一撃少女   作:ラキア

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21撃目 END

 アースラの食堂には、主にペースト状になった定食が出される。見た目はともかくとして、味はなかなか美味しい。お盆に乗る皿の一つにあったトマトペーストっぽいものを一口食べながら、同じテーブルに座るクロノの話に耳を傾ける。

 

「───まさか、防衛プログラムを切り離すどころか、その核を一撃で破壊するとは」

 

 既に完食したクロノが腕を組んで、眉根を八の字に曲げて嘆息気味にそう言葉を漏らす。その言葉に苦笑いを浮かべたのは、未だに食事中であるフェイトと、クロノと同じく完食したエイミィだった。クロノの言うように、ナハトヴァールと決戦した際に、防衛プログラムの切り離しどころか、不可能と言われた核を生身で破壊する伝説を生み出した。

 なのはとしてはかつて無い強敵に出会ったことから、本気の一撃を叩き込んだだけなのだが、結果として防衛プログラムを破壊できたので良かったとする。そう思いつつ、コンソメスープのようなものをスプーンで掬ってから一口飲む。

 はやてと管制融合騎───リインフォース、そしてヴォルケンリッター達は、はやてとリインフォースの尽力によって、新たにヴォルケンリッターを防衛プログラムと切り離し、構築した事によって復活も出来た。はやてとリインフォースも防衛プログラムが消滅したことにより、本来の夜天の書として力も安定した。

 

「───だが、どうやら事態はそう上手くはいかないようだ」

「どういうこと?」

 

 クロノの言葉に、フェイトが訊ねる。

 

「確かに一見すると、何もかもハッピーエンドに思える結末だが、管制融合騎……リインフォースの話によれば、直ぐに夜天の書自体が防衛プログラムを修復してしまうそうだ。だから、いずれにせよ夜天の書は完全に消滅させないといけない」

「それじゃ……!」

 

 フェイトは目を見開き、クロノに訴えるように言葉を零すが、そこで言葉は詰まる。クロノに感情をぶつけても意味の無いことだ。一瞬席から立ち上がったのを腰を下ろし、顔を俯かせる。エイミィもそれに申し訳無さそうに表情を歪めた。

 なのはは最後に残るご飯を食して、スプーンをお盆に下ろす。そして思考する。夜天の書を完全に破壊しなければ、また防衛プログラム───ナハトヴァールが復活するということだ。そうすれば、また同じことの繰り返しとなる。なのはとしては、また殴れば解決すると思ったが、同じ都合よく行くとは限らないのだ。ましてや、またこんな大事を起こす訳にはいかない。

 そうなると、夜天の書の破壊───リインフォースとヴォルケンリッターを、破壊しなければならないのだ。

 皆がどうしようも無い現実に、食らい表情を浮かべるが、その一同に一人の女性が近づく。

 

「───安心してくれ。消えるのは、私だけだ」

「! リインフォースさん!」

 

 そう言葉を放ったのは、チャイナドレス風の騎士甲冑を身に纏わせた銀髪の女性、リインフォースだった。ナハトヴァールが消滅したことによって、本来のユニゾンデバイスとしての姿となっている。そんな彼女は優しい笑みを浮かべ、そう言った。

 

「騎士達は、私……夜天の書とは別に新たにシステムを構築した。彼等が消えることは無い。消えるのは、私一人だ」

「それを、はやてちゃんには?」

 

 訊ねると、リインフォースは首を横に振る。はやては夜天の主として覚醒した影響により、今は気を失って医療室で寝ている状態だ。命に別状は無く、現在はヴォルケンリッター達が見守っている。

 

「主には、騎士達がついている。もう心配する事はないだろう。お前達もいてくれる。だから、私も安心して己を終わらせること出来る。だが、主がこの事を知れば、とても悲しむだろう。なら主が知る前に、全てを終わらせた方がいい」

 

 言うと、また皆が暗い表情になるが、リインフォースは申し訳ない表情を見せつつも言葉を続けた。

 

「それで、お前達にお願いがある」

 

 

 

 

 

 

 翌日の海鳴市の夜は、雪が降っていた。クリスマスの聖夜に合わせたホワイトクリスマスである。その街の賑わいが、街の外れにある高台の公園にも光として伝わってくる。通常であれば、公園にもカップルなどが集まりそうではあるが、今日は管理局によって人払いがされている。よって公園にはフェイト、そしてヴォルケンリッター達が待機していた。

 公園に向かう道の坂道。そこからは遠くの街が薄っすらと見える。先日の決戦では何とか結界が守ってくれたくれた為に、被害は出なかった。それを心から安堵し、リインフォースは溜息を吐いた。すると、坂の下から誰かが歩いてくる。

 

「……来たか」

「うん」

 

 リインフォースが視線を向けると、そこにいたのはコートを身に纏ったなのはだった。コートは着ているが、寒そうには見えない姿は流石としか言い様が無い。対しリインフォースもノースリーブの姿で上着を着ていないので、どちらも同じだが。

 そのままリインフォースの隣にまで歩き、並んで景色を見渡す。直ぐ下には林があり、遠くの方で光が輝く。街の中心では人々が賑わい、それは楽しい聖夜を過ごしているのだろう。暗い坂に街頭で照らされる淡い光と、雪が相まって中々幻想的といえる雰囲気である。言葉はかけずに、景色を見る。そのまま数秒が過ぎた後に溜息を吐いて、リインフォースが口を開いた。

 

「あの時は完全にナハトヴァールに意識を奪われていたが、薄っすらとは記憶に残っている。これもナハトヴァールが完全に消えては居ないという事なのだろうがな。───思い出せば、本当にお前は凄いと思うよ。覚醒した夜天の書の力にナハトヴァールの力と、対等に勝負を繰り広げたのだからな」

「……うん。そうだね」

 

 目線は遠くの景色に向けたまま、双方は言葉を吐く。それと同時に吐息が白くなり、それが夜空に向かって消えていく。静かな風と共に数秒が過ぎ、リインフォースは再び口を開いた。

 

「───嘘だな」

 

 依然として視線を変えないまま、リインフォースは眉根を八の字にして言う。

 

「お前には余裕があった。まるで勝負にすら、なっていなかった。……あはは。今までの絶望は一体なんだったのかと思ってしまうよ。それくらいに、呆気ないものだった」

 

 リインフォースが自傷気味に言葉を吐くと、なのはもどこか寂しげな表情を浮かべた。

 

「───お前は強すぎた。高町なのは」

 

【挿絵表示】

 

 最後に、なのはの方を向き、寂しげに表情を浮かべてから目を閉じ、リインフォースは坂を上っていく。公園で、自分を旅に出させてくれる騎士の元へ向かって。

 

 なのははリインフォースが数歩進んだ後に、その背に向かって身体を向けた。

 

「……良い旅を」

 

 聞こえるかどうか分からない程の小さな言葉を零す。だが、リインフォースはユニゾンデバイスであるが故に、その言葉が伝わっていたようで、なのはに背を向けたまま優しい笑みを浮かべた。

 

 その後、数多の悲劇を生んでしまった、ロストロギア・夜天の書は、この聖夜に、騎士達と、駆けつけた最後の主、はやてに見守られ、その運命を終わらせた。

 

 

 

 

 

 

 事件から数日が経ち、闇の書事件の後始末も大分片付いた頃。はやては罪を償うために管理局に従事するヴォルケンリッターたちと共にその重荷を負うべく、魔導騎士としての保護観察を受け、嘱託魔導師となる。八神家の保護責任者はレティ提督となり、フェイト同様に、直ぐに地球で暮らせるようになった。

 足の回復も順調であり、このままリハビリを続ければ完全に治るとの事。そして翌年には病院の通院も終了して、主治医の先生も大変喜んでいた。

 管理局としても、一年後には嘱託ではなく、正式に入局する事になり、同じく正式に入局したフェイトと共に仕事を従事している。

 

 クロノも事件後は、リンディの役職を継ぐ形となり、フェイトたちのサポートを行っている。その後、提督に昇進し、アースラの艦長を務める。ユーノは闇の書事件で、管理局本局の無限書庫での検索能力から、その司書補佐として就き、その後は司書長となる。

 

 リンディは前線からは降り、現在では地上勤務となって、フェイトたちの生活を見守っている形となる。闇の書事件に終止符が打たれたことから、とても幸せそうに日々を過ごしている。アルフも、リンディと共にフェイトたちの暮らす家で家事を手伝い、帰る場所を守っている。

 

 フェイトは管理局に正式に入局後、執務官を目指して日々努力に励んでいる。だが近年に、病院で入院していた母、プレシアが亡くなった。最後までプレシアはフェイトに対し、母親らしい事は何一つしなかったのだが、最後にフェイトが見届けた際に、初めて優しい笑みを浮かべた。プレシアの遺体はアリシアと同じ場所の墓に眠った。墓参りの際には、ハラオウン家と共に来て、花を届けた。

 

 そして、なのははと言うと───。

 

 

 

 

 

 

『ごめんね、なのは。休みなのに、無理なお願いしちゃって』

「うん、まあ……フェイトちゃんやはやてちゃんたちにも手が負えないって言われたらねぇ……」

 

 とある管理世界の一つの上空を飛行しながら、念話での通信で申し訳無さそうに言って来るフェイトに対し、なのははいつも通りの無気力な表情で言葉を返す。装備するのはバリアジャケットであり、現在目的地まで一直線に向かっている。途中に見える景色はどれも崩壊した街であり、大勢の死傷者が出たことが分かる。途中で見かける泣き叫ぶ子供が泣いている姿を見ると、その悲惨さが痛いほど分かる。

 程なくして、目の前に大きな影が見えてくる。それは巨大化した原生生物だった。ロストロギアを取り込んだことで、世界崩壊レベルの災害を生み出してしまったのだ。管理局の応援は時間がかかり、かといってフェイトやはやて、ヴォルケンリッター達にも手に負えないこの怪物。だからこそ、フェイトはなのはに頼んだ。

 

 なのはは管理局員では無いし、嘱託魔導師でも無い。地球に住む一般人に過ぎない。故に管理局に協力する必要は無いのだが、退屈な日常であった為に、身体を慣らすのも良いだろうと思い、現在ここに居る。

 

 怪物までの距離はもう無い。そのまま衝突と同時に、拳を突き出す。

 

 ───異形の化け物は一瞬で消滅した。

 

 その肉片が派手に飛び散る中、なのはは出来上がったクレーターに着地して、僅かに煙が出ている拳をワナワナと見つめる。

 

「また……ワンパンで終わっちゃったの」

 

 

 

 

 

 ───ONE PUNCH-GIRL







 ここまで読んで下さった読者には本当に感謝を。作者のラキアです。冒頭で言いました通り、この作品は約二年前に投稿していたものを再投稿という形です。

 当時はワンパンマンのアニメがオンエアという事もあってモチベーションが高く、それなりにテンション上げて毎日執筆して毎日挿絵を描いてという生活をおくっていたのですが、途中で体調不良を起こして連載を断念という事になってしまいました。

 回復してからは二次創作という物に興味が薄れてしまったという事もあり、執筆する事よりも多趣味になってしまった事からハーメルンを去る事にしたんですが。
 最近はまた様々なラノベ、特になろう系作品が盛り上がっており、その影響で二次創作も再び熱を上げてきました。

 特になのはに関しては劇場版公開という事もあり、元々マテリアルが大好きな私としてはテンションが上がった訳です。
 しかし、過去に一度エタってしまった作品を放っておいて新しく連載を始めるのに抵抗があったので、思い切って再投稿という形にしました。

 当時はA`s編まで完結しており、その後のSTS編が途中で終わってしまったので、今度はSTS編の完結を目指して頑張ろうと思います。

 また、この作品はここで完結です。STS編は別タイトルで連載を開始するので、続きを気になっている方はもう少しお待ちを。またポロっと新たなタイトルが出ると思いますのでw

 それでは次回、また別タイトルでお会いしましょう! では!
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