何日か経過しても横須賀基地は荒れるに荒れていた。
サンディエゴ基地に移動し、戦った少女達の言葉に反感を覚える艦船も少なくなかった。
それでも戦っていた艦船は話しを続けた。
「でもさ、でも――」
人間を裏切ったんだよね。
誰が言ったのだろうか。
しかし、それは正しい言葉だ。横須賀はアズールレーン、人間の為に戦う部隊だ。
それをたった1回殺そうとするから殺したというのならそれは間違いだ。
「大丈夫よ。責任を背負えるように『置いてきた』から。」
赤城の言葉で全ての艦船が注目した。
それは、その言葉は、いまこの場に居ない少年を示しているのなら、とても、とても前まで傍に付き歩いていた彼女の発言ではない。
冷酷、まるで露にも見せないそれにZ23が口にする。
「赤城さん、少佐は――!」
「『横須賀基地派遣部隊は統括指揮官の命に背けば自爆コードが転送されるよう強制されていた』それがあの時の私達の理由よ。」
その言葉にZ23が顔を曇らせる。
本当に本当に今、トカゲの尻尾切りが行われているのだ。
「――そうか、連れてこい。ヘタな真似はしなくていい。」
軍曹が左手で握った端末から流れてきた哨戒艦船からの音声に応える。
最も会いたくない相手がやってきた。
東煌艦船にして今やアズールレーンのほぼトップの一人と言って差し支えない人物。
寧海。
彼女はサングラスをかけて全員の聴取をその場で撮った。
誰も寸分狂いなく、先述の赤城の言葉を口にする。
最後の一人、軍曹を除いて。
「なぁ、なんでこんなにも手回しが速い?」
「供述を。」
「なんで横須賀に何の被害もない?」
「供述をと言っているのよ軍曹。」
「寧海、答えろ――」
――一体いつから、レオン・ジーの案を乗っ取った?
その言葉でようやく寧海はサングラスを外した。
その目は赤城と同じくとても冷ややかでくすんだ目をしていた。
「10年前、ヤツが現れたその日に、あんな三文芝居しか打てない役者に世界を任せるわけにはいかなかった。」
だとしても、あの男はセイレーンの一手先回った一つのピースだ。
セイレーンが推し量っているのが『ニンゲン』ならばあの男もその物差しにかけられる。
だからこそ、寧海は操らねばならなかった。
この10年という時間の全てを。
自分の母になってくれた女性を『わざと』隠し、
傷付いた青年に護るようにと頼み、
少年にマイケル・アスキスという男の演説を見せ、
そして、そして、
「ずっと謎だった。なんでアタシを支配しねぇ、甘やかさねぇ、ヌルい矯正しかしねぇのか、それも、あの吐き気のする日常ですら、お前にとっては少佐を操るパーツだったんだな?」
捌け口にされた少女を、ひいては横須賀指揮官全員を『教材』として少年に触れさせることを選んだ。
「そうよ、アナタはそれを人形の赤城への言葉を向けた時に気づいたんでしょうね。」
石ころを拾ってしまった。
そんな悲しい言葉は普通にしていたとしても、どう過酷であっても出てくる言葉ではない。
それはニンゲンに、誰かに、疑似恋愛というカリキュラムの際に同胞から言われたものなのだ。
「マイケルこそが真の石ころだった。でも人形はそれを最後まで後生大事に胸の中にしまっていた。あの少年にはそれしか無いのだから。」
少年はここ重桜、東京で教育を受けていた。
そう、たった一人で。
誰も接することの無い寂しい日々を送って、それでもたった一週間に一度だけ、マイケルの行いを知ることが出来た。
だから疑似恋愛というカリキュラムで他者への接触の際に自分の中にある宝石を他者にも分かってもらおうと少年は願った。
だが、その相手はマスメディアでのマイケルの謂れのないバッシングを直に受け止めていた相手だった。
だからこそ、心は壊れて、何度も石ころと向き合って、でも自分の中にはそれしかないんだと分かった時、やはり少年は石ころを大切にしまい直した。
「そして少年を守る番人というアラスター曹長もまた機能を果たした。守られるという事がとても大きな事だと捉えた人形は、壁にぶち当たる。」
「それが、アタシか……」
暴力を受け過ぎて、暴力でしか会話が出来なくなった虐待の子供に触れさせる事で、哀れみを深く覚えさせた。
それは情愛になり、例え、もう誰も信用していない人間ですら向けるようにと。
「少佐の頑張りは、少佐の最後の作戦は……」
全て、全て、彼の世界を煮詰めたものだ。
帝竜カンパニー製造車輌への対抗車輌による暴走事故の惨状、亜音速の砲弾を打ち返す青年、そして――
どうして、どうして、どうして、あんな風に見せてしまったのだろうか。
アレが無ければ、最上との一戦で勝てる手札は間違いなくアレだけだった。
なのに、あぁ、くそ、こんな、こんな――
「アイツの人生は何の為にあったんだよ……美味しいご飯も、楽しい遊びも、褒められたい心も、何にもない、何にも!」
「企画書に書いてあったでしょう、頭打ちの簡易量産型デバイスと。何かを成せたのならそれだけであの人形は幸せよ。普通なら何にも残らず死ぬのが生命なんだから」
その言葉を聞いて、軍曹はベッドに突っ伏した。
呻き声と啜り泣く音がずっとずっと止まずにいた。
「供述は終了、これより横須賀全艦船は本当の最終決戦をしてもらうわヒトサンマルマルにブリーフィングデータを送る。」
作戦詳細は凄惨なものだった。
それに憤りを覚えて幾ばくかの艦船が吼えた。
「これが!これが!正義の味方のやることか!」
炉心解放型艦船接続式パッケージ――type13
動力路として組み込まれているのは、もう生きているか死んでいるかも不安定なたった独つの生命。
かつてこの基地をまとめ上げた少年の胴体を軸に斥力放射をし続けるだけのマシン。
赤城と接続する事で斥力兵装を構築しセイレーンの存在を消し去るものだ。
レッドアクシズと呼称された人民への救出は先のクレイドル型の戦闘でセイレーンは『捕獲した指揮官の信号』を輻輳させて揺籃を駆動させていた事が判明していた。回収部隊は結成されている。
思えばその為に欠陥のあるマシンと作戦を実行させたのだろう。
『海域』という鍵穴の構造は9割を把握している。指揮官の水増しと無茶な連続稼働が功を奏した。構造全てを的確に破壊し、その機能を完全に破壊し尽くす。
そして中心核、S海域と呼称する地点に横須賀基地全艦船を派遣。その全戦力で赤城と放射マシンの防衛を行う。
その概要に泣き出す艦船もいた。
「どうして泣いているの?」
その様に疑問を投げかける声があった。
飛龍だ。
まるで当たり前のように口に出していることに泣いていた艦船が睨みつける。
「だ、だって、ぼくらを戦わせてた人だよ?」
「飛龍来なさい。」
蒼龍が施した記憶処理は少年との根強い部分まで消し去ってしまった。手を取ったあの時から全てが間違えていた。だからこそ少佐の遺書の内容は飛龍にとって最初の一歩からおかしくなっていた。それを消されてしまった。
疑問にすら抱いていない。
やり過ぎたとは蒼龍は思わない。だが、これは異常を考える者も出てくる。
「姉様?」
「何?」
「ぼく変な事言いましたか?」
廊下を歩きながら言われて姉は、仮面を被る。
笑顔という穏やかな仮面を。
「飛龍、それでも彼をよく思う子はいるの。あんなのでもね気に入ってしまう人はいるのよ。」
平然と嘘をつかれ、飛龍はなるほど。と合点がいく。
いつか、もし、記憶を取り戻したら、妹に口汚く罵られるのだろう。
お前なんか姉じゃないと。
だけれども、勝つのだ。
それを望んだ少年の為にも、この基地で過ごした日々を無駄にしない為にも。
サンディエゴ沖戦闘のメンバーも回復はしている。
特にZ23は問題なく稼働していた。
「近接迎撃戦にフレッチャー級を軸にユニオン駆逐、巡洋艦とレナウンと夕立で形成、中距離戦に鉄血、ロイヤル、重桜駆逐艦で構成、中遠距離に巡洋艦と二航戦を配備、遠距離戦に主戦力と加賀に指揮を、赤城の防衛は問題ありません。サブシステムで仮に寧海型が来ても対応できます。」
全体の指揮を取るのは赤城だ。
その姿に加賀が喜ぶ。姉の誇り高い姿に惚れ惚れする。
やはり、姉様は凄い。
寧海型といわれるセイレーンによる複製型オリジナル寧海は近接戦闘能力は群を抜きん出ているがそれをまるで何とも感じていない。
その姿は誇り高い、誇り高い……
「?」
加賀は次の言葉が出てこなかった。
『私の姉様』という言葉では何かがおかしい、歯車が合わないと、どうしてか想ってしまう。
どうしておかしいのだろうか。
それも分からずに作戦時間は迫っていった。
「レナウンちゃん……」
工作艦ヴェスタルが巡洋戦艦レナウンのバイタルデータを引き出して話しかける。
だがそれを遮るように視線は変えずに答えた。
「リュウコツにヒビが入っているのですね。分かります。あの時の最後の一打は効いた。」
それはこの戦いを最後までこなせるかどうかも危ういほどの傷だと理解していた。
艦船としての必須である斥力の生成、放出、維持も出来るだろうか。
それでも艦船として最後の戦いには赴きたい。
「工作艦としては止めたいわ。でも――」
「戦います。あんな小さな子供が走っていったんです。逃げたくない。きっとそんな気持ちで戦うなと言うのでしょうね。」
目蓋を閉じて黒髪の少年を思い出す。
自分の尊敬した存在に守られて、そして、守った。
「悔しいです。私の全力を概算しても、あの子供の生命が秤に無かったら負けると思われていた。この悔しさで戦います。」
剣を握る手がより強ばる。
もっと強かったなら、もっと力があったなら、悔しい。
あんな弱々しい子供に、守られなくてはいけないのに、何もないのに、守ってあげなくてはいけない子供が生命を差し出すなど、そんなのは――
「恨みますよ少佐。」
もういない少年へ形容し難い表情で少しだけ呪う。
「S海域に到達する順番を間違えないように、接舷は決して無いようにしなさい。自爆されるわよ。」
――赤城、聞こえる?
赤城が指示を出している中、蒼龍から秘匿通信が送られる。
それに何も動じす、続く艦船達への前提する戦術を口にする。
――この場を借りて貴方に言わなくてはならない。ありがとう赤城。
その言葉に思わず頭を振る。
その仕草に伝えられていた艦船が訝しむがすぐに話を持ち直す。
――今大変よね。沢山の指示、それがどういう意味を持つのか。
少年は何も無い。
それは人生というモノが存在していないのだ。
人間は、一つの知覚を大切にする。
それは自覚、無自覚であろうと同じである。
飲み込んだ果実の酸いを、漂う華の香りを、滴る肉の旨味を、俗に言う記憶障害が起きていたとしても、重要な事を厳重にどれだけ覚えていても。
とても小さな取るに足らないようなつまらない出来事を覚えている時があるのだ。
だからこそ、こと戦争においてはそれを重要視または、それそのものを忘れてはならない。
人は、ありとあらゆる状況であろうと感情であろうと財産であろうと戦力であろうと横着する生き物なのだ。
最も戦争において発生する規模は異なれど存在する罪。
親が子により美味しい食べ物を渡そうとする心も、
人が人を支配する歪んだ欲望も、
退廃的な情欲も、
一つの兵器への愛着も、
少年の生き方にそれは許されなかった。
もしそれを行えば、危険因子となりえない。
だからこそ、赤城は力を手にしてようやく分かったのだ。
自分は思われていても、愛されてはいないのだ。
絶大な力であるその結晶は横須賀を守る為に渡されたに過ぎない。
首から上を少年は自らその手ですげ替えたのだ。
――ごめんなさいね。その空っぽの椅子に座らせて。
蒼の兎が泣く。
その椅子は座れもせず佇むことも出来ず、ただただ虚しいだけの周囲には上にいると思われるだけ、本当は地べたよりも低い場所に座っていた。
「各指揮官よりも私の命令を前提に動いて、支援砲撃距離を維持、爆撃雷撃どちらも諸共で来て構わないわ。」
少年がもし戦場に立てていたならば、それを口にしていたのだろう。
その居場所に今赤城はいる。
泥の上に立っているような嫌悪感がある。
そして最後に必要な事を告げる。
「劉、食事を。」
「あぁ、待ってろ。今……」
「私の分は要らないわ。」
ばごん!!
敷き詰められた斥力層に叩き付ける衝撃が響く。
料理人はその目に怒りを、歯は強く食いしばっていた。
「悪いな、流石に殺意が沸いた。」
静かにそう言いながら朱の狐を睨んだ。
それは少年のフリをしているようにも見えて、それは本当に食事を必要としない歪さに対する怒りでもあった。
「そう。悪かったわ。でもねお腹が空かないの、気味が悪い程に何も飢えなくて乾かないの、だからね、他の子にあげてちょうだい。」
「あぁ、わっーた。」
飢えも乾きも本当に何も感じない。
何も感じない心だけがある。
その日も横須賀は料理人の定番メニューが出された。
残った物資で可能な限りそれを小分けにして配られる。
野菜と鶏ガラで出汁を取られた醤油スープのラーメン。
肉厚の叉焼は噛みごたえがあり、塩気のあるスープの後にはまるで果実のような甘さがある。
片方はスープの製作過程でのダシガラの鶏ガラを溶けるまで温め、その味をある野菜に染み込ませる調理法により肉が無いはずなのに肉の風味が止まない炒飯。
最後に鳥の皮を特製の醤油ダレでカリカリに揚げた皮揚げに粗塩を添えて出す。
「『肉』はこれが最後だ。全員に行き渡ったか?」
この3つは毎日、毎日、食べられるメニューであり、品切れが毎日のようにあったメニューだ。
その日誰もがその食事を口にした。
少ない量だったが、塩が、糖が、繊維が、たんぱく質が身体に染み込んでいく。
「お前らも食え。」
劉が差し出した相手は指揮官の三人だった。
それぞれがこのメニューを食べるのは初めてだった。
自分を少しでも強くする為に、
咽頭接触による嫌悪をごまかす為に、
その資格が無いと自覚していた為に、
三人は食べなかった。
「あのガキはこれの概要を聞いた時、目を輝かせてたよ。『塩がある!糖がある!溶けた野菜にお肉がある!戦って疲れてる子や、空腹を満たしたい子を助けてくれる!ありがとうございます!これで少しだけ戦えます!』そう言ってな」
自分の事では無いのに、戦闘において必要な栄養素というものを充分に把握していた。
塩を抜かれた兵士はまるで戦意など無かったかのように無力だ。
糖が抜かれた兵士は最大限の動きを発揮出来ずに簡単に潰れていく。
野菜の摂取を怠れば時間との勝負に簡単に敗北する。
肉を食べなければ疲労の回復を果たせず疲れた身体で戦いに赴かなければならない。
味が濃くなければ満たされない程、戦いとは疲労の沼に沈められることを小さな少年は知っていた。
このメニューは戦い続ける為に作られた食べ物だ。
ある時は将軍を、ある時は兵士を、ある時は鉄砲玉を、ある時は主君を、そして艦船と呼ばれる少女達を戦わせた食べ物だ。
「劉、皮揚げくれ。」
そう言って軍曹は食器も満足に握れない身体を呪いながら揚げ物を口にしようとする。
その言葉にカリカリの皮をフォークで刺し、彼女の口に運んだ。
「……うめぇ。」
外は硬い印象だが、皮そのものはまだ柔らかく染み込んだ醤油が溢れていく。
一つ噛む度に涙が溢れる。補給された塩分はまるで瞳の涙腺バルブが全開になってるように目から溢れていく。
「……うめぇ。」
炒飯は驚く程にさっぱりしている。
味付けは叉焼の肉汁も使われているのだろうか、香ばしい匂いと驚く程に水を必要ともしない適度な油っぽさが腹を強く充たしていく。
「……ふぅ、はぁ。」
麺は卵だろう。スープの味と反対の少し甘みのある麺と塩辛いとも言える醤油が身体を暖かくする。
一口の叉焼もとろけるように噛み切れてそこから甘味が溢れていく。
「……消えた後でアイツが伝えたいもの、少しずつ分かるようになって、情けねぇな。」
例え自分が過酷を強いられても、何も感じない身体であっても、それでも少年は持っていたものを一切れずつ平等に渡そうとしていたのだ。
劉は初めて少年の声を聞いた時女だと思った。
それは幼さや抑揚や話し方から来るものではなく。
その覚悟にも似た態度は、母親だったのだ。
味も分からない、理屈だけしか分からない、出会ってすぐに首の骨を何度か折られているのかが姿勢と重心の配分から見て察せられた。漫然と暴力の中で育っていた子供だが、母親になろうとした。
役に立つか分からない母親だったが、一人を笑顔にするために可能な限りの時間を割いた。
理解されなくて、不気味がられて、それでも親でいようとしたのだ。
欲しいモノを渡して、怪我をしたら充分に休ませて、出来もしない少女の夢を嗤わず、自分のことを何も言わず、特別にして欲しいと願う傲慢さに怒ることなく、ただただ受け入れてきたのだ。
戦わせる、その悪意の裏返しは途方もない哀れみだった。
本当なら自分が戦いたかっただろう。
だが途方もないハンデを覆せるほど強くもない。
だから、だから、せめて食事だけは幸福であって欲しいと可能な限り使える資金を全て使い、それを食事に換えた。
気がつくと泣き出す子がいた。
そのメニューは確かに人気であり、早い者勝ちでもあったが、それでも哨戒、運搬、武装工作、戦闘にこそ活躍出来ない少女達も一週間に一度は口にする事が出来るように少年は手配してくれた。
どの任務においても少女達は少年に労われたことはない。
だが、それは裏を返せば小さな子供が必死になって身銭を切っていたのだ。
「最後のお勤めにアイツが居なくて苦しいかもしれねぇが、居ないぐらいで喚き立てるなよ。お前らはここまで腹括って来たんだから。」
料理人の顔はどこか優しさに溢れていた。
居ないぐらい。そうだ。もう居ない。
だけど、だけれども、彼が何とか繋ぎ止めたモノがまだある。
横須賀も、その未来も。
―スペック確認、ユーザーコード認証、検知不能のシステムと記載不可能のコードを確認。
赤城は自分の身体にセキリュティ検査を通す。
そうすると、やはりというべきほどの力がその中に溢れている。
(柔軟に変化するエネルギー結晶、これだけあるのならば―)
凡そ、それは艦船数億体に匹敵するエネルギー。
これだけの力があるのなら、先の炉心解放型への接続照射とその防衛もまるで『容易い』
(これだけ自由に動かせるとなるならば、『定義付け』が必要ね、となると―)
自分の身体の一部でもあり、体積だけならば半数に匹敵する部位に機能を直結させる。
余りはあるが問題ない。
その分の余剰スペースを残しておいてもなんら問題は無い。
放斥、放熱機能に指向を与え、そこに様々なオプションを加えていく。
拡散、射角、連射、識別、射程、威力、後遺。
その全てをひとつずつ結び合わせ、『力』は今、『暴力』となり、『殺戮』を作る。
これを、こんなものを結んだと少年が見たら何と悲しまれるのだろうか、だが少年はもう居ない。
だからこそ、赤城は暴力のままでいることをやめない。
敵を滅ぼし、何一つとて残さない、残させやしない。
それが今の彼女の在り方だ。