兄は重度のシスコンです   作:kanakana_tuin

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遅くなって申し訳ありません。実は、ヒロイン全員出そうとしてたらこんな文字数になってた。今回は、滅茶苦茶長いです。それと、暁のヒロインはあやせさんにしたのでよろしくです。


初対面と再会

あやせさんはいい笑顔で俺たちを迎えてくれる。

 

「ここに来るまで迷いませんでしたか?」

「あぁ、そりゃ車だしね。それより、駐車場の場所に案内してもらえるかな?」

「あ、すみません。どうぞ、こちらへ」

「この三人は転入生です。車を誘導した後、理事長の所へ案内するところです」

「了解しました」

 

あやせさんが守衛の方に説明をしてその後に敷地内に入る。

誘導され決められている位置へ停車する。

 

「3人の荷物はそれだけですか?」

 

車を降りるとあやせさんが声を掛けてくる。

俺はリュックサックにアタッシュケース。暁はショルダーバック、七海はトートバック。まぁ、俺は色々と入れてるしアタッシュケースには例のアレが入ってるからそこまで重くないし二人は一泊分の荷物も入ってないだろう。

 

「あぁ、寮にほとんどの物は送ってあるからな。基本的に貴重品だけかな」

「分かりました。このまま向かっても平気ですか?」

「俺は構わないが、二人は平気か?」

「俺も大丈夫だ」

「私も平気です」

「そうですか。では、こちらへ」

 

あやせさんの後に俺らは続いていく。

 

「今から向かうところが校舎であちらが寮ですね。歩いて3分ぐらいですね」

「ほぉー、結構敷地的に広いんだな」

「確かに、橘花学院って他より広いんですね」

「そうですね、敷地内には学院が所有するアストラル研究施設もあるので。それにここは都心よりも離れているので地価も安いですからね。理事長室は校舎ですから、まずこちらへ」

 

中に入ると校舎も凄く綺麗だった。

 

「わ、中も綺麗だね」

「そりゃ、設立してまだそこまで経たないからだろう」

「はい。それに、全寮制ということもあって、学生の数も他よりちょっと少なめですしね」

「どれぐらいの学生がいるんですか?」

「クラスには大体30人ちょっとで、1学年に暮らすが4つですね」

「てことは、全体になると?」

「学生は382人。その内アストラル使いは100人ほど。1クラスに10人程度でしょうか」

「そんなに少ないのか!?半分は居ると思ってたぞ」

「そうですね。俺ももっとアストラル使いばかりなのかと思ってました」

「そう勘違いしてる人も多いですね」

「けどよ、他の人たちは、どうして橘花学院に来たんだ?俺ら三人は能力のことがあるからだけど」

「ここに通う大半の学生は、この研究都市に仕事を持つ方の子供なんです」

「あ、そっか。それもそうか」

 

まぁ、街の規模を考えてみれば納得がいく。いくら何でも、住民全員がアストラル使いは流石にあり得ないからな。

 

「他にも、純粋にアストラルの研究に興味のある学生の入学もあります。それに、アストラルに関連する授業はここだけしかありませんですし、橘花学院なら就職にも有利な制度がありますから」

「制度?」

「えぇ。アストラル技術に期待する企業が橘花学院のスポンサーになっていたり、提携したりしているんです。研究成果を買い取ってもらったり、技術に関する依頼を受けたり、成績優秀者はそのまま雇われたりです。それにアストラル技術に期待しているのは国も同じですから、後押しもあったりするんですよ」

「となると、兄さんは結構楽に就職できそうだな?」

「そうか?」

「そうだよ。澪史君は相当頭いいんだから雇われるんじゃない?」

「む、確かに。俺はもう3年の勉強はとっくに終わってるからアストラル関連に力入れるのもありだな」

 

とか、言ってるけど多分ここで就職はしないだろう。このまま行くと特班から上に行って幹部の位置になるかも、って麗子さんに言われてたしね。

 

「そうなんですか!それなら大丈夫そうですね。それと、もしココでアストラル研究に興味を持ったら先生に相談してみるのもいいと思いますよ」

「分かった。覚えておくぜ」

「あと、在原君は私と同じクラスになりますから、私に相談してくれても構いませんよ」

「ありがとう。これからよろしくお願いします、三司さん」

「はい、よろしくお願いします!」

「在原さんも。学年は違いますが、何か困ったことなどあれば、いつでも相談してください」

「あっ!はいっ、ありがとうございます」

 

と、七海は一歩下がった位置で、裏返り気味の声を上げた。

 

「・・・・。私、何かしましたか?」

「いや、七海はただ人見知りだから緊張してるだけだ。それに在原じゃ暁と被るし、妹の事は七海って呼んでやって下さい。俺も下の名前で呼んでくれ。そっちのほうが気楽なんでな」

「俺からもよろしくお願いします」

「ちょ、暁君に澪史君?!そんな、勝手に何をーー」

「これからよろしくお願いしますね、七海さん」

「よっ・・・よろしくお願いします、あやせ先輩」

「可愛い!真っ赤になった!なら、私のこともあやせと呼んでください」

「あ、えっと、・・・よろしくお願いします・・・あやせ、先輩・・・」

「はい。それに、澪史先輩もよろしくお願いします」

「おう!よろしくな、あやせさん」

「それと、在原君も。同じクラスですから、普通にしてくれて構いませんよ。その丁寧で堅苦しいしゃべり方慣れてないですよね?」

「あぁ、ありがたい。助かるよ。その言葉に甘えさせてもらうよ」

「はい、それじゃ理事長室に向かいましょう」

 

コンコン

 

「理事長、三司です」

「入りたまえ」

 

部屋に入るとそこにはいかつい男性がいた。俺は慣れてるからいいが、厳しい目つきだから暁と七海はちょっとびっくりするだろうな。

 

「転入生をお連れしました」

「ご苦労だった。下がってくれていい。この後は他の者に頼んである」

「分かりました」

 

「それでは、私はここで失礼しますね」

「サンキューな、あやせさん」

「ありがとう、三司さん」

 

ニコリと笑って、彼女は部屋を出た。それを見送ってから俺らは理事長に向き直る。ここから話すのは俺が担当することにしている。暁と七海には事前に話してある。正直、こう上の人と話すのは俺の方が適任だからだ。

 

「これから橘花学院でお世話になる、在原澪史と在原暁と在原七海です。よろしくお願いします」

 

俺の言葉の後に二人もお辞儀をする。

 

「伊勢篤紀だ。君たちの事情は聞いている。アストラル使いであることが露見して、この学院に編入することになったそうだな」

「えぇ」

「外では色々な思いもしただろうが、コンプレックスを感じる必要はない。安心してくれ。そして、アストラル能力を受け入れ、有益に活用することを含めて、前向きに生きる方法を見つけてくれ。ここは君たちのような、これから先を生きる若者のために設立したのだから」

「はい。お気遣いありがとうございます」

 

俺の言葉に理事長は軽くうなずいた。そして、机に備え付けられた電話の受話器を取り、どこかに連絡を取り始める。

 

「私だ。理事長室まで来て欲しい」

「そうだ。伝えていた通り、新しく編入する学生が3名いる。いつもの登録を頼む。ああ、待っている」

 

あれか・・・。

 

「すまないが、君たちには編入に関する最後の手続きをしてもらう」

「あれですよね?AIMSの登録でしたっけ?」

「あぁ、鷲頭研究都市の住人はAIMSに登録してもらう必要がある」

「ですよね。まぁ、詳しいことは分かりませんでした」

 

嘘です。

これが俺らが潜入しにきた理由の一つだ。ability information management system

頭文字をつなげて、AIMS(エイムス)

まぁ、ここでは原作と変わらないので省くぞ。

 

理事長の説明が終わった時、部屋にノックの音が響いた。

 

「入りたまえ」

「失礼します」

 

入ってきた女性は制服の上に白衣を纏っていた。俺と同い年か?

 

「この子たちが編入性だ。後の事はよろしく頼む」

「分かりました。それでは失礼します。君たちはアタシについてきてね」

「あ、はい。失礼します」

「失礼します」

「失礼します」

「あぁ、よい学園生活を」

 

 

「こっち。最上階にアタシの研究室があるから、わざわざ離れた研究棟まで行かずに登録できるよ」

「えっと、先生?」

「ちょ。暁!?おま、何言って!」

「ぐぁっ!?」

「な、なんですか?どうかしました?」

「遅かったか・・・」

「先生ね・・・先生かぁ。そう言われてもシカタナイヨネ・・・ハハッ」

「暁、お前はもっと人を見ろ。この人、白衣の下に制服着てるだろ。大方、俺と同じ学年だろ」

「そうだよ。それに、先生としては若すぎるよ」

「そうなのか?研究室を持ってるからてっきり先生かと思った。すみません」

「判断基準ってそこなんだ・・・でも仕方ないか・・・。自分でもわかってるよ。年甲斐もなくこんな服を着るのははずかしい、ってことぐらい。若い君ら二人から見れば、アタシが制服なんて無理があるよね・・・。AVとかデリヘルとか特殊なお店間があるよね・・・ぅぅっ」

「待ってくれ。そこまで思ってないし大方俺と同じ年齢に見えるから!そんな事考えてませんから!それに、あやせさんと制服が同じだったからだ」

「あ、そうなんだ。理事長室まで案内したのは、三司さんだったのか」

「すみません。失礼な間違いをしてしまって。まさか研究室をもってる学生が居るとは思わなくて」

「あー・・・うん、普通はいないよね。一学生が校舎に自分の部屋を持つなんて。自分で言うのもあれなんだけど、あたしはちょっぴり特別な学生なのさ」

「それって、成績が結構いいのか?」

「実は留年しているんだよ」

「・・・・・」

 

((同じ人だ!))

 

え…?俺の目?今、多分、虚ろな目してるぞ。

 

「えっと・・・そういう意味で?」

「しかも二回目」

「・・・・・」

 

((兄さん(澪史君)と同じ年齢だった?!))

 

「2回ダブって、最高学年は3回目ってわけ。他にいないでしょ、こんな学生」

「ぐあっ?!」

「あの・・・先輩」

「ん?何かな?」

「兄さんも、2回留年しています・・・」

「え”・・・・そうなの?」

「えーと、まぁ。うん」

 

ここにきて俺の心にダメージが・・・・。

 

「つまりは同い年ってこと?」

「まぁ、そうだな」

「そうなんだ・・・。なら、君なら分かると思うけど、周りと比べると、肌の張りとか・・・水の弾き方が・・・こんな気持ちわかる?」

「?!勿論ですよ・・・。この年齢になると、周りとの体力差も出てくるし色々と周りと違くって・・・・」

 

「「うぅ・・・辛い」」

 

 

(兄さん・・・。そんな事気にしてたのか)

(意外・・・。お兄ちゃんもそんな事考えてたんだ・・・)

 

「・・・・・」

「あ、ごめんね。この気持ちを分かる子が居なくてね。まぁ、留年こそしてはいるんだけど成績が問題って訳じゃないんだよね」

「あぁ、単位か。俺のいた所もそうだったからなぁ。俺の場合、入院してたから二回も留年しちゃったんだよね」

 

書類上はそうなってる。親父は、退学届けをだそうとした所、七海が止めてくれたらしい。流石、我が妹の七海だ。愛してる。ってまたこんなこと言ったら色々と言われそうだから口には絶対に出さないぞ。シスコンだけど嫌われたくはないからね。

 

「そっか。それは厳しいね」

「ところで、先輩には単位を取りたくない事情があるってことですか?」

「ん?んーー・・・ナイショ♪」

 

怪しげな微笑みを浮かべて唇に指を添える。

笑顔だけど、拒絶であることはハッキリと分かった。そりゃ、初めてあった人間にそこまで気安く打つ明けないのが普通だしな。

って、待てよ?・・・・気のせいな?あった事あると思ったけど・・・・。ま、いっか。どうせ、なんかの任務でチラっと見たぐらいだろう。

 

「で、そんなわけで『時間を余らせても仕方ない。暇なら研究しろ』ってこの部屋をね。他には、研究棟の方に顔を出すぐらいかな」

 

絶対、嘘だ。普通なら学生に部屋が与えられることはよほど優秀じゃなきゃ与えられない。特に、アストラルについてはね。

 

「さて」

 

彼女はドアの隣に取り付けられたセンサーに手の平をかざす。すると、中のロックが外れた音がした。これって・・・・。

 

「ここがお姉さんの研究室。さあ、どうぞ」

「「「失礼します」」」

「どうぞ楽にして。そうだ、飲み物を入れよう。コーヒーと緑茶があるけど、どっちがいい?」

「いや、別にいいぞ。気にしなくて」

「遠慮しないで。どうせ、自分の分を入れるつもりだったからね。あたしはコーヒーにするけど?」

「俺は、今さっぱりしたいからお茶で」

「じゃぁ、俺はコーヒーを」

「あ、私もコーヒーで」

「オッケー。少々お待ちを」

 

まぁ、ホントはさっぱりするよりコーヒーの方がいいけど念のためにね。

彼女を見てみると、どうやらドリッパーで入れるみたいだ。

 

「お前、コーヒー飲めたっけ?初対面の相手だからって尻込みしないで、素直に緑茶の方をお願いした方がよかったんじゃないか?」

「子供扱いしすぎだよ暁君。コーヒーぐらい飲めるよ。苦手ではあるけど多分ね」

「・・・素直に緑茶をお願いすればよかったのに」

「いいでしょ。飲めるんだから」

「そうか?将来、上司とかと同じのにして失敗しそうだけどな」

「私は、心配です。暁君の将来が・・・」

「将来・・・」

「いつまで私たちが面倒を見ることになるのやら・・・老後の面倒までみるのかな?」

「大丈夫だ。一応、職は早めに決めさせて家から追い出すからな」

「ちょ、兄さん。ひどすぎじゃね?」

「そうか?男子はこうだろ。ま、七海が就職しなくても俺は七海を養ってやるからそこら辺は兄ちゃんに任せな」

「うわ・・・・シスコンが重いよ」

「おいおい、別にいいだろ。お兄ちゃんって生命体は妹が大事なの。弟もだけど、妹が一番なの」

「そこまでか。兄さんのシスコンは重いな」

「そんな事より、今日は飲む。いつまでも緑茶に逃げるのは子供っぽいもん」

「兄さんは緑茶選んでるけど?」

「澪史君はコーヒーとお茶を交互で飲んでるからいいの」

「なんだ、その意地・・・」

 

暁が気にしながらも俺は彼女を横目に部屋の中を軽く確認する。特に気になるものはないが、いうなれば、PCぐらいだ。あれでAIMSにアクセスするんだろう。

 

「じゃっじゃーん、ほい、お待ちどう」

「ありがとうございます。・・・いい香りですね」

「ふふ、ありがとう。ミルクと砂糖はご自由にどうぞ」

「「いただきます」」

 

因みに俺はまだ飲まない。

 

「どう?ダイジョーブ?」

「美味しいです。苦味と酸味のバランスがよくてすっきりする感じで」

「行き詰った時、気持ちよく頭をリフレッシュする目的でブレンドしたものだからね」

「俺は、この味好きですね」

「そう言ってもらえると嬉しいね」

「・・・んっ・・・・んぅ・・・・。そ、そうですね。この苦味がたまらな、感じですね・・・っ」

「涙目じゃん」

 

ま、だろうな。やはり、お茶にしておいて正解だ。

 

「あー、ごめんね。あたし好みにしてるから、ちょっと口に合わなかったかもしれないね。すぐにお茶を入れなおすね」

「あ、別に入れなおさなくていいよ」

「え?でも?」

「大丈夫ですから。俺はコーヒーを一つ頼めます?」

「そう?でもお茶は・・・」

 

俺がそこで少し微笑む。

 

「!・・・分かった。それじゃ、待っててね」

「済まないな」

 

「・・・・」

「わたしも成長してるもん。コーヒーぐらい飲めるとおもって」

「何も言ってないゾ」

「澪史君が、何考えてるか分かる。妹なんだから」

「だったら、俺も分かるぞ?ほれ、俺のお茶だ。そして、俺はこちらをいただく」

 

そう言って、七海に俺はまだ手を付けてないお茶を七海に渡して、飲みかけのコーヒーを取り上げる。

 

「どうせ、飲めないと思ってたしな。貰うぜ?」

「うん・・・ありがと、お兄ちゃん」

「気にするな」

 

まぁ、正直。恥ずかしい。実際、間接キスするわけだし、妹と間接キスで興奮するとか変態かも知れないけど兄だから仕方ないよね。うん、仕方ない(大事な事だから二回思った)

 

「・・・ジー・・・・」

「え、な、なんですか?」

「いやー。特に二人は仲がいいなー、と思ってさ」

「二人はいつもこうですよ」

「そうなんだ?」

「ま、兄妹ですからね」

「それよりも質問しても良いですか?」

「どうぞー?」

 

ここから先は少し原作なのでカット。俺は、実際、気が付いてたしね。アストラル認証。まぁ、網膜パターンで認証するのと同じだ。実は、ここには何回か潜入してる。一人の時にだ。このことは特班のみんなには言ってない。それに、俺の第二の隠れ家にはこのシステムを使っている。俺の場合、複数の能力があるから一つ増えたら書き換えが少しめんどくさいぐらいだ。暁と七海が質問してるうちにコーヒーが出来た様だ。

 

「コーヒーお待ち」

「どうも。で、七海。お茶はどうだ?」

「ん・・・・あ、こっちはとても美味しい」

「良かった。お気に召したようで。それで、コーヒー二つももってどうするの?」

「えぇ、片方は砂糖とミルクを少し多めにいれて片方はブラックで飲みます。こうやって、どっちの方が好みか判断するんです。これが俺の自己流の飲み方なのだ」

「へぇー。そんなことするんだね。それと、ここに来たらまた入れてあげるからぜひ来てね?」

「あぁ、ありがとう」

「機会があったらよろしくお願いします」

「先輩。もし、暁君がサボる様でしたら容赦なく叩き出してくださいね」

「オッケー。わかった。その時はおしりを蹴り上げよう」

「サボらないよ!」

「それは残念。さて、それは置いておいて、そろそろ本題に入ろうか」

「具体的には何を登録するんですか?」

「簡単に言うと個人情報みたいな感じかな。今日は名前と生年月日とアストラル能力。あと体重と身長かな」

「他の部分は後日、学院で行われたときにこっちで追加登録しておくから」

 

またまた、メたいけど原作とほとんど変わらないのでカットです。原作マルコピしそうなので。

 

「えーと、最後はお兄さんだね。えーと、在原・・・・澪史君であってるのかな?」

「えぇ、そうですけど。どうしました?」

「ふぇ?!い、いや?どうしたもこうもなんでもないでしゅよ?」

 

・・・・どうしたんだ?茉優は急にてんぱり始めたぞ?(俺は名前で呼べと言われた。何故って?同い年だからだってさ)

 

「?それならいいですけど・・・」

「さ、さて。暁君が『身体強化』。七海ちゃんが、『治癒』と。で、澪史が『氷結』ね」

 

暁は嘘だ。七海はホントで、俺は半分ホントで半分が嘘だ。今も能力は複数所持してるので、一般的な氷結にしておいた。これは、氷を生成する類の物だ。物体の温度も下げることも出来る。特に暑いときはいいんだが、結構体力使うので乱用は出来ない。まぁ、体力倍にしてから使えば乱用は出来るんだけどね。

 

「じゃぁ、まずは能力の確認だね。3人とも、これを持って」

 

差し出されたのはリトマス試験紙みたいなものだ。

 

「これはあれか?やっぱりリトマス試験紙みたいな物か?」

「そうそう。そんな感じかな?」

 

「「あー」」

 

俺は、なんとなくわかることが多くていつも当てることがある。

 

「その紙を持って能力を発動させてみてくれる?そしたら色が変わる。こんな感じの検査を複数重ねて、君たちの能力を特定するからね」

「あー。そっか。間違えてる能力を認識してるかも知れないからな」

「そういうこと。結構、澪史は分かるんだね」

「まぁね、勉強が終わるとアストラルについても調べてたからね」

「そうなんだ?誰か知り合いに研究者とかいるの?」

「ああ。今はいったん休暇にして、世界旅行をしてるぐらいだ」

「そうなんだ。それじゃ、面倒だとは思うけどよろしくね」

 

 

そうして、検査を終えたのは10個近い検査を行ってからだ。

 

あ。またちょっぴりカットするよ。(文字数もやばい)

 

 

「さてと、澪史の結果だけど。・・・・結構凄いね。範囲は見える範囲に影響が及ぶ。しかも、触れれば物体の温度も下げることが出来る。結構役立つ能力だね。うん、申告と同じで大丈夫だね。・・・・でも、流石に複数も能力は持ってないよね・・・。やっぱり彼は違うのかな(小声)」

 

?何か言ってたけど聞こえんな。

 

「これで、登録は完了。3人ともお疲れ様」

「あぁ。茉優もお疲れ。それと休みの日にありがとな。俺たちのために」

「あー、いやそのー気にしなくていいよ?どうせ暇だったし」

「あ、そっか。二回もダブると周りとの接し方分からないもんね・・・」

 

「「はぁ・・・」」

 

「兄さんも、同じ風にしないでくれ。俺でもよければ付き合いますよ。先輩」

「わ、私もお付き合いしますので」

「こんなオバさんでもいいの?」

 

なんか熟女系AVのタイトルみたいなこと言い出しちゃいましたよ。

 

「オバさんなんて歳じゃないでしょ。俺と茉優は同い年だから、まだ若いよ・・・。俺はそう思ってる」

「そうですよ。俺もそう思ってす」

「舐めんな―っ!女子の年齢差舐めんなーっ!」

 

((え”・・・・・。やっば。この人、めんどくさい人だ・・・))

 

俺と暁は久しぶりに考えが一致した気がする。

 

「1つ違えばその数倍の差がでるっ!それが女子!アタシなんて体育の前に日焼け止めを塗らないとーー命に関わるんだから!」

「「命っ!?」」

 

そこまで?!

 

「あとお化粧を落とし忘れても死ぬ」

 

あ、それは聞いたことあるな。

 

「とにかくだ!茉優が友達になってくれると嬉しい。編入したばかりだしな。二人もそうだろ?」

 

俺の言葉にうなずく2人

 

「3人ともありがとうっ。今後ともよろしくね」

「あぁ、困ったことでもあれば何でも言ってくれ、助けになるぞ」

「俺もなります」

「二人共ありがとう。じゃぁ、澪史いいかな?」

「なんだ?」

「重い物とかってあるかな?暁君の能力を調べるためになんか無いかなと思ってさ」

「あぁ。だったらこのアタッシュケースでもいいか?80Kgぐらいあるぞ?」

「そんなに重たいの?!」

「まぁ、色々と入ってるからな」

「・・・ちなみに何が入ってるの?」

「秘密です♪」

 

・・・うわ。キモっ・・・。自分でやると気持ち悪く感じるな。

 

「秘密なら仕方ないか・・・。って、よくそんな物持てるね。あ、なら澪史にも後で頼み事聞いてもらってもいい?」

「?別に構わないぞ?その前に。暁、能力でこれ持ってみろ」

「あぁ。分かった」

 

暁は能力を使い、アタッシュケースを軽々と持ち上げる。

 

「ほほー。そんな重いものでも大丈夫なんだ。じゃぁ、能力を解除してみて?」

「はい、わかりました。・・重い?!なんだこれ?!」

「そうか?俺的にまだ平気だけどな?」

「ほほぅ。そんなこと言うならぶら下がってもいい?」

「あー、なら片腕か。いいぞ。っとその前に、パイプ椅子を二つ並べて立つか」

 

並べて、俺が少ししゃがむ。

 

「いつでもいいぞ」

「それじゃぁ、失礼して・・・よっと」

「・・・かっる?!嘘だろ?あ、俺が慣れすぎてるのか」

「そ、そんなに軽い?」

「あぁ。全然余裕だな」

「へぇー。あ、男の子の腕、硬い・・・。なんかブランコの遊具とか見たいでちょっと楽しいかも」

「・・・・・」

 

お?・・・よし

 

「七海・・・お前もぶら下がるか?」

「あ、交代する?」

「い、いえ。平気です。羨ましいとか思ってたわけでは無いですから」

「でも興味があるから見てたんでしょ?」

「それは、まぁ。ぶらさがることなんて、したことありませんからね」

「そうなんだ?兄妹ならこれぐらいのこと普通にするものじゃないの?」

「普通はしませんよ。そんなこと」

 

 

まぁ、こんなことはしない。俺らは義理だから初めての時から異性って意識があるからな。でもまぁ、俺は結構触れ合う機会はあったな。

 

夜にホラー映画みて七海が一人でお風呂入りたがらないときは、親父が入ろうとしたけど、それを止めて、俺が七海と風呂に入ったことはるな・・・・。あの時、鼻血出そうでやばかったなぁ。確か・・・俺が14の時だったかな?それ以外だと、仕事中に俺が抱えるぐらいだな。特におんぶしてる時とかもう色々と・・・・って、完全に変態じゃないか俺。

 

「七海ちゃん。アタシの代わりにぶら下がってみてくれない?」

「えぇ?!ど、どうしてわたしが・・・・?」

「誰かがぶら下がってる状態を外から観察してみたいんだよ」

「え、いや、でも・・・わたし、重いですから」

「・・・・七海。言っちゃうけど、絶対七海は軽い。俺はそう思う」

「そうだよ。それに、七海ちゃんの体格で重いって言うのならアタシなんて・・・」

「ああっ!?すっ、すみませんすみません。違うんです、そんなつもりではなくて」

「誰だって30kg以上あるんだから、細かいことは気にしなくていいと思うぞ。それに、兄さんなら絶対平気だから。でしょ?兄さん」

「あぁ。ほら」

「あ、うん」

 

差し出した腕を七海がつかむ。そして、そのまま七海の体を持ち上げた。

 

「ぉっ、ぉぉ・・・・凄い、ほんとに浮いてる・・・澪史君、平気?」

「平気だ。ていうか、全然軽いじゃないか」

「そ、そうかな?」

「あぁ。それで、七海の方がどうだ?」

「あ、うん。澪史くんの腕ってホントに凄いね」」

「辛くなったら言えよ?」

「・・・・うん」

 

こうして、俺たち兄妹3人は、茉優の気が済むまで実験に付き合った。

 

 

 

 

 

 

そして、登録を終わらせ、校舎を後にした俺たちは寮にたどり着いた。建物は全部で4つある。どうやら、1つだけじゃ全学生が暮らすには足りないのだろう。幸いな事に、俺たち3人は同じ寮に入れるらしい。何かあった時に打ち合わせがしやすくて大いに助かる。

 

「なんだかやっと落ち着いたって感じだね」

「でもまだ荷物の整理が出来てないから早く部屋に入りたいものだ」

 

まず、自分たちの部屋を知る必要がある。

 

「中に入れば、管理人が居るのか?」

「多分だが、各寮に1人いるんだろう。この規模となると必然的にそうなるんじゃないか?」

「それもそうか」

 

通りかかった誰かに訊いてみる方が早いかも知れないな。

 

「あの、すまない。ちょっといいか?」

「ん?ワタシのことだろうか?」

「あぁ。俺たちは橘花学院に転入してきて、今日から寮で世話になるんだが、管理人はどこにいるんだ?」

「ああ、それならワタシだ」

「つまり?」

「寮の管理を行っているのはワタシだ。あ、すまない。自己紹介が遅れたな。ワタシは二条院羽月という。君たちと同じ学生だ」

 

 

美しく、凛とした雰囲気の女の子だが、何故か、昔の時代劇っぽい話し方をする子のようだ。だが、違和感はない。態度が堂々としているからだろうか。

 

「全体を統括しているのは教員だが、各寮を管理しているのは寮長である学生なんだ。勿論キミたち3人の事は聞いている。ワタシの管理する第三寮に入寮することになっている」

「話しが早くて助かる。俺は兄の在原澪史だ」

「弟の在原暁です、よろしくお願いします」

「わたしは・・・妹の在原七海です。よろしくお願いします」

「わかった。こちらこそよろしく頼む、在原君に七海君」

「はい、こちらこそ」

「え!?あっ、はい・・・・お願いします」

「どうした?体調でも悪いのか?」

「いや、七海は名前で呼ばれて恥ずかしがってるだけさ気にしないでくれ」

「ああ、すまない。いきなり過ぎたな。少々礼儀を欠いていた」

「い、いえ、そんな風に思ったわけではないです。平気です」

「流石に名前で呼ばれるのに慣れてくれ。兄ちゃんは何回説明すればいいんだ」

「今日1日で慣れるなんて無理だよー」

 

困り果てた声で嘆く七海。まぁ兄ちゃんとしてはこれぐらいでよかったと思うけどな。人見知りの七海は、これぐらい向こうから踏み込んでくれないと、いつまで経ってもなれないだろうから。そもそも、1日の大半は学生生活を過ごすんだ。雰囲気に慣れておいて損はないだろう。

 

「改めて。よろしく頼む、七海君」

「あ、はい!こちらこそ・・・・改めてよろしくお願いします、二上院先輩」

「在原君も無理に畏まらなくていい、その方がワタシとしても気を遣わなくて助かる」

「じゃあ・・・これからよろしく、二上院さん」

「ああ!・・・ところで先輩の事はなんて呼べばいいのだろうか」

「そうだな・・・・なんでもいいぜ。それに、俺も暁とかと変わらない態度で構わない。逆に敬語ってあまり好きじゃないからな」

「そうか、なら澪史先輩と呼ばせてもらう。これからよろしく頼む」

「おう。よろしくな」

「では早速、中を案内しよう。ここがロビー、談話室も兼ねている。向こうに浴場、こっちには食堂がある。ランドリールームは3階と6階だ。3階は男子用、6階が女子用だから気を付けてくれ。そもそもこの寮は、3階までが男子、4階以上が女子のフロアだ」

「ああ、分かった」

「それで、これからについてだが、夕食は19時~20時の間。外に出てもいいが、門限は19時半だ。夕食を受け取るときに点呼も取る。それ以降は寮の外に出るのは禁止だ。21時半までに入浴を済ませて23時に消灯。起床の時間は自由だが、7時50分までには起きて朝の点呼と朝食。それが済んだら学院に向かう。以上だ。一気に説明してしまったが、大丈夫だろうか?」

「大丈夫だ。分からなければまた確認させてもらう」

「ああ。いつでも訊いてくれ。そうそう。あと、21時半以降に男子が女子のフロアに入るのは禁止だ。気を付けてくれ」

「あの、女子が男子のフロアに入るのはいいんですか?」

「一応問題はないことになっているが、あまり好ましくはない。妙な誤解を生まないようにロビーで話す方がいいだろう」

「はい、分かりました」

 

なら、会う必要があるときは俺の能力を使えばいいか。後で、七海の部屋の座標登録しておくか。

 

「それで3人の部屋なんだが、澪史先輩は318号室。在原君は319号室。七海君は418号室。これが鍵だ」

 

渡されたのは、ホテルなどでよく目にするカードキーと同じものだ。多分だが、タッチ式かな?落とさないように気を付けておいた方がいいか。

 

「これは、部屋のほかにも教室のカギも開けられる。もし、最初に投稿することがあったら、この鍵をかざすといい」

「ああ。それになくしたりしたら部屋に入れないしな。そこは気を付けておこう」

「さて。部屋へ案内したいが・・・・男子フロアの事は男子に任せた方がいいか。あ、ちょうどいいところに・・・。周防、ちょっといいか!」

 

羽月さんは手を上げ、ちょうど階段から降りてきたヤツに呼びかけた。その姿は、小柄で、華奢で、顔立ちもどこか幼くって女子か?あれ?おかしくね?男子を呼ぶものじゃないの?

 

「なんだい、二条院さん」

「周防は確か、317号室だったな」

「そうだけど?それが?」

「転入生だ。今日から318と319号室で暮らして一人は先輩でもう一人は私たちと同じクラスになると聞いているのでな。寮や学院での細かい面倒は、同じ男である周防に頼みたい。もちろん、私も力になるが」

「なんだ、そんなことか。全然かまわないよ」

「ありがとう、周防」

「お礼はいいよ。二条院さんは律儀だなー。さて、初めまして。僕は周防恭平。今日からお隣さんだね。えーと、貴方が先輩?」

「あぁ。3年の在原澪史だ。好きに呼んでくれ。それと、敬語はいらないぞ。堅苦しいのは苦手だからな」

「分かった。じゃあレイジって呼ばせてもらうね。そっちの君は?」

「あ、ああ。俺は兄さんの弟の暁だ。よろしく。俺も好きなように呼んでくれ」

「おっけー。サトルって呼ばしてもらうね。二人共よろしく」

 

差し出された手を握り返して握手を交わす。やわらかいだと?!こいつ、女子か?って、流石にねーよな。なんか、怪しいにおいぷんぷんしてるしな。

 

そして、この先は、ちょっぴりカット。羽月と恭平には、「この学園に友人が居るからそいつに連絡して案内してもらうから大丈夫だ」って言って先に行ってもらった。まぁ、その友人も俺と同じくそっちの方が都合がいいからな。

 

俺は、そいつに電話を掛ける。

 

「あ、もしもし?俺だ。在原澪史だぞ」

「えっ?!・・・幽霊?」

「なわけあるか!お前、確か橘花学院の3年で第3寮だろ?すぐさま一階に来てくれ。なんも言わずにすぐ来いよ?」

「え?あ、ちょ」

 

無視して電話を切る。そりゃ、あいつに俺が生きてる事教えてないから幽霊って思われても仕方ないか。

 

 

数分後

 

上から降りてきた男子生徒に俺は声を掛ける。

 

「よっすよっす。お元気ですか?澪史ですよー」

「・・・ホントだったんだな」

「どうだ?寂しかったろ?」

「寂しい通り越して悲しかったですよ。先輩が死んだって連絡入ったら誰だって驚きますよ」

「わりぃな。そんなことより俺の部屋に案内してくれ」

「・・・・案内の子とか居たんじゃないのか?」

「居たけど、お前じゃなきゃ色々と厄介だろ?」

「それもそうか。で、何号室だ?」

「318号室だ」

「まじか、隣の隣じゃん」

「お、そいつはラッキーだな」

「ま、いいか。こっちだ」

 

俺はそいつについていく。

 

 

 

階段を上がっていくと3階につく。

 

「ここだ。ここが318号室な」

「ここか。サンキューな」

「気にしないでくれ先輩。それと、こいつはここでの決まり事をまとめた資料だ。渡しておく」

「助かるぜ。とりあえず、部屋に入ろうか」

 

ガチャ

 

「まぁまぁの広さかな」

「一人なら十分でしょ。いや、先輩には狭いか」

「まぁな」

「で?今回はなんでこの学院に?」

「任務のついでだ。お前はなんで学院に?」

「母・・所長にな」

「あー。お前のお母さんはお前思いだもんな」

「言い直した意味ないじゃないですか」

「でもいいよなー。紘汰はお母さんがいて」

「・・・・まぁな」

 

もうここまで話したら分かるだろう。島野紘汰。俺の後輩で2歳年下だ。前の学校で俺と同じ学校だったがどうやらここに転入したらしい。そして、特班って言うのは3つほど部署がある。俺が所属しているところは一番勢力と権力が強い。紘汰が所属してる所は2番目に勢力と権力が強い。3番目に所属している奴もいるが、この学院にはいないので省かせてもらう。部署にもコードネームがあり、俺の所はゼロ・レクイエム。紘汰の部署はエレクトリック。3つ目の部署はクロスタイム。俺たちゼロ・レクイエムは主に犯人退治や逮捕、力と頭脳を使うことが多い部署だ。エレクトリックは潜入や長期間任務などが該当する。タイムクロスは基本サポートメインだ。サポートメインって言っても殆どは雑用などが基本だけどな。

 

そして、ゼロ・レクイエムの責任者が隆之介。エレクトリックは紘汰の母親。島野舞さん。タイムクロスにもいるが今は省かせてもらう。更に、特班の中で強さはコードネームで決まる。アレイスター→レヴィ→ロスト。この順で決まっている。俺はアレイスター2だったから特班の中で表向きは2番目の強さになっているが、今では親父も超えるほど強くなっており、特班では呼ばれないが、幹部である麗子さん達と作戦に参加する場合は、俺にしかないコードネーム。レクイエムとなっている。麗子さん命名だ。このネームで呼ばれた時は超重要任務か、超危険任務に参加が必要な時に呼ばれる。まあそうそう無いけどね。それと、舞さんは、俺の跡を受け継いでアレイスター2となっている。その前はアレイスター3だった。因みに、紘汰はレヴィ2。俺の一つしたの強さだ。だが、紘汰もかなりの実力者で紘汰にしかないコードネームもある。それは、トリック。そして、タイムクロスの中にも俺たちのように実力者が一人いる。あいつはレヴィ3だ。そして、コードネームはタイム。分かってる人もいるかもだけど、俺たちは親という存在を超えて部署の名前を背負っているようなものである。

 

 

「さて、まずはこいつを組み立てなきゃな」

 

俺はアタッシュケースを開ける。そこには様々な部品が入っていた。

 

「こいつは?」

「俺の発明品だ。俺の瞬間移動を応用して機械を介して使えば楽に能力を使用できる装置だ。こいつは、設置型だからお前にも手伝ってもらうぞ」

「任せてくれ」

 

 

 

 

この後、無事に設置が完了し、お風呂とご飯を済ませて一息ついていた頃だった。

 

プルルルル

 

ぬ?電話か。って、七海?

 

「もしもし?」

『た、助けて・・・・澪史くーん・・・』

「????なんだ?なにかあったのか?」

『・・・助けて・・・ヤバい、落ちちゃう、このままじゃ落ちちゃうよぉ・・・・お兄ちゃ~ん』

「落ちるってなんだっ!しっかり説明しろ!」

『外・・・窓、開けて・・・』

「え?外?」

 

俺は急いで窓に駆け寄ってみた。そこには・・・・

 

「おっ、落ちる・・・・落ちちゃう・・・もうダメぇ、むりぃ」

「ふぁ」

 

何故か七海が居た。腕をプルプルさせながらロープに必死にしがみついてた。

 

「・・・ずいぶん、ファンキーな遊びだな」

「あっ、遊んでるわけじゃなくて・・・・ホントっもうむりぃ・・・ッッ。たすけっ・・・お願い、腕っ、痺れて・・・・お兄ちゃんっ、お願い、助けておにいちゃぁん」

 

声に余裕が無くてホントにヤバそうだな。俺はすぐさま七海を抱っこして部屋の中に入れた。

 

「はぁ・・・はぁ・・・ほ、ほんとに死ぬかと思った・・・」

「いくら編入してテンション上がったからって、ファンキーな遊びはやめておけ。やるなら兄ちゃんを近くに呼んでからにしろ」

「そこじゃないと思うよ・・・。いやさ、この時間帯だと女の私がこっちのフロアに行けないじゃん?それに、ちょうど部屋が真上だったし・・・」

「だったら、俺に連絡してくれ。俺が転移でそっちに行けるんだから。って、今日は登録してなかったな。あ!分かった!お兄ちゃんにそこまでして会いたかったのか。可愛いやつめー」

「・・・はぁ?なにそれキモイ。そういうのキモくてウザいのいいから」

「へぇ?お兄ちゃんは七海が大好きなんだけどなぁー」

「・・・・きっしょ」

「・・・・ねぇ、真顔でそんな事言わないでください。お兄ちゃん泣くよ?いいの?泣くよ!?てか、そこまで言うか?」

「え。まさか自覚なし?重症じゃん・・・」

「お兄ちゃん、傷ついたなぁー」

「あ、そうだ。傷つくと言えばーー」

「どうした?」

「お昼の件は平気?倍化の能力使って盛り上げてたでしょ?無理して腕を痛めたり、筋肉痛とか、大丈夫?」

「大丈夫だぞ。それに、あのアタッシュケース、80kgもするんだから、あっちの方が重いよ。それに、もう倍化は常時発動中だからな」

「そうなの?」

「あぁ。分からないけど気が付いたらそうなってた。一応、弱くしたりも出来るようになってる」

「それって、対象の力とかを半減できるって事?」

「そゆこと」

「でもでも、もしかしたら影響が出るかもしれない。だからさ、念のため、わたしが治したげる・・・・よ?」

 

はい、可愛い。100点。たまに、キモイとか冷たい事を言うけど、基本帝に優しくて可愛い妹だ。俺の自慢の妹だ。

 

「そういうことなら、任せた」

「うん。任せて!」

 

七海は頷いて、俺の腕を、両手でそっと包み込んだ。

 

「天使の輝きよ、この物に癒しあれ。ヒール」

 

七海の呪文が終わると俺の体にある疲れが無くなって行った感覚がある。

 

「おお。疲れが吹き飛んだぞ。ありがと」

「よかった」

「それに、能力を使うときに集中するのに呪文ってやっぱりいいよなー」

「だよね。そっちの方がかっこいいもんね」

「分かってらっしゃるね」

 

「さーて、話を戻すか。暁には・・・明日伝えておくか」

「まずAIMSに侵入しなきゃなんだけど」

「それなんだが、もうネットワークを調べ終わったが、七海も終ってるか?」

「勿論だよ、それにこのタブレットはお兄ちゃんも一緒に改造してくれたから使いやすいからね」

 

そういえば、昔。暁に言ったことがあったな。

 

俺と七海の情報処理能力は馬鹿みたいに高い。その気になれば、超危険なサイバーテロをやることだって出来ちまうぜ。

 

ってな。七海は治癒の能力。身体能力も女子の平均とそこまで変わらないので現場には向かない。

 

けど、特班に入り、こうして3人でチームを組んでるのはこの技術が一番の理由でもある。本来なら、暁と七海だけでいいのだが、俺が麗子さんに頼んで二人と共に任務に当たることになったのだ。

 

「なら分かってるっしょ?」

「うん、校舎にはAIMSが無い。それに、研究棟にもあるか怪しい。けど、お昼の事を思い出したんだけど、式部先輩のPCからAIMSにアクセスできると思うの。それに、AIMS用の独立したネットワークが構築されていて、あの部屋のPCはそこのネットワークに組み込まれてるんだと思う。結果を言うと、あの部屋に侵入するのが一番手っ取り早いと思うんだけど、どうかな?」

「うん、100点だ。よくできました。能力が衰えてなくて良かった良かった」

「ふぅー。良かった。それにしてもお兄ちゃん、あの装置は何?」

「それは明日教えてやる」

「分かった。それと、お兄ちゃんはどのくらいで把握できた?」

「1分弱かな」

「まさか、その短時間で全部考えたの?」

「おうとも。こう見えても能力は更にグレードアップしたのだよ」

「流石だね」

「さーて、部屋に一人で戻れそうか?」

「えーっと、厳しいかな?」

「ったく。ほら捕まれ。運んでやる」

「・・・ありがと」

 

 

 

七海を部屋に運んだ後に俺は、一つの端末を出す。室長に連絡をするからだ。

 

『わたしだ』

「レヴィ1でーす」

『どうだそっちは。どんな塩梅だ?』

「特に問題は無し。今は寮から連絡を入れている」

『そうか、それならよかった。で、どうだ?暁の方は友達出来そうか?』

「大丈夫そうかな?同じクラスの奴らともうすでに友達になれたしね」

『そうか!問題ないなら安心だな。それで、任務の方だが・・・犯人の能力を絞り込んだ。認識阻害だ』

「なるほど、確かにそれの方がありえるな」

『だろ?催眠なら偽札を作る必要はないからな。で、そっちはどうだ?』

「いやーちょっち問題がね」

『なんだ?』

 

俺はアストラル認証について少し教えた。

 

『アストラル認証か。厄介だな。相手の能力が分からなければそれを突破できないか』

「だね。でもさ、実はそのシステムは俺の隠れ家にも導入しているんだ。今、データをそっちに送るわ」

『え?いつの間に?って、ほんとかよ。やべぇな。お前』

「ま、一度、こちらに忍び込んでますので」

『・・・・麗子の奴か』

「ご名答。あ、そうだ!あれがあるじゃないか!」

『あれ?なんだ?』

「あのほら。なんだっけ?あれだよあれ。俺の服とかに使ってるあれ!」

『あ!思い出した!メモリー繊維だ!』

 

 

メモリー繊維。他者の能力をコピーするすげー代物。俺たちの仕事服に使われているのはこの繊維だ。値段、お高めです。

 

『それをそっちに持っていくまで少し時間がかかる。また追って連絡する』

「了解でーす。通信終了」

 

通信が切れて俺はベットに倒れる。

 

 

この先、どんな生活が待っているのか楽しみだぜ!

 

 

 

 

って思っていたけど、早速別から連絡が入る。

 

 

「およ?紘汰からだ。しかも、この回線?って、まさか・・・」

『先輩、出るの遅い』

「わりーわりー。で、どうした?」

『これから任務に用意してくださいね。マスター7から連絡があってトリックとレクイエムに招集がかかりました』

「げっ、マジかよ・・・・」

『内容は、ここの隣の市に出没している暴走族を捕まえる事だそうです』

「・・・それマジで言ってんのか?」

『ええ。どうやら、そいつらアストラル能力を使って周りに多大なる迷惑をかけているみたいで警察も手出しが出来なくて手を出しても返り討ちに合うレベルだそうですよ。しかも、この件は警察からの依頼で腕のあるものしか集められなくて、奴らに対抗できるのは俺たちだけみたいですよ』

「うわ、だっる。分かったよ。レクイエムはこれより校門の外に用意をしてから向かう。インカム装着したらまた連絡をする」

『トリック、了解』

 

ここで通信が切れる。・・・・俺はどうやら、平和に夜を過ごすことは出来ないらしいな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




誤字報告などあったらよろしくお願いします。





次回予告 「隣の市に静かなる夜の訪れを」

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