白鷺千聖と幼なじみの話   作:いしころ

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バイト先のカフェにて

 白鷺と駅で再会した週末、俺はバイト先のスタジオCIRCLEに隣接しているオープンカフェにいる。

 

 うちの高校は基本バイトOK、危ないことしなければいいよってくらいゆるい。

バイトは高校に入ってからすぐに始めた、部活はしたくないけれど放課後なにもしないで過ごしたくはないのでおこづかいも稼げるしと始めたのだが、このカフェ割りとおしゃれでライブハウスも近いことから高校生、さらには女子高が近いこともあって女子高生がよく来る。

 特に平日、オープンテラスの席(屋内席なんてないのだが。)は二種類の制服で埋め尽くされる、ここは基本セルフ式なので席のあるほうまでいくことはそんなにないけれど、女子高生たちの明るい楽しそうな声はカウンターにいてもよく聞こえてくる。

 今は週末なので制服姿は少なく家族連れやこれからライブ見に来たと言わんばかりの格好をした人たちなどが多くもなく少なくもなく来店し、ゆったりとした時間が流れている。

暇だなーなんて思っていると水色の髪をサイドテールにしているお客さんが来た。

 

「いらっしゃいませー。ご注文はお決まりですか?」

「えっと、アイスティー二つとレモンケーキを二つお願いします。」

「アイスティーが二つ、レモンケーキが二つですね。合計1080円になります。よければお席までお運びいたしますのでお座りになってお待ちください。」

 

 他の店員が注文を受け俺に伝票がまわってくる。

そこまで難しい注文ではないのですぐに準備して席に運ぶ。

 今日みたいに、お客さんが少なくて時間があるときは席まで運ぶことはよくある。

先程注文したお客さんを見つけ席まで運ぶ、ひとりで座ってるけど二人分も食べるのかと感心しているとその少女の向かい側に金髪の少女が座った。

 

「お待たせいたしました。アイスティーとレモンケーキになります。」

 

そう言ってからそれぞれ座っている人の前に一つずつ並べる。

 

「ごゆっくりどうぞ。」

 

席を離れようとしたとき、

 

「あら、ここでバイトしてたのね四宮くん。」

 

見間違いじゃなったのか。

 

「久しぶり、白鷺さん。」

「さん付けはやめてほしいのだけど?」

「わかった、それよりこの子は友達?」

 

そういって水色の髪の少女を見る。

 

「あ、あの千聖ちゃんの友人の松原花音です。えっと、あなたは?」

 

尋ねたわけではないんだけれど、すこし上擦った声で教えてくれた。

 

「白鷺の古い友人の四宮匠です。」

 

でも、白鷺に友達か。

 

「幼なじみでしょ、四宮くん。」

「そこは訂正する必要ないと思うけど。」

 

何で少し拗ねたんだ。

 

「千聖ちゃんて幼なじみいたんだね。教えてくれれば良かったのに。」

「ええまあそうね、幼なじみってもうひとりいるんだけれどちょっと色々あってね話しにくかったのよ。」

 

 二人の空気が出来上がり始めたので軽く会釈をして席を離れる。

カウンターに戻りレジ担当の人に知り合い?なんて聞かれたので友達が来ててなんて話をしつつ、新しいお客さんが来るまで待つ。

 けれどそれ以降お客さんはなく、閉店の時間になった。割りと早く店締めするこことは違い日暮れと共にお客さんが集まるライブハウスはこれから盛り上がる時間らしいので人がすごい。

 

 18時にお店が閉まりバイトを終えて帰る、電車に乗り最寄り駅から家までは少し距離があるので歩きながら昼間のことを思い出す。

白鷺千聖に友達がいる、それは白鷺と再会してから少しだけ気になっていたことの解決になった。

 

 昔はいろんな友達がいた白鷺だったけど、芸能活動をはじめてからというもの、新しい環境に入るときは友人を作らないなんて時もあったらしく白鷺の両親と電話しているときはかなり心配していた。

 

「まあやさしそうな人だったしいい友達見つけたんだな。」

 

思わず口に出てしまった。

 

「何ひとりで喋ってるの?」

「うわっ、なんだ白鷺さ..白鷺かびっくりした。」

「ふふっ、そこまで驚かなくてもいいのに、バイト帰り?」

「そうだよ、白鷺は何でこんな時間に?割りと早く帰ってたよね?」

「花音を送ってきたのよ、あの子方向音痴だから。」

 

 そういえば確かに昼間と服が同じ気がする。

 

「でも、白鷺友達出来たんだね。」

「どうゆう意味かしら?」

「いやおじさんに色々聞いててさ、ちょっと心配してたんだ。」

「そうね...。花音はいい人よ、友達になれてよかったって思ってる。」

 

そう言って嬉しさと安心が混ざった顔をした。

 

「でもまさか、四宮くんが心配してくれてたなんて思わなかったわ。」

「少し位はね、それより薫くんのこと話してなかったの?なんかすごい有名じゃない?」

 

 薫って名前を出したとたんに先の顔が崩れていき、嫌そうな顔をする。

 

「少し苦手なのよ今、キャラが苦手というか。」

 

そんなに変わったのだろうか、昔は普通の女の子だったのに。

 

「そんなこと言わないで仲良くしないと。」

 

 すこしだけ昔に戻ったような気がしつつ話していると白鷺の家が見えてくる。

 

「じゃあ私はここで、お父さんたちに顔見せていく?」

「いいや、また今度家族で帰ってきましたって報告に来るよ。」

「そう?また前みたいに遊びに来てね。」

「家近いからまたすぐにでもいくよ、仕事頑張ってね。」

「ありがとう、ばいばい。」

「ばいばい。」

 

 そういってまた帰路につく。

 

 なんというか、ドラマで何回か見たこと合ったけど、別れ際にする顔って演技だとしても実際に見るとすごいなほんと。

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか、楽しんでもらえたなら幸いです。
感想などよろしくお願いします。

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