2人が最後の操られた村人を殺した後、強い憎悪の気配を察して2人が振り返ると、そこには魔法を解くことが出来た村人達がいた。
クジャが言葉に迷っていると、村人の1人が口を開いた。
「...恩知らず...」
「え?」
「この恩知らず!バニラさんや私達が助けてあげたのに、殺すなんて!」
「そうだ、それに、お前を選んだ守竜も村の守り神でもなんでもねぇ!」
「こうなるんだったら助けなければよかった!」
「違う!みんなは誰かに操られて...」
「そんな言い訳は聞きたかねぇ!さっさとこの村からでてけよ!」
村人達はクジャの説明を聞く気はなく、2人に対して「出て行け」と石なども投げ出し、クジャは銀竜に飛び乗り、村を飛び立った。
しばらくして、2人は村からそう遠くない洞窟にやって来た。
銀竜はクジャがここに来た理由が分からず聞いた。
『クジャ、あの村はもう放って置いて他の所へ行かないのですか?』
「本当はそうするべきなのかもしれないけれど、僕はせめて、卵が孵るまで、ここにいようと思う」
『なぜです?いつもの貴方であれば早々に捨て置く村のはずです』
「さあ?僕にもよくは分からない。ただ、罪滅ぼしのつもりか、単なる気まぐれか、自分にも分からないんだ」
『......分かりました』
銀竜はクジャにも分からない何かを察したのか、クジャの希望に沿ったのか、残る事にした。
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時は流れ、ここはフィオーレ王国にある魔導師ギルド『フェアリーテイル』
そこは人が多く、大いに賑わっていたが、特に賑わっている所があった。
そこでは桜色の髪の少年が黒髪の少年と睨み合っていた。
「俺の方が強いに決まってるだろ!」
「いーや、俺の方が強いっての!」
「嘘付いてんじゃねぇよ、グレイ!」
「おかしな事言ってんのはテメーだろーが!ナツ!」
そう言って、とうとう桜色の髪の少年ナツと黒髪の少年グレイは殴り合いの喧嘩を始めてしまった。
そこへ、赤い髪の少女がやって来て、2人を殴り倒した。
「「え、エルザ...やっぱつぇぇ...」」
赤い髪の少女エルザは2人を叱る。
「全く、いい加減にしないか!お前達はいつもそうだな。仲良く出来ないのか?」
「「いえ!出来ます!」」
「お、俺達仲良いよなーグレイ」
「そ、そうだよなーナツ」
お互いに肩を組み、引きつった笑顔で話しているが、裏では互いの二の腕を抓るという小さな争いが起こっていた。
そこへ、1人の男性がやってきた。
「よう、ナツにグレイ、今日はヤケに仲良いなあ」
「そ、そんな事ねぇよ、ギルダーツ」
ギルダーツと呼ばれた男性は3人に一枚の紙を見せた。
「あ!その依頼って...」
「おう、ナツが行きたがってた依頼だ。マスターに俺が連れてくならって許可貰ったし、一緒に行くか?」
「行く!」
「待てよナツ、そんな面白そうな依頼、お前だけズリィぞ!ギルダーツ!俺も連れてってくれ!」
「おう、そう言うと思ってたぜ。エルザはどうする?」
「なら、私も行く」
「おっしゃ、決まりだな」
「いよっしゃあ!」
そう喜ぶナツが手に持っている紙には『守竜の卵の護衛(こちらが追加で討伐を依頼する対象を討伐した場合は追加報酬を支払います)』
その下には『討伐対象』と書かれた文字の下に、クジャと銀竜の写真が貼り付けてあった。
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ギルダーツ達は3日掛けて依頼主の居る村にやって来た。
ギルダーツ達が村に入ろうとすると、見張りの村人が止めた。
「この村に立ち入るのはやめていただきましょうか」
「俺達はフェアリーテイルのもんだ。依頼を受けて来た」
「...ギルドマークを見せてください」
「ほらよ、ほら、お前らも」
そう言ってギルダーツ達がギルドマークを見せると、見張りの1人が何処かへ行き、1人の男性を連れてきた。
男性は笑顔で歓迎した。
「いやー、依頼を引き受けてくださり、ありがとうごさいます。さ、まずは私の家へ来てください」
そう言われ、ギルダーツ達は男性について行き、一軒の家の一室に通された。
男性は一度退出し、飲み物を用意し、ギルダーツ達を座らせた。
「どうぞ、粗末な村なもんであんまりいいお茶ではありませんがね」
「いえ、どうも。それで、詳しい内容を聞かせていただけますか?」
ギルダーツに諭され、男性は話し出した。
「はい。実はこの村は昔から守竜と呼ばれる守り神の様な存在に守られているんです。そして、その守竜はある日この村を離れ、自分にとって相応しい主人を連れて帰ってきます。その時、誰も知らないうちに次の世代の守竜の卵が祭壇に置かれているんです。そして、現役の守竜は卵が孵るまで、自分の主人と共に村と卵を守ります。そして卵が孵ると守竜は主人と共に村を離れます。ただ、卵が孵るまでは自分が主人に選ばれたいからと卵を盗み出そうとする人間もいます。なので、皆様には卵が孵るまでの間、卵の護衛をしていただきたいのです」
話を聞き、エルザとギルダーツが疑問に思った事を質問する。
「卵とやらは守竜が守っているのではないのですか?」
「依頼書に乗ってた討伐対象ってのはなんなんだ?」
2人の質問に、男性は憎しみのこもった顔をしながら話し出した。
「その事ですか。...あれは半年くらい前の話です。先代の守竜が連れてきた主人はとても傷だらけでいつ生き絶えてもおかしくない状況でした。なので、私達は前の村長を中心に治療を施しました。しかし...半年前、ソイツは村を焼き、バニラさ...前の村長を殺して、村人の大半も守竜と一緒に虐殺したんです...なんとか村から追い出すことは出来ましたがまだ近くに潜んでいるんです。私達はアイツを許す事が出来ません。なので、皆さんに、アイツを討伐して欲しいんです」
男性が話終わった後、ちょうど部屋の扉が開き、男性が呼ばれた。
男性は出て行くときに、ギルダーツ達を振り返り言った。
「貴方達に討伐の無理強いはしません。もし討伐に行かれるのなら、誰かを残していただければ、村の外に出るのも自由ですので。あと、この家は自由にお使いください」
男性が出て言ったあと、ギルダーツは全員を集めた。
「ようし、お前等、集合ー」
「ギルダーツ!もちろん討伐行くよな!」
「待てナツ。お前、さっきの話を聞いてなんも違和感無かったのか?」
「?なんかあったか?」
「バカだなナツ、違和感ありまくりだろうが」
「んだとグレイ!」
「お前は少し聞いていろナツ」
「んだよみんなして」
エルザがナツを黙らせた後、ギルダーツが違和感を挙げる。
「いいか、ナツ。この依頼の疑問点は3つ」
ギルダーツは指を3本立て、エルザ達と一緒にナツに疑問点を教える。
「まず一つ目、ソイツは村人の大半を虐殺したらしいが、それならなぜ村人を残したのか」
「そして二つ目は村を守るはずの守竜という奴がどうして守る対象を殺したのか」
「最後に三つ目、なぜソイツは村を追い出されたのにもかかわらず村の近くに潜伏しているのか」
「よく出来ました。ナツ、理解出来たか?」
「なら、ただソイツがまだこの村狙ってるって事じゃねぇか?」
「それならもうこの村は無くなってるっての」
「わっかんねぇよ!分かるように説明しろ!」
「はあ、要はソイツの行動が分からないから話が通じるなら話を聞いた方がいいという事だ」
「んー、要はぶっ飛ばすのをちょっと待てばいいんだな?」
「大まかに言えばそうだな」
「分かった」
ギルダーツは微妙な顔をしていたが、とりあえず話を打ち切った。
「そんじゃ、まずはコイツら探しに行くぞー」
そうして4人は森へと繰り出した。
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その頃、クジャと銀竜は村の周りに仕掛けてある索敵用の魔法石を交換していた。
そこで、一箇所魔法石が壊されているのを見つけた。
「壊れてる」
『急いで村へ向かいましょう』
「ああ」
クジャは簡単に索敵用の魔法石を設置し、村人に見られても大丈夫な様に換装でフード付きのローブを取り出して銀竜に乗って村へと向かった。
更新が大変遅くなり申し訳ありませんでした。
本当は次話の部分と一緒に書いていたんです。
でも長いかなと思って切るところを探していたら夏休み中に一度も更新できないという体たらく...誠に申し訳ございませんでした。