魂を喰らう転生者 〜厨二病な聖剣とゼロから最強へ成り上がる〜 作:浦糸 香
……はい? 今なんて?
ちょっと、今なんて言ったのよ! もう一回言いなさいよ!
って何でオカマ口調になってるんだ俺、別にそんな趣味がある訳じゃないんだけど。
はいはい、一先ず落ち着きましょう。
何事も情報を冷静に整理することが大切なのだ、取り乱しては思い出す必要のある重要な情報も、自ずと完全に忘れてしまう。
ともかく……、1つ1つ思い出せる限り考察していこうじゃないか。
俺は改めてスケルトンの死体から移動し始めると、どこか安全そうな岩陰に身を隠し、今の状況整理を始める。
まず、何よりレベル上昇だ。
確かあの機械音声は俺が人魂LV1から人魂LV2に上昇したと言っていたはずだ。
そしてそれに伴う基礎ステータスの上昇……、これに関してもRPGお決まり事項。
ここから推測するに――どうやら、この世界自体がRPGゲームの世界の様だ。でなければ、唐突にあの様な異常現象は起こりえないな。
それはつまり何を意味するか……。大量のラノベやらゲームをやって来た俺ならこの状況を判断するのはとても容易い。
――俺は異世界転生して、生まれて変わった。人魂という魔物に。
レベル上昇がもし俺の幻聴でなければ、そう推測せざるを得ないだろう。
まさか……、まさかのまさかだな。
ゲームの世界に放り込まれたにしろ、どこか別世界に飛ばされたにしろ、夢に見ていた異世界転生を成し遂げてしまうとは。
しかも、人外転生――俺の最も大好きなジャンルではないか!
最初の種族が人魂なのは些か心許ないが、そんな事は関係ない! これは言わば一種の縛りプレイのような物なのだからな。
つまり、今までの情報を整理し到る結論は――
俺はあの少女に何らかの目的で、このRPGゲームを主体とした異世界へと転生させられてしまった。
素晴らしいじゃないか!
クソみたいな人生を送ってきた俺にも、とうとう陽の光が差し込んできたようだな。
オタク人生に光りあれ、どうやら俺もまだ神に見放されていなかったようだな、フハハハ!
異世界万歳、チート万歳、マイちゃん万歳!!
……マイちゃんにはどう頑張ってももう会えないだろうけどね。
さて、もしここがRPG系異世界なのならばだ。
ステータスという、とても素晴らしい物があってもおかしくない。
いや、レベル上昇時に基礎ステータスが上昇しましたと言っていたんだ。間違いなく存在するはずだぁ!
今までラノベで読んできた世界じゃ、ステータスと口にしたり、心で喋ったりすると出てくることが多かったけど……、この世界はどうなんだろな。
いいや、考えるより実行に移そう。適当にやれば何とかなるでしょ。
――いでよ、ステータスッ!!
すっかり心が高揚しきった俺は心の中でそう叫んだ。
だが……、残念ながら肝心なるステータス画面は幾ら経っても出てくることはなかった。
……アホらし。
やっぱり、そう簡単に行くものじゃないよな。
大体、普通の異世界転生と違って神様のいる部屋から始まらない辺り、薄々と感づいていたけど。
これって、チート無し異世界転生だよね?
そう、所謂何もかもゼロから始まる異世界転生――転生系の中でも相当ハードな部類にはいる物だ。
チートで無双万歳とか出来ない奴じゃんこれ……。
いやいや、それでも流石にステータスが開けないのはマズい! ステータス画面が見れないRPG程クソゲーはないぞ、そもそもRPGゲームとして成り立っていないじゃんかよ!
焦燥感に駆り立てられ、俺は声に発することは出来ずとも、ステータスを画面を開く為の合言葉を思いつく限り言ってみる。
――ステータス、オープン! カモン、ステータス! 開け、ステータス!
……駄目だ。やっている自分が段々馬鹿らしくなってくる。
クソッ、このパターン。恐らく鑑定魔法や何やかんやを使用しない限り、自分のステータスすらも確認できない奴だ。
最も現実的で、論理的なパターンだが、その分、転生RPGゲームに於いてはかなり高難易度になる場合が多い奴じゃんか。
うぅ……、まさか最初の最初で『チート無し、地図なし、道具なし、ステータス表示不可、人魂スタートの縛りプレイ』をするはめになるとは。
しかも、どっかの有名なラノベと同じで、ゲームオーバーは死と同じ痛みを味わうのと同値って頭おかしいだろ。それに一度死んだら復活できるかどうかも分からない。
……多分、復活できないんだろうなぁ。
だが始まってしまったものは致し方あるまい、今更どう騒いだ所で元の世界に帰れるわけでも無いだろうしな。
死にたくなければ、このサバイバルを生き抜かなくてはならない。それだけは覚悟しておくとしよう。
さて、気持ちを切り替えようじゃないか。
少しも役に立たないステータスは置いておくとして、次に聞こえたものを……。
ってあれ? あの機械音声はなんて言っていたんでしたっけ。
早くも思い出せなくなったな……。
俺はその場で誰にも見つからないよう、身を潜めながらも先程起きた出来事をゆっくりと回想していく。
確かだ、うろ覚えでしか無いが――特性、ソウルイートを習得しましたと言われた気がする。
後もう一つ何か特性を獲得していたと思うのだが、忘れてしまったな。こればかりはどうしようもないな、今後ステータスが確認できる機会があれば、確認してみるとするか。
特性ソウルイートか……、普通に訳せば”魂を食べる”という様な意味になるだろう。
だけど”魂を食べる”特性など、何の役に立つのだろうか。魂を食べれば食べる程成長できるとかなのか?
稀にスキル吸収などのチートスキルを持った主人公のラノベとか読んだことがあるが……、その手のものとはあまり考えられない気がする。
そもそもこの世界にスキルという概念自体が存在するのか分からないし、これも一先ず保留としておきますか。
では……、情報整理も終わったことだし移動しようか。
ともかくまず第一にしなくてはならない事、それは安全地帯を探すことだ。魔物が近寄りづらそうな場所を探すことである。
RPGで言う宿屋的ボジションだな、あれがなければ幾らレベル上げがしたくとも、非常に難しくなってしまう。
まぁ、回復スペースが無くともレベル上げは出来なくはないけど……、そんなゴリ押しプレイは今回に関しては自分の命を投げ捨てるに等しい。
チキンにチキンを重ね、慎重に敵を狩らなくてはな。
気持ちの整理が付き、俺は恐る恐る洞窟の岩陰から出てみる。
すると、突然俺の目の前に何やら緑色の塊が飛んで来たのだ。
これはマズい、と身体が危険を察知したのか、俺は咄嗟にその緑色の塊を躱した。
その緑色の何かは俺の真横を通過していく、そして先程まで俺が隠れていた岩に当たると、白い煙が上がる。
岩の表面は抉るかのように溶かされ、何者かに破壊されたかのようなクレーターが出来上がったのだ。
さ、酸だと!?
この予感、また別の魔物なのか?
見ると、そこには俺よりも少し大きく、透き通った緑色の身体をした不定形の魔物がいた。
あのぷるぷると弾力性があり、アメーバの様な液体状の身体。
間違いない、アイツはかの有名なスライムじゃないか……。