ヤンデレ艦娘集 限定編   作:夜仙

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他の作品と両立できるよう頑張ります。


 一寸先は闇の中

「ここだ」

 

 一人の少年が夜中に懐中電灯を持って、コオロギが鳴く静かな世界に足を踏み入れている。

 

 空は藍色に塗られていて、シールに貼られているような感じの星たちが光っている。

 

 そんな中少年が来ていたのはとある洞窟。これは先日彼が発見したものだ。しかも、ただ自然にできた洞窟ならまだしも突如としてできた大穴。これに対して少年は好奇心を燃やした。もしかしたら、宇宙人がいるかもしれないし、お宝があるかもしれない。

 

 そんな淡い希望を心に持って少年は穴へと入る。

 

 

 少年の姿はやがて霧に包まれ、その影も形も分からなくなっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここか、例の神隠しを引き起こす洞窟というのは」

 

 三人の少年達の一人の真ん中を歩いている少年が言う。赤いジャンバーに青いジーンズを着て、スマホを片手に洞窟を見ている。その顔色はわくわくとしているように見える。

 

「あぁ、ここだぜ兄ちゃん」

 

 真ん中の少年に向かって言う少年。どうやら彼の弟らしい。緑色のジャンバーに青いジーンズを着ていて、こちらも何処か好奇心旺盛の顔をしている。

 

「ねぇ、やめとこうよ。ここ心霊スポットで有名な所なんでしょ?」

 

 兄と呼ばれている男の右隣にいる少年が言う。緑色のジャンバーに長ズボンを着ているが、兄弟と違って何処か不安げな顔をしている。

 

「おいおい、永倉。今になってビビったのか?『おまえが面白い動画のネタがないか?』って訊いてきたから来たのによ〜」

 

「そうだぜ〜お前のためにわざわざ友達であり、同じ人気動画投稿者が来たのによ〜」

 

 そう。彼らは幼馴染であり、人気動画投稿者である。共にホラゲーをしていて、時たまコラボもしたりする仲だ。

 

「よし、行くぞ。お前ら!」

 

「待って、藤堂!‼」

 

 永倉は二人を静止させると、スマホの電源をつける。そして今話題のゲーム、艦これを開くと癒やされている顔になって、

 

「あぁ、可愛いなぁ長月は〜♪」

 

 と、さっきとは打って変わって嬉しそうにする。これに二人は呆れたような顔をし、

 

「お前、どんだけヨメ艦のこと好きなんだよ」

 

「俺も兄ちゃんもお前のヨメと同型のヨメ艦で可愛がったりするけど、お前のその愛情は異常だよなぁ」

 

 と、ため息をついた。

 

 

 この時、彼らは気がつかなかった。この森全体、いや彼らと洞窟の周りが霧が包まれ始めていることに。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ウヒ〜、中が暗いなぁ〜。これじゃあ、カメラに何映ったか分からねぇよ」

 

 そんな愚痴をこぼしつつ藤堂·弟はカメラを持って中を映す。

 

 通常動画投稿は一つの動画を一人の、一つのチャンネルが一本の動画を使う。今回の場合は弟のチャンネルでやる事になったのだろう。

 

 そんな弟を尻目に藤堂•兄はスマホを使って、この洞窟の情報を仕入れている。

 

 

 そもそも始まりは九ヶ月前。この洞窟を発見したという少年が行方不明になった事から始まった。

 

 警察の懸命な捜査にも関わらず、何一つ証拠が残っていなかった。警察はこれを失踪事件として済ませた。

 

 

 だが、これに違和感を感じていた人がいた。それは少年の同学年の友人二人だ。彼らは少年が行方不明になる前に電話で話しており、直前ガッという何か鈍い音が聞こえたと同時に少年の声が聞こえなくなったという。そして、その後ズリズリという引きずる音がし、意図的にしか感じられない切り方をされたからだという。

 

 その二人がこの洞窟へと行き、手がかりを探しに行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、友人二人もまた行方不明になった。これまた同じで本人達の物などは何一つ見つからなかった。

 

 

 これにネットは大騒ぎした。

 

 そして、いつしか『神隠しの洞窟』と呼ばれるようになった。

 

 これに興味本位で行った少年一人もまた行方不明になり、さらに肝試しで行った青年達四人もまた同じようになった。

 

 

 

 

「兄ちゃん、どうだった。何かいいネタは見つかったか?」

 

「いいや。ただ、この洞窟ガセネタである可能性が高いぞ」

 

 そう言って、永倉と弟に兄はスマホを見せる。

 

 それはインターネットのブログや動画などだが、霊っぽいものは何一つとして出てこず、むしろやっている人達が不満げになるくらい何もなかった。

 

「ハッハー……これはガセかもな」

 

「でも、本当かもよ……現に起きているし」

 

 そんな永倉の台詞に藤堂·兄は鼻で笑う。

 

「んな訳ねぇだろ!それより行くぞ。なんにしてもネタは必要だからな」

 

「だな〜♪」

 

「そうだね……うん、そうだ!ネタは必要だからね!」

 

「アハハ!その調子だぜ、永倉!」

 

 アハハハ

 

 三人の笑い声が洞窟内にこだます。人がいないこともあってかよく響く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、この時誰も気がつかなかった。

 

 

 そんな三人を見ている存在がいることに……

 

 

〈 ● 〉 〈 ● 〉    〈 ● 〉 〈 ● 〉 〈 ● 〉 〈 ● 〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どこまで続くんだろうね」

 

 懐中電灯をつけながら永倉は呟く。

 

 その顔には不安げな顔色が出ている。

 

 それにさぁな、と藤堂·兄は言う。 

 

 実際のところ、三十分経っても深層についていない。一体どれだけ歩けばいいのか彼らも分からない。

 

 しかし、そう考えると、ここで遭難する、というのもあるかもしれない。だとしたら、やっぱりガセネタかもしれない、藤堂•兄はそう考える。

 

「やっぱガセか……」

 

 そう呟くと共に永倉の方へと顔を向ける。同意を得るためだ。

 

 しかし、彼にその同意が来ることはなかった。

 

 

 何故なら、そこに永倉の姿はいなくなっていたからだ。

 

 

 これに目を丸くして藤堂·兄は弟に目を向ける。そして、兄は目が張り裂けんばかりに見開いた。対する弟はかなり冷静そうにしていて、余裕もどこか本人にはありそうだ。それどころか目を大きく見開いている兄を鼻で笑うような目をしている。

 

「どうせ、怖くなったから先に戻ったんだろ。行くぜ兄ちゃん」

 

「あ、あぁ」

 

 そう言って後ろを振り返るのをやめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 しかし、この時藤堂·兄が目を大きく見開いていたのは永倉がいなくなっただけではなかった。

 

 実は藤堂·弟の後ろに緑色の髪の毛のようなものが見えたのだ。

 

 しかし、それはほんの一瞬。しかも緑色の髪の毛なんて、この現実に染めない限りいる訳がない。そう考えると、気のせいかと思い彼は歩を進めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

〈 ● 〉 〈 ● 〉 〈 ● 〉 〈 ● 〉

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、そろそろ最深についてもいいと思うが……」

 

「そうだな」

 

 かれこれ、兄弟は三十分以上この気味の悪い洞窟を歩いていた。懐中電灯で辺りを照らさない限り視界が真っ暗で何も見えない。

 

 ヒタ、ヒタ…ツカ、ツカ…

 

 足音が密室のせいかよく響く。

 

 ヒタ、ヒタ…ツカ、ツカ…テク、テク…

 

「ん?」

 

 足音が一つ増えた。永倉が戻ってきたのだろうか……そう思っているとガシャンという機械が落ちる音がする。カメラの手渡しをミスったのか。そう思い、藤堂•兄は振り返る。

 

「おい、永倉やっと戻って……え?」

 

 そこには永倉はいない。それどころか、藤堂•弟の姿がすっと消えている。ただ、あるものといえば彼が持っていたカメラだけだ。

 

 藤堂•兄は恐る恐るそれを取る。カメラは録画画面から再生機能になっている。恐らく落ちた反動で録画ストップボタンが押され、再生ボタンもまた押されたのだろう。彼はそれを見る。何か分かるかもしれない、そう思ったからだ。そして、あわよくばこれが自分に対するドッキリであることを願った。

 

 しかし、その期待は裏切られた。

 

 映ったのはただ自分達を映した映像と、カメラが落ちる前に撮られた最後の瞬間に映っていた謎の髪の毛だった。その髪の色はさっき彼が見た緑色ではなく、綺麗な水色の髪だった。

 

「ひっ!」

 

 恐怖で彼はカメラを落としてしまう。ガッシャンとまた音がする。

 

 しかし、そんな音は今の彼には聞こえない。

 

 藤堂•兄は今、恐怖に支配されていた。

 

 この謎の恐怖現象。彼はようやく、ここの危うさを知った。しかし、彼は一方で何かこの先に秘密があるのでは、という思いが出てくる。それは好奇心に近いものだったが、そうでもなかった。

 

(ここで仮に逃げたとしても助かるとは限らない。もしかしたら逃げたところをやられるかもしれない。それだったら裏をかいて、ここで奥に進めれば道があったりして助かるのでは?)

 

 彼はそういう思いに徐々になっていく。

 

「そうだ。そうすれば……助かるかも!」

 

 そう思い、藤堂•兄は奥へと進む決意をした。

 

 

 

 

 

〈 ●  〉 〈  ●   〉  

 

 

 ザッザッ

 

 砂を踏む音がする。

 

 

 藤堂•兄は慎重に後ろを見ながら進む。

 

 彼には最早当初の勢いがなく、どこか子犬のような臆病さが彼に出ている。

 

 

 ザッザッ

 

「どこまで進むんだ。これ?」

 

 恐怖に支配された顔をしながら彼は行く。

 

 そんな彼にいよいよ訪れる約束の時……

 

「ん?あれはまさか!?」

 

 藤堂•兄は懐中電灯によって解明された最深に辿り着いた。彼は希望に満ちた目で駆け寄った。

 

(やった、助かる!)

 

 藤堂•兄は最深へと光を照らす。

 

 

 

 

 そして……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ガン……ドサッ、ズリズリ

 

 何かを引きずる音が洞窟の最深からする。

 

 そして、カチッと懐中電灯の光がつく。

 

 懐中電灯を持っていたのは少女だった。茶色い長い髪の毛を後ろに結び、身長は小学生か中学生ぐらいだが、何かを引きずっている。

 

 やがて少女はある場所につくと、それを置いた。

 

 トサッ

 

 それは藤堂•兄だった。どうやら気絶しているようでぴくりとも動かない。。

 

 しかし、その横、斜め右には何かある。

 

 それは藤堂•弟と永倉だった。

 

 この二人もまた気絶している。藤堂•弟なんかは目を開いて、気絶している。

 

「あ、やっと来た!もう待ってたよ!」

 

「さっさと行こうぜ。提督の意識が戻る前にさ」

 

 そう言っているのは緑色の長い髪の少女と水色の少女だった。

 

「ごめんね。二人共」

 

 そう言って、ちらっと藤堂•兄を見る。

 

 その目は獲物を捕らえた猛獣の目だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 さて、ネタバラシをしよう。

 

 きっかけはとある艦娘のいる世界で十一人の少女達、睦月型の会議から始まった。

 

 彼女達は全員ケッコンカッコカリをそれぞれの提督達とやっていた。

 

 しかし、それは所詮二次元と三次元のもの。そのため彼女達は自分達の提督と話すこともできないし、触れることもできない。

 

 そこで彼女らは会議の末、一つの解決策を見出した。

 

 それは提督をこっち、二次元に無理矢理住ませわせてしまうことだ。

 

 そうすれば触れ合えるし、一緒にいられる。

 

 そう思った彼女達の次の行動は素早かった。

 

 明石に頼んで、二次元と三次元が行き来できる穴を作ってもらった。

 

 それがあの洞窟。すなわち、あれは睦月型の提督を捕まえるための罠だったのだ。しかも、この洞窟は自分たちの提督かどうかを測ってくれる便利機能があり、それによって提督かどうか見極めることができるのだ。

 

 さて、そんな罠に最初に嵌った少年(冒頭にでていた)は菊月のケッコンカッコカリの提督で彼は洞窟に入ってしまい菊月に連れて行かれてしまったのだ。

 

 さらに、その後に来た友人二人は三日月と望月の提督で、連れてかれ、それからは順に皐月、睦月、卯月、弥生、如月と過去に来た青少年達は連れて行かれた。

 

 そして、今。

 

 藤堂兄弟、永倉は連れて行かれようとしている。

 

 ついでにだが、三人の相手もそれぞれ言うと、永倉は彼自身が好きな長月、藤堂•弟は水無月、そして藤堂•兄は文月と言った具合だ。

 

 

 そんな事を知らず彼女達を前に気絶している三人。かたやそれを値踏みするかのように見る彼女達。

 

 

 

「もう、司令官は何も無い最深に希望を見出していた時の姿は可愛らしかったですよ」

 

 文月がボソリと言う。

 

 その目にはハイライトがない、ブラックホールのような暗さがどこか目にはあった。それは全員同じだった。

 

「これからよろしくね、提督」

 

 最後に誰かがそうつぶやいた。

 

 




週いちで出したいな〜と思っています。
それと良ければ感想も送ってください。
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