死神と妖精の尻尾   作:夜月ライト

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今回からしばらくは原作とは関わらない序章というものになります。
原作との絡みは今しばらくお待ちください。


序章:守竜の村
白い死神と銀の竜の再開


何も見えない、真っ暗の世界の中に、クジャは立っていた。

クジャはふと、気配を感じて後ろを振り返る。

そこには、死んだはずで、クジャの一番嫌いな男で生みの親である、ガーランドが立っていた。

ガーランドはクジャに温度の無い目を向け、口を開いた。

クジャは咄嗟に耳を塞いだが、ガーランドの言葉がまるで関係の無いようにハッキリと聞こえてきた。

 

『クジャ、貴様にはもう、存在する価値はない』

 

それを歯切りに今まで誰もいなかったはずの空間に沢山の見たこともない人達、はては彼が作った黒魔導士兵までもが彼を取り囲み、口々に言い出した。

 

『お前さえいなければ...』

『アンタさえいなければ私達はこんな思いしなくて良かったのに』

『痛い、痛い、痛い』

『私達はお前の道具じゃない』

『どうして俺たちがお前みたいな出来損ないの糧にされなきゃならなかったんだ』

『『お前なんて、価値はない。存在する意味すらもない』』

 

頭のいい彼は、理解してしまった。この声は、自分が取り込んだガイアの人間や、黒魔導士兵の魂の声なのだと。

だからこそ、死人達の声は、彼を余計に苦しめた。

そしてクジャは、耐えられずに叫ぶ。

 

「もう...もうやめろ!」

 

クジャは息を荒くしながら周りを見渡す。

そこはもう暗い世界ではなく、自分に恨みつらみを言ってきていた死人もいない。

あるのは木で出来た家具ばかり。

そこで彼はやっと自分が知らない所にいる事を理解した。

そして、自分はさっきまで多数の魔物に攻撃され、死にかけていた事も。

彼が自分の体を確認すると、血が滲んではいるが、しっかりと治療されている事と、なぜか体が子供の体型になっている事が分かった。

そこで彼はパニックになり掛けたが、部屋に人が入って来たことでパニックにならずにすんだ。

 

「おや、やっと目が覚めたみたいだねぇ」

 

部屋に入って来たのは随分と年をとった老婆だった。

老婆はクジャを見た途端、顔を青くしてまくし立てた。

 

「アンタ何やってんだ!まだ起きちゃいけないだろうに。ほら、キョトンとしてないでさっさと傷を見せな!」

「い、いえ、もう大丈...」

「ええい!死にかけの子供がごちゃごちゃうるさいよ!黙って治療を受けてな!」

 

老婆の勢いにクジャは押され、治療を受けた。

老婆はクジャの治療を終えると、さっきの迫力が嘘のように優しい雰囲気に戻った。

 

「これでよし。まったく、目が覚めてすぐに動くもんじゃないよ。ただでさえアンタ1週間も生死の間行ったり来たりしてたんだからねぇ」

「1週間も...ご迷惑をかけてすみませんでした」

「別にいいよ。それにしても、幸い傷跡は残らなそうだけど、どうしてそんな怪我を負ったんだい?」

「それは...盗賊に襲われたんですよ。弟は逃したんですけど、僕は手酷くやられまして...」

 

クジャは何処かも分からない所でさっきの出来事を話さない方が得策だと考え、一番無難そうな答えを答えた。

そしてクジャは、一番気になっていた事を聞いた。

 

「あの...1つ聞いてもいいですか?」

「1つじゃなくったって、聞きたいことは何でも聞きなさいな。子供が遠慮するもんじゃないよ」

「では、お言葉に甘えて。僕は盗賊に囲まれていた筈なんですが、貴方が助けてくださったんですか?」

「いいや、私じゃないよ。アンタを助けたのは守竜様さ」

「守竜様?」

「ああ、この村には昔から村の守り神とも言われる竜がいるのさ。それが守竜様さ」

「そんな守竜がどうして僕を?」

「それは、アンタが守竜様の主人に選ばれたからさ」

「僕が...選ばれた?」

 

クジャは老婆の言葉が納得出来なかった。なぜなら、自分は世界に戦争の種を蒔き、沢山の人を殺した。

そんな自分が、この村の守り神のような存在である竜に選ばれる資格がある訳がない。

クジャが納得の言っていないのを察したように老婆は話し出した。

 

「アンタが何を考えてるのかは分からないけど、アンタがここにいるのは守竜様に選ばれたからなんだよ。その事実は受け止めな」

「..........はい」

 

実際はまったく納得出来ていなかったが、クジャは現実を受け止めることにした。

そこまで話した頃、2人のいる部屋の扉を開けて、『何か』が入ってきた。

その『何か』は中型犬程の大きさで、全身が銀色の鱗に覆われた竜だった。

その竜はクジャの相棒であった竜に酷似しており、クジャは固まった。

そして老婆は、その竜を見た途端急いで礼を取った。

竜が老婆を見た後、扉の方へ視線を向けると、老婆は部屋から出ていった。

老婆が出て行くと、竜はクジャに近寄り、クジャのよく知る声で話しかけた。

 

『やっと会えましたね。クジャ』

「その声、銀竜...だよね?」

『ええ、そうです。そして、貴方の事をこの村に連れて来たのも私です』

 

クジャは相棒が生きていた事に少なからず嬉しさを感じながら、銀竜に質問した。

 

「それにしても銀竜、ここは一体どこなんだい?」

『その前に、クジャ、これから私が言う事はとてつもなく突拍子も無い事です。それでも、信じてくださいますか?』

「理解出来る事なら信じられるだろうね」

『相変わらずですね。わかりました。理解出来ないと思われますが、言わせていただきます。まず前提として言っておきますが』

 

クジャは銀竜が言う『突拍子無い事』をある程度想定しながら話を聞き出したが、その想定とは、的を大きく外したものだった。

 

『この世界はガイアでも、テラでもない全く別の世界なのです』

「......え?」




大体2〜3000文字程度で1話としていくつもりです。
(これからどんどん触れるのだろうけど)

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