魂を喰らう転生者 〜厨二病な聖剣とゼロから最強へ成り上がる〜 作:浦糸 香
薄暗い通路、寒々しい青色の岩壁をバックに俺はスケルトンの姿を睨みつけた。
どこに胴体があるのかも分からない様な風貌の癖して、身体の到る所からヒリヒリとした痛みがする。
もし人間だったら「イッテェ!」とか言っている所だろう、だが今の俺には口というものがない。声を出したくとも出せないのだ。
スケルトンは俺を冷やかすように骨を軋ませると、こちらに向かって走り始めた。
だが、そのスピードは俺が想像していた以上に遅かった。
それもそうか。なにせスケルトンとは骨だけの魔物。骨には筋肉が無いのだから、何か魔法的な力がない限りは上手く体を動かせないのは当然と言った所だ。
しかし残念ながら、スピードが遅いのは俺とて同じだ。気を抜いたら直ぐに相手のペースに乗せられ、あっという間に決着がついてしまうだろう。
俺は何とか身体を動かして、スケルトンの突進を回避する。
こっちだって、伊達にVRMMO系のゲームをやっている訳じゃない。流石に剣道や柔道の経験者には届かないが、それなりに攻撃を回避することは可能だ。
それに俺の回避技術は全てゲーム特化だ、この様な魔物の攻撃を避けるなど俺にとって見れば意図も容易い!
だが……、問題なのは俺には攻撃たる手段が無いことだ。
スケルトンには手や足があるかもしれない、けれど俺には手足どころか、今に消えてしまいそうな火の球に似た頭(もしくは胴体)しか無いんだよ。
つまり攻撃するには少なくとも、突進しなくてはいけない。
だけど、こんなに小さい上、スケルトン程の速さしか出せない。
あっ……、これはマジで詰んだかもしれないぞ。
RPGでいう、最初の職業をナメクジやスライムに設定した位に最悪の状況だ。
ど、どうすればいいんだ! マジでどうすればいいんだよ!
待て待て、一先ず落ち着こう。
俺の悪い癖だ、こういう時こそ冷静にならなくちゃ、話は始まらない。
俺は心の中で「帰ったらマイちゃんと◯◯◯するんだ!」と5回連呼すると、想像上で深呼吸した。
先程突進を避けられたスケルトンは既に態勢を整え、こちらに向かって走り出そうとしている。
避けるのは簡単だ、しかし攻撃手段が無ければ勝つことなんて到底不可能。それにここで逃げ出した所で今の速度では追いつかれてしまう。
またこの場所には特殊な
纏めると、問題なのは俺の移動速度――これさえ改善できればこの難関を突破できる可能性を見出せるはずだ。
スケルトンが地を蹴って走り出す。
避けなければならない、避けるんだ。避けるんだ!
俺は脳裏にスケルトンの攻撃を回避する映像を思い浮かべると、スケルトンがこちらにぶつかる直前、俺の身体は想像通りに
――ガタカタガタッ!
スケルトンが壁にぶつかり、色々な箇所の骨が外れる。
そして、奴は面倒くさそうに骨の装着を始めた。
どうやら暫く、こちらに来ることは無さそうだ。
ならばこの隙に確認させていただこう。
――この身体の動作は、俺の意識の強さが反映されているのではないかと。
俺は試しにスケルトンに突進しろ! と心の中で連呼し、俺の身体が拘束でスケルトンに衝突する想像をした。
すると、突然俺の身体はスケルトンに向かって豪速球の如く飛んでいった。
そしてその蒼い火の球、もとい俺は、スケルトンの身体に当たる肋骨に命中、肋骨の一部にヒビが入る。
イッテェエエエ!
そうだった、忘れてたぜ。突進って反動ダメージをくらう、諸刃の剣だってな。
スケルトンから出来るだけ距離を取ると、俺は歯を食いしばる――想像をした。
それに今ので、何故かは知らんが俺の身体が軽くなった気がする。
どういう原理なのかも知らないし、想像の範疇でしか無いけど、もしかしたら人魂こと俺は急激な運動をしたら小さくなるのかもしれない。
それはつまり、この突進を含めた急激な行動には時間制限があるってことだ。そして、その制限以上、動いてしまうと俺は消滅する可能性がある。
そうだな……。ざっと見積もって残り3発くらいか、突進が使えるのは。
加えてだ、俺の身体もいまの突進を連続3回耐えられる程、頑丈ではない。
何せ、頭をコンクリートの壁に思いっきり叩きつけた様な痛みだったからな……。さっきは冗談抜きで死ぬかと思った。
スケルトンは腹を立てたのか、ヨロヨロとしながらも骨を再度はめ直すと、ゆっくりと立ち上がり、手を振り上げると先程よりも速い速度でこちらに突っ込んでくる。
まだ動けるようだが、結構ダメージは食らっているようだな。
となれば……、奴を倒せる可能性が少なからず上昇した。
自身の仕掛けに気づいた以上、敵の攻撃を躱すのは容易い。その上で、俺は回避しながら敵を効率的に倒す方法を模索しなくてはならない。
ここで重要となってくるのが敵の弱点の見極めだ。
これはVRMMOでも相当重要な技術なのだが、生物という物、必ず何かしら防御が弱いところがある。
例えば、成人男性系の敵なら首と股間、ソンビだったら頭または心臓。そんな感じに必ずどこかしらに弱点があるのだ。
つまり何が言いたいか……。
俺は賭けるのさ、このスケルトンの弱点が頭である事に全てを賭ける。
スケルトンは俺の意識突進で倒せることは分かった、だけどそれを乱発しては、俺の身体は確実と言ってもいいほど持たない。
次の一撃に俺は全てを賭ける。確実に止めを刺してやる!
俺は全意識をスケルトンの動きに集中させると、スケルトンを壁際まで誘導し、奴の拳が俺にぶつかる直前に避ける。
スケルトンは壁に拳と頭をぶつけると、情けなくその場に座り込んでその場で首をグルグルと回し始めた。
混乱している――間違いねぇ!
あそここそ、スケルトンの器官全てを支配している司令塔、即ち弱点だ!
全身にあの痛みが来る事を覚悟し、俺は全霊を掛けてスケルトンの頭に突進する事を想像した。
刹那、俺の身体は急速に加速していき、スケルトンの頭蓋骨目掛けて、渾身の一撃を叩き込んだ。
もし人間ならば、脳みそが飛び出てしまいそうになるほど凄まじい痛みが俺の全身を駆け巡った。
意識がどこか遠くへ飛んでいきそうだ……。
だが諦めない、折角全力を尽くした戦いを引き分け以下で終わらしてたまるかぁ!
薄れていきそうなその意識を、俺は必死に手繰り寄せるとゆっくりとその場を離れ、スケルトンがいたであろう場所を見た。
そこには頭蓋骨がバラバラに破壊された骨組みが、無残に散らばっていた。
た、倒したんだ……。
へ……、へへへ。やってやったぜ。
うっひゃひゃ! 人生でRPG100作品以上極めてきた廃人を舐めるなってんだよ、骨野郎!
ひゃっほう! 万歳! マイちゃん万歳!!
――ともかく、これで俺の二度目の死は免れたというわけだ。
一度目の
だが、こんな化け物が他にもうろついていると仮定したら、結構ヤバイな……。下手したら次の戦いで死ぬ可能性もある。
残念ながら、羽目を外している暇はなさそうだ。
そう思って、俺は2回り程小さくなってしまった身体を動かして、この場をいち早く離れようとした。
その瞬間だった、あの音声が響いたのは――
【経験値が一定値に達しました。当該個体、ヒュウガのレベル上昇許可申請を開始します――承諾。ヒュウガ、人魂LV1から人魂LV2に上昇しました】
【各種基礎ステータスが上昇しました】
【条件を満たしました。当該個体、ヒュウガに特性『特殊変異体』を付与しました】
【条件を満たしました。当該個体、ヒュウガに特性『
……はい? 今なんて?