八幡「さて、どうするか」
俺は家に帰り悩んでいた
元手三百貫
注文は米を八十石
しかし清洲では三百貫で四十石しか買えない
期限は2週間
つまり期限中に元手の二倍相当の米を買わなければいけない
八幡「…まいったな」
どうも俺は戦国時代の相場と言うものは分からない
どれだけ金を揃えればこんだけの米が買えますよとか全く知らない
それにこの時代は面倒くさいことに国が沢山ある
その国々で相場が違うのだと言う
八幡「別の国で買うと言う手もあるが…」
たった2週間で国を渡るのだ
米を揃えられても間に合わないかも
となると時間的にこの尾張で何とかしないと
尾張も他の国と比べたら小さい国だが
それでも国土面積は広い
とても短期間で人間が端から端まで歩くことは出来ないくらいに
八幡「ならこの清洲でどうにかすることを考えた方がいいか」
犬千代「……ハチ、わたしも協力する」
八幡「いい、お前は関係ない」
犬千代「……そんな事ない。……信奈様が欲しいお米は、戦でわたしも食べるもの。だから関係ある」
八幡「だが…」
犬千代「……それにハチ1人じゃ、心配」
八幡「…そうかい。危険な事はないだろうが、いいんだな?」
犬千代「……うん」
はぁ…
全く、この時代の奴らはお節介なのが多いな
犬千代も秀勝も
得体の知れない俺を助けてくれる
信奈だってあの雄蛇ヶ池で人柱にさせられそうだった女の子を助けようとしていた
何なんだよこいつら
こんな性格のやつ俺の時代じゃ少年漫画ぐらいでしか見た事ないぞ
あ、いや葉山ならやりそう
犬千代「……それで、どうするの?」
八幡「米を揃える手段はある」
犬千代「……本当?」
八幡「でもそれは最終手段だ。あんまり使いたくないから、最後の最後に間に合わなくなったら使う。今はそれとは別の方法でクリア…達成しよう」
犬千代「……ほかに方法があるの?」
八幡「ない」
犬千代は小首を傾げる
犬千代「……考えなし?」
八幡「う…、でも俺はこの時代を何も知らないんだよ。米も金も人も」
犬千代「……だから?」
八幡「先ずは、米を作ってるところへ行ってみよう。社会科見学だ」
☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
秀勝「こっちだよー!こっちー!」
先頭を走る秀勝に俺と犬千代はついて行く
米を作っているところと言えば農家だ
なので犬千代曰く
そう言う分野は丹羽長秀さんが得意なので聞いてみよう
なら長秀様の部下であるあたいが農民の生活について説明してあげる!と家に遊びに来た秀勝が農家まで先導する事に
今は清洲を出て野原の道を進んでいる
八幡「おい、本当に分かんのか?」
秀勝「まっかせてよ!あたいも長秀様の元で色々勉強してるんだから、農民の生活がどんな風なのかぐらい知ってるよ!」
八幡「何で丹羽さんはそう言うのに詳しいんだ?」
秀勝「長秀様はね、とっても優しくて、いつも民の事を気遣っているんだよ。だから尾張の民がどう言う生活を送っているかとか知ってるんだ!戦は勝家様と比べたら劣るけど、中々強いんだよ?なのにみんなの事を考えられるって凄いよね!」
八幡「立派な人なんだな」
秀勝「うん!」
とびっきりの笑顔を向ける秀勝
それほど丹羽さんを尊敬しているんだろう
そんな人が慕う信奈ってのはやっぱり凄い奴なんだろうな
秀勝「お、見えてきた!あそこが清洲から1番近い農村だよ」
秀勝が指をさすのは
田んぼが広がる小さな村
ツギハギだらけの着物を着た人がいた
その村の家は藁で出来ていて
俺の住んでいるうこぎ長屋より大きい
創りも頑丈だ
犬千代「……ここ、わたしもきたことある」
八幡「犬千代も?」
犬千代「……信奈様や恒興様と一緒に馬で遊びにきた」
そういや信行が言ってたな
信奈は色んな奴とつるんで街中でやんちゃしてるって
街の外にもその魔の手が差し向けられていたのか
八幡「例えば、どんな事してたんだ?」
犬千代「可愛い犬を追いかけたり、悪人をやっつけたり、犬と遊んだり、民と話しをしたり、犬を可愛がったり、沢山いい事をした」
八幡「半数以上が犬の話しだったんだが…」
だから犬千代って呼ばれるのか?
犬みたいな仕草の女の子って意味かと思ってた
特に物を食べている時なんかは犬のようにハグハグ食べる
流石に犬食いはしない…と思いたい
秀勝「おーい!みんなー!」
秀勝が村に向かって呼びかける
気づいた何人かの農民が驚いた顔をした
農民「みゃー!お侍様だみゃー!」
駆け寄って来て頭を下げてくる
農民「こんな所までよう来て下さいました。して今日は何の御用だみゃー?」
秀勝「えっと」
ちら、とこちらを見てきた
俺は首を振る
八幡「なにかをしようとは思ってません。ただ米がどうやって作られるかを知りたいだけです」
農民「はぁ、米でございますか…」
首を傾げる農民の後ろから
何人かの子供を引き連れた老人が歩いてきた
農民「あ、長老」
長老「何事じゃ?」
農民「はぁ、何でもこちらのお侍様が米を知りたいと…」
米?お侍さんが?といぶしむ長老さん
その後ろからぎゃーぎゃーと木棒を振り回している子供たちが走って来る
村の子供A「わーわー!ハチだハチだ!信奈様が連れて来た死体だー!」
ぐるぐると俺の周りを囲みながらそう叫んでくる
何これ凄く怖い
八幡「死体じゃねーよ」
村の子供A「なにしに来たんだよー!」
村の子供B「ハチも一緒に遊ぼうぜー!」
八幡「うるせえ、こっちは死活問題なんだよ。お前らはどっか行ってろ」
村の子供A「あははー!変な髪ー!」
ぐいっ
痛い痛い!
八幡「ちょっおまっアホ毛を引っ張んな!」
村の子供B「うりゃー、うりゃー」
ガスっガスっ
痛い痛い!
八幡「やめろ蹴るな!」
村の子供C「成敗!」
ブン
危ねぇ!
八幡「やめろ!棒で叩いてくんな!」
村の子供A「やれー、やっちまえー」
村の子供「「わああー!」」
ドガゴスボカドン
あだだ!
いたっいだい
棒とか拳で滅多打ちにされる
何で俺子供にリンチ喰らってんの!?
八幡「あいたっ!痛いってば!やめ、やめてぇー!」
女の子「やめなさーーい!!」
子供に襲われていると
女の子が走って来て止めてくれた
村の子供A「げっ、小一が来た!」
村の子供B「逃げろー!」
子供は走って逃げていった
た、助かった…
何なんだよあの子供たち
ちゃんと教育されているのか?
いきなり殴る奴はロクな大人にならんぞ
ただ俺に棒で殴りかかって来た子供よ
去り際、腹に一発最後っ屁をかましてきた根性だけは認めてやる
腹痛い
小一「まったくもう…あの子たちときたら…」
小一と呼ばれた女の子は腰に手を当ててため息をついていた
黒い髪のショートヘア
キラキラした大きな黒目
顔の作りは小さく
身体はねねよりちょっと大きい
でも歳はねねと同じくらいか?
小一「だ、大丈夫ですかっ?お侍さん」
八幡「お、おう、ありがとな」
心配して声をかけてくれる小一
なんだかしっかり者のお姉さんみたいだ
…ん?
この顔、どっかで…
いや…こんな可愛い女の子を忘れるとは思えない
気のせいかな
長老「おお、小一ちゃん。ばあさんはどうしたんじゃ」
小一「あ、長老さま、こんにちは。おばちゃんなら家にいるよ」
長老「小一ちゃんは何をしておるんじゃ?」
小一「あたしは田んぼの様子を見に行くところだよ」
長老「そうかそうか、偉いのう」
小一「え、えへへ〜///」
頭を撫でられて身をよじる幼女
いいなー可愛いなー
お、そうだ
幼女ならそばにいるじゃんか
八幡「ほーれほれ犬千代ー」
犬千代「えへへ」
頭を撫でられて
頰をぽっ、と赤らめ無表情で照れる犬千代
あ、あれ?期待してた反応と違うなー
でも可愛いからいっか
秀勝「むー、あたいもー」
八幡「農民の方、よろしくお願いします」
秀勝「何であたいだけ扱いが酷いの!」