俺がいる戦国時代   作:龍@pixivでも活動中

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二章
織田での生活


ちゅんちゅん…

 

八幡「ううーん…zzz」

 

目蓋に差し込む日差しが眩しい

もう朝のようだ

だが寝る

二度寝とは人間に与えられた幸福なのだ

それにこのまま寝ていれば小町が起こしてくれる

むふふ

それだけで1日の活力を補える

まだかなー

遅いなー

意識があるうちに小町の声を聞きた……zzz

 

 

『寝企谷くん、起きないとそのまま永眠させてあげるわよ?』

 

 

八幡「ぎゃあああ!?」

 

飛び起きて部屋の隅に逃げる

いきなり聞こえた死の宣告

それも雪ノ下の声で!

ヤバイ!殺される!

 

雪ボイス『おめでとう、今日は貴方の命日よ』

 

八幡「ああ、何だ旗か…」

 

枕元に置いた白旗から雪ノ下の声が聞こえる

龍神が異世界から召喚この白旗には音声機能があり

その声でモーニングコールからお帰りなさいコールまでやってくれるのだが

…朝から雪ノ下の辛辣な言葉を聞く事になろうとは

雪ノ下以外にも由比ヶ浜、一色、川…ぅん、あとボイスロイドがいる

ボイスロイドじゃ味気ないから旗子でいいか

設定でこれらの声を切り替えられる

今は不幸にも設定が雪ノ下ボイスになっていた

カチッとネジを回して設定3にする

この5人の中だと由比ヶ浜が1番いい気がする

 

結ボイス『そ、そう、わたしが1番…///』

 

八幡「…何で照れてんの」

 

結ボイス『こえ…でてた…』

 

八幡「うん…」

 

………だから?

そりゃあ俺は時々そう言う事があるって自覚してるけど

それを聞いた旗が何故照れているのかが疑問なんだが

 

色ボイス『あーあー、そうやってラブラブして後輩キャラは同世代キャラの当て馬として捨てられるんですねー』

 

旗ボイス『まあまあ、そんな卑下されなくとも』

 

色ボイス『ふんっ』

 

そして何故一色と旗子さんは勝手に喋っているんだ

今は由比ヶ浜の設定なのに

てか旗子さんは設定を無視して話す事に反対してなかった?

 

雪ボイス『そうね、このままだと彼の毒牙に由比ヶ浜さんが襲われてしまうわ。一刻も早く手を打たないと』

 

お前も当たり前のように喋るんじゃない

 

八幡「何なんだよこいつら…。まるで感情があるように喋りやがる…。それに由比ヶ浜はご機嫌だが、一色と雪ノ下は不機嫌…何でだ」

 

川ボイス『ねぇ』

 

八幡「そ、その声は!…えっと…川、川、川ボイス!」

 

川ボイス『間違っちゃいないけど川崎だから。それと、アンタはよーく見たほうがいいよ』

 

八幡「よーく見る?」

 

見えるのは狭い部屋と手元にある白旗…

旗…フラグ…

 

 

八幡「あぁ、なるほど。ラブコメのフラグが立ちましたってかやかましいわ」

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

俺が戦国時代(厳密には異世界のようだが、ここでは過去の時代とする)に来てから1週間が経った

龍神とは初日に会ったきり

それからは1度も会っていない

 

龍神が呼び出した白旗と無限金の玉製造機

これらはこの時代には無いものなので公にはしていない

ただこれを持って帰った時に犬千代が怪しい…と槍を向けて来たので

龍神の事は伏せて犬千代だけには白旗の音声機能を教えている

犬千代が雪ノ下の声を聞いて

 

犬千代「わたしの声…でも違う…」

 

とかよくわからない事を言っていたがまあいいだろう

とりあえず未来の道具だと言ったら納得してくれた

キンタ○製造機の方は説明しなかった

てか出来るか

これら2つを持ち運ぶときには

金の玉製造機は首から紐でぶら下げ

白旗は小さくなる機能を使い手持ちサイズに縮小して懐に入れている

 

八幡「しっかし、暇だなー」

 

俺は清洲城にあった書庫からかっぱらって来た本を読みながら愚痴る

毎朝叩き起こされる割にはやる事がない

信奈からの仕事がないのはいいのだが

何をすればいいのか…

 

ちょこちょこヒレカツもとい溝口秀勝が遊びに来る

その時に信奈が今何をしているのかを聞いてみた

 

秀勝「信奈様は今、戦支度をされているよ」

 

何でも近いうちに戦があるらしい

恐らく相手は今川だろう

やだなー

戦なんかしたくないなー

でも天下人を目指すなら兵法とかも覚えなきゃいけなさそうだしなー

 

天下人になるためにはこの時代の文化を知らなければならない

平民がどんな暮らしをしているのかとかだな

なので勉学にと本を読んでいる

俺のいた時代とは少し違う文字なのだが

何となーく眺めている程度

わかる文字があればそこから切り崩して理解すればいいだけだ

まるでウォーリーを探せの気分

ちなみに清洲城の本を持って来なくても城下町には本屋がある

だが仕事がないので金がない

仕方がない事なんだ!俺は悪くねぇ!

…てか街中を見聞すれば本を読まなくてもいい気もするが

ソト、ニンゲン、コワイ、デタクナイ

 

だがそんな俺でも外に出る事があった

それは着替えだ

俺は元の世界から着ていた制服しかない

それは衛生的にどうなの?と部長様から言われた

なので犬千代からの知恵を借りて

うこぎの根っこを売って着物を何着か買った

今は制服をしまい込んでその着物を着回している

着物を買って来た後、部長(旗)に報告すると

 

足軽なのだから鎧も必要なのではないのかしら?

お金は?

使った?

…どうしようもないわね

 

叱られました

怖かった

鎧を買うために仕事を求めていると

 

犬千代「……仕事」

 

と言うお達しが

条件反射に拒否しようかと思ったが

よくよく考えると仕事が欲しいんだった

危ない危ない

 

八幡「で?何の仕事だよ」

 

犬千代「……清洲城までついてきて」

 

ついでに本も返しとくか

借りた本を全3冊持ち

玉と旗を置いて犬千代に着いて行く

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

犬千代に連れて来られたのは清洲城

その本丸の中の信奈の部屋

和室の中に虎やパンダの毛皮が敷いてある

…これがウサギとかだったら土に埋めて墓を建ててやるところだった

何故かって?

そんなのウサギ好きの戸塚が見たら悲しむからに決まってるだろ

 

居ないけどね……ぐすん

 

信奈が座っている上座の隣には色が無い大きな地球儀が置いてあった

あ、信奈がういろう食べてる

ういろうと言えば信行

実はアイツのとこの若い奴らがちょっかい出して来る

それが凄いうざったい

しかしヒレカツによるとその連中に手を出せば謀反と見なされ首が飛ぶらしい

だがそろそろ我慢の限界だ

俺がいちゃもんつけられてイライラしている雪ノ下が

怒ってくれるのは嬉しいのだが

そのイライラを俺にぶつけてくるのは嬉しくない

丁度いい

この機会にアイツらをどうにかしてと信奈に掛け合って見よう

 

犬千代「……ハチ、連れてきた」

 

信奈「デアルカ。2人とも、ちこう」

 

犬千代は膝をつけたまま前進した

あれ

信奈のやつ機嫌が悪い…?

むすっとしてるし

信奈の隣にいる小姓らしき、色違いの鉢巻を巻いてポニーテールに髪を結んでいる女の子2人は信奈を見て緊張しているし

…か、掛け合うのはまた今度でいいかなっ!

べ、別に怖いわけじゃないんだよ?

信行の若い奴らにいじめられ

雪ノ下の愚痴りを聞き

この上に信奈の怒りを喰らったらもう俺は感情が爆発する

 

信奈「…何しているの?近くによりなさい」

 

八幡「お、おう」

 

畳に膝をついて信奈に近づく

座布団があったのでそこへ座った

信奈の眉間に青筋が浮かぶ

 

信奈「ハチ…この1週間何をしていたの?」

 

八幡「は?」

 

信奈「しらばっくれるんじゃないわよ。わたしは何でも知ってるのよ、アンタの行動なんか手に取るようにわかるわ」

 

八幡「はぁ…」

 

信奈「…アンタが城から取った本を隠しもせず堂々と持ってわたしの前にいる事は何も言わないわ。けどね、全く働かないなんて穀潰し以外何でもないわよ」

 

八幡「いや、お前が仕事をくれないからだろ」

 

信奈「そんなアンタにわたしから仕事を授けるわ。米を買って来なさい。長頼」

 

赤い鉢巻をしたポニーテールの子が俺の前に小判の束を置いた

 

信奈「元手は三千貫、期限は2週間。これで米を買って来なさい。ただし、八千石買って来なさい!それ以下ならクビよ!」

 

八幡「……犬千代、相場はわかるか?」

 

犬千代に清洲の相場を聞いてみたが

答えたのは長頼と呼ばれた赤い鉢巻の女の子だった

信奈より身長やナニカが色々小さいがキツイ目が特徴で

厳しそうな顔をしている

 

長頼「清洲での米の相場は、その三千貫で四十石を買うことが出来ます」

 

八幡「よ、予算分の二倍!?」

 

信奈「アンタ、何時ぞやに織田軍をバカにした時があったわよね?バカにできるって事はこれくらい楽勝でしょ?」

 

八幡「アレは雄蛇ヶ池の仕事でチャラになったんじゃ…」

 

信奈「許すとは言ったけど、アンタの発言が消えたわけじゃないわよ。わかったら早速動きなさい」

 

なんつうブラック

あのくらいもう忘れてよ

そんなの気にしてたら小皺が増え…ひぃ!睨んできた!

ああ、もうやればいいんでしょやれば

だが気になる点がある

 

八幡「なあ、クビって言うのはここにいる犬千代にも適用されんのか?」

 

信奈「いいえ、これはアンタの仕事よ。犬千代は協力してもいいけど、仕事に関しては無関係よ」

 

八幡「ん、ならいい」

 

それだけ聞ければ充分だ

 

八幡「本、ここに置いとくぞ」

 

信奈の目の前に本を置き

そのまま犬千代と共に信奈の部屋を出た

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

信奈「…ったく。何が、ならいい、よ。何様のつもり?」

 

2人が居なくなった部屋で1人愚痴る

聞いているのはそばに侍る小姓

赤い鉢巻の、菅谷長頼

青い鉢巻の、森可成

鉢巻の色は違えど結んだ髪型と信奈への忠誠心は同じ

…森可成の大きな胸は気に入らないけど

ふと八幡の置いた本の題名が目についた

 

『猿でも分かる裁縫』

 

『猿でも分かる忍者』

 

『猿でも分かることわざ』

 

 

信奈「………アイツ、なんか企んでんの?」

 

 


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