ポケモンと生活   作:wisterina

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もとのイラストはこちらです。タイトルはイラスト名と同名です。
https://twitter.com/koike_09/status/911891622887022592?s=21


魔法使いの家

 まだモンスターボールが普及していない古い時代――

 

 

 黒のローブを羽織った子供たちが歩いているのを樹木の影からこっそりと覗いて――けど特徴的な赤のリボンが見えてしまっている女の子がいました。

 女の子はアヤと言います。アヤは目の前を歩いている子供たちと変わらない十歳の女の子です。彼女の特徴はサイドテールに髪を結んでいるナエトルの頭の葉っぱみたいに大きくて赤いリボンが特徴的でした。アヤは目の前の子供たちにあこがれていました。

 あの子供たちは、ポケモン魔法使いなのです。ポケモン魔法使いは、ポケモンにまつわるものを利用して生活に役立てる職業なのです。いわばポケモン魔法使いは昔の自然科学者だったのです。

 けれどもそれを学ぶための学校に入るためには、魔法の基礎を親や雇った先生から学ぶ必要があったのです。けれどもアヤの両親はポケモン魔法使いではなく、家も先生を呼べるほどお金がありませんでした。それでもアヤはポケモン魔法使いにあこがれていたのです。

 ポケモンから採った材料を調合する姿もそうですが、魔法を使って生活を便利にしてみんなに喜ばれる。それを夢見ていたのです。

 そうして子供たちがポケモン魔法使いの学校に入っていくのを見届けるとふぅとため息をついて、片足をぶらぶらさせます。

 

「やっぱり羨ましいなぁ。私もポケモン魔法使いになって本格的に魔法を勉強したいのに、そう思わないモクロー?」

 

 アヤの腕の中にいるモクローはこっくりこっくりと涎を垂らしながら船を漕いで眠っていました。相変わらず呑気なモクローだなと呆れるアヤでした。

 

「ポケモン魔法使いになるためにも、先生から魔法を早く覚えなきゃ」

 

 そう気合を入れますと、アヤは森の奥へ、奥へと進んでいきました。

 

 

 

 今の森の季節は、木々の葉が落葉して実を付ける季節。ポケモンたちは冬に備えてオレンの実やモモンの実を食べて冬に備え、草ポケモンや虫ポケモンは落葉した腐葉土の中で冬を越す準備をしています。

 せっせこせっせこミノムッチが自分の体の蓑の材料である落ち葉を集めているのを邪魔しないように、アヤが眠っているモクローを抱いたまま避けていますと何かを踏んでしまいました。見ると、落ち葉の中に隠れていたキノココの頭の部分をアヤは踏んでいたのです。

 

「ごめんなさいキノココ」

「キノッコ!」

 

 怒ったキノココが頭の先からしびれごなを放ちます。黄色い粉が噴き出して思わずのけぞり、尻餅をついてしまうアヤ。その衝撃で起きたモクローが目の前に近づいてくるしびれごなに気付くと羽をばたばたと仰いでしびれごなをふきばします。

 未だに怒りが収まらないキノココにアヤはあることを思いだします。肩に下げていた黄色のカバンから瓶を二つ取り出して、空いた瓶にモクローの垂れていた涎を入れますと呪文を唱えます。

 

「ズバズバラッタロズロズモックロー」

 

 モクローの涎を入れた瓶から煙があふれてそれをキノココに嗅がせます。するとどうでしょう、キノココの眉間にしわが寄った顔がだんだん穏やかな顔になりました。これは、アヤが昨日ようやく成功したポケモンを宥めさせる魔法なのです。

 

「本当に効いちゃった。やっぱりポケモン魔法って凄いわ。キノココさっきは本当にごめんなさい。お詫びに、先生の家に行ってきのみをあげるからそれで許して。きっと先生も木の実を蓄えていると思うから」

 

 それを聞くとキノココはこっくりとうなずきました。

 

 

 

 ずんずんと森の奥に行きますと、赤黄緑の落ち葉が屋根に積もった木組みのお家が見えてきました。アヤがキノココと共に木の戸を開けて、中に入ると目の前にムウマがぼわんと低い声を上げながら姿を現してきました。

 

「ムゥ~」

「うわぁ!? 相変わらずだねムウマ。先生はいる?」

 

 驚かせることが生きがい、いえポケがいのムウマ。いつも驚かせてくることは知っているのですが、どこからともなく現れるのでアヤは慣れていません。

 そんなムウマがケタケタ笑いながらアヤたちを先生の下へ案内します。

 アヤたちが家の奥へ進むと足元に本が散乱していて、すぐそばには二匹のバチュルが冬の備えに溜めていたきのみを一つ、かりかりと食べていました。そしてその奥の石造りの暖炉の傍で本の整理をしている先生の姿が見えました。先生は黒のローブを羽織り赤い袴のようなものがあり、いかにも魔法使い然としていますが、()()()()()使()()()()()()()()()

 

「マフォクシー先生今日もよろしくお願いします」

 

 アヤがぺこりと先生と呼ばれたマフォクシーにあいさつします。

 マフォクシーは、今はこの家の主ですが、昔のマフォクシーの主でもあった人はもう何年も前にこの世を去っていました。残ったマフォクシーは主が残したポケモン魔法の整理や森のポケモンたちとこの家で交流して過ごしていました。ある日、偶然アヤがこの家に忍び込みポケモン魔法をマフォクシーが知っているとわかると、マフォクシーに教えを乞いました。

 マフォクシーはアヤを歓迎し、アヤにポケモン魔法を教えました。

 さて、アヤが腕の中でまた寝ているモクローを箪笥の上に置くと、横に掛かっていた古びた黒のローブを羽織ります。前の持ち主が子供のころに持っていたもののようで、アヤは気分だけでもと魔法を勉強するときはいつもこれを羽織るのです。そしてカバンを椅子の肩にかけ、ヒトモシが上のランプに火をともして机の周りを明るくし、マフォクシーが用意したポケモン魔法が書かれた本を開きました。

 さあ勉強の始まりなのですが、この勉強というのがとても大変。覚えるのが難しいというのもあるのですが、なにより本に書かれている言葉が読めないのです。この家にある魔法について書かれた本のほとんどが古代ポケモニア文字というかなり古い文字で書かれていて、今の言葉とは全く異なっていてアヤには読めなかったのです。唯一わかっているマフォクシーは人間の言葉がしゃべれません。なので、アヤはマフォクシーの動作や本に描かれている絵を見て理解しようとしているのです。

 マフォクシーが両手を合わせて頬に添える仕草をします。今日やる魔法は、ぐっすりと眠る魔法のようです。材料はこの本の絵面だけでわかる限りは、この家にある材料で十分賄えるようでした。

 アヤは材料が入った引き出し棚から、ブリーの実のドライフルーツにクサイハナのミツのエキスを暖炉の中にある鍋に入れます。

 アヤは置いてあった木の実を食べて傍の籠の中でぐっすりと眠っていたキノココを避難させると、マフォクシーが腕の袖から木の枝でできた杖を取り出すと念力でその先端に火をつけると、つけた火が意志を持っているかのように自ら暖炉に向かって火を灯します。マフォクシーが念力で火を操っているのです。

 赤々と燃える火が、暖炉の中で吊り下げられた鍋を沸かし始めますと、アヤは暖炉の上に置いてあったカラカラの骨を刀で自分の手を切らないように慎重に削り取ると呪文を唱えます。

 

「ブリーブリークサクサクサイハナサイゴニカーラカラ! さあ今日はうまくいって!」

 

 アヤが願いを込めながらカラカラの骨から削り取った骨粉を鍋に入れますと、モクモクと白い煙が湧きたちます。

 これは成功かと期待を膨らますアヤでしたが、だんだん鍋から出てくる煙の色が変わり始めなんだか臭いにおいが漂い始めます。

 

「う、うぇ。クサイハナのミツが出てきちゃってるよ。く、臭い」

 

 食べ物が腐ったようなひどい臭いに思わず倒れてしまったアヤでしたが、あふれ出る臭いは留まることを知らず家の中に充満し始めます。ムウマは大慌てで窓を開き臭いを外に逃がし、さっきまで寝ていたモクローも臭いにおいに気付いて飛び起き両腕の羽で臭いを外に出させます。マフォクシーは念力で火を消し、鍋に蓋をしてこれ以上臭いが充満しないようにさせます。

 

 そしてバチュルたちが倒れたアヤの上に乗ると、弱いでんじはを流してアヤを起こします。

 ビリッとくる感覚に襲われて目を覚ましたアヤ。けどその顔は浮かない様子でした。

 

「はぁ、また失敗だよ。しかも大惨事、材料不足かなぁ」

 

 アヤは魔法が大失敗したことに肩を落とします。

 アヤが折れたリボンを元に戻すと体がゾクリとする恐ろしく冷たいような視線を感じます。その視線を辿った先にあったのは、前の主の肖像画でした。ですが先ほど感じた怖い感じはみじんもなくおかしいなと首をひねります。

 

 

 

 マフォクシーたちが失敗した魔法薬を処分している間、アヤは本のページをめくって、あるページに目を凝らしていました。

 

「諦めたくない、けどこのままじゃ進展しない。やっぱりこれしかないよね、ポケモンの気持ちがわかる魔法」

 

 失敗しても諦めないのが信条のアヤでしたが、やはり本が読めないのと先生の言葉が分らないというのは如何ともしがたいです。

 ページにはポケモン魔法の材料がイラスト付きで描かれ、人とポケモンが言葉を交わしている絵が載っていました。これはきっとポケモンの気持ちがわかる魔法だとアヤは考えていました。以前からこの魔法を試したくてコツコツとこの魔法の材料を集めていました。もしこの魔法ができたら、先生の言葉がわかり魔法も失敗なく、ポケモン魔法を習得できると踏んでいました。

 ムウマのサイコキネシスで鍋に入っていたドロドロの魔法薬がすっかり瓶の中に注ぎ込まれます。すると、さっきの騒動で目が覚めたキノココがトコトコとドアの前に立ちます。どうやら森に戻るようです。アヤは薬を捨てるついでに、キノココを森に送っていこうと考えます。

 

「先生、薬捨てに行ってきます。モクロー、ムウマ、キノココ一緒に行こう」

 

 瓶を片手にもってドアを開けて三匹と一緒に森の中へと行きます。

 マフォクシーがアヤたちを見送り、部屋の片づけを続けようとした時、部屋の中が一瞬まるで冬が来たかのように背筋が凍るほどの寒気が襲われました。

 バチュルたちは身を寄せ合い、ヒトモシの頭の火が小さくなるほどでこれはおかしいとマフォクシーが木の杖を取り出した時には、その嫌な寒気はとうに消えていました。

 

 

 

 森の木々の間に入っていくと、程よく柔らかい腐葉土の地面を見つけました。モクローが試しに足のかぎ爪で地面を掘ると、紅葉のあと落葉して土に食べられた葉が散り、黒土に大小の小石が現れ、どんどん穴が深くなります。ここならキノココも喜び、ごみも捨てやすそうでした。

 

「どう、キノココ? この腐葉土好きかな」

 

 キノココがちょっと腐葉土を嗅ぐとごろりと腐葉土の上に身を転がしました。どうやら喜んでいるようです。

 

「キノッコ!」

「よかった気に入ったみたいね。ポケモンは動きを見ればだいたいは伝わるんだけどなぁ。私ねポケモン魔法って、すぅっとできて当たり前だと思ってきてたの。でも失敗ばかりで」

 

 マフォクシーに教えを乞うているアヤですが、魔法は失敗ばかり。先ほどキノココにかけた魔法はたまたまうまくできた成功した魔法なのです。いつの間にか、失敗をしては薬を地面に捨てるのが日課になっていました。もう失敗した薬の数なんてわからないほどです。

 それを思い出してちょっと顔を伏せたアヤ、それを見てキノココが心配しました。けど、アヤはすぐ顔を上げました。

 

「でもね、実際にやってみたからこんなに難しいんだってわかったの。けど諦めない、だってモクローや先生が一生懸命教えてくれるから、ポケモン魔法使いに私はなりたい。けど、先生はポケモンだから言葉が通じなくて、もしあの魔法が使えたらもっとはかどると思って」

「ムウ、ムーウ」

 

 ムウマがアヤのローブを引っ張ります。どうやら薬を捨てるのに十分な穴が掘れたようです。

 

「ごめんね二人とも、それじゃこの薬を」

 

 すると、風もないのに周りの空気が氷のように冷たく肌にはりつきました。まるでフリーザーが現れたかのように気温が下がりアヤは体を身震いしました。

 

「うぅ、なんだか急に冷えてきちゃったね」

 

 腕を組んで擦り一気に冷えた体を温めようとした時でした。のっそりと目のような角が現れると、一匹のオドシシが木の間から姿を見せます。

 

「オドシシだ。そうだ、オドシシの角の粉がまだ手に入れてないんだった」

 

 アヤは、ポケモンの気持ちがわかる魔法材料にオドシシの角の削った粉が必要だと思い出すと、忍び足でオドシシに近づこうとします。オドシシは群れるポケモン、それが偶然、しかも体格も脚も頑強であるから大人のオドシシであり、これはチャンスとアヤは心の中で飛び跳ねていました。

 

「ドシッ!」

 

 すると、大きな音を出してもいないのにオドシシが逃げてしまいました。アヤがせっかくのチャンスを、と悔しがったときでした。アヤの脚が木の陰に引っ張られて足を滑らせてしまいました。その陰からは、一本の手が伸びてアヤの脚をむんずとつかんでいました。

 そして影がだんだん姿を現します。濃い紫色に黒色を落としたかのように暗いボディーに一対の耳、その目は見ただけで体が凍ってしまうほど赤い半月のような形で爛々とし、にたにたと白い歯を煌めかせていました。

 

「ゲン、ガー」

「ゲ、ゲンガー!?」

 

 アヤが驚くと、ゲンガーはいっそうニタニタしてアヤを影の中に引っ張ります。

 モクローの羽からこのはが舞いゲンガーに突き刺さろうとしますが、ゲンガーの体を突き抜けてしまいます。

 

「た、助けて!」

 

 続いてムウマが首元の赤い珠を光らせると、サイコキネシスが飛び出しゲンガーに襲い掛かります。これにはさすがのゲンガーも警戒したのかアヤの足を離すと影の中に隠れてサイコキネシスをかわしてしまいました。

 

「ムゥ!?」

「いたた、ゲンガーは?」

 

 目を凝らして周りを見渡すものの、ゲンガーの姿はありませんでした。アヤは木の陰に近づかないように日向の方へと足を一歩進めます。サクッと乾燥した枯葉が音を鳴らしますと、アヤの背中が氷を入れられたかのように冷たくなりました。

 

「ゲゲゲ、ゲンガー!!」

 

 ぬうっとアヤの影からゲンガーが現れて後ろにいたムウマとモクローをシャドーパンチで殴り倒してしまいました。ゲンガーを邪魔するポケモンがいなくなり、その魔の手を再びアヤに伸ばします。

 すると、キノココが傍にあった瓶を蹴りますと、瓶が割れて中から液体が漏れて臭いが立ち込めてきました。その瓶のことを知っていたアヤはすぐ口を塞ぎますが、ゲンガーはそれがないか知る由はありません。

 

「ゲ、ゲゲグガ!?」

 

 クサイハナのミツからの鼻を突き刺すような臭いにゲンガーは、思わず鼻を抑え地面にのたうち回ります。この隙を見てモクローとムウマとキノココを抱えて逃げ出そうとしたアヤでしたが、またもやゲンガーが手を伸ばしてアヤの脚をつかもうとします。

 

 すると、一筋の七色の光線がゲンガーの腕に直撃しました。その光線を放った主は、マフォクシーでした。先ほど家で感じた怪しい感じに疑問を抱いたようで、アヤの後を追いかけてきたのです。

 マフォクシーが杖から炎を噴き出しゲンガーにダメージを与えます。さすがにこれにはたまらずゲンガーは森の奥へと逃げていきました。その証拠に先ほどまで感じていた寒気がとうに消えていました。

 

「先生、みんな、ありがとう! キノココもあの失敗作を蹴ってくれたおかげで助かったわ」

 

 キノココにお礼を言うアヤでしたが、どうも様子が違うようでした。首をかしげるアヤを見てキノココは割れて薬がこぼれている瓶の方を向きました。

 

「キノッコ、キノ」

「もしかして、私の魔法が失敗じゃないって言ってくれているの? そうだったいいな」

 

 アヤにはポケモンの言葉が分りませんが、なんとなく理解できた気がしました。

 

 

 

 あの騒動からしばらく経ったあと、アヤたちはくたくたになって先生の家に戻ってきました。

 

「はぁ~よかった。エイパムの涙が一番手ごわかったけど材料は全部集まったし。それじゃあピカチュウ、魔法のお手伝いお願いね。お礼のきのみも忘れていないから」

「ピカチュ」

 

 ピカチュウが親指を立ててわかったというサインを出すと、モクローとムウマが今まで集めてきた材料を机の上に置きます。マフォクシーが鍋の蓋を開けて、身振り手振りで材料を入れる順番を指摘します。

 ついに、ポケモンの気持ちがわかる魔法の材料が集めてこれたのです。あの騒動の後アヤは、この魔法を本気で完成させたいと思っていました。魔法の習得もありますが、なによりあのキノココが言っていたことが本当なのかと、ポケモンの気持ちが知りたいという気持ちが駆り立てました。

 最後の材料を入れ終えるとアヤは深く息を吸い込み呼吸を整え、呪文を唱えます。

 

「ツボツボミルミルジュラジュラルーパラパラニャースデエイエイパムーサイゴニピカチュウピッピカチュウー! ピカチュウ、十万ボルトよ」

 

 そういうと、ピカチュウは鍋に向けて十万ボルトを放つと、鍋から黄色い煙がモクモクと流れ込んできます。アヤはその煙を深く息を吸って取り込みますが、少々吸いすぎたのか咳き込んでしまいます。

 すると、ゴホゴホといっていた咳がだんだんコンコンと可愛らしいものに変わっていくのにアヤはどこか変だなと感じます。

 

「モック、ロー」

「あれ? モクロー? 私いつの間に倒れていたの?」

 

 アヤの目の前にモクローが首を九十度に傾けて()()()()()()()()()()()()。煙を吸い込みすぎて倒れたのかなと考えたのですが、脚の感覚は真っすぐに立っていて変な感じでした。すると、マフォクシー先生がひょいっとアヤの体を持ち上げます。

 ここでアヤは自分の体が何か変だと気づきました。明らかに、マフォクシーの体が大きく見え、自分の体がマフォクシーの腕の中にすっぽりと入るほど小さくなっていたのです。

 マフォクシーが鏡の前に移動すると、そこには顔半分が白の毛で覆われているのが特徴のきつねポケモン、フォッコがマフォクシーの腕の中に抱かれて映っていました。なんと、()()()()()()()()()()()()()()()のです。

 

「う、うそ! 私、フォッコになっちゃったよ!!」

 

 マフォクシーの腕の中でアヤはどうしようどうしようと狼狽えていました。このままフォッコのままでいるのはうれしい反面ちょっと困りました。だって、フォッコのまま家に帰ったら自分がアヤだと両親は気付いてくれませんし、ポケモン魔法使いは人間しかなれません。むしろその材料を提供するポケモンの側に回ってしまったのですからさあ大変。

 すると、マフォクシーが先ほどの本のページを開いてマフォクシーはそのページに指をさしました。

 

「フォクフォク」

「なになに、ポケモンの気持ちがわかる魔法は、しばらくしたら元の姿に戻れるって書いてあるの? あれ!? 私、先生の気持ちわかるようになっている!」

 

 フォッコになっても相変わらず本の文字は読めないままでしたが、マフォクシーが何を言っているのか理解できたのです。よく聞くと、アヤのモクローやキノココや、はたまた声が小さいバチュルたちの鳴き声さえも分かるようになっていたのです。ポケモンになってこそポケモンの気持ちが分かるそういう魔法だったのです。

 アヤはぴょんとマフォクシーの腕の中から飛び降りて机の上に降りますとくるりと一周回って体の向きを先生に向けます。きつね色の尻尾がうれしさを現わして左右に揺れるその動きは、まるで本物のフォッコのようでした。

 

「今なら先生の言葉が分ります! 私にポケモン魔法を教えてください」

「フォウ!」

 

 

 

 自らポケモンになって先生であるマフォクシーの気持ちが理解できるようなり、魔法の勉強が進んだアヤはついに魔法の学校に入ることができ、その後優秀な成績を収めポケモン魔法使いになれました。そしてその功績は、先生であると公言したため、マフォクシーの魔法使いと呼ばれるようなりました。

 その後、何百年の時が経ってポケモン魔法が衰退していく中、アヤの子孫は場所を変えてその脈名を保ち続けて、ポケモン魔法の存続に貢献しました。

 けれども、ポケモンの気持ちがわかる魔法は誰も成功していない魔法として伝わっていました。どうしてでしょう? 実は……

 

「あれ、私ってフォッコだったけ? それとも人間が本当の姿だったけ?」

 

 あれから何度かポケモンの気持ちがわかる魔法を使っていったアヤでしたが、何度も頻繁に使っていくうちに自分がポケモンだったのか人間だったのか思わず忘れてしまうことがありました。これに危機を感じて、何度も使用してはいけない注意書きやその効果を記した注釈を入れ、誰も成功していないという体にして秘匿していました。それほど危険をはらんだ魔法だと気づいていたのです。

 

 ですが、この注意書きや効果が書いたページは後年汚れてしまい見えなくなってしまったのです。

 なのでその子孫がジョウト地方でとあるトレーナーにポケモンの気持ちがわかる魔法を使った時、そのトレーナーがピカチュウになったことに大いに驚いたのです。

 

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