魂を喰らう転生者 〜厨二病な聖剣とゼロから最強へ成り上がる〜   作:浦糸 香

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第5話 『喰魂』の力

 俺が出てくるのをずっと待っていたのだろうか、突如として姿を表したスライムはふるふると身体を震わしながらも、俺の様子を伺っている。

 丸みを帯びていて、つるつるとしていそうな身体の割には、その色は毒々しい。

 

 一難去ってまた一難とはこの事だな。

 俺は心中で薄ら笑いを浮かべ、戦闘態勢を取るとそのスライムと対峙した。

 

 そう言えば、この瞬間になるまで自分でも気づいていなかったが、あの全身を焼き尽くすような痛みは消え、俺の身体である火の大きさは元通りになっている。

 考えられるのは1つ、どうやらレベル上昇と共に俺のステータスは全回復した様だ。大量の縛りを設けたプレイの中でも唯一息抜きとなるシステムって事か。

 

 もしスケルトン戦で受けた負傷が残っていたのなら、俺は直ぐ様この場から逃げ出していただろう。

 だけど、生憎今の俺は宿屋で起き上がり、「ゆうべはお楽しみでしたね」と店主に言われたばかりの勇者その物だ。

 受けてやろうじゃないの、その戦い。

 

 向こうも戦う覚悟を決めたのか、スライムはひょこひょこと跳ねると体内から、2つほど緑色の酸を射出してきた。

 一瞬にして、2メートル弱はありそうな岩を半分溶かしてしまうほどの酸だ。

 人魂とは言え、物理攻撃が効く今、あの酸に当たったらジ・エンドだろうな。

 

 俺は放射線を描いて飛んでくる酸の着弾点を予想し、上手く躱す。

 ステータスが上昇したおかげか、俺の動くスピードも速くなった気がする。

 攻撃が当たれば死亡する可能性あり、だがそんな攻撃当たらなければどうという事はない!

 

 やはりスライムは液体状という事もあってか、スピードはかなり遅いようだ。

 となると酸さえ避けれてしまえば、先のスケルトン程の警戒はする必要はないだろうな。

 

 だけどここでも、問題なのは俺の攻撃手段である。

 人魂なんだから魔法くらい使えてなんぼだろうがぁ! と言いたい所だけど、俺は転生したばかりだ。

 魔法の使い方なんて知らん。そもそも、魔法自体が存在しない世界かもしれないからな。

 

 となると、やはりここでも突進か……。

 嫌なんだよねあの突進、凄く痛いから。

 それに、あのスライムに突進して本当に大丈夫なのだろうか? スライムの身体全てが酸で出来ているなんて事になれば、突進した瞬間にジ・エンドだ。

 

 見た所、あのスライムの身体の構造は体液を包み込むように薄い膜で保護している感じだ。

 それが歩く度に体液や酸を撒き散らさない要因だろうな。どんな仕組みかは知らないけど……。

 だとすると、突進してもあの膜が破裂しない限りは大丈夫そうだな。

 よし、人生は賭けだ。やれるだけの事はやってやるぜ!

 

 意識を突進する事に集中させると、俺はスライムだけを見つめる。

 しかし、俺が奴に向かって攻撃を仕掛けようとした――その時だった。

 

 スライムはぴょこっ、と跳ねると俺と同じくらいの大きさにもなる火の玉を俺を目掛けて飛ばしてきたのだ。

 しかも、スピードは先程の酸とは比べ物にならない位速い。

 

 ――うぉい!? マジかよ!

 

 我に返って躱そうとした時には既に遅かった……。

 その火の玉は俺の身体に激突すると、爆弾の如く破裂し、俺を意図も容易く吹き飛ばした。

 

 あっつい……!

 熱い熱い熱いっ! どんだけ熱いんだよあの火の玉、というか人魂の癖して火の攻撃が効くとか随分と皮肉な設定じゃないかよ!

 

 それと、突然出てきた所を見るに、あれがいわゆる魔法って奴なんだろうな。

 想像していたものとは結構かけ離れているけど、やはり凄いな……。何もない所から何かを生み出す力、憧れるぜ。

 

 爆風によって地面に落下した俺は思考を高速回転させながらも、燃えるように痛む身体を起こすと、直ぐに態勢を整えた。

 なぜなら、既に俺の頭上には沢山の酸が雨の如く、降り注がれようとしていたからだ。

 

 咄嗟に意識を全身に集中させると、俺は出来る限り加速してその酸を全て避けていく。

 酸は俺に当たること無く地面に落ちていく。だがその後、勢いよく岩肌を溶かしていき、大量の白い煙を上げた。

 そのせいで、視界の半分以上が遮られ、周りは何も見えなくなってしまう。

 

 チッ……、あのスライム相当な策士じゃないか。

 どうする。何か無いのか? 魔法で敵の居場所を感知するみたいな能力は。

 駄目だ、考えるんじゃない、感じるんだ。俺のエロとゲーマー人生で養われた勘はそんな物なのか……!

 

 目をつむり、今持てる感覚全てを研ぎ澄ました。

 物理法則も成り立たなそうなこの世界、何が起きるか分かったものじゃない。ならその俺の知らない、全く別の可能性に賭けたっていいじゃないか。

 

 何も見えない、だけど何故か何かを感じる。

 俺の右斜め前――仄かだけど小さな青白い炎(・・・・)がある気がする。

 感じる、なるはずのない鼓動を。感じる、燃え上がる生命(いのち)の力を。

 

 ――そこだっ!

 

 白いモヤが全ての景色を遮る中、俺は右斜め前方へと向かって突進した。

 弾丸の如くモヤを突き抜け、その先にはあの緑色のスライムが呆然と佇んでいる。

 

 ――いっけぇええええ!

 

 そして、俺の身体は見事スライムに命中した。

 スライムは凄まじい衝撃によって、大きく身体を変形させるとそのまま虚空に放り出され、地面をコロコロと転がっていった。

 だが致命傷には至っていないのか、ふるふると身体を震わせながら、再び態勢を整え始める。

 

 ……今の突進を耐えるか。

 スライムが柔らかかったおかげもあって、俺へのダメージはそれ程じゃなかった。

 徐々に小さくなっていく身体の大きさから考えても、今程度の突進なら後3発は間違いなくうてるだろう。

 

 この勝負貰ったな。

 勝ちを確信したその瞬間だった、俺の意識の中に奇妙な感覚が流れ込んできたのは。

 

 

『食べたい』

 

 

 その言葉が意識を埋め尽くし始めるかのようにグルグルと回り始める。

 食べたい……、俺はお腹が空いているのか?

 でも口もない状況で何を食べろっていうんだ。

 

 

『タ……イを食べたい』

 

 

 お腹がある訳でもないのに、空腹感が込み上げてくる。まるで自分ではない何者かが指示しているかのように、腹の音が心中で鳴り響いた。

 その突如として現れた異常な衝動は、徐々に俺の意識を侵食していく。そして、挙げ句の果てに俺は――

 

 

『タマシイを食べたい』

 

 

 凄まじい勢いでスライムに襲いかかっていた。

 幻覚だろうか、スライムの身体の中心にはあの時、水面を覗き込んで見えた小さな青白い炎が見える気がする。俺のように目はなけれど、それは今にも消えそうに揺らいでいた。

 

 

『魂を食べたい』

 

 

 気づいたら、俺はスライムの懐に飛び込んた。

 まるでスライムの核のように揺らぐその炎を見えざる手で掴むと、馬鹿力で引き剥がしていたのだ。

 そして、スライムの炎をその手にした俺はそれを迷わず自分の中に取り込む。

 すると次の瞬間、仄かな甘味が意識の中に広がっていき、自然とあの悍ましい衝動も消え失せていく……。

 

【特性『喰魂(ソウルイート)』を発動。個体、スライムLV1の魂を変換率5%で吸収しました】

【現在、種族スライムの魂分析率3%】

 

 ……っはぁ、はぁ。

 危ない、危ない、意識がどっかに飛んでいくかと思った。

 それに何だったんだ今のは――急に魂が食べたくなったと思ったら、凄まじい衝動に襲われて……。

 

 ――でも、何となく分かったぞ。

 この特性『喰魂(ソウルイート)』ってのは他人の魂を食べたくなる特性って事か。なかなかどうしてとんでもない特性じゃないか。

 

 ふと見ると、俺の足元にはもともとはスライムだったと思われる緑色のゼリー状の何かが転がっていた。

 俺に魂を食べられてしまったのだからな、当然か。生きていたら、それはそれで怖いけどな。

 

【経験値が一定値に達しました。当該個体、ヒュウガは人魂LV2から人魂LV3に上昇しました】

【各種基礎ステータスが上昇しました】

 

 時間差だったけど、どうやらレベルも上ったみたいだな。

 先程まであったあの火傷の様な痛みは消え、その上に俺の身体も更に大きくなった気がする。

 

 なるほどな、ソウルイートか。

 何か変換率や魂分析率がどうたらこうたらとか言っていたけど、それは一先ず置いておくとしても、これは凄い能力かもしれない。

 

 下手したら……、即死チートとかにも化けたりしてな。

 誰もいなくなった洞窟の通路、そこで俺は独り心の中で不敵に笑うのだった。

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