すまない…一輝とステラの決闘は全篇カットなんだ、本当にすまない…。
一輝も原作より強化されてるんだが、原作と違う流れに出来ない作者の文章力をどうか許してほしい……。
――――結論から言うと、黒鉄一輝は見事模擬戦で勝利を収めた。それも数十秒目視するだけで相手の剣技を習得してしまう異能『
俺だったら安易に手の内を晒すなんてリスクの高いことしたくはないが、それが不利にならないのがあいつの強みだよな。シンプルイズベストに強いから多少の小細工なんて歯牙にもかけんし、破るなら正面から地力で上回る必要がある。逆に言えばスペックで負ける相手は非常に厳しくなるが、それが出来る高校生がどれだけいるのやら。
「―――『良い試合だった』、そういう割にはあまり愉快そうな顔してないじゃないかい。うちからみても良い『見世物』やったけど?」
「いや、内容については文句ないんだがあのお嬢の戦闘スタイルがちょっとな。あの子お国じゃ大層なアイドルなんだろ?『魔導騎士』は有事の際には国を守る盾だが一伐刀者が傷つくのとあれが傷つくのじゃ意味合いが変わってくる。現王は相当な子煩悩だとも聞くし、皇女殿の身の安全は国家の有事だって自覚が足りないんじゃないかとな」
「ふむふむ、たしかに国民感情の暴走で亡国の危機に瀕した国は少なくないからねえ。一兵士としては良くても国の旗頭としては及第点以下という訳だな。うちも一回王様に会ったことあるけど、確かに娘が死ぬか一生モノの傷を負えば落としどころを見誤りそうだ」
鬱陶しい連中から離れて見物してたら妙なのに絡まれた。無駄にデカい着物を羽織り芸者の様な下駄をはいたチビ女。ボッチの傍で観賞とは酔狂なことだ。……類友、とかか?
「…何か凄く失礼なこと考えてないかきみ?まあ良いけど、次は君の番なんだろう?なっさけない連中が逃げ出したせいで黒坊の実力があんまり伝わってないぞ?」
言われてみれば、入口から腰抜けどもが臆面もなく再入場してるところだった。なるほど、さっき理事長が言ってたのはこれを見越しての事か。
「それで?きみの対戦相手は生徒会の誰かなんだろう?何の準備もしなくて良いのかい」
準備か、そんなもの今更不要だ。俺にとっては試合ですることなんて何も無いからな。
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「――――それではこれより選抜戦第0試合を行う。初めに言っておくが、この試合はこれから始まる選抜戦の見本として記録し在校生はもとより、新入生に対しても広く公開する。そのかわり今試合に関して黒星は無効とし白星は有効とする。これは自らの業や癖をつぶさに研究されるデメリットに対する対価と思って欲しい。では双方固有霊装を展開しろ」
……映像に残すとか聞いてねえぞ。まあ今更文句をつけても仕方がない、それに他の生徒より一試合多いってのは勝ち星で代表が決まるトーナメント制に置いてこれ以上の報酬もないだろう。―――おや、一輝の奴間に合ったのか。…なぜ皇女殿との距離が近いのかは後でゆっくり
「…余裕か、それとも某を舐めているのか貴殿は?決闘を前にして対戦相手から目を背けるとは」
「おっと、そんなつもりはないさ。それにしてもアンタが出てきたか生徒会書記。どうせ黒星がつかないなら会長殿と闘りたかったが」
「某が不足かどうかは剣で語れ、それが伐刀者というものであろう。早く獲物を抜くが良い」
おや、挑発には乗らんか。流石は生徒会……あれ、この学園のモラル低すぎないか?生徒会以外は沸点低いうえにすぐ凶器取り出すって騎士以前に人としてどうだろうか?
書記さんの返答には行動で応えよう。え?掛け声?あの『来てくれ、<隕鉄>』とかいうあれか。誰がするか面倒臭い、それに俺の場合
「―――やはり面妖な。久方ぶりに見たな、その『人形』共は」
虚空から呼び出したのは十体ほどの人型。ガラス細工の様な見た目に、飾り気もへったくれもない丸い顔にマネキンのような体のそれらは、それぞれ突撃槍に刀、小太刀を装備させてある。
「―――――それでは、始めッ!!」
理事長の号令と同時にお互い動き出す、まあ俺は微動だにしていないんだが。とりあえず俺が呼び出した兵隊の『ポーン』達に
対して書記は大きく後ろへ飛び下がり、ポーンが追い付くまで固有霊装である斬馬刀を振り回し続けると一転攻勢に出る。最初に飛び込んだ4体の突撃槍が一閃で薙ぎ払われ、続く6体の刀持ちも容易く撃破される。まあ、最後の一体を潰す頃には、ビデオの巻き戻しの様に俺の前に10体が同じ態勢で構えていたんだが。
「ぬう、やはり厄介。一体一の決闘で多対一が出来る上、際限なく呼び出せる持久力か。だが!一体の実力は然程ではない。この程度で某を阻めると思うなあッ!!」
だろうな、だから以前の俺は鍛えるなんてしてこなかった。ポーンの修理・再出現は実質消費ゼロでしかも3秒あれば一体出し直せる。これを延々こなせるんだから上を目指さなくてもそれなりの評価は得られた。だが、それも去年までの話だ。
片を付けるべくこちらへ猛進してくる相手に、もう一度ポーンを嗾ける。ただし、先程と違うのは速さだけでなく造りもだが。
――――『ガキンッ!!』
「なッ!?馬鹿な、最大まで高まった某の『クレッシェンドアックス』を槍一本で――ッ!」
まあそんな反応になるわな。まとめて薙げた雑兵の一騎に自慢の伐刀絶技―――重さは変わらずに斬撃重量のみ累積していく『クレッシェンドアックス』――――を真っ向から食い止められたんだからな。
…だが、呆けてる暇なんて無いぞ?多対一で動きを止められることがどれだけヤバいと思ってる。
―――『ズブリッ』
「――ッ!?ぐあッ!い、何時の間に後ろへ――『ドッ』『グサ』『グチャッ』―――ガアアアアッ!!」
―――ほらな。気をやっている間に回り込んだ刀持ちが背後から獲物を突き立て、均衡が崩れた瞬間槍持ちが受け止めた斬馬刀をカチ上げ、残りが一斉に無防備な胴へと喰い込ませていく。
これで終わりかと思えば、この状況でもまだポーンを叩き潰し、俺を倒そうと前進してくる。良く見れば全力で魔力をバリアに回していたようで深くは刺さってないらしい。それでも決して浅い傷じゃないんだが、物ともしてないな。その度胸は買うが勝算の無い特攻に付き合うのも馬鹿馬鹿しい。明らかに精彩さが落ちたその体でこの距離は詰められん。
追加でさらにもう20、万難を排してパイクという馬上の相手を間合いの外から屠るための長身の槍を持たせて呼び出し、槍衾で突撃させる。思った通り意地だけで向かってきていたようで、成す術もなく書記は串刺しとなりそのまま高々と捧げられる。
……良かったな、俺が幻想形態(まあ早い話が攻撃しても死ななくなる状態)で終わらせて。それにしても、客席から悲鳴を出したり目を背ける奴が居たのはどういう了見だ?お前らは近い将来
「―――そこまでだ。勝者―――落合春雪!」
何はともあれ、これでまずは一勝か。しかも他と違って一試合余裕があるのは大きい。それに、序列4位でも『ポーン』だけで済むと分かったのも大きな収穫だ。好調な出だしと言えるだろうな。
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「―――あれが、あいつの戦い…。でもさっきの刀の奴の動き、あれってイッキの―――ッ!」
「うん、『ポーン』をより精巧に動かすためにモーションアクターをね。僕の方も自分と同じ剣を使うしかもスペックが上の相手と何度も戦えて良い鍛錬になったんだけどね」
回復した一輝と共に試合を観戦していたステラであるが、その顔色は悪い。つい数時間前には飄々としていた相手と同じとは思えない、実戦での冷たい一面が原因である。勿論騎士として敵に手を抜くなど侮蔑も良い所だが、あそこまで攻撃に躊躇が無い人は初めてだった。最初のクリーンヒットも、相手が防いだから動けたがそうでなければ間違いなく脾臓を抉り抜いていただろう。
「安心してステラ。彼はただ国防を司る心構えが出来ているだけだ。決して人を傷つけることを軽んじている訳じゃない」
「…ごめんなさい、イッキの友人を貶すようなこと考えて」
「まああれを見たら仕方がないよ、春雪もそんなこと気にする人じゃないから。…それにしても参ったな。彼にとって『ポーン』は所詮数打ちの雑兵なんだからね、どう攻略したものだか」
「あれより上、しかも『ポーン』なら一つや二つじゃないってことね。……良いじゃない!遥々日本まで来た甲斐があったわッ!!」
先程とは打って変わって闘志を燃やすステラに、一輝は安堵するように笑みを返していた。
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