..こんなことをしている場合じゃない木原が入ってくる前に上がれる準備をしてしまおう。
俺は入るとすぐに頭を洗った。...あれ?泡立たないなんだこれ....
「何やってんのよシン...それコンディショナーよ」
目を瞑っていてわからないが、木原が入ってきたようだ。声からも呆れ顔をしてるのが容易に思いつく。
コンディショナー?全く聞いたことのないワードだ。ともかくシャンプーではないようだ。
「頭洗ってあげる...嫌とは言わせないよ?」
返事を封殺された。俺は黙って頷いた。
「それにしてもシンとお風呂に入るなんて2年ぶりじゃない?あのときは小学生だったけど」
「あー、そうかも知れない」
昭和な感じだが、しばらく前まで木原の家に風呂を借りていた。木原とは保育所の頃から入っている。
木原はお湯を流し、背中を洗ってくれていた。
「るなにはいつも身体を洗ってもらってたなー麻莉の髪は俺が洗って...」
突然、木原の手が止まった。
「今、麻莉ちゃんの話はどうでもいいでしょ..」
「え?」
木原の姿は分からないが、声のトーンが下がったのは分かった。
「私の前では他の女の話...しないでよ..妹のことでも」
「.....るな?」
「ね?」
風呂場の温度が少し下がった気がした。