羽沢珈琲店の長男は廃ゲーマー   作:やまたむ

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今回の話はSAN値がごっそり減ります。

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ダイスの準備をしてから読んでください。


いつきに膝枕はいろいろ危険

 休日のいつきは平日よりも酷い。

 どう酷いのかというと、朝は起きず、夜も寝ず、昼に三時間だけ寝る、という不健康な生活を送っている。

 第二次成長真っ只中の少年が、こんな不健康な生活を送っているせいか、背が伸びることもなく今なお百五十センチ前半という低身長なのだ。

 そして、その低身長が彼の悩みでもあるのだが、解決したいならその不健康そのものの生活を改めろと言わせていただきたい。

 当然のことだが、つぐみたちも注意はしている。だが、いつきは聞き入れることはない。

 なぜなら、

 

「ゲリラが夜に来るのが悪い!」

 

 という、なんともまぁアホらしい理由で、俺は悪くねぇ!と言っているからだ。

 まぁ、夜にゲリラが来なくても、平日の昼間にくるとわかっている場合は、学校をサボろうとするので既に末期といって差し支えない。

 こんなことなら、ゲームを与えるんじゃなかったと、後悔する羽沢一家が目に浮かぶ。

 

 さて、そんなこんなで、ある春の日の休日だ。

 いつきはいつも通り、不健康な生活を送り、ゲームをしようとしたときにある現象に襲われた。

 

「熱い。だるい。頭痛い。ゲームしたい」

「ゲームはだめだからね?」

 

 そう、不健康な生活が祟り、風邪を引いてしまったのだ。

 自業自得といえばそこまでなのだが、やはり家族としてなのか心配したつぐみが、店の手伝いを切り上げ、いつきの看病へと移った。

 

「うー、別にいいじゃ、コホッコホッゲホッおぇー」

「そんな状態でゲームなんてやったら、余計に悪くなるからね。今日はお姉ちゃんが一緒にいてあげるから、ちゃんと休もう?」

「せっかくの……休日なのに、ケホッコホッ」

「はい、ゲームしようとしない。今日、スマホはお姉ちゃんが預かっておきます。って、あれ?」

 

 いつきのスマホを没収したつぐみは、電話が掛けられていることに気がついた。

 だが、十五年いつきの姉をやっているだけあり、アプリを開こうとしたら間違えて電話帳を開きそのまま気づかず、電話をかけていたのではと予想を立てる。

 いつきの様子から察するに、相当頭が回っていないのだろう。

 

『もしもし、いっくん?いっくんから掛けてくるなんて珍しいよね?どうしたの?』

「あ、ひまりちゃん?ごめんね、いっくんが間違えて掛けちゃったみたいで……」

『あれ?なんで、つぐが?』

「それなんだけど、いっくんが風邪引いちゃったみたいで……。ゲームしようとしてたから没収したんだけど、ひまりちゃんに電話かけてたみたいなんだ」

『そうなの!?わかった!すぐ行くね!』

「えっ!それはさすがに悪いよ。いっくんの自業自得みたいなところもあるんだし」

『そうじゃないの、つぐ』

 

 と、一瞬ひまりの声がまじめになり、

 

『これはいっくんからのSOSだと思うの』

 

 バカみたいな事を言い出した。

 少女マンガを理想にしちゃっている、頭が緩い子は運命的と勘違いしている。

 そう、これは完全にいつきがうっかりしていただけだ。

 いつも電話帳のアイコン付近にゲームのアイコンをセットしていた結果気づかずひまりに電話をかけていただけなのだ。決してひまりに助けてほしかったわけではない。むしろ来られる方が困ると言うものだ。

 いつきは姉と二人きりの状態を風邪ながら楽しみたいだけなのだ。ひまりがきてこの幸せな空間を壊されたくないのが、いつきの偽らざる本音だ。

 

 と、まぁ、いつきの本心はどうでもいいので置いておくとして、ひまりとつぐみだが、ひまりが羽沢家へと来ることでまとまった。

 なぜなら、つぐみはもともと、休日と言うこともあいまって、店の手伝いをする予定だったのにも関わらず、いつきの看病をしていた。もちろんいつきのことは心配だったが、店の方もちゃんと回っているのか心配なのである。いくらバイトの人がいるとはいえ、心配なものは心配なのだ。そのため、いつきに付きっきりになるのは少し避けたかった。

 そして、つぐみはひまりが家に着くまでいつきの看病をして、ひまりが到着次第、店の手伝いへと戻ることになった。

 

『それじゃ、つぐ、また後でね』

「うん。ひまりちゃんも、いっくんの事お願いね」

『まっかせっなさーい』

 

 いつきはこの瞬間絶望した。

 なぜなら、つぐみが自分のスマホを持って、店の手伝いに戻ることが確定したからである。

 目も頭もちゃんと機能してないはずなのに、こんな馬鹿げた事に関してはよく頭が回っているといえるだろう。

 

「それじゃぁ、いっくん。ひまりちゃんが来るまで、ちゃんと寝てること。いいね?」

「うん、それはケホッいいけど。なんで、俺は……手をベッドに拘束されてる……の?コホッコホッ」

「わからない?」

 

 その微笑みをみていつきは確信した。

 

「まさか、」

 

 確信したが故に絶望した。

 

「俺にゲームをやらせないためだけに!?コホッコホッ」

「そうだよ」

 

 馬鹿げた内容だが、真実なだけにいつきの心は抉られた。

 そう、馬鹿げた内容のくせにダメージをいつきは負っているのだ。

 この姉弟、二人してバカなのか?といいたいところだが、この対応をしていないと、いつきは本気でパソコンへと転びながら近づき、残りを作業するかのように、処理していき、風邪を悪化させるだろう。

 そして、それを予想できないつぐみではない。そのことを封じるため、つぐみは心を鬼にして、いつきをベッドへと縛り付けたのだ。

 つぐみから狂気を感じるかもしれないが、こうでもしないと、いつきはゲームをするためだけに、風邪のことをガン無視して行動するのだ。おそらく放置すると事情を説明せずあこを召集し、あこにNFOの周回をやらせようとする。実際過去に似たようなことをしでかして、あこの目を死んだ魚のようなものにして、巴を怒らせたことがあった。

 少なくとも、人間のクズだと言うことは、間違いないだろう。

 そうこうしているうちに、ひまりが到着したようで、ドアが控えめに開かれる。

 

「い、いっくん?寝てるー?」

「いや……起きてる……少ししんどいけど」

「そうなんだ……。って、寝てなきゃだめでしょ!?」

「そういうなら、俺のゲームを代わりに……」

「そういうのもダーメ。ちゃんと寝なきゃ」

「姉ちゃんみたいな事言うなぁ……。あ、そうだ」

「なに?ゲームとかは無理だよ?」

「俺のスマホとって?」

 

 そう言われ、ひまりは部屋を見回すが、スマホらしき物は見当たらない。

 それもそのはずで、つぐみがいつきのスマホを持って店の手伝いに言ったからだ。

 当然そのこともいつきはちゃんと理解していたはずだ。なのに、それを忘れていたという事は、つい数分前の出来事でさえ忘れるほど熱があるのだと言うことがわかる。

 そこまで、悪いなら深夜帯にゲームをせずぐっすり眠ればいいものを……。

 そんなこんなで、ひまりはベッドの下にあるR-18本を見なかったことにしつつ、スマホがなかったことを報告する。

 

「スマホ、どこにもないよ?」

「えっ、嘘……。まさか、え、えぇー……コホッコホッ」

「あー、もう、いっくん、無理するから。しょうがないなぁ。って、なにこれ!?」

「姉ちゃんに拘束された」

「つぐが……。まぁ、でも、いっくんも無理しようとするからだよ?今、外してあげるからおとなしくしててよ?」

「うーい……」

 

 ひまりによって腕の拘束はなくなったが、ひまりの監視があるため、パソコンを起動するために動こうにも動けなかった。

 

「よいしょっ……と」

「ひ、ひま姉?」

「なーに?いっくん?」

「いや……なにやってんのかなぁって……」

「なにって、」

 

 ひまりは一息吐いた後、少し顔を赤く染め、

 

「膝枕だよ?」

 

 と言った。

 

「恥ずかしい……なら……、やらなきゃ……いいのに」

 

 いつきはそう言っているが、後頭部に感じる柔らかい感触で顔は真っ赤だ。

 そんなうらやまけしからん状態だが、いつきはすぐに目をつむった。

 なぜなら、目の前にそびえ立つ立派な双丘が目に付いたからである。やっぱりうらやまけしからん。Afterglowのひまりファンがいたらロケットランチャーでの殺害許可を求めるレベルでうらやましい状況だ。

 ひまりのもっちりとした太腿に頭を乗せ、堪能している時点で有罪(ギルティ)だろう。もう、さっさと血流しちゃいなよ?

 そんな、どこからか注がれそうな(我々の)殺意は置いておくとして、いつきはひまりに頭をなでられ気持ちよさそうだ。

 

「うわっ、もう寝ちゃった。そんなに疲れてるなら夜にゲームしなきゃいいのに」

 

 そんなひまりの呟きは既に熟睡モードに入ったいつきには聞こえていない。

 そこにあるのは、いつきの気持ちよさそうな寝顔と、少しとろけたひまりの表情だけだった。

 

「あっ、そうだ。つぐに自慢しちゃおーっと」

 

 膝枕された状態で知らない内にツーショット写真を撮られたいつきが目を覚ますことはなかった。

 そして、それを送られた先のつぐみはというと、

 

「ひまりちゃん……。がんばってね」

 

 と、友達を応援するかのような事を呟いていた。

 だが、忘れてはいけない。つぐみは、いつきが恋愛するには早いと思っている。

 それは、姉バカでブラコンなつぐみだからというだけではなく、いつきがゲーム以外の面では超絶ピュア(エロ本はOKなもよう)だからであって、悪い女(主に中学生から高校生)に引っかからないか心配だったからだ。

 こんなつぐみがいくら幼なじみとは言え、現役JKたるひまりとの恋愛に発展することを望んでいるはずがない。

 そう、つまり、つぐみがなににたいして『がんばれ』といったのか。それは単純明快で、いつきの寝相に関連している。

 どのレベルで危険なのかというと、

 

「えっ、ちょっ、ちょっと、いっくん?」

 

 第一段階で、腰に抱きつく。

 これは、常に自分の隣にぬいぐるみを置いて眠るという、何ともかわいらしいいつきの習性だ。

 その際、自身の頭の高さにあるものに抱きつく。

 そう、それは、人の腰だ。

 そして、ひまりの腰が気に入ったのか、頬摺りまでする始末。

 くそっ!うらやまけしからん!今すぐそこ代われ!!そんな我々の思惑など無視し、いつきは第二段階へと突入する。

 

「ちょっ、それは、それはだめだよ。いっくん!」

 

 ひとしきりひまりの腰回りを堪能した後、いつきはその太腿へと顔を埋めた。このとき、眠っていたいつきはいつもは抱きついているぬいぐるみが全く動かないので、手を離し、埋めたのだ。

 くそ、こいつ、殺してもいいんじゃないかな?

 このSAN値直送ものの光景を描写しなければならないのか。

 そんなことはさておき、いつきはひまりの太腿を堪能できるだけ堪能すると、再びひまりの腰に抱きつく。

 これをざっと数時間、いつきが再び上を向き、目を覚ますまで続ける。

 こんな行為をいつきは無意識にやっているのだ。

 そして、それを理解しているからこそ、つぐみも怒るに怒れない。

 

 さぁ、これで、つぐみが何に対して『がんばれ』といったのか理解していただいたことだろう。

 そう、つぐみはこの無意識的な変態行為に対して言ったのだ。もう、いつきは抹殺すべき対象へと(我々の中で)決定したことだろう。

 

「はぁ……はぁ……はぁ……いっくん。もうらめぇ」

 

 ひまりは既に息切れを起こしているきっと、聞く人が聞けばちょっと、エッチィR-18な事をしているように聞こえるかもしれない。

 だが、やっているのは、ただの美少女の膝枕だ。

 なにもやましいことはない。きっと、蘭が聞けば、「イツキ、コロス」と片言でいい、殺しにかかるところだろう。

 なんまんだぁ、なんまんだぁ。

 

 そんなこんなで夕方。いつきは目を覚ました。

 ひまりの顔が見えるように頭を上にして、顔面で堪能していた太腿の感触を後頭部で感じながら、目を覚ました。

 

「おはよー。ひま姉」

「お、おはよ……」

「ひま姉息切れしてるけどどうしたの?」

「あ、あははぁ……なんでもないよ」

「そう?」

「うん。ほんと!なんでもないから!気にしないでよ!?」

 

 ─そこまで言われるときになるんだけどなぁ。

 

 いつきはそんな事を思いながら、聞くことは諦めた。それは、小学生時代の姉も似たようなことを言っており、そこから無理やり話を聞こうとしたら思いっきりびんたされた経験があったからだ。

 察しの良い方は気づいていたことだろう。

 そう、いつきはこれと全く同じ事をつぐみにもしていたのである。それも、小学生の時に!

 あの頃は若かった……。で済む問題ではない。だが、経験してしまった以上忘れようにも忘れられない黒歴史、否トラウマとして刻まれてしまったのだ。

 女の子としてこれ以上もない屈辱をいつきに、実の弟に刻まれてしまったのだ。

 

 一応ひまりは高校生で、トラウマにはなっていないものの、少し恥ずかしいから、いつきに膝枕するときは、いつきが眠くないときにしよう。もしそのとき寝てしまったら、そのときはそのときで楽しもう。という、乙女にあるまじき考えを浮かべてしまった。

 つまり、ひまりははまってしまったのだ。いつきの甘えるという無意識のセクハラに。

 

 そんなこんなで、いつきの風邪は見事にひまりに移り、そのひまりをいつきがお礼として看病するという、後日談でまとめよう。

 

 

 

 

 だが、最後に一言

 

 いつき、爆発しろ!!

 




それではSAN値チェックのお時間です。

ちなみに作者はSAN値直送でした。

この話を書いていてSAN値がゴリゴリ削られましたよ。
いつきの幸せっぷりに何度か書き直そうかと思いましたよ!!
でも、それでも、ひまりの膝枕とか書きたかったんや!

というわけで今回はここまでです。作者と同じくらいSAN値が削られた方、ご愁傷様です。壁殴り代行業者を注文して、ガンガン壁を殴らせてやるとすっきりするかもしれませんね。

それではまた次回、お会いしましょう
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