戦後は蒼く、戦時は紅く、戦前は疾く   作:かるませ

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雑に終わらせます。



エピローグ

S海域、そこはセイレーンの海というよりも、どこか見覚えのある海であった。

 

「現着、大気解析―」

 

真っ先に到着したユニオン航空母艦―《ホーネット》が髪飾りにまで小型化された電探装備を起動させ、状況を分析する。

 

「サンプルパターン、マッチング、ここはやっぱり19世紀半ばの北極海域の成分が合致。ただし―」

 

空を見るとその違いが分かる。

今は夜のような暗さをしている。

だが、髪飾りとなった電探目的の装備がスコープ機能を展開して目を覆うと、『現実』に潰されそうになる。

 

星々の明かり等はまるで居心地でも悪いというのだろうか、光源となっているのは恐らく本当の太陽。そう星図との合致はしていない。

 

夜の闇を作っているのは無限にも等しい夥しい量のセイレーンの群れ。

その全てはまだ目を瞑っている。だが、まるでそれは赤子のように眠りを嗜み、その全てが今目を開いた。

 

敵を認識したのだ。

 

その吐き気を催す現実にホーネットの顔色が青くなると、重桜航空母艦―《赤城》が肩を叩く。

 

「大丈夫、アレら全部を相手にする訳じゃない。」

 

そう。その確信があった。

このアズールレーン全軍による電撃作戦は一つの弱点以外は完全に有利となるものである。

全軍による多重戦闘の展開、これによりあの空の半数はそれに割くつもりだろう。

貴重な資産の回収の為に割り振られるのは恐らく駆逐型セイレーン《スカベンジャー》が主となる。

 

だがそちらにはオリジナルと呼ばれる一線を超えた数十名の艦船と現場の叩き上げとも言えるデザイナーズチャイルドが率いる部隊が待っている。

 

何よりも横須賀を含めた各基地から得られたデータで相手が取る戦術ルーチンへの即時対応力は差を大きく開かせるはずだ。

 

そして、その半数がもしこのS海域という海に立ったとしても、赤城にはなんて事はない。

 

空の黒き星々を全て滅ぼすなど、まるで容易い。

 

そう想いながら、背面を魚や豚のように『開き』になった少年とそれの循環効率を底上げするチューブの群れとマシンを見やる。

 

赤城は何も感じず、何も抱かず、その背骨を左手で握り締めた。

 

その瞬間だった。

 

「ギギギャァアギギィッアヤア!!」

 

まるで少年の断末魔でも再現するかのように空の星々は詩とも言えぬ歌を初め出した。

まるで害虫が殺虫スプレーを吹きかけられるように。もがき暴れ、赤城に襲い掛かる。

 

だが、それも4kmという射程に入るまでだ。

蒼の式神、翠の花札、銀の花札が艦載機へと姿を変えて殺到する害虫の体積を数割以上削る。

 

続いてユニオン艦船の対空砲火と標準武装が迎え撃つ。脚、あるいは腕の1本になり力なく落ちて、漆黒の海に浮かぶ。

 

「転位反応!広範囲!一週包囲されてる!」

 

ホーネットの電探装備の呼応に即時通信を開くが問題はない。

 

駆逐、スカベンジャー型と軽巡、チェイサーの群れ。

 

各敵は武装展開するその瞬間だった。

 

「遅せぇよ。」

 

その四肢は薙ぎ払われ、首だけになった個体に反応が取られる。

その瞬間に横須賀軽巡達の肘鉄がセイレーンの心臓を抉り潰していた。

 

薙ぎ払ったのは高雄型四姉妹と言われる重桜重巡部隊。それぞれが集結することなく別れて、初手を潰す形を取っていた。

 

東西南北、あくまで光源と呼ぶ太陽の位置から割り出された配置になるがそれは十二分に機能を果たしていた。

 

「更に転位!反響骨種、データ有り!?これ·····」

 

そうそれは誰もが知っている。

アズールレーン最強の味方。

この戦争を導いた者。

 

その名は―

 

「『寧海型セイレーン』!上空2kmで反応確認!数2200!」

 

その言葉でようやく全員が上を向く。紫電の彼方より紫を基調とした艦船が空を落ちながら構えて今必殺の一撃を放とうと右腕を溜めていた。

 

「トドロケ·····」

 

それに誰もが絶望する。そんな攻撃が来たら勝てる物も勝てない。斥力の嵐そのものを叩き込む技を2200、回避出来たとしても、防衛は、有り得ない。

 

そう、防衛はありない。

 

だが、この瞬間、1人だけ回答は違った。

 

「全機動作凍結、サブ砲塔モジュール九尾、定義付け実行、敵味方識別完了、壱番から漆番斥力装填·····!」

 

壱番、長門極限解放

弐番、陸奥完全再現

Three、ネルソンアクティブ

Four、ロドニーセット

Ⅴ、コロラドムーブ

Ⅵ、メリーランドアクション

Ⅶ、ウェストバージニアレディ

 

赤城だけは『粉砕』あるいは『破壊』を可能としていた。

 

流れるパルスの影響で空気が軋む。

 

―ばごごごごごごん!

 

装弾の圧力で赤城を中心に天が引き裂けるほどの衝撃が渦を巻く。

プラズマの発生かばちりともズドンとも音を立てる。

 

そうして七本の赤城の尻尾は起動した。

 

『BIG G (SEVEN)』

 

何が何が起きたのだろうか、まるで、まるで赤城が2200の寧海を祈り、願い、ただ一言、消えろ。それだけを口にしたかのように宙に居たセイレーン型寧海は塵へと姿を変えた。

 

その正体はビッグ7と呼ばれる16インチ砲を所持した戦略レベルの戦闘力を持つ艦船の斥力統合輻輳放射。

 

いわば、広角最強射撃を『威力も範囲も密度も』7乗にして打ち出したのだ。

 

それは最早大気にすら敵がいる事を許さないように空気中の敵性セイレーンの痕跡は無へと変わった。血は酸素に、肉は素粒子に、証は虚空に。

 

「2200機を、一撃で撃墜·····!」

 

ホーネットの言葉は驚きではない、気づいたのだ。

 

「―全機!」

「動くな!!」

 

ホーネットの叫びをかき消したのは赤城だった。

だが、これは不味い。

横須賀艦隊の縫間に、鐡の鎧達が溢れ返る。

その数は550。

 

「クレイドル型―·····!?」

 

誰かが叫んだ、その化け物の名前を―

混乱と暴力が溢れ、返る、はずだった。

現れた鎧はまるで、まるで、錆びたかのように色褪せて、ボロボロと崩れ出し、灰のように空に舞った。

 

「ホーネット、戦況確認。」

 

赤城の声にホーネットが反応しない。

その状況に何も言えずに居たが、蒼龍からの打診でようやく応答した。

 

「クレイドル型、全機消滅を確認。」

 

大量破壊兵器、或いは、細菌兵器というものが未来にはある。敵をただ苦しめ、のたうち回らせ、足掻く様を笑うかのようなその範囲と威力には別の名がある。

 

禁止兵器。

 

赤城が放ったのは正しくそれだ。

横須賀に登録された純正ユニットだけ装備された艦船以外の存在を許さない。

呼吸よりも鋭く、水よりも侵食し、時間よりも風化させる。

 

斥力弾丸の痕跡だけで数も質もまるで無意味と言わんばかりに要塞の如き怪物を『消滅』させた。

 

だがその反応によってホーネットの近くが一手遅れる。

 

「赤城!!」

 

その叫びはもう遅い。

そしてセイレーンからしても『寧海型はもう遅い』

金髪の碧眼、無機質な目だが、それは横須賀にも配備されたアズールレーン、最強高速巡洋戦艦。

 

『改造レナウン型セイレーン』30機―

 

360度全てを囲うように斬撃の包囲網が敷き詰められる。

殺す。その一手はそれを口にしている。

動いても殺す、守っても殺す、受け止めても殺す、逃げても殺す。

 

だが、それを彼女は笑っていた。

 

「愚かね、セイレーン。星を切り裂くのにお前らはバターナイフを使っているものよ。」

 

ぎぃぃぃん!!!

 

何年経とうが、何回行使しようが、幾つ混ぜ合わせようが、まるで届かない。

 

30の斬撃は赤城の薄皮一枚切り裂く事が出来ない。

 

瞳も、息も、爪も、髪も、まるで別次元の硬度を発揮していた。

 

「潰れろ―!」

 

言葉は力を振り撒くように、彼女を守る斥力の鎧が、まるで急に『惑星が現れた』かのように膨れ上がり、音を絞りながら敵性レナウンの全てをその斥力の嵐で挽き肉に変えた。

 

「すごい·····」

 

誰かが呟いた。まるで、まるで、この一人が全ての戦争を終わらせるような、そんな、そんな·····

 

まるで、それは子供の夢のような兵器だった。

 

どんな戦力も微動だにしない究極無二の存在。

 

加賀は息を呑む。

 

自身ではまるで届かないような、そんな、これは強すぎる。

 

「充填率62%、全機防衛ラインを崩して撤退準備を―」

 

「そんな!赤城さんの防衛は―」

 

「必要あるものかよ。」

 

加賀は赤城を理解した。いや、分かってはいた。

この戦いで赤城を守るという任務は上辺だけだ。

アズールレーンからすれば、赤城を『見張りたい』それだけなのだ。

エンタープライズクラスのセイレーンを瞬殺出来るように調整されたこの重桜航空母艦、否、横須賀最強艦船が人類を滅ぼさないか不安でしょうがないのだ。

横須賀の艦船達は、いざとなれば赤城を諸共で中破以上の損傷を起こす為の爆弾。その程度でしか考えられていない。

 

「全機帰投、姉様が『アレ』を開いたら居場所は無いぞ。」

 

「―そうね、ありがとう加賀。」

 

赤城の意志を代弁する妹に感謝を告げる。

右腕から流れて落ちて行く力に反応して、背骨を露出した少年の残骸は顎を開く。

 

「―アアアぁあぁああああAAaAaaaあアァァア!」

 

美しかった歌声はもう出ない。まるで首を絞められた老人の断末魔の様に恐怖と絶望の色を濃くした叫びが響く。

 

それと同時だった。

 

少年の残骸の目玉が落ちる。落ちて転がり、この海に沈んだ瞬間だった。

 

白い、真っ白な光が続いた。

 

空の太陽が輝き煌めいて、白く見えるように照らすのをまるで海が鏡の様に更に反射させてその白が浮かび上がり、その海を埋め尽くした。

 

「何、これ―」

「斥力の、太陽?」

 

ホーネット、ヘレナはそれを知覚出来た。

真っ白な光を放っているのは全てを、そう、この海に生息するセイレーンという化け物を否定する光。

 

「姉様!もう充分だ!機能を『移して』―」

 

そこで加賀はようやく気づいた。

アズールレーンが、本当に何をしたいのか。

 

「姉様!!」

 

憎しみは、恨みは、遺は消せない。

アズールレーンというUR連合軍隊が少女を愛した人形を兵器にした事を少女は忘れない

絶対に殺しにくる。

女という生き物は度し難く、御し難い。

 

「良いのよ。加賀。これで終わりで。」

 

赤城の通信音声は優しく響いた。

まるでお別れを言うようにもう会えないのだと思うように優しく響いた。

 

「何を言っている!?何で姉様が死ななければならん!?」

 

それは姉を本当に想っていた言葉だった。

だがその反論はあまりにも絶望的だった。

 

「だって」

 

―貴方達が生きている世界なんて嫌だもの。

 

「え?」

 

耳をたった一人、蒼龍以外が疑った。

 

「少佐の優しさを理解しない、頑張りも、苦しみも、お前達は、誰一人だって愛していない。私は、お前達が憎い。少佐を殺したのはお前達だ。横須賀―」

 

その言葉に反論が出来ただろうか、指揮官も、艦船も、言葉が出なかった。

 

「そんな!そんな馬鹿な話があるか!あんなやつ!」

「うるさい!妹ヅラするな!」

「ねえ、さま·····?」

 

通信音声は歯を強く噛むとまるでそれが弦を弾いたかのように溢れ出した。

 

「お前なんか妹じゃない!少佐を蔑ろにして!少佐を分かろうともしないで!お前のせいで少佐は自分を追い込んだんだ!お前が!お前なんか!お前達なんか!勝手にすれば良い!私は少佐と共に死ぬ!お前達は幸せを気取ってろ!悲しみを飾ってろ!」

 

―ぶつん。

 

それは少女の想い。

 

たった独りの少年と生きていたかった。

それだけがあれば幸せだった。

だけども、それでも、少年は少年を選ばずに、少女に世界を託した。

託された世界は少女にとって守る価値もない、いや、地獄そのものだった。

 

失ってようやく悲しみ出す?失ってようやく理解する?失ってようやく気づく?

 

そんな、そんな馬鹿げた話があるものか。

 

歯を食いしばり、腹を括り、子供がおよそすることでは無い仕事を続け、慕う子の愛にすら応えられないのだと理解したその少年を、赤城は、少女は守りたかった。

 

傍に居て、一緒に歩き、微笑んで、空を見て、共に眠り、時に愛を語り合いたかった。

 

でも少年は選んでくれなかった。

 

幸せの形はそれぞれだから。

 

そう言っていたのに。

 

例え一瞬だけでも、愛していてくれたのなら赤城は幸せだったのに。

 

「うぅううぅぅうううぐうううううううう!」

 

赤城の涙が止まらない。少年との思い出が蘇る。

自分が何者なのかを教えて、勇気づけようとしてくれて、味も分からないのだと言い、真っ当な愛が成立しなくて謝罪をし、誰も死なせないと約束して、腕を血に染めてでも二人を案じ、失敗をしたのではないかと恐怖する自分を抱き締め、暴力でしかモノを語れない女に骨を割られ、幾つもの死体を解剖し、強要されたその行為の責任ですら自分を責め、正義の味方になろうとした男を止め、本当に愛したいと思えば、それをまるでくだらないと世界に笑われ、少年の見たくない姿を見て、あぁ、あぁ、

死にたい。

 

こんな、

こんな世界。

 

何がアズールレーンだ。

何が正義の味方だ。

何がセイレーンだ。

 

何も変わらない。

何処も彼処も化け物しかいない。

 

もう嫌だ。

 

戦争を終わりにしたい。

戦争(人生)を。

この世界にいる事を。

 

 

赤城より12km離れた地点で加賀が叫ぶ。

 

「何でだ!何故姉様が死ななければならん!?」

 

その言葉を返したのは男性の指揮官だった。

 

「お前が赤城を失った時、お前は何をした?」

 

その言葉で加賀は顔を歪める。

 

何を?

 

なに、を?

 

な、に、を?

 

し?

 

た?

 

蒼龍の記憶処理で大切な『何かが』消えている。

分からない。だが、それでも、これは『間違っている』はずだ。

 

「なんで、なんで姉様が死ななければならない。死んだ奴の責任だ!姉様はここまで横須賀で·····!」

「おいクソ狐!てめぇそれ以上喋んじゃねぇ!」

 

女性の指揮官が叫ぶ。

彼女もまた、『誰か』を追い詰めた人間だ。

『誰か』はずっと戦っていた。

きっとその心はずっと戦いの中に居た。

 

だからこそ、それだから、その言葉は何よりも強く響いた。

 

「加賀は、間違ってないですよ·····」

 

エル・ヴァーノンは欠損した肉体から血が漏れ出す勢いで怒りを叫ぼうとした。

そんな言葉を言った奴は誰だ。私が殺してやる!

愛宕!高尾!刀を抜け!クビリ殺せ!

 

そう言いたかった。

 

その言葉を口にした者にエルは泣き出していた。

愛宕達の目を通して、エル軍曹は信じられないモノを見た。

 

「加賀は何も間違ってない。死んだ僕が悪いんです。」

 

煉丹という言葉がある。

口にした物が力を発揮し、無限の寿命、或いは力を作るという技術である。

 

加賀はそれを口にした。無自覚に、または無意識に、少年の腕を噛み、その流れる血をほんの1ミリにも満たないが呑んだのだ。

 

加賀の右腕に抱き着くように少年がいた。

 

今にも消えそうで、今にも死にそうなぐらい青ざめた顔で、苦し紛れの笑顔を浮かべて彼は言う。

 

「ごめんね、遅くなって。加賀と想いが『同調』してようやくここに居られるようになったんだ。」

 

「残留、思念―」

 

蒼龍の言葉で、ようやく加賀と飛龍に絡まった記憶の鎖が吹き飛んだ。

 

「少佐、少佐!ぼく!·····ぼく!」

 

飛龍が狂ったように自分が何を言ったのかようやく理解した。苦しめてなんかいない。この人はせめて安らぎがあるようにと誰よりも祈っていたことを思い出して、脚が倒れ、頭を下げた。

 

「あ、ああぁ·····」

 

加賀もまた、少年が何を抱いて戦っていたのかを思い出す。言葉が出ない自分が不甲斐なくてもうどうすれば良いのかも分からなくなっていると少年は微笑む。

 

「二人は悪くないよ。蒼龍も悪くない。僕はずっと自分の首を絞めながら戦っていた。それが赤城を追い詰めた。だからごめん。ここからの戦いは僕への贖罪と赤城を取り戻す。それだけになってしまう。」

 

その小さな頭を下げて頼み込む。

 

「横須賀全機、全指揮官、死んでしまって何だけれど、僕に命を預けてくれませんか?」

 

微笑みは絶やさずに、少年は、自分よりも、少女を選んだ。

その言葉に真っ先に応えたのはエル・ヴァーノンだった。

 

「高雄型四姉妹!頼む!力を貸してくれ!」

 

端末を見る目が涙でぼやけて、四人の瞳もまたぼやけてもなお彼女は叫んだ。

 

「ああ!」

 

「うん!」

 

「やろう!」

 

「頑張ります!」

 

四人の姉妹は応えてくれた。

戦争で痛みの中に居た少女を救ってくれた少年の最後の頼みを聞いてくれた。

 

「駆逐艦部隊、すまん―」

 

アラスター曹長の言葉はZ23に遮られた。

 

「曹長、この命は少佐と赤城さんに拾われました。ならば少佐の為に使うのが筋と取れます。」

 

「ニーミを優位に活動させるなら俺様は外せないな!」

 

「正義の味方の本場を見せてあげる!ビーバーズ!私に力を!」

 

数多くの駆逐艦達が名乗り出た少女に少しでも力を注ぐ。

 

そして、

 

「レナウン。」

 

「はっ、今の有様を見たでしょう?私では赤城に届きませんよ·····」

 

もう自分では届かない場所にいることにレナウンは吐き捨てる。

少年はロイヤル高速巡洋戦艦に頭を下げた。

 

「今の僕なら、君とも繋がれる。赤城に負けて悔しいだろう?」

 

「アナタはいつもそうだ、私の事が嫌いなクセに、私に、あぁ、違う、少佐―」

 

もう形も保てない子供をレナウンは抱きしめた。

 

「子供が戦争なんかするんじゃない。怖かったら逃げていい。辛かったら泣いていいんだ。ずっと、ずっと君は走って、少しぐらい休んでくれ。」

 

「この戦いが終わったら幾らでも休暇はあるよ。」

 

ありがとう。そう言いながら自分の為に泣いてくれる少女に笑顔を作る。

 

そして蒼の狐を見る。

 

「君に相応しい指揮官じゃないけれど、赤城は今『強い』。だから赤城を引き連れて返せるのは加賀、君しかいない。」

 

「わた、わたし、私は、お前を―」

 

「良いんだ。いや、違う、『君が正しかった』。僕は間違いだらけなのにあの子は正しいって言ってくれただけなんだ。だから、間違いを正しに行こう。」

 

背伸びをして加賀の涙を拭う。

 

「泣いてくれて、ううん、赤城に生きて欲しいと願ってくれてありがとう。加賀、君が居てくれて僕は本当に救われた。」

 

右腕にいる少年を抱きしめた。

そこに言葉を作ることは出来なかった。

何もかもがその行為にあった。

 

「ホーネット!ヘレナ!あの太陽のデータを寄越せ!」

 

エルの叫びに膨大なデータの至純と結果を見せる。

 

「ダメ!私達の艤装じゃ、あの太陽の外殻すら壊せない!その前のセキリュティコードに吹き飛ばされる!」

 

斥力太陽を渦巻きながら包み込む嵐の様な流れを知覚する。

だがそれを見ても軍曹は笑っていた。

 

「それなら任せろ!その後だ!」

 

文面が飛び交う―

 

『仮に嵐を消し去れても、外殻余波ごと両断しないと進行ルートは確立しません!』

 

ヘレナからの文章で少年は頷く。

 

「それならレナウンで何とかなる。軍曹行けますか?」

 

「仮に!仮にその両方がなんとか出来ても!」

 

その結末をホーネットは理解した。

まるで神話だ。

地獄や異世界に行ってしまった愛おしい人を連れ戻そうと言うのなら、その地獄を歩めるのか。それが、それが叶うのか。

 

「はっ!教えてやるぜ!鉄血ってのはな折れねぇんだよ!」

 

「その通り!この血の一滴ですら!太陽よりも強く燃える!その魂そのものが私達です!」

 

「ホーネット!赤城の居場所のナビゲートをお願い!私達は多分『前すら』分からなくなる!」

 

屈さぬ心と正義の想いは叫ぶ。

地獄など知るか、取り戻すのは。

 

「皆で連れ帰ろう。横須賀に、帰るんだ―」

 

たった一人、泣きじゃくることすら疲れた少女の腕を引っ張る。

それが、少年が率いる部隊の最後の戦い。

 

 

 

 

この作戦はアズールレーン及び、その後の未来に一切の記述が無い。

だが、この作戦は、どの戦いよりも困難であり、険しく、横須賀基地に所属する全ての軍籍の想いがひとつになった、たったひとつの戦いである。

 

「高雄型四姉妹!ハラァ!リキ入れろぉ!」

 

エル・ヴァーノンが率いる重桜重巡洋艦高雄型、高雄、愛宕、摩耶、鳥海、その4人が天に刀を掲げる。

 

「セイレーンのカス共!テメェらには分かんねーだろうなぁ!この技をかます時は叫ぶのがお約束なんだよ!!」

 

それは自分の師匠の技、だが、もう違う。

彼女にしか使えない技だ。

 

「轟けぇ!!!」

 

四機の重巡洋艦が嵐に左の拳をぶつける。

折れる程の衝撃と圧力、だが、それは違う。

左手は錨の役割を果たしたに過ぎない。

 

「龍!体!」

 

重巡洋艦斬撃モジュール『無外』に斥力を流し込む。

刀身はまるで、まるで、龍の咆哮を上げる。

 

「撃!神!」

 

四機が同時に刀身を差し込む。だが、それも太陽を覆う嵐の前に吹き飛ぶ。

はずだった。

 

粒子化した刀身は斥力を連結させながら、より広範囲に広がった。

嵐を征する様に、それはまるで―

 

「シグマぁぁ!!!」

 

Σという記号のように、龍の顎が音を立てて嵐を噛み砕く。

 

―ばきん!!

 

嵐が鎮まるの同時だった。

レナウンに少年が手を翳す。

 

「VZコード、認証、捕食対象―『全セイレーン』」

 

レナウンの背骨が焼ける。

レナウンが赤城に勝つにはひとつしかない。

喰らう。喰らい続ける。

天に居る物も、海に沈んだ物も、素粒子になった物も、その身に取り込む。

 

だが―

 

(レナウンの耐性レベルが低い!吸収できたとしても除去が―)

 

「どうした!少佐!」

 

懸念は少女の檄に飛ばされた。

笑っていた。これっぽっちか。そう言わんばかりに、要求された事態に笑っていた。

 

「アレを斬るんだろう!?構わない!私が、私を使ってくれ!『指揮官』!!」

 

目が金に光る、髪に蒼が纏わりつく、それでも、レナウンはそこに居た。

自分こそが横須賀最強だと証明する為か?自分こそがロイヤル最強と証明する為か?

 

いいや違う。

 

彼女が彼女で無くなっても構わないのは決めたからだ。

 

少年と同じ速さで、走ろうと。

 

「お前らの全てを!私に変えてやる!赤城!お前は!」

 

剣に光、否、虹、それは虹だ。

淀み、くすんで、滲んで、色褪せた、血と油の灰の虹。

 

「横須賀最強に『相応しくない』!!!」

 

虹の光が振り下ろされ太陽を壊した。

白を潰し、白を汚し、白を、変えた。

 

ぱきん!

 

太陽の5%、だがそれは紛れもなく外殻と中心まで届く程の距離を斬り裂いた。

 

「加賀!もっとしゃがめ!」

 

「手は自由にしてください!」

 

「いざとなったらアナタを投げるわ!」

 

引き裂かれた太陽の中を三機の駆逐達が空母を引き連れた。

 

僅か一秒、進行距離3ノット未満、その瞬間、その現象は起きた。

 

ホワイトアウト、太陽と呼ぶに相応しい自然という暴力に視界という概念が屈した瞬間である。

 

「ホーネット!!」

 

チャールズの叫びにホーネットが背中を押すように言葉を叫ぶ。前に進んでいるのなら叫んでくれ。それを伝えた通りホーネットは叫ぶ。

 

叫び、叫び、叫び、声が―

 

閉ざされた太陽の中で少女達は孤立した。

 

だが、たった一人、分かる者がいた。

 

重桜航空母艦、『一航戦』―加賀。

 

先導しているのが誰か分からない。だけれど、リュウコツを通して頼んだ。

 

投げ飛ばしてくれ。

 

そうたったひとつ。

 

誰の手だろう。

 

太陽の中で宙を舞い、式神達を起動させて身を守る。

どこに居るのか分かる。

こっちだ。

居る。

 

「姉、さま―」

 

中心は穏やかだった。

炉心である少年の背骨を握った姉を見る。

青の狐の片目は太陽の力で潰れた。

青の狐の右腕は焼き裂けている。

青の狐の左腿は骨が溶け出している。

 

「な、なんで―」

 

赤城は狼狽した。

あれだけの力の嵐を、あれだけの力の壁を、あれだけの力の道を、どうやって。

 

「赤城!」

 

加賀の右腕に居る少年の叫びにようやく気づく。

 

「少佐、どうして―」

 

「連れ戻しに来た。」

 

「嫌です!」

 

「僕だって君がこんな所に居たら嫌だ!」

 

「赤城は!死にたいんです!」

 

「嘘を言うな!!!」

 

少年は初めて赤城に怒った。叱るのではなく。

本当に怒りを募らせた。

 

「僕を食って僕に同情しているだけだ!思い出せ赤城!僕達は誰かの上にいて!誰かの下にいる!戦争なんてそんなもんなんだ!」

 

殺した命、活かした命、歩んだ命、巡り、合わせ―

 

戦いの中で生きているだけの命。

 

そこにある違いは、幸か不幸か、ただそれだけでしかない。

 

「姉様、帰ろう。皆が貴女を待っている。」

 

「うるさい·····」

 

「赤城!」

 

「うるさい!うるさい!うるさい!死にたいんだ!死なせてよ!好きな人が居ない世界で!大嫌いなヤツらだらけの世界で!生きる理由なんか·····!」

 

「そんなものあるわけないだろ!」

 

少年が、少年が産まれてきた理由は生命を弄んだ結果だった。

だからこそ、少年は少年が産まれてきた事が憎かった。

誰よりも、誰よりも自分を殺したくて仕方が無くて、そうして自分に絶望していた少年は、世界に挑む男の姿を見た。

不幸を不幸のままにしない。そう決めた男を、少年は誰よりも大切にした。

 

生きる理由なんかどうだっていい。いやそんなものはない。

 

産まれたからには不幸を不幸のままにしない。

 

「何がなんでも君を帰す!それが僕の最後の戦いだ!」

 

「できるものか!私は!そんな『モノ』とは次元が違う!」

 

妹に対しての言葉により少年は怒りを覚える。

この少女の一番のわがままが許せない自分は、やはりこの少女に相応しくなかったのだろう。

だが、それでも。

 

やらねばならない。

 

「加賀、自閉症モードに移行して、タイマーは3分。世界最強を騙る君の姉の頬を引っぱたく!」

 

「わかった!頼んだぞ!」

 

その言葉と同時だった。

 

先の弾幕が展開される。

 

今度は敵も味方も関係ない。

 

滅ぼしてやる。

 

七乗の弾幕を展開する。だが―

 

「!?」

 

少女は少年を、否、加賀を嘗めすぎた。

 

その身を包む様に式神を展開し、そして、音よりも早く『沈んだ』

 

「しまっ―!」

 

それと同時だった。九九式艦爆と九七式艦攻の無慈悲な殺戮が『海から』やって来た。

破片だけでも、それでも構わない。

俯角射撃、正確には対潜射撃等行えるわけが無い。

 

「卑怯者!」

 

そうだよ。

 

そう言わんばかりに零戦が赤城の下腿に刺さり爆発する。

 

「がっ!」

 

損傷と呼べる程ではないが神経を逆撫でするには充分な威力。

だが、それも直ぐに対応される。

副砲モジュールに定義付けした残りの尾に力を宿す。

 

「捌番!玖番!」

 

サウスダコタ承認!

マサチューセッツ認証!

 

「統合!超重力衝撃崩壊弾!!!」

 

それはクレイドル型の広範囲無差別爆撃をより研ぎ澄ましたモノだった。

天に打ち上げ、海に居る加賀を完全に始末する。

その為の弾丸。

 

だが―

 

パシン!

 

海中で受け止める音が響いた。

 

「ハッキングツール、『一航戦』」

 

気づかなかったのだろうか、理解できなくなっていたのだろうか、少年は敵の武装を使う事を是としなかった。

それは敵に中身が暴露された武装であるが故に、それを無力化する事も、また強奪し返す事も可能だと言うことに。

 

その力も少年のもので、そして自分に干渉する骨格である妹がいることに。

 

「弾頭の無力化確認、組成データ、初期化、構成変化、刀身形成―」

 

受け止めた弾丸、否、砲塔のなんと皮肉な事か。

自分を否定した砲塔番号は、奇しくも自分と同じ番号だった。

 

蒼の柄、白の刃、刃紋は無く、その煌めきは正に―

 

「斥力刀『殺生石』全力連動稼働―」

 

海の上を浮かびながら左手で刀を持つ。

左手の剣。邪道、外道の剣筋、それでも、それだとしても、

 

「あ、あああ、ああああああ!」

 

赤城が狂ったように叫び声を上げる。自分が詰みの一手を渡した事に何よりも恐怖した。

 

弾幕が展開する。

邪道が王道をこれでもかと斬り裂いた。

払い、斬り、裂き、砕き、吹き飛ばし、貫く。

 

「いやだ!いやだ!」

 

幾つぶつけても斬り裂かれる。

 

突き進む。彼女の為じゃない。加賀の為じゃない。横須賀の為じゃない、ましてや世界の為なんかじゃない。

 

少年の為に、少年は赤城の左腕を斬り裂いた。

 

「いやぁああああああ!」

 

繋ぎ合わせようと狂ったように左腕をぶつける前に立ち塞がれた。

 

ぱちん。

 

小さな衝撃が頬を伝う。

 

「生きてよ、赤城。」

 

「·····いやです!」

 

「そんなに嫌かい?」

 

「少佐は!何も分かってない!赤城は!」「自分こそが許せないんだろう?」

 

そうだ。本当に許せないのは、本当に少年を追い詰めたのは、本当のセイレーンは

 

赤城だ。

 

妹に口にした言葉は、自分に向けたかった言葉だ。だけど、それを言えば、皆が止めに来てしまう。

 

死ぬのなら一人がいい。

 

独りで少年を分かった気になった自分だけが灰になればいい。

 

そう思っていた。

 

「悪役のフリなんかするなよ。君は演技派なんだからさ、皆驚いちゃうよ。」

 

少年は少し寂しそうに微笑んだ。

 

「こんな女に何の価値があるというのですか、愛した人を食らって、ならせめて、化け物は化け物らしく―」

 

その言葉に首を振って否定をする。

 

「化け物なんかじゃない。」

 

そうだ。化け物なんかじゃない。彼女は―

 

「僕のお嫁さんだ―」

 

その言葉を言うべきなのを少年は死んでから理解した。

 

「お婿さんはお嫁さんに死んで欲しいなんて思わない。どうか生きて、生き抜いて、隣に居られないのが悔しいぐらいに君が美しい事を信じたいんだ。」

 

「ふ、ふ、ぅぅうううっ。」

 

「ごめんね。伝える言葉を間違えて。どうか生き抜いて欲しい。加賀と仲が悪くてもいい、皆と一緒じゃなくてもいいよ。でも君だけの幸せを見つけて、僕が悔しくなるぐらい幸せになっておくれ。」

 

加賀の右腕を伝って少年は赤城の服を引っ張る。

 

「愛しています。赤城。君が僕を愛してくれなくても僕は愛し続けます。この太陽に負けない程にと。」

 

彼女の唇を奪った。

もう大好きで仕方が無くて、壊れる程愛おしくて、溢れかえる愛があることに気づいた少年は確信を得た。

 

「君や世界と違っていても、これは僕の愛なんだ。君のそばにいられなくても君に幸せになって欲しい。その為なら僕は、死ぬ事も、戦う事も、もう一度死ぬ事も怖くなんかない。」

 

本心だった。本当に愛している。

モノや肉欲や情愛じゃなくて、ただ、彼女が青空の下に居てくれる。それが誰よりも嬉しい。

 

「加賀を連れて行ってくれ。バイパスすらグチャグチャにしてしまった。」

 

「少佐、少佐は良いのですか、ひとりぼっちで、悲しくは―」

 

「それ、言われると思ってた。でもさ、僕の中の答えはブレないよ。僕は―」

 

男の子だから。

 

そんなちっぽけな理由でも、女の子に酷い目にあって欲しくない、悲しい気持ちよりも笑顔でいて欲しい、沢山の赤城の幸せを願う理由がそこにあった。

 

「生きろ。生きて、泣いて、苦しんで、その何倍もの幸せを掴む為に頑張れ、赤城。」

 

「赤城は、赤城は幸せ者です。皆に思われて、少佐に想われて、ごめんなさい少佐―」

 

アナタを守れなくて。

 

朧気な少年の亡霊が自身の背骨を握り締める。

斥力太陽の流れが弱まり、帰り道を思い出すように指さした。

 

「ニーミ達も死んでないはずだ。連れて行ってくれ。」

 

その指さした方向へ進む。

少年がもう豆粒程になったところで駆逐艦達を見つけて拾い上げる。

 

「ごめんなさい、ごめんなさい·····」

 

赤城の謝罪に三人とも応えた。

 

「俺様こそ悪かった。気遣えなくて、レーベの名が廃っちまうなぁ。」

 

「上を変えられないとは言え甘えすぎですね。」

 

「正義の味方失格ね、一番近くで泣くのを我慢してる子達を泣かせなかったなんて。ごめんなさいね赤城。」

 

その言葉に泣きながら歩を進める赤城を三人の駆逐があやしていた。

戻る頃には顔はグチャグチャでそれでも両腕が無い愛宕に飛びかかられて、謝って、皆が泣いて口にした。

 

「おかえり。」

 

 

 

 

太陽の中で少年の亡霊は自身の背骨を握り直す。

力は強まり、そして、膨れ上がり―

 

「さぁ、ここからだろう?セイレーン?」

 

虚空に問うた。

 

「素晴らしい、流石は我らのはらからよ。」

 

「お前の中の人間の欠片こそが我らは欲しい。」

 

50年前突如として現れ、そして、レオン・ジーという男を選ぶ『フリ』をした2体の特異型セイレーンが囁く。

 

「お前ならば永遠に我らを率いれよう。」

 

「お前であるのなら我らはようやく辿り着く。」

 

人間はその言葉を使う。

成長、躍進、進化、覚醒、促進、到達。

 

だが、人ならざるモノたちはその言葉の物差しを持っていない。

単に超越。

 

言葉ですら、そもそもの比ではないのだ。

 

「·····ここまで来て分かった。お前達は『勝った未来』のセイレーンだな?」

 

そう人類は勝った。勝ったのだ。

大なり小なり、人ならざるモノに勝利し、そして、気づいたのだ。

 

やり直したいと。

 

喪ったものに対する執着こそがその結末を呼び寄せていた。

1年先だろうが100年先だろうが1000年先だろうが。

 

「例えお前が今ここで否定しても人は繰り返す」

 

「哀悼という言葉を吐き、我らを!」

 

そう、全ては哀悼から始まった。

そしてやり直したいというくだらない意志の基に戦争は繰り返された。

 

「我らはようやく得る!ようやくだ!」

 

「お前を!お前という力を!あぁ!人よ!いや違う!お前の名は!」

 

『指揮官』

 

「誰がてめぇらみてぇな阿婆擦れに腰振るってんだよ醜女が」

 

少年は数少なく、決して乱暴な言葉は使わない。

だが、こいつらは少年をトコトン怒らせた。

 

「僕が愛してるのはただ一人だ。その子はどこまでも強くて、可愛らしい、お前らじゃ逆立ちどのろか100万回死に直しても足りねぇんだよ!」

 

そうだ。彼の世界は。彼が生きた世界には。

 

「僕が愛してるのは赤城だ!あの子が生きる世界の為なら僕は死のうが!お前らと向き合おうが!折れる訳にはいかねぇんだよ!」

 

背骨を握る力が強ばる。

信じている。皆が幸せになれなくても、笑っていることを。

戦争を忘れずに、もう戦争は嫌だって、少女に戻れることを。

 

斥力太陽はS海域と呼ぶセイレーン発生海域と特定された世界をひたすらにやき尽くした。

赤く紅く、どこまでもいつまでも太陽は消えなかった。




色々と書き直しました。
加賀の水着が最終決戦兵装の名前になりましたね。
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