私たちもA級隊員めざしたい。   作:rerimeru

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通路にて・・・

ラウンジからでて急いでおいかける。

 

「見つけた!雪下さん!!待って!」

 

通路を二つ曲がったところで追いついた。

 

もうまくことはできないと悟ったようで、雪下さんが振り返る。

 

「・・・えっと・・・」

 

なにか言おうとしているようだ。があえてそれを遮る。

 

「すまない。先に一つ謝らせてほしい。

この間は怖がらせるようなまねをしてしまって申し訳ない。

 

私と・・・あと当真さんもだが雪下さんの秘密に土足で立ち入るような真似をしてしまった。

 

すまない。」

 

 

頭を下げて謝る。

 

実際のところ、この間立ち去ったのは当真さんが雪下さんにいろいろ話を聞こうとしたからなのだが、当真さんがいなければ私が聞いていただろう。

 

そうなれば結局途中で話を切り上げて逃げていたに違いない。

 

 

少しして顔を上げると、雪下さんは私を驚いた様子で見ていた。

 

「・・・あなたが謝る必要はない。隠し事をしてる私がわるいだけだから・・・。」

 

「その隠しごとについてだけれど、言っておくことが二つある。」

 

「・・・二つ?」

 

雪下さんは不思議そうな顔をしてこちらをみてくる。

 

「あぁ。一つ目は、その隠し事に関しては無理に話してくれる必要はない。

雪下さんの様子からあまり人に知られたくないのは理解しているつもりだ。

 

だからこちらから詳しく聞くことはしない。」

 

「・・・いいの?」

 

「あぁ、そして、また時間のある時にうちの隊にも雪下さんのことを紹介しようと思うけれど、そのことは徹底させる。」

 

「・・・そう。・・・ありがとう・・・。

 

・・・えっと、それじゃあ、二つ目は?」

 

 

すこし首をかしげながら聞いてくる様子がなんとなくかわいい。

 

「一つ目に言っていたことと矛盾するところがでてくるのだが・・・」

 

そう前置きを言いつつ、二つ目を告げる。

 

 

 

「その隠し事に関して、大体予想はついている。」

 

「・・・え・・・」

雪下さんが目を開いて驚いている。

 

 

 

―――考えてみれば、ヒントはそれなりにあった。

 

 

 

 

『・・・この訓練では私はズルしてるようなものだから。そんなに誇れない。』

 

 

 

 

捕捉&掩蔽訓練の時の会話。

ズルと言っていたけれど、雪下さんの性格上、何かしらの不正を行ったとは考えにくいし、

この訓練で上位だったことが後ろめたい様子だった。

 

そうなると、意図的ではなく

―――意図に反して、訓練で雪下さんに有利なことがあるということだ。

 

それは何か。

 

 

 

 

サイドエフェクトだと考えるのが自然だろう。

 

 

 

 

サイドエフェクト――トリオン能力の高い人に発現する特殊能力。

 

副作用といわれることもあるように、自身の意思とは関係ないところで働き、

オンオフの切り替えができない。

 

強化聴覚や感情受信体質など当人からすればあまりよくは思っていないことがあるようだが、たいていの場合戦闘に有利に働く。

 

 

 

雪下さんの隠し事というのはそれであっているはずだ。

だからこそ、私は告げる。

 

「さっきも言った通り、私は雪下さんからもちかけられない限りは隠し事については聞くことはしない。けれど、これだけは言っておく。何かあればいつでも相談に乗る。同姓の相手がよければ可能な範囲で紹介する。以上だ。それがいいたかった。」

 

「・・・・・・」

 

驚いた表情の次は口をパクパクさせている。

 

今日だけで雪下さんの表情がいろいろ見られてなかなかに新鮮味を感じる。

 

「・・・ありがとう。」

 

そうだ、この際だから勧誘もしておくべきか。

 

「2つ、といったけれど訂正する。もう一つあった。この前も言ったけれど、B級に昇格したら、うちの隊にきてくれないか?

 

雪下さんがいてくれたら、もっと上を目指せるはずだ。

 

だから、一緒に来てほしい。」

 

今の明野隊は私の狙撃技術が未熟なこともあり、遠距離線に弱い。それに、私が狙撃をするときは中距離戦が弱くなる。

 

それを雪下さんに埋めてもらえたらA級だって現実味を帯びてくる。

 

 

「・・・・・・」

 

雪下さんは返事を戸惑っている。

雪下さんは前に「ランク戦に力になれない」と言っていた。

 

それが引っかかって迷っているんだろう。

 

「・・・・・・」

「・・・・・・」

 

互いに気まずい空気が流れる。

 

―――答えは急がない。よく考えてから聞かせてほしい。

そういって話を切り上げようとしたが、この空気は思わぬ形で壊れた。

 

 

 

 

 

 

「熊ちゃん熊ちゃん。浅上君ったらこんなところで女の子に告白するなんて大胆ね。」

 

振り向くと那須先輩と熊谷先輩がいた。

2人ともニヤニヤしながらこちらを見ている。

 

その視線はやめてもらいたい。というか、告白ではない。

 

「ちょっと、玲。告白じゃないわよ。」

 

熊谷先輩がニヤニヤしつつ、訂正を入れて・・・

 

「あれはプロポーズよ。」

 

入れてくれなかった。というかよりひどくなっている。

 

「那須先輩、熊谷先輩。わかっているとは思いますけれど違いますからね。」

 

「あらそう?『雪下さんがいてくれたら、もっと上を目指せるはずだ。だから、一緒に来てほしい。』だったかしら?プロポーズとも取れるわよ?」

 

・・・・確かに、そう取れる、

 

しかし、その前のセリフも聞いていたならばそんな勘違いはするはずがない。

 

それを抗議しようとしたところ・・・

 

クスリ・・・と音が聞こえた。

 

そして、あはははと小さく笑う雪下さんがいた。

 

「・・・笑ってしまってごめんなさい。・・・そっか、私プロポーズされてたのね。

そこまで熱心に言われたらしかたないね・・・。

・・・わかった。昇格してからになるけれどこれからよろしくお願いします。」

 

そういってペコリ・・・と雪下さんが頭を下げた。

 

何はともあれ、問題は残っているけれど、勧誘に成功したようだ。

 

この空気を作ってくれた那須隊の二人には感謝しないといけないな。

 

 

 

・・・あのニヤニヤした目をやめてくれたらだけれど。

 

 

 

 

 

 

 

 




いつもより少し長め。

というわけで、問題は残っていますが、雪下さん加入決定です。

ただし、ランク戦に参加するのはまだもう少しむこうです。


―お知らせ―

感想にて明野隊が防衛任務に参加しているのか、どのような会話をしているのか質問があったので、回答をこちらにも載せておきます。

防衛任務に関してはきちんと参加しています。

明野 シフトを増やして5日に3回くらい参加 
   (明野隊としての任務に加えて混成部隊を結成して参加)
   理由 お金を稼ぎたい 楽しい 実戦経験を積みたい 

浅上 通常のシフトでの参加(3日に一回くらい)
   理由 ログを見ていたい 勉強の時間を確保したい 自分のペースで訓練を積みたい

椿  通常のシフトでの参加(浅上と同じく3日に一回くらい)
   理由 勉強の時間を確保したい 剣道の練習をしたい
   

村中 ややシフトを増やして2日に一回以上勤務。
   理由 経験を積んでもっとみんなをサポートできるようになりたい


といった感じです。

いろいろな状況を踏まえての連携を実戦の中で考え練習したり、浅上が明野に対して勉強ももっとするようにお小言を言ったりしてます。

暇なときは雑談しながら任務に参加することもあります。
(学校でのこと、村中さんの飼っている猫の可愛さ自慢など)

一度だけ、誰が一番多く倒せるか競った結果、明野の旋空に当たりそうになった椿が、よけたところを浅上の狙撃によるフレンドリーファイアでベイルアウトしたという出来事もありました。
(村中・椿が明野・浅上をこってりしぼり、当分競争は禁止になりました。)

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