ー追記ー
今回は分かりにくいヤンデレ艦娘を書きました。良ければ予想しながら読んでください。
自分的には分かりにくくしたつもりです。
「朝だよ、起きてお兄ちゃん!」
妹の声に俺は目蓋を開ける。
クーラーからくる風が心地よい。やはり、直に風を感じるのはいいもんだ。
そう思いつつ、俺は布団を抜け出す準備をする。だが、如何せん、密室にした状態で二十八度に設定したため、部屋の中が冬のように寒い。だから、布団から出ようと思っても中々抜け出せないのだ。そうやって、俺はぐだくだとやっていくうち再び眠気が来る。やはり二度寝が起きてしまうのは必定か。
「起きて!お兄ちゃん」
ついにバンと音を立ててしびれを切らした妹が部屋に入ってくる。
妹は綺麗な黒色の髪を垂らして、ピンク色のエプロンの後ろには全く着崩れのない制服がある。右手には料理で使ったと思われるお玉が銀色に輝やいている。
「すまんすまん、夕子。今行くから待っててくれ」
俺は妹が部屋の外に出ると同時に制服に着替える。そして、それが終わると今日の学校の用意をする。これらが終わったのは起きて十分ぐらいだった。
朝ごはんを妹と食べたあと、少し時間に余裕が持てたため俺は部屋に戻り、パソコンを開く。目的はパソコンの中にある『艦これ』というゲームをすることだ。
このゲームは俺が中学生ぐらいのときに出来たゲームで、かなり人気をよんだゲームだ。俺も例外ではなく、やり始めてからずっとはまっている。そんな中でもやはりお気に入りなのは……。
ピンポーン
家の前のインターホンが鳴る。
(誰だろう?)
窓から玄関を見下ろすと、下に少女がいる。
その姿を俺は知っている。
幼馴染の潮崎花蓮だ。
彼女は俺の幼馴染で、数少ない友達だ。そんな彼女がここで待ってくれるのは、いつも彼女と一緒に学校に行くからだ。……え?女子との登校はうらやまけしからん?知るか、友達と通うのに悪いことに文句ある?
「……お兄ちゃん、潮崎さんが来たよ」
妹の声がする。
俺は返事を返すと、勉強道具が入った鞄を持って出て行った。
「あ!遅〜い!!」
「ごめんごめん、潮崎」
玄関前で待っている潮崎が俺に気づき、プクゥと頬を膨らます。潮崎は俺の一つ下の学年で、夕子とは同級生。このようにちょっとばかし茶目っ気がある娘だが、その可愛らしさや胸の大きさなどから、かなり男子にモテる。そして俺はこの娘のことを心の中で『潮二世』とあだ名をつけている。まぁ、これはただ単純に彼女が『艦これ』の潮というキャラクターに似ていることからつけたのだが……。そうそう、似ているといえば夕子もそうだ。あいつもかなり男子にモテるような顔をして、さらに『艦これ』のキャラクターに似ているのだ。しかも、それは俺のお気に入りの娘と来る。名前は……
「月夜君、なにぼーっとしてんの?」
潮崎が心配そうに顔を覗き込む。少しだけだが、髪からいい匂いがする。
「あぁ、すまんすまん。行こうか」
意識を現実に戻すと、俺は速足で歩き出した。
…
……
………
…………
……………
四時間目の授業がチャイムの音と同時に終わる。俺はふと、スマホをつける。目的はと言えば、スマホの中に入れてある『艦これ』をすることだ。
これをスマホにも入れた理由は四年前にパソコンが一時壊れかけたからだ。その時の俺はずっとやり込んでいた『艦これ』のデータがなくなるのを悲しみ、せめて、新しいデータでまた一から……と思って、スマホに『艦これ』を入れたのだ。まぁ、その二日後にはパソコンは直ったんだけども。だから俺には二つの『艦これ』のデータがある。
俺はこの二つの内メインでやっているのはパソコンにし、スマホの方はサブでやる事にした。そして、やる時間も決めた。メインのパソコンの方は家で暇したときに、サブのスマホの方は学校の昼休みとかにやる。
まぁ、そんな訳で俺は今日もいつも通りアプリを開く。
(おっ!イベント海域が出てる)
見てみると、今日の昼過ぎにやることになっていたイベントが始まっている。
(やってみようっと!……あ!そうだ!三ヶ月ぶりにケッコン艦であるあの娘を入れよっと!)
俺は自分の一番好きであるケッコン艦の娘を入れた編成を組み、出撃させた。
…
……
カァカァと鳴く烏。時刻は午後四時。六時間目がちょうど終わろうとしている。
担任の先生は必死に今やっている単元を説明している。
しかし、その声は右耳からスーッと通って、スポッと左耳から落ち続ける。
何故なら俺の心は今喪失感に支配されているからだ。
理由は昼休みにやっていた『艦これ』だ。
俺はあの時、満身創痍の気持ちでやっていた。実際ケッコン艦を入れた編成で今までどんなステージでも負けた事はない。それだから、と思い俺は慢心していたのかもしれない。だが、その代償は計り知れなかった。
予想外の敵の強さを前にケッコン艦であった艦娘が撃沈してしまったのだ。
これに俺は多大なる喪失感と罪悪感を覚え、今こうなってしまったのだ。
そんな心を誰かが洗い流してくれる筈もなく、時間はチクタクチクタクと、どんどん進んでいく。
やがて、授業の終わりを告げるチャイムが教室に響いた。
キーンコーンカーンコーン……キーンコーンカーンコーン……
だが、それはゆっくりと何かが始まる音にも俺には聞こえてくる。
「あ!お兄ちゃん!」
トボトボと歩く俺の前に夕子が出てくる。
どうやら校門の前でずっと待っていてくれていたらしい。周りを見渡しても彼女の友人や潮崎もいない。
「もう!ずっと待っていたんだよ〜!!」
「ごめんごめん」
ハハッと誤魔化し笑いをして追求から逃げようとする。これに夕子は「もう!」と言いながらも、顔に笑みを浮かべる。
俺はそんな夕子の様子をジッと見てみることにした。
長い綺麗な黒髪、凛としている真面目そうな顔、中学生ぐらいの身長(まぁ、高校一年生だから、普通このぐらいなのかな?)、心を見透せそうな青い目、少しずつ大きくなっていっている気がするお腹……
「ちょっと、今失礼な事を思っていたでしょ?」
「なんでバレたし」
「お兄ちゃんの視線なんて全てお見通し何だから♪」
そうか。俺、もうお前に嘘をつけないや。
「まぁ、反省してくれるならいいけど」
チラッとこちらを見る夕子。あっ、謝れって意味ですか、はい。
「すいませんでした」
「分かればよろしい」
満足そうな笑みを浮かべる夕子。その顔は夕日に照らされ、綺麗に見えた。
「お兄ちゃん、ご飯が出来たよ〜♪」
「おう!」
階段を降りてダイニングに向かうと、美味しそうな匂いがする。匂いの元に目を向けると、そこにあるのは俺の大好きなハンバーグだった。
「お!俺の今日の夕飯はハンバーグか!」
「うん!」
いやぁ〜久しぶりに食えるなぁ、夕子のハンバーグ。
「さ!早く食べようお兄ちゃん!」
「あぁ」
俺は席に着く。妹もまた席に着く。
「「いただきます!」」
その言葉と共に一口ハンバーグに箸をつけ、口に頬張る。
うん、美味い。やっぱり夕子のハンバーグは美味い。
「どう?」
顔を少し赤くしながら夕子は訊く。俺はそれに対して微笑みで返して、
「美味いよ」
そう一言言う。
夕子はそれを聞いて嬉しそうな表情を浮かべる。
この時、ふと三ヶ月前のことを思い出した。
三ヶ月前まで夕子は俺に怒ってばかりいた。恐らく、学校とかで上手くいかず、ささいなことでむしゃくしゃしていたのだろう。それを誰かに打ち明ければ彼女は楽になれたのかもしれないが、あいつには俺を除く家族は他界してしまっているため、それを打ち明けることが出来なかったのだ。
打ち明けることが出来なければ一人でストレスを貯め込むことになり、結果的に夕子の唯一人の家族である俺に怒りの矛先が向かってのだろう。
あいつは俺に罵声を浴びさせたり、時には暴力もしたりした。俺はそれに逆上して、彼女に罵声を浴びせたり、彼女のミスを嘲笑したりした。
今思えば、これ等の行為は全部行き過ぎていた。だが、当時の俺等はそれが普通だった。当然、俺等は事実上この時にはもう絶縁状態どころか犬猿の仲となってしまった。
そんな俺等に転機が訪れた。それが三ヶ月前だ。
夕子が今までの行為について謝ってきたのだ。俺は当初これを嘘か何かだと思い、受け取らなかった。だが、次第に誠意だと分かってきて、俺も夕子に今までの行為を全て謝り、晴れて仲直りした。
長々と回想を終えた俺はハンバーグに再び齧り付く。その時だった。ふと、俺はあることに気づいた。
(そういえば……)
俺はふと今日の『艦これ』をやっている時の事を思い出す。
イベントをやっている時なのだが、今思えば変な事が一つあった。
それは例の沈んだケッコン艦のことだ。
彼女を入れた編成は皆練度は限界のところまでちゃんといっているパーティーだ。それはケッコン艦も同じだ。
だが、その時のケッコン艦はどうもおかしかった。
攻撃は外しまくるわ、回避も全くできないわ、すぐ大破になったりと、とてもじゃないが練度と強さが釣り合っている気がしなかった。
あれはバグだったのだろうか?
「あれ、お兄ちゃん、どうしたの?」
夕子が小首を傾げて、こちらを見る。
そんな妹の顔を見ていると、なんだか微笑ましくなってきた。
「なんでもない」
俺は再び夕飯に箸を伸ばした。
これで終わりです。今までありがとうございました。