ガールズライフ(仮)   作:ぴんきー☆

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第1話

彼女が友人のことを悪く言うたびに、少しだけ嬉しかった。彼女の友人は、自分はあまり仲良く出来そうにないタイプだったし、彼女と毎日話していることに嫉妬していた。それに、普段は穏やかで諍いも好まない彼女が本心や弱さを見せたようで、なんだか優越感に浸れるのだ。

 

彼女はとにかく男運がなかった。去年付き合っていた先輩にはこっぴどく振られていたし、先月は同じクラスの男子に「想像と違った」なんて理由で泣かされている。

 

その度に、自分なら彼女のことを良く知ってるからそんなこと言わないのに、と思うのだ。もう少し背の高い方が良い、なんて言って、ヒールで足を痛めさせたりもしないし、髪の毛を切ったときだって、思いっきり褒める。

 

けれど、だから自分にしなよ、なんてことは絶対に言えない。それは、断られることに怯えて勇気がないだけじゃない。きっと自分が変なのだ。彼女を好きになるなんて、周りから見たらおかしいことだから。

心から漏れ出してしまわぬよう、ひた隠しにしないといけないのだ。

 

灰島クララ、17歳女子高生。クラスメイトの木下クルミに恋をしている。

 

 

 

 

彼女が教室に来るのは遅刻ギリギリの8時半。家が少し辺鄙なところにあるので、電車を一本逃すと一大事なのだそうだ。今日も寝坊して乗り遅れていたので、駅から走ってきたようだ。

 

暑そうに席に座り、下敷きで仰ぐ。生まれつきの綺麗なストレートヘアーが風になびいた。寝坊してもしっかりリップは塗っていて、柔らかそうなベビーピンクに目を奪われる。

 

「これ」

 

と、突然クルミはこちらを振り向いた。アーモンド型の大きな瞳が私の瞳をじっと見つめた。

 

「灰島さんの?」

 

「……え」

 

「教室の前に落ちてたの。イニシャル、H・Kってうちのクラス灰島さんだけだからさ」

 

彼女が掲げたストラップは、たしかに私が中学の修学旅行で友人とお揃いで買ったものだった。

 

「そ、そう!」

 

「あ!やっぱり!合っててよかったぁ」

 

彼女はニコリと眩しい笑顔を浮かべた。そして、私の手を取り、手のひらにストラップを置いた。ベースを弾いている指は硬かった。温かくて、少し汗ばんでいた。いい匂いがした。

 

「あ、ありがとう……」

 

彼女に触れているだけで胸がドキドキした。夢見心地で、何も考えられなくなる。ただ、五感を研ぎ澄ませて、彼女に全神経を集中させていた。

 

先生が入ってきて、授業が始まっても、胸の高鳴りは収まらなかった。

 

クルミに触れてしまった。

 

クルミは私のフルネームを知っていた。

 

クルミと、初めて話した。

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