ガールズライフ(仮)   作:ぴんきー☆

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第3話

『電車が通勤通学の時間でも30分に1本なのツライ、、、』

 

クルミのTwitterを見つけて一週間後のある日、そんなツイートを見かけた。うちの高校に通うのに、本数が少ない電車と言えば片手で数えられる。

 

軽音部の部室前には、部員募集のポスターが貼ってあった。活動日は月・水・金。楽器未経験でも大歓迎!

 

その日は水曜日だった。

 

学校が終わり、一度家に帰った私は、私服に着替え再び高校の最寄駅へと向かった。駅前のカフェから、往来を見下ろすこと数十分。やがて部活の終了時刻になり、ちらほらと同じ学校の制服を着た生徒たちが見え始めた。

 

いた。

 

ベースギターは未だ見つからないようで、ショッキングピンクのスクールバッグだけ持ったクルミがいた。

そして隣には、揃いの鞄を持った男子生徒。タイの色から1つ上の先輩だと分かる。

仲良く肩を寄せ合って、ゆっくりと駅の方へ向かって歩いていた。

 

私はカフェから飛び出して、クルミたちの少し後ろを付いていった。駅構内に入り、改札をくぐる。2人は違う方向らしく、先輩は4番線へ、クルミは1番線へと向かった。

 

私の顔はおそらく知られていないだろうが、帽子を目深に被った。クルミを追いかけ、1番線に来た電車に乗る。帰宅ラッシュの時間で、そこそこの人の入りであった。この混み具合なら、もし顔を覚えられていたとしても、気づかれずに同じ車両に乗れるだろう。

更に、クルミは終始スマホをいじっていた。先輩と連絡でも取っているのか、普段より頬が緩んでいた。

 

やがて数駅でクルミは降りた。乗り換えるようで、違う路線のホームのベンチに座った。次の電車は20分後だったと記憶している。

本数の少なさからも分かるように、利用者が少ないのか、ホームは閑散としていた。私は階段を挟んで離れたところで電車を待った。

 

来た電車は、人はほとんど乗っていなかった。座席の端っこにだけ座っている程度だった。

私はクルミの隣の車両に乗った。連絡扉のガラスを覗き込めば、白いイヤホンをして、必死にスマホをいじる彼女が見えた。

 

私も、クルミのTwitterを開く。ついさっき、彼女のマイブーム、『ザ・ドルフィンズ』のリツイートと、そのバンドの曲『魚心あれば水心ナシ』を現在聴いているとのツイートがなされていた。

歌詞を検索してみると、どうやら恋の喜びが明るく歌われているようだ。ありがちな歌詞だが、先輩にお熱のクルミの心には響いているらしい。

というか、ドルフィンズなのに魚のキャラクターとはどうなのだろうか。

 

やがて、終点から2つ手前の駅でクルミは降りた。私もそれを追いかけて降りる。辺りはすっかり暗かったが、ちょうど良かった。

 

クルミは改札を抜け、駅前のスーパーに入った。カゴを取り、主婦顔負けの慣れた手つきで野菜や肉、チョコレートなんかをポイポイ放り込んだ。

そしてお会計では、並んでいる間に千円札を二枚手元に用意していた。

驚いたことに、お会計は1995円だった。

 

エコバッグを片手に、クルミは人通りのほどんどない道を歩いて行く。周りは徐々に店はおろか家もまばらになり、畑や田んぼが目立つようになった。街の喧騒から、虫とカエルの合唱へと移り変わっていった。

 

街灯はなく、灯りはクルミのスマホだけだった。私は人が少ない分、距離は長めにとって、その光を頼りに彼女を追いかける。

 

やがて、川のせせらぎが聞こえ始めた。そして、彼女は川沿いにある一軒の洋館に入って行った。

 

電気はついていなかった。ご家族は不在なのだろうか。やがて、一階と、二階の一部屋ずつに灯りが灯った。リビングとクルミの部屋だろう。着替えて一階に戻ったのか、しばらくすると二階の電気は消えた。

 

その後、換気扇が周り始め、カレーの匂いが漂った。きっと、彼女は一人で食べているのだろう。私も少しお腹がすいてきた。

 

しばらくして一階の電気は消え、代わりに二階の電気がついた。クルミのTwitterを見てみると、

 

『今日の晩ごはんはカレーでした!手前味噌ですが( ゚Д゚)ウマー♪』

 

『恋をすると、魚心あれば水心ナシの歌詞がよくわかーる』

 

そんな内容がかなりの頻度でツイートされていた。

 

21時を回った頃、それまでの静寂を打ち破るように車のエンジン音が聞こえた。そして、クルミの家の車庫に入り、1人の中年の男性が降りて来て家の中に入った。クルミの父親だろう。

 

しばらくして、クルミのTwitterが更新された。

 

『今日もパパは私の作ったごはん食べてくれなかった』

 

『自分で親権奪っておいて、家事も出来ないくせに』

 

『お姉ちゃんはもう二週間くらいカレシの家だし。……まあ帰って来ても話したくもないけど』

 

私は、そのとき今までにないくらい胸がドキドキした。あのクルミに、美人でイケメンの彼氏もいて、友達も多く、幸せ街道まっしぐらに見えたクルミに、こんな一面があるのだと知って、何とも言えぬ快楽が私を支配した。

 

もっと知りたい。もっと彼女の弱いところも、意外な一面も、全部見たい。

 

それらのツイートは、5分後には全て消されていた。

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