白鷺千聖と幼なじみの話   作:いしころ

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雨宿りから自宅にて

 8月上旬、毎年年を重ねるごとに暑さが増していき息苦しささえも感じる季節。

 

 学生は夏休みに入り、部活に遊びに満喫していることだろう。

 

 部活もせず、アウトドアな友人もいない(友達はいます)俺は代わりにバイト先のCIRCLE横のカフェへとほぼ毎日足を運んでいた。

 今日も昼近くからシフトを入れて閉店まで働いて今はその帰り。

 最寄り駅で降りて空を見上げると今にも降りそうな雲が一面真っ黒に覆っていた。

 傘もないのでさっさと帰ってしまおうと早足気味に家に向かうが、家と駅のちょうど間あたりで降り始めしばらくして本降りに変わってしまった。このまま走って帰れるような状況ではなくなったので適当に雨宿りできる場所を探す。

 すでに店仕舞いした雨避けが出たままの場所を見つけたので借りることにした。

 

 「お借りします。」

 

 ひとまずはゆっくりできるので持っていたタオルで体を拭く。

 

 「水吸ってて服が重いな、気持ち悪いし早くやまないかな。」

 

 そうはいってみるがまだ止みそうになく、むしろ雨脚が余計に強くなってきている気がする。

 いつまで降るのかと、思っていると人が一人こちらに走ってくる。

 

 「白鷺?」

 「あら?四宮君こんなところで何してるの?」

 「いや、見ての通り雨宿りだけど。...白鷺もそうっぽいね。」

 「ぽいって、こんな中走ってきたんだから当たり前でしょ?」

 「まあそうだよね。使ってないタオルあるけど貸そうか?」

 

 そう言いつつカバンからタオルを出す。

 

 「ありがとう、借りるわね。」

 

 差し出しているタオルを白鷺が受け取る。その時白鷺の格好が目に入ったのだがあまり見ない方がい格好をしていたので目をそらす。

 普通の服なのだが夏用なのか薄い生地なので色々と透けてしまっているのだ。

 気恥ずかしいので適当に話題を振る。

 

 「なんで雨の中走ってきたんだ?おじさんかおばさんに迎え頼めばいいのに。」

 「今日は二人とも旧友に会うからって妹も連れて少し遠くに行ってしまっていて無理なのよ。四宮君の方こそ頼めなかったの?」

 「うちはもともとこういう時はあんまり迎えに来てくれないし、そもそも二人とも今家にいないから無理なんだよ。」

 

 その後仕事についてや、最近の学校の話をしたが会話は長く続かず雨の音だけがしていた。

 しばらくするとあたりが暗くなり始めていたが、雨脚が弱まってきた。

 体が冷えはじめ多少濡れてでももう行こうと思い白鷺に一言声をかける。

 

 「白鷺、雨弱くなってきたからそろそろ俺行くけど白鷺はどうする?まだ残ってるなら傘持ってこようか?」

 

 この前は少し遠回りして白鷺宅を迂回して帰ったが、今この場所から帰るとなると白鷺の家は少し遠いので聞いてみるけれど少し待っても返事が帰ってこない。立ったまま寝たのかと思い肩に手をかけると簡単にふらついてしまった。

 

 「おい白鷺大丈夫か?」

 

 もう片方の手で支えながらもう一度声をかけてみる。

 

 「ごめんなさい、少し疲れが出ちゃったかしら。」

 

 こちらに顔を向け返事をした。

 

 「お前顔赤いぞ、歩けるのか?」

 「大丈夫よ、私はちゃんとやんでから帰るからまた今度ね。」

 

 そうは言っているけれど一人ではとても歩けそうにない。

 

 このままおいて行ってなにかあってもいけないし後味も悪い。

 

 

 「白鷺、お前の家に今誰もいないようだしとりあえず俺の家近いから来るか?」

 「...。」

 

 当然の反応なのだけど返事が返ってこない。

 普通両親のいない男子の家なんていくら昔からの友人だから平気なわけがない。

 

 白鷺の家まで送ってから帰ろうかと考えていると白鷺から返事が来た。

 

 「ごめんなさい...、お願いしてもいいかしら。」

 

 少し辛そうな声で頼ってくれる。

 

 「わかった、まかせとけ。」

 

 

 走れるから早く帰りましょと言ってはいるけれど歩くのとスピードは変わらないのでゆっくりめに帰った。

 

 

 

 

 

 

 

  

 

 

 家に着き少し千聖を引っ張り気味にリビングまで連れていきソファーへ座らせる。

 とりあえず濡れたままの服でいるのはよくないので着替えを部屋に取りに行きバスタオルと一緒に渡して、俺は自室に戻りそれぞれ着替える。

 下着はさすがに女性ものなんてもってないし、普段使ってるのを貸すのもどうかと思ってそのままにするかと聞いたがかなり濡れているらしく新品がないか聞いてきたときはびっくりしたがちょうど買ってきてあったので貸した。

 部屋を出る前に毛布を持ちリビングに戻る。

 リビングに入る前に一応声をかけ着替え終わってるか確認する。まだ着替えの最中だったらしく少しきつめの声でまだ入らないでと言われてしまった。

 仕方ないので毛布だけ中に入れさしてもらい洗面所に行く。着替えたとはいえやはりまだ寒いので白鷺も入るだろうとお湯を張っておく。

 

 

 風呂の準備を終えて廊下に出ると白鷺がいた。

 

 身長が20cmも離れていれば当たり前なのだがかなりだぼだぼだった、七分のTシャツにハーフパンツなのだがうえは長袖にズボンの方が七分に見える。

 

 「風呂に入る前におじさんの連絡先教えてくれないか?一応家にいること伝えた方がいいかと思って。」

 「私が伝えてもいいわよ?」

 「いや俺が言うよ、それに早く風呂入って温まった方がいいと思うし。」

 「そうかしら。じゃあお願いするわ、あとお風呂借りるわね。」

 そう言って紙に連絡先を書いてお風呂場に行く。顔色を見てみたが先程よりもよくなっていたので安心した。

 

 

 

 白鷺が風呂の入っている間におじさんに電話する。

 基本的に優しい人だが今回に関しては怒るんじゃないかと少し身構えてしまう。

 

 

 「怒られないかな...。」

 

 不安になりながらも何も言わない方がばれた時怖いのでダイヤルを押す。

 

 「...もしもし白鷺ですが。」

 「あ、ご無沙汰しています四宮匠です。」

 「おお!高校生になってからは初めて話すな!家族の皆さんも元気にしてたかい?」

 「はい、元気にやらせてもらってます。」

 「ところでどうしてわたしの携帯の電話番号を知っているんだい?」

 「...ええ、実は.....。」

 

 

 今日起きたことをすべて間違いなくはっきりと伝える。

 

 「そうかー、千聖がお世話になっているんだね。実は雨の関係で今日中に帰れそうになくてね、四宮君の事情も分かったつもりでお願いするけど一晩泊めてあげられないか。もう遅いしそっちもまだ強く降っているらしいから親としては心配でね。」

 「...。」

 

 言葉に詰まる。男と一つ屋根の下に止めることは心配にならないのか?

 そんな心配をしていると解決する言葉が降ってきた。

 

 「四宮君のことは昔から知っているし任せても大丈夫と思っているから。四宮君がいいならお願いできないかな。」

 「...わかりました。その信頼にお答えします。

 「ありがとう。また明日帰れそうなら千聖に連絡を入れるからと伝えてくれるかな?」

 「はい、伝えておきます。」

 

 その後数回言葉を交わした後通話を終わらせようとした時。

 

 

 「ああ、四宮君。」

 「なんですか?」

 「順序は守ってね。」

 

 そう言い残して電話を切られてしまった。

 

 

 

 

 なんの順序ですか...!

 

 

 

 ちょうど通話が切れたタイミングで白鷺が返ってくる。

 

 「どうしたの?」

 

 焦って受話器を強く戻した俺に心配そうに声をかけてくる。

 

 「何でもない。風呂入ってくる。あと風呂から出た後話があるから少し待っててくれ。」

 

 

 そう言い残し早々に風呂場に向かう、とりあえず風呂の栓は抜こう。

 

 

 

 

 

 

 

 さっさとシャワーを浴びてリビングに戻る。

 

 「...さっきなんであんなおどおどしてたのよ。」

 

 すこし内気?気味の白鷺が待っていた。

 

 「いや、なんでもない。風呂入って頭冷やしてきた。」

 「お風呂で頭を冷やすって少し変じゃない?」

 「そんなことないよ、ごめん飲み物も出さないで。何か飲む?」

 「そうね、お茶もらえるかしら。」

 「わかった、ちょっと待っててな。」

 

 キッチンに飲み物を取りに行くついでに落ち着く。

 飲み物を準備し、頭の中を整理してリビングに戻る。

 

 「おまたせ。」

 「ありがとう。」

 「それでさっき話すって言ってたことだけど。」

 

 話しにくいことだが話さない訳にいかないので早めに切り出す。

 

 「さっき電話したからあらかた聞いたわ。」

 「えっ。」

 「歩いて帰れるって言って外見たのだけどさっきよりも雨脚強くなってきてて...。」

 

 確かにさっきは気が付かなかかったが雨音が強くなっている気がする。

 

 白鷺はそれ以上何も言わず少し気まずそうな雰囲気を漂わせる。

 こっちも電話の内容を知っていると分かったとたんになんて話をすればいいのかわからない。おそらく最後のことは話してないだろうと思うので電話については触れないでおく。

 

 「そうなのか、...じゃあとりあえず晩御飯食べよ。」

 「何か作りましょうか?」

 「いや昨日今日の分まで作り置きしておいたからこれ食べよう。」

 

 冷蔵庫から作り置きを取り出し温める。

 

 その後ご飯を食べ寝る支度をして後はゆっくりするだけとなり、お互いに寝るには早いとテレビの前に集まっていた。

 

 最初はバラエティーを見て場は繋がったのだがその後のよくわからない番組は流し見る感じになった。

 眠気が出てきて動くのがおっくうに感じ眠気と戦っていると白鷺もなのかさっきの雨宿りしている時とは違う少しゆっくりとした空気が流れる。

 

 部屋に戻らないとと動かない体を動かそうとしていると少し離れ気味に座っていた白鷺が肩が当たるほどの距離に近づいてくる。

 

 「白鷺?」

 

 少し上ずった声が出る。

 

 「昔二人の時も薫のいるときもそうだったらしいのだけどこうやってお互いにもたれかかって寝てたらしいわよ?」

 

 そういって言葉通りに白鷺はもたれかかってきた。

 人の体温が左側に感じられる。

 はじめは心臓が飛び出るほど内心慌てふためいたけど白鷺が言っていた通りそんなことがあったかもしれないと安心すると落ち着くが混ざった気持ちになる。

 俺は返事をするでもなくその気持ちに体を預ける、白鷺も同じようにそれ以上言葉を続けず身を預けてくる。

 眠気とは違う体の重さを感じつつ白鷺に目を向ける。

 

 今でも4カ月も前のことを鮮明に思い出す。あの時はもう違う場所にいる人なんだと再認識した瞬間でありふさいだはずの気持ちを再認識した瞬間でもあった。

 

 

 今こんなこというのは間違っている気がするけれど伝えられるなら伝えておいた方がいいのではないのかと思い始める。

 今なら言える。

 そう思い振り絞るような気持ちで声を出そうとする。

 

 「ねえ、四宮君。」

 

 白鷺が俺よりも先にしゃべり始めた。

 

 「私ね、小さいころ四宮君が遠くに行ってしまってから寂しかったのよ。別にその時は四宮君以外にも友達はたくさんいて遊んでくれる子はいたけれど、みんなほんとの私じゃなくて子役としての、テレビの向こうにいる人としての私を見ていた気がするの。」

 

 「しばらく四宮君...いえ匠君と連絡を取っていない間にみんな大きくなって、私も大きくなって子役とは違う役もやるようになってきて周りの目も変わったわ。」

 

 「一歩置かれるというか芸能人の知り合いのような態度に変わったのね。薫はそんなの気にせず変わらなかったけれど。」

 

 「中学二年生くらいに匠君と久しぶりに連絡をとったとき少し怖かったのよ、匠君もきっと変わってるんじゃないかって。でもそんなことなかった、昔のままだったわ。安心した、それで高校生になって会ったときはびっくりしたのよ?」

 

 「話し方だけじゃなくて私に対する接し方も変わらなくてほんとによかった。そうね、匠君は心許せる相手って感じね。」

 

 

 そう言いながらくすくすと笑った。

 

 なんだかうれしいかった、けれど俺が白鷺に対して抱いてる気持ちと向こうが俺に対して抱いてる気持ちは似ているようで違んじゃないかと思いどうしたらいいのかわからなくなった。

 

 

 

 

 「白鷺はそんな風に思ってたんだな。幼馴染って感じ。」

 「昔みたいに呼んでくれてもいいのよ?」

 「勘弁してくれよ、恥ずかしすぎる。」

 「そうかしら?まあ無理にとは言わないわ。」

 

 

 

 それでも、今言わないともうこれからずっと言えない気がしてしまう。

 

 

 

 心の中で深呼吸をして今度こそと声を出す。

 

 

 「なあ...白鷺。」

 「なに?」

 

 心臓がまた早くなる。

 

 「俺実はさ、ずっとさ。」

 「千聖のことさ。」

 

 ここから先の言葉が出ない。

 出せない。

 

 

 それからなかなかしゃべり始めない俺に代わって千聖が話し始める。

 

 

 「匠君のことは好きよ。友達としてじゃなくてちゃんと。」

 

 「でもね、今は無理なの、今はね仕事が一番大切なの。もちろん匠君や花音だって大切よ。二人が仕事よりも大切な時だっていっぱいある、でもずっとは無理なの。」

 

 

 

 最初は少し高揚気味に話していたけれど後に行くにつれて辛そうな、泣きそうな顔をする。

 

 千聖なりに考えていることがあるんだろう。その気持ちを汲み取らないのは友人としてもこの気持ちも違うと思う。

 今は友達として応援するのが正しいんだろう。

 

 

 「別に今千聖悪いこと何も言ってないじゃんか。千聖のやりたいようにやればいいじゃんか。」

 

 

 何を言いたいのか自分でもわからなくなってくるけれど励ましてあげたいのは本当なのでそんな言葉を思いつくだけ並べる。

 

 それでも千聖は泣きそうからほんとに泣き出してしまって余計にどうしていいかわからなくなる。

 

 しばらく千聖は泣き続けそのまま寝てしまった、腕を掴まれそのままなので俺自身身動きが取れずにいる。

 時計を見るととっくに日はまたいでいてその確認が取れたとたんに眠気に襲われそのまま体の力を抜いていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翌朝起きると白鷺もちょうど起きて乾かしておいた服を着て迎えに来た両親と一緒に帰っていった。

 

 

 家に一人になり昨日のことを思い出す。

 

 あの会話は今朝話すこともなく消化不良で終わった。

 

 白鷺のあの顔は多分忘れられない、俺があれを話し始めなければあんな雰囲気にならなかったのか。

 

 悶々としたまま時間だけが過ぎていった。

 

 

 




今回長めに書いてみました。

誤字、おかしな表現などあったら申し訳ないです。

随時確認しつつ直していくのでよろしくお願いします。
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