黎明の堕天使   作:終わりのカオス

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続きました!
でも、これ以上続くかはわからない。


脱出/悪魔の片鱗

ある日突然

未知のウイルスによって

世界は滅びたのだという

生き残ったのは

子供だけ

そして

その子供たちは

地の底より

現れた

吸血鬼たちに

支配された―

 

*****

 

百夜孤児院。

親から虐待を受けたり、親が自殺してしまったなどの、成長するうえで重大な問題を抱えた子供たちがたくさん集まった場所。

 

彼らは四年前の世界の滅びを生き残り、吸血鬼に捕らえられた。

京都地下、吸血鬼の第三都市「サングィネム」。

彼らが家畜として飼われている小屋の名前だ。

 

そんな薄暗い雰囲気の場所でも、彼らは笑顔を忘れない。

 

信じているから。

 

「強くなって吸血鬼をぶっ殺す!」

 

その言葉を。

 

百夜優一郎を。

百夜ミカエラを。

百夜理人(リヒト)を。

 

彼らが守ってくれるから。

彼らが戦ってくれるから。

 

そして、その三人も子供たちの期待に応えようとした。

 

だから、頑張った。

 

一人は、常に吸血鬼を殺す方法を探したり、強気な言動をとって皆を励まそうとした。

一人は、自分の血を「貴族」に差し出してまで、地下都市「サングィネム」から脱出する方法を見つけ出した。

 

そしてもう一人は…聞いてはいけない悪魔の声に耳を貸してしまった。

 

*****

 

ミカエラの持ってきた地図を頼りに、皆でこの地下都市を脱出することになった。

ミカエラが先導役。

俺と優で殿(しんがり)を努めて、万が一のときも対応できるように。

 

それがこの様だ。

 

せめて、ガキどもは逃がそうと。

優とミカたちだけでも逃がそうと。

 

向かっていった。

 

「貴族」に。

 

無駄だった。

 

時間稼ぎどころか、相手にもされなかった。

 

鉄砲の弾も当たらない。

 

視認すらできないスピードで横を通過された。

 

「あっ」

 

そう思って、振り返った時には、すでに一人殺された。

 

体が動かなかった。

 

目の前で殺されていく。

 

目に映るすべてが緩慢に見えた。

 

 

「そう、その顔♪希望が消え去って絶望に濡れた時のその表情」

 

 

「貴族」が何か言い始めた。

 

 

「だからこの遊びはやめられないんだよね~~~」

 

今、なんて。

 

 

「あ、そび?」

 

 

やっと口が動いた。でもそんなことよりも。

今、こいつはなんて言った?

 

 

「そう。あ・そ・び」

 

 

それだけ言って「貴族」はまた一人殺していく。

 

 

「や、やめろぉー!」

 

 

ミカが叫ぶ。

 

ダーン ダーン

 

優が三つある内の自分で持っていた銃を撃つ。

 

でも、止まらない。

 

太一。

文絵。

亜子。

香太。

千尋。

茜。

 

そして、ミカ。

 

一人ずつ死んでいく。

 

 

「い、や。や、めろ…」

 

 

嫌だ。なんでだ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。

 

なんで吸血鬼ごときに。体の奥底から憎しみと力が溢れ出る。

 

こんな奴ら、もう、コロシタイ。

 

《そう、そう。ボクに身体を貸すんだ。そしたら、代わりに殺してあげるから》

(ホント、か?アイツを殺して、くれるのか?)

《ああ、もちろん。だから、もっと、ボクを、受け入れてよ》

(受け入れる。受け入れるから、早く、アイツを…)

 

 

「ウ、ウォオオ!アアア!グァオアオアオオオオ!」

 

 

そこで意識が暗転した。

 

*****

 

「ウ、ウォオオ!アアア!グァオアオアオオオオ!」

 

 

叫びとともに、理人の背中から、黒いナニカがしぶきのように飛び出し、翼のような形を形成する。

 

 

「おお、これは、ちょっとヤバいかもね~」

 

 

相変わらず何を考えてるのかわからないような口調で「貴族」フェリド・バートリーが呟く。

 

 

「お、おい。リヒト!」

 

 

ミカエラに庇われ、理人と一緒に逃げろ、と言われた優。

始めはミカエラも連れて行こうとしていたが、他でもないミカエラ自身に止められた。

 

だから、理人だけでも助けようとした矢先に、雄叫びが上がったのだ。

 

 

「コウモリのぉおお、分際でぇぇえ、この俺に刃向かうかぁぁ!!!」

 

「うわっと。ヤバイヤバイ。強すぎないかなぁ?どんな呪いを背負ってるんだよぉ、まったく」

 

 

理人が右腕を前に突き出したことを合図のようにして、翼のような黒いナニカから飛び出してきた羽のようなモノによる攻撃を避けながら、フェリドは内心焦っていた。

 

(さすがにヤバイかもねぇ。まさか子供相手にこれを使う日が来るとは)

 

 

「剣よ、私の血を吸いなさい」

 

 

フェリドが、何処からともなく現れた剣を握れしめて、そう口にすると、茨のようなものが手首に巻き付いてきて、スーッっと血を吸っていく。

 

 

「これくらい強いんだったら、計画とは違うけど、生かしておきたいねぇ」

 

 

若干意味のわからないことをほざきながら、フェリドが剣を振ると、たちまち羽による攻撃が、

 

ガキン ガキン

 

と止められていく。

 

 

「ウォオオオ!コウモリィイイ!死ねぇぇ!」

 

 

先程よりも多くの羽が宙を舞い、フェリドに向かって駆けて行く。

 

それだけでなく、理人自身が猛スピードでフェリドの傍に出現し、腕を突き刺そうとする。

 

 

「ウッオォォオオオオ!」

 

ガキン

 

「チッ。ほんとにヤバイねぇ。ここはひとつ…」

 

(死んだふりでもするかなぁ)

 

 

フェリドに貫き手を遮られたと判るやいなや、今度は左右に腕を振る。

 

これには、フェリドも対応が遅れて、

 

ズバッ

 

という音をたてて、首が胴体から離れていく。

 

 

「ウオオォぉオオオオェァアオオ!」

 

 

フェリドを殺した理人は突然うずくまり、うめき出す。

 

それに従い、背中の黒いナニカもまるで制御を離れたように暴れだす。

 

 

ヒュン ヒュン ヒュン

 

四方八方にバラ撒かれる凶刃。

 

それは、優も例外ではなく、今までただ呆然と眺めているだけだったのが、我に返り、

 

 

「おい!理人!逃げるぞ!奥からもっといっぱい」

 

ブシュ ブシュ

 

と、太腿や腕に羽が刺さるのも厭わず、凶刃の中心にいる理人の元に辿り着く。

 

 

「ミカと約束したんだ!お前だけでも一緒に逃げるって!」

 

 

そうして、半ば意識を失った状態の理人を引っ張り、階段を登っていく。

 

 

「おい!フェリド様が!…貴様ら、家畜の分際でぇ!」

 

 

吸血鬼が後ろからどんどん近づいてきているのが判る。

 

それでも、優は後ろを振り返らずに逃げ続けた。

 

自分だけで逃げたらもっと早く脱出できるのに、理人を引っ張ったまま。

 

なぜなら、

 

これ以上死なせたくないから。

 

それに、

 

ここで、理人をおいていったら、ミカとの約束を守れないから。

 

 

*****

 

 

そうして、「サングィネム」から理人を連れて逃げ出した優は呆然としていた。

 

 

「な、なんだよ…これ…」

「大人はみんな…死んだんじゃなかったのかよ」

「世界は滅びたんじゃなかったのかよ…」

「み…見ろよ、理人…全部吸血鬼の嘘だったんだ」

 

 

隣で意識を失っている友に語りかける。

 

ガサッ

 

突然後ろから音がして、振り返る。

 

そこには、青年とそれに付き従うように二人の女がいた。

 

 

「よし居たぞ。《予言》通りだ」

「日本を壊滅させた百夜実験場の被検体の一人が現れた」

 

 

そこで、青年は初めて理人の存在を確認し、

 

 

「いや、二人、か。おい、少年そのガキは?」

 

 

優は自分に言っているんだと気づいて、答える。

 

 

「理人の、理人の背中から黒いナニカがいっぱいでてきて、それで、それで、吸血鬼を殺して」

 

 

辿々しい口調ながらも何があったのかを語る。

 

 

「吸血鬼、が。死んだ?」

 

(死んだふり、か。そこまで生かしておきたい人材なのか?)

 

 

同盟を組んでいる相手の思考を予想しながら、青年、一ノ瀬グレンは続ける。

 

 

「お前らを吸血鬼退治のために利用させてもらうぞ」

 

 

それを聞いた優は答える。

 

 

「…ああ。望むところだ」

 

「そこのお前もか?」

 

「え?」

 

 

グレンの視線を辿り、優は理人が目を覚ましていることに気付く。

 

理人は仰向けの状態で腕を空に向けながら答える。

 

 

「それで、吸血鬼どもを滅ぼせるなら!!いくらでも利用しやがれ!」

 

 

そして ここから-

世界の滅亡と

吸血鬼 天使 悪魔(堕天使)

人間の戦いが始まった

 

 

 

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文章を書くのってホントに難しいですねぇ。
作家ってすごい!

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