この話は俗に言うプロローグというやつです。
イーファの樹を脱出したクジャとジタンは黒魔導士村を目指していた。
そして今日も黒魔導士村を目指して歩いていたのだが、クジャが急に止まった。
「どうしたんだよクジャ、さっさと歩かねーと今日は洞窟にすら入れねーぞ」
「ジタン、まさか気づいてないのかい?」
「ん?何にだ?」
「囲まれてるよ」
「ッ?!」
クジャの言葉にジタンは急いで臨戦態勢を整える。
クジャも手に魔力を集め、いつでも魔法を放てる準備をする。
その時、クジャの方からは植物のツタ、ジタンの方からはイノシシの様な魔物が飛び出してきた。
「ファイガ!」
「おらよっと!」
クジャとジタンは冷静に有効な魔法や急所を切り裂いたりする事で対処する。
すると茂みから次々と多種多様な魔物が一斉に姿を現し、クジャとジタンを取り囲んだ。
本来、この様に多種多様な魔物が襲ってくる事は普通ならばありえない。
そのありえない状態にクジャ達は戸惑いながらも迎撃していく。
しかし、いくら倒しても次から次へと集まってくる魔物に、ジタン達は病み上がりという事もあり、追い詰められていく。
そしてとうとう、クジャとジタンは度重なるダメージに地に膝をついてしまった。
「くっそ...どうなってんだコイツら...一向にへりやしねぇ」
「霧がなくなった事で...魔物にも何か異常が起こってると考えるべきだね...」
近づいてくる魔物に2人は下がり、距離を取ろうとするが、魔物に囲まれているため、それも意味をなさない。
(クッソ...一体どうすりゃ...)
焦るジタンと対照に、クジャは何か意を決した様に顔を上げ、ジタンを呼ぶ。
「ジタン」
「なんだよ、今こっちは考えて...」
「スリプル」
「て......め...なにす...」
「安心しなよ。起きたら全て終わってるからね」
ジタンはクジャの言葉を聞きながら、就きたくもない眠りに就いた。
ジタンが倒れた事で、勢いづいた魔物達はクジャに総攻撃を仕掛けようとするが...。
「トルネド!」
クジャは残ったなけなしの魔力でトルネドを発動し、ジタンとクジャの周りに竜巻を起こした。
しかし、魔力が少ないからか、長くは持ちそうにない。
だが、クジャにとっては『少しだけ』時間を稼げれば良かった。
彼は自身の少ない生命力を魔力として補い、人1人をテレポートさせるだけの魔力をなんとか確保した。
彼はジタンに手をかざし、詠唱を始めた。
「導きの光よ」
彼が詠唱を始める頃には、竜巻も勢いを失い始めていた。
「聖なる導きにより」
彼が一節詠唱を紡ぐ事に、竜巻は消えてゆく。
「彼の者を安寧の地へ いざなわん」
とうとう、竜巻は消え失せ、魔物達は獲物を逃がさんとするように攻撃を飛ばす。
「テレポ!」
間一髪、クジャの方が早く詠唱が終わり、ジタンは魔物の攻撃を受けずに済んだが...
「ぐっ...ガハ...」
クジャはその白い肌が赤く染まるほどの酷い致命傷を受け、そこに倒れた。
薄れゆく視界の中、彼は何処か遠くで自分の相棒とも言えた竜の鳴き声が聞こえた気がした。
これから少しずつ書いていきたいと思います。