一撃少女   作:ラキア

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20撃目

 管制融合騎───否。ナハトヴァールが足を踏み込むと同時に衝撃で地面が崩壊する。

 

 常人には視認することも出来ない速さでなのはに肉薄し、魔力を帯びた拳の連撃を繰り出す。対しなのははそれに合わせるように拳を繰り出し、噛み合う。一発一発が凶悪な程の威力である為、殴る度に辺りに衝撃が伝わる。だが、当人たちにとってはそんなのは意識の外だ。

 連打の最後の一発が終わると同時に後方へと跳躍すると、ナハトヴァールは追いつき、腕一杯力を入れて作った拳を振り下ろすように繰り出す。それを身体を斜めに動かすことによって回避しつつ、その動きを認識されない瞬間に、ナハトヴァールの頭部の横へと拳を叩き込む。周りの瓦礫を粉砕しながらバウンドし、ナハトヴァールは吹き飛ぶが、あえてバウンドさせることによって衝撃を流している。

 回転してから飛行して此方を確認し、ナハトヴァールが周囲に魔力弾【バレットシェル】を生み出し、それを此方へと放ってくる。正面から放たれる魔力弾【バレットシェル】を左手で拳を作り、それを裏拳で殴り飛ばしつつ、ナハトヴァールへと向かって踏み込む。

 跳躍することによって地面にクレーターができるが、それを気にする事なく接近し、アッパーでナハトヴァールを殴り飛ばす。

 殴り飛ばされながらも、防御魔法を展開していた為にダメージは少ない。故に後方へ飛ばされつつも再び周囲に魔力弾【バレットシェル】を展開する。それに気にする事無く飛び上がり、ナハトヴァールに肉薄する。周囲にはフェイト同様に雷を展開しており、常人ならもれなく即死できる状況だが、なのはには関係無い。躊躇する事無くナハトヴァールの頭を掴み、そのまま下方に向かって投げ飛ばす。

 それをナハトヴァールが途中で回転しつつ受け身を取ることで回避するが、その隙を逃さずに踵落としを繰り出す。それをナハトヴァールは両腕をクロスして、踵を掴む。同時に周囲に魔力弾【バレットシェル】が展開される。それから逃れる為に身体全体を捻り、空いている足でナハトヴァールの頭部に向けて蹴りを入れる。しかしそれを耐え、そのまま魔力弾【バレットシェル】をほぼゼロ距離でなのはにぶつける。それと同時に足が解放され、その勢いを利用しつつ、後方へ宙返りをしながら着地する。

 と、次の瞬間にはこちらに拳を繰り出すナハトヴァールの姿がある。防御や回避をする暇も無く、胴に直撃し、ナハトヴァールはそのまま腕を振り抜く。ナハトヴァールによって出現した柱にぶち当たり、衝撃で柱が砕けるが、勢いは止まらずに更に後方へと飛ばされる。

 柱は連続して聳え立っている為、また柱へとぶつかり、粉砕する。それが五回ほど繰り返され、やがて舞台は海へと移行する。ようやく柱によって受け止められたと同時に、ナハトヴァールは追いつき、跳躍してから飛び蹴りを繰り出してくる。

 直撃し、更に後方へと飛ばされるが、一際大きな柱が後方に控えていた為、なのははその柱の表面に垂直に着地し、そのまま上方へと駆け上がるように跳躍する。それに追いつき、ナハトヴァールは身体を捻り、勢いをつけたまま魔力を帯びた拳を振り上げ、殴る。それを同時に拳をぶつけることで威力を相殺しつつ、更に後方。つまりは柱を登るようにして移動する。円を描くようにして駆け上り、やがて柱の天辺まで跳躍し、勢い余って宙に浮く。

 正面には至近距離まで追いついたナハトヴァールが、裏拳し、それを屈むことで回避し、起き上がると同時にアッパーを繰り出す。だが上体を反らせることで回避して、そのまま一回転してから蹴りを頭部に向けてぶつけてくる。それを腕を上げる事でガードし、空いている手で拳を作ってから腕を引き、それをナハトヴァールの頭部へ繰り出す。ナハトヴァールはそれをダッキングで回避し、慣性を利用して反対の足で蹴りを胴に当ててくるが、腕をクロスさせることで受け止め、後方へと飛ぶ。

 柱の上へと着地して、正面を見据える。一瞬後に、正面数一〇メートル離れた位置にナハトヴァールが着地した。

 

「───良い動きだ。さすがに強いな。この私と互角に戦えるのは……お前が初めてだ」

 

 なのはの方を見据え、ナハトヴァールは言い放つ。なのはは特に表情を変えずにジッとナハトヴァールを見る。

 片腕を上げ、ナハトヴァールは魔力を集中させと、周囲に黒い魔力光が浮かんで出現していくのが分かる。それがナハトヴァールの腕に収束されていき、その手には一メートルほどまで形成された魔力が球体となる。

 

「遠き地にて、闇に沈め───デアボリック・エミッション!!」

 

 詠唱を唱えると、その球体が膨らみ、ナハトヴァールを中心として広域殲滅魔法が展開され、魔力の爆発に巻き込まれる。凄まじい衝撃で、尖った柱の先端が刳り貫かれたように平らにされる。魔力が霧散されて辺りが確認できるようになると、そこには平然と立つなのはの姿がある。

 だがナハトヴァールの姿はそこには無い。姿を探そうと視線を動かそうとした瞬間───。

 

「───後ろだッ!」

 

 背後からの声が聞こえると同時に、なのはの頭部にナハトヴァールの拳が叩き込まれる。完全に油断していたところに叩き込まれた拳によって、なのはの身体は吹き飛ばされ、地面にバウンドして数メートルのところで回転し、着地して起き上がる。

 そこで攻防は一旦止み、距離を空けたなのはとナハトヴァールは視線を交わらせる。

 

「手ごたえあったな。どうやら……勝敗が見えてきたようだな。私は闇の書の力と無限連環機構により、無限の魔力と力がある。お前に受けた傷も直ぐに元通りだ。こんな風にな」

 

 言って、ナハトヴァールは傷ついた腕を瞬時に治して見せる。

 

「対し、お前はどうだ? 傷が増すばかりだ。いくら互角に戦っていても、結果として勝つのは───」

 

「───煩いの」

 

 ナハトヴァールの言葉を遮り、なのはは首を鳴らす様に左に倒し、次に右に倒す。そしてナハトヴァールの方へ向き直る。

 

「ペラペラと……もう終わりなの? ───戦いは?」

 

 その言葉に、ナハトヴァールは口を空けて呆気を露にする。が、直ぐに表情を切りかえてから、身体を屈んで力を集中する素振りを見せる。

 

「───いいや、まだだッ!!」

 

 言うと、背に生えた黒翼が大きく展開され、そこから魔力が放出される。すると全身に黒い魔力光が輝き、ガントレットとなった筈のナハトヴァールが解かれると、それが全身を侵食するように纏わりつき、ナハトヴァールの肌部位に青い紋様が浮かび上がる。

 次の瞬間に、ナハトヴァールの姿が消え、目の前に姿を現す。気付いた瞬間には拳が胴に叩き込まれ、同時に魔力が放出する。巨大な魔力は砲撃であり、次元戦艦で撃つ主砲くらいのものだ。それに巻き込まれるが、ナハトヴァールはなのはの身体に追いつき、拳を繰り出す。

 心臓や頭には勿論、全身を粉砕するように拳を叩き込んでいき、なのははそれに追いつかず、全て直撃で連打を受ける。連打の最後で吹き飛ばされ、ナハトヴァールは地面を跳躍し、その勢いを利用し、更に拳を胴に打ち込む。そのまま抱えるようにしてから下方に向かって投げ飛ばし、なのはが落ちるスピードを追い越して、今度は急上昇して蹴りを繰り出す。くの字に曲がったなのはは、そのまま直上に吹き飛ばされて、結界を突き破って彼方へと飛んでいく。

 

 

 

 

 

 

 衝撃で空の彼方へと飛ばされ、どこかにぶつかって勢いが止まる。正面に見えるのは───地球である。まるで地球儀を見ているような気分であり、しばらくは思考を停止していたが、いつまでもそうしている訳にはいかないので状況を整理する。衝撃で吹き飛んだと思われる石が目の前に落ちてくる。だが、その落下速度がおかしい。明らかに遅い。まるで重力が少ないように思い、辺りを確認すると───そこは月面だった。

 

「(宇宙ッ!? とりあえず息止めればいいのかな?)」

 

 咄嗟に鼻をつまんで自分の身体を確認する。特に問題は無かった為、改めて地球を見る。こうして宇宙から見た地球は実物では初めてなので、出来ることならばしばらく観察していたいが、そうも言っていられない。月の重力は地球の何分の一か思い出そうとするが、そんなものはテレビ等で得た曖昧な知識でしか無い。少なくとも地球よりは少ないという事だけ。

 近くにあった手の平よりも少し大きめの石を投げ、再び手に落ちてくる感覚を見る。それを見て問題無さそうだと思い、石を捨て、屈んでから思い切り力を入れて、飛ぶ。

 

 その瞬間───月に新たなクレーターが出来た。

 

 

 

 

 

 

 ナハトヴァールは、結界の遥か上空に吹き飛んだなのはの方向を見るように上を向きながら呼吸する。その息は荒々しく、明らかに体力が少ないことが分かる。様子を見る限り、なのはが生存している事は無いだろう。いや、この形態になった時点で生き残れる存在は先ず居ない。全身から放たれる力は一切の生物を殺す。

 しかし、この形態は無呼吸運動のように、身体にかかる負担が大きい為、本来は決着を早めたい時にのみ使用する切り札だが───。

 

 と、思考していた次の瞬間に、目の前に何かが衝突してくる。

 

 衝撃は凄まじく、まるで隕石が落下してきたかのような衝撃であり、それにナハトヴァールは直ぐ様跳躍して距離を取る。巨大な柱は衝撃で削れていき、その高さを大分低くしてようやく衝撃が収まる。爆煙で辺りは見えないが、ナハトヴァールはまさかと予想できた。その為、目を見開いて、唖然としてしまう。

 

 それは的中し、煙が晴れ、そのクレーターから出てきたのは、無傷のなのはであった。バリアジャケットは損傷していたが、レイジングハートの特性で直ぐ様元通りの姿に修正される。

 

「お、いけたの!」

 

【挿絵表示】

 

 なのはは月から地球の海鳴市まで一発で戻れるかなと思っていたが、その結果は見事にど真ん中であった為、軽く笑みを浮かんで喜ぶ。対し、未だに唖然としていたナハトヴァールだったが、直ぐ様意識を切り変え、なのはを睨みつける。

 

「(───お前には……私の全てをぶつけたくなった!!)」

 

 咆哮をあげて、ナハトヴァールは地面を蹴り、そのまま疾走してから跳躍する。その瞬間にナハトヴァールは目にも見えない速さで先ほどと同様になのはの全身に攻撃を打ち込むが、なのははそれを正面に腕をクロスさせるだけで耐えている。

 そしてナハトヴァールが正面から攻撃を繰り出そうかとした瞬間───。

 

 ナハトヴァールの胴に拳が打ち込まれる。

 

 衝撃で吹き飛ばされ、後方へと飛んで行くが、両足を地面に突き刺すことで衝撃を殺し、何とか柱から落ちる寸前で留まる。上体を起こし、なのはの方へ向いて姿を確認するが、次の瞬間にはなのはの姿は目の前に移動していた。

 

「連続普通のパンチ」

 

 放たれる無数の拳は、一発一発がナハトヴァールの一撃を遥かに超え、身体を砕いていく。吹き飛ばされつつも、宙で一瞬にして全回復して、なのはの方へ腕を構える。

 

「ならば、もう一つの切り札を喰らえッ! 全エネルギーを放ち、お前もろともこの世界を吹き飛ばしてやろう!!」

 

 言って、凄まじい魔力を腕に集中させるナハトヴァール。恐らく言葉に通りに全ての力を集中させているのだろう。その衝撃はこの海鳴の街全域に振動を伝わせる。周囲は高エネルギーで融解し始め、ドクンと鼓動に合わせて魔力は高まる。

 

「───響け終焉の笛───ラグナロク!!」

 

【挿絵表示】

 

 叫び、ナハトヴァールから魔力が放出される。それは正しく世界をも崩壊する勢いの砲撃であり、これに触れれば即死は免れないだろう。だがなのはは特に回避することはせずに、その場に呆然と立ち尽くしている。だが、静かにその右腕に力を込めた。

 

「───だったらこっちも切り札を使うの……」

 

【挿絵表示】

 

「必殺【マジシリーズ】」

 

【挿絵表示】

 

「───マジ殴り」

 

【挿絵表示】

 

 その拳一撃によって、ラグナロクは霧散され、その衝撃がナハトヴァールに直撃する。そして、何かが砕ける音と共に、周囲の結界は解かれていった。

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