祝勝会の翌日、私は狙撃手用の訓練スペースにて、自主訓練を行っていた。
今日はあの子はいないようだ。
また狙撃について教えてもらいたかったけれど仕方がない。
動く人型の的に向けて撃ち続ける。
実戦で使ってみて実感したのだけれど、このライトニング、割と私と相性がいい。
トリオン量に比例して弾速が上がるライトニングは人よりもトリオン量の多い私が使うとかなりの弾速になる。不意を突けばシールドを張られるより前にあてることができるだろうし、そうでなくとも防ぎきるのはよほどのトリオンがなければ厳しいと思われる。
まぁ今は私の技術の都合で、ほかのスナイパーの人と同様の戦い方は厳しいだろうけれど・・・
そのためには練習していかないと・・・
と、狙撃練習を行っていると・・・
「・・・お疲れ様。」
となりにあの子が来た。今から自主訓練のようだ・・・。
「どうも、今から訓練?」
「・・・。」
コクリとうなづく。
そしてそのままお互い無言で練習を行う。
「ふぅ」
集中が切れてきたので中断して隣の様子を見る。
そういえば、あの子の狙撃の様子を実際に見るのはこれが初めてだ。
いつもは自分の練習に集中してあまり見ていなかったからな・・・
いい機会だ。いろいろ勉強させてもらおう。
ふむ・・・単純な狙撃の制度だけでなく、照準を標的に当てる速さ、動きの先を読んでの照準など、狙撃の腕前は私と比べて2周りは上をいっているだろう。
観察していると・・・
「・・・ごめんなさい。あまり見ないでほしい」
注意されてしまった。じろじろ見すぎたようだ。
「申し訳ない。邪魔をするつもりはなかったのだけれど、つい見入ってしまってた。」
「・・・」
彼女は無言でこちらをみてそのまま自分の訓練に戻った。
私も自分の練習にもどるが・・・
直前の会話のせいかすこし気まずい。
集中力も落ちてきたし戻ろうかと考えていると・・・。
「・・・そういえば、ランク戦みた。初勝利おめでとう。」
珍しいことに狙撃のこと以外で向こうから話を振ってくれた。
「ありがとう。でいいのかな。正直なところ運要素や情報の有無で勝ったというのが大きいからあまり誇れることじゃないのさ。」
「・・・たしかに。最初の狙撃は完全に仕留めておきたかった。」
「まったくその通りで。けどまぁ、当てられたのは師匠のおかげさ。」
「・・・師匠?」
「あぁ。私に狙撃のアドバイスをしてくれる君のおかげさ。君の指導がなければ当てられていなかった可能性のほうが高い。」
「・・・別に師匠とよばれるほどのことはしていない。努力してたのはあなた。」
「いやなに、いつも聞きそびれていたのだけれど名前を聞いていなかったからね。勝手にそう呼ばせてもらっていたのさ。申し訳ない。」
「・・・雪下。雪下月花。それが私の名前。」
「やっと聞けたよ。雪下さん・・・でいいのかな?私のことはランク戦の様子見てたなら知ってると思うけど明野隊の浅上博雅。本職はシューターだけど、スナイパーとトラッパーも兼任してる。改めてよろしく。」
コクリ・・・師匠こと雪下さんはうなずいて返事をする。
やっと名前を聞くことができた。この機会に勧誘もしてみようか・・・
「じゃあ名前を聞くことができたついでにもう一つ言い忘れた要件があるのだけれど・・・いいかな?」
「・・・なに?」
「雪下さんって・・・」
ピりりりリリリ!ピりりりリリリ!
言いかけたところで、私の携帯がなった。これは・・・電話の呼び出し音だ。
「すまない。電話だ。失礼。」
かけてきたのは・・・うちの隊長である雅樹。ということは・・・・。
『もしもし、ヒロか?今どこにいる?本部?それならちょうどよかった。次のランク戦の相手が決まったぞ。今から作戦会議開くから作戦室に来てくれ。』
伝えるだけ伝えて切られてしまった。
ずいぶんと急な話だ。だが次のランク戦までに時間はあまりない。
少しでも作戦を練る時間が欲しいのだろう。
「申し訳ない。隊長からの緊急招集だ。次の対戦相手が決まったみたいでこれから作戦会議に行かなくてはならなくなった。話の続きはまた今度させてもらったのでもいいかな?」
「・・・きにしないで行ってくるといい。」
「すまない。いってくる。」
そうして私は訓練室を後にした。
さて、次のあいてはどこだろうか。