俺がいる戦国時代   作:龍@pixivでも活動中

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投稿期間を長くあけてしまって申し訳ございません
忘れてる人もいると思いますので今までのあらすじを書きます


〈あらすじ〉
比企谷八幡が気がつくと戦国時代にいた。
そして木下藤吉郎、後の豊臣秀吉の死を目の当たりにした八幡は秀吉の夢と運を受け継ぐ。
その後、織田信長へ士官しようとしたが、織田家の大将は信長ではなく織田信奈と言う少女だった。
なんやかんやあり信奈の元で働く事になった八幡は、同僚の前田利家(犬千代)や溝口秀勝(ヒレカツ)などと関わって行く。

〜1週間が過ぎ〜

家の中でダラダラ過ごしていた八幡に信奈から仕事が舞い込んで来た。
米を買え。
それも用意された資金よりも倍の量を用意しろとの無理難題。
その為にはまず、米について知ろうと言う事で、米を生産している農村へ。
そして八幡はある女の子との運命の出会いを果たす。

その女の子は『木下小一郎』といった

○ちょっと報告
今日にこの話を合わせた三話を同時に投稿します
お見逃しにお気をつけください


木下 仲

小一に連れられながら俺、犬千代、秀勝の3人は小一の家へと向かっていた

犬千代は相変わらずの無表情で何考えているかわからない

対して秀勝と言うとよほどお腹が空いているのか眉をひそめながらも、小一に心配そうで申し訳なさそうな顔を向ける、2つの感情を同時に表す芸当を器用にもこなしていた

俺はそんな対照的な2人の後をついて行く

 

小一「こっちだよ!ハチ!」

 

八幡「おーい小一。そんなに急ぐと疲れるぞー」

 

小一の家は田んぼから見てそれほど遠く無い場所に建っているらしく

それなら急ぐ必要も無いのだが

先導する小一は元気いっぱいに小走りしている

なのでこちらも早足になる

小一に置いていかれず、尚且つ労力は最低限抑えるようにダラダラ歩いているから他の3人から離れてしまっていた

 

小一「疲れないよ!だってまだお天道様が登ったばかりだもん!」

 

あーもう眩しいくらいに元気ですねぇ

その元気を分けてください、俺以外の誰かに

俺?

俺は結構です

 

秀勝「いや、疲れる疲れないとかよりも、ハチはもう少し早く歩いてよ。逸れちゃうよ」

 

犬千代「…ハチはいつもダラけてる」

 

八幡「うっせ」

 

お前らが早いだけだっつの

俺がこっちに来てからこの10日間で分かった事がある

この時代の奴らは俺がいた21世紀の人間、それも俺みたいなヒッキーなんかと比べたら大きな身体能力の差がある

いっぺん犬千代に頰を抓(つね)られた事があるんだが、すごい痛かった

皮膚をレゴブロックの間に挟んだくらいの激痛だった

どうやったらあんな怪力なるまで鍛えられるんだか

…あ、戦国時代にいる俺も鍛えなきゃいけないかな?

戦で死なない為にもやるべきだと思うが、生半可な筋トレではやるだけ無駄だろう

やっぱり剣術なんかを覚えていかないと…

現代っ子である俺に酷な話だよ全く

戦争が無いってのはとても恵まれていたんだなぁとつくづく思う

が、ここは戦国時代だ

泣いても笑っても戦争は近いうちにおこる

そして俺は足軽だからその戦に参加する

本気で嫌だ

こうなる事なら信奈に政治家として雇ってもらえばよかったかな

 

八幡「ん?今は俺も政治家なのか?」

 

そこは微妙なところか

足軽だし

確かに尾張国を治める織田家に所属してはいる

だがそれが政治について口出し出来る立場であるかと言われれば違う

例えるなら俺は市役所の清掃員として務めるおっちゃんだ

限りなく一般人に近い政府側の人

一見何でもないただの役職に見えるが

考え方によっては政府の機密やらなんやらに触れられる機会があるかもしれない役職と言える…んじゃないかな

どちらにせよ機密が漏れるかもしれない可能性がある限り政府にとって危惧すべき人間だ

 

八幡「あれ、俺ってばそんな立場にもかかわらず本を読みふけってダラダラしてたの?」

 

そりゃ雇い主、いや信奈に叱られても仕方ない

何もしてない人ほど厄介な奴はいない

だって仕事してないなら一体何するか分からないんだもの

例えばどっかの相撲みたいな名前の人が文化祭の閉会式前に逃げ出して屋上に行くとかな

あの時さ、俺じゃなくて雪ノ下陽乃さんに追いかけてもらったほうが良かったんじゃないかと思うんだが

だって魔王からは逃げられないし

……ごめん、訂正する

例え相模を見つけられても雪ノ下さんが相模を説得する場面を想像できない

拷問してるイメージしか浮かばなかった

てか相模って言っちゃったよ

 

犬千代「………ハチ」

 

八幡「ん?なんだよ犬…」

 

犬千代「どこ行くの?」

 

八幡「え?」

 

気づけば犬千代達は木造建築の小さな家の前で止まっていた

考え事をしていた俺は気づかないうちに通り過ぎていたようだ

3人とも不思議そうな顔で見ている

 

八幡「わ、悪い。ちょっと考え事しててな」

 

秀勝「ずっとブツブツ言ってたもんね」

 

え?声に出てた?

ヤバ、なんかマズイこと言ってたら恥ずかしいな

 

犬千代「……」

 

うう、犬千代の視線が痛い

 

八幡「で、ここでいいんだな?」

 

小一「うん!ほらハチ、入って入って!」

 

犬千代の視線から逃れるように話題を変えた俺

その後ろに小一が回り込んで家に押し入れようとする

 

八幡「ま、待て、ちょっと待て。お前が先に入って家の人に伝えてこい、俺が先に入ったら迷惑だろ」

 

小一「大丈夫だよー、おばちゃんなら許してくれるって!」

 

八幡「いや、俺の少ない気遣いと言うものがだな……!」

 

抵抗虚しく俺は家の中へ押し込まれてしまった

家の中は昼時だと言うのに薄暗かった

玄関の土間には一足の草履(ぞうり)が置いてあり、上がり框(あがりがまち)には大きな壺があり、窓は西側に1つあるだけ

そのせいでこんなにも暗いようだ

玄関と繋がった大きな部屋だけで他の部屋はなく、床はボロボロの畳で、部屋の中央には庵

そして庵を囲むように藁(わら)でできた座布団が敷かれていた

 

「あら?」

 

その座布団に40代くらいの女性が座ってた

手には湯のみを持っていて、傍らには茶器が置かれていた

女性は突然入って来た俺を驚いた顔で見ている

 

八幡「あ、えっと、すみません勝手に上がり込んでしまって…」

 

小一「あたしが入れたんだから勝手じゃないよー」

 

脇から小一が顔を見せる

 

「おや、小一」

 

小一「おばちゃん、この人たちとハチがお腹を空かせてるんだって。だからご飯を分けてあげたいんだけどいいかな?」

 

小一が俺の腕につかまりながら玄関の外にいる犬千代と秀勝を指した

何で俺だけ名指し?

それから俺の腕につかまるな

 

「その方たちは?」

 

小一「織田のお侍さまだよ」

 

八幡「えっと、俺は比企谷八幡で、外にいるのは前田利家と溝口秀勝です」

 

「ふむ、比企谷様で御座いますか。名乗られたのであれば此方も名乗るのが礼儀でありますが、取り敢えず皆様方は中に入られてはいかがでしょう。さ、比企谷様はこちらへお座りくださいませ」

 

八幡「え、と」

 

小一「ほらほら、ハチはあそこにすわって、だって!」

 

俺が渋っていると小一に女性が指し示した座布団に座らされた

その後に犬千代が普通に、秀勝が恐る恐る入ってきて

同じように示された座布団に座った

小一は俺の隣の床に座った

 

「では」

 

全員が座ったのを確認すると、女性は自己紹介をしてくれた

 

 

仲(なか)「わたくしの名前は木下 仲と申します。木下 弥右衛門の妻でございます。以後、お見知り置きを、織田家のお侍様」

 

 

平伏してそう言う女性…木下 仲さんのその姿は姿勢が正しく、ゆっくりと、そしてしっかりと発せられる言葉は身体に染み込むような錯覚になる

きっちりとしたその態度にこちらもかしこまってしまう

 

八幡「えっと、あ、あの、顔を上げてください。俺に対して礼儀を尽くしてもいい事ないですから…」

 

ついつい出てしまった自虐の言葉

俺にとっては何も考えず出した言葉だったが、俺の言葉を聞いて仲さんの身体がピクリと震えた

そして顔を上げたその顔は眉をひそめて不機嫌そうである

 

仲「礼儀とは特定の者にのみする作法ではなく、周りにいる全ての者にすべき作法でございますよ?その相手が比企谷様であっても例外ではありません」

 

八幡「え、あ、はい…」

 

あれ、急に早口になった

てか仲さん、怒ってない?

 

仲「それからここには前田様と溝口様がいらっしゃいます。比企谷様だけにしていると考えるのは、比企谷様の自分の事しか考えていないと言う傲慢さの現れでございます。もっと周りを見て、己以外の者にも興味を持ちなさい。そんな事だから礼儀作法のなんたるかを失念…いいえ、それ以前に理解をしていらっしゃらないのです。それでは織田様の元で大成出来ませんよ。他の者へ向ける礼儀を軽んずれば、他の者から己が軽んじられるのも必然です。出世したくばまず礼儀を知りなさい。貴方はまだ若いのですから………」

 

八幡「え、あ、え、」

 

早口になったと思ったら口を挟めないほどの丁寧なマシンガントークで圧倒される

てかこれって説教されてるよな

ここで俺は自分の思考に戸惑った

何故いきなり説教されているのか、と言う疑問よりも先に

 

これは説教なのか、と言う疑問の方が先に頭の中に浮かんだ

 

…親からこんなに言われることが成長するにつれて減ったから、これが説教だと瞬時に判断出来なかったからだと思う

そう言えば最後、母さんに説教されたのって、いつだっけ…

と、俺が現実逃避していると

未だに俺を説教している仲さんを小一が止めに入った

 

小一「ちょ、ちょ、ちょっとおばちゃん!落ち着いて!」

 

仲「え?」

 

小一に止められた仲さんは一瞬戸惑った後

周りの様子(小一の困った顔、俺と秀勝の驚いた顔、犬千代の無表情)を見て、慌てて俺に頭を下げた

 

仲「す、すみません、比企谷様。わ、わたくしとした事がつい取り乱してしまい…。本当に申し訳ございません」

 

八幡「い、いや、こちらも悪かったですし…仲さんも間違った事をおっしゃっているわけでは…」

 

仲「いえ、それでもお侍様にご無礼を…前田様も溝口様も、申し訳ございません」

 

そう言って犬千代と秀勝に頭を下げる仲さん

そんな仲さんに恐縮してか、秀勝は慌てて手を振りながら

 

秀勝「あ、だ、大丈夫ですよ!ね、犬千代!」

 

犬千代「……うん」

 

冷や汗をかいている秀勝に、犬千代はずっと無表情であった

ブレねぇなコイツ

 

小一「もー、おばちゃん!どうしたの?急に話し出して」

 

仲「それは、わたくしにもわかりませぬ。なぜこのような…」

 

小一「なんかおばちゃん、おいちゃんにするような話し方だったよ?」

 

仲「えっ!?あ…」

 

仲さんは『おいちゃん』と言う小一の言葉に反応した

それから俺の顔を見つめる

ちょっとー、ぼっちの顔をまじまじと見つめないの、ドキドキしちゃうでしょー?

仲さんはなんていうか綺麗タイプの女性で、鼻は日本人にしては高く、眉や目尻はキリリと鋭い

そして何より目が大きく、まるで宝石のようにキラキラの瞳をしている

 

八幡「あ、あの…」

 

どんな人からでも見つめられるとドギマギしてしまうぼっち特有のキョドり方

自分でもキモいと思う行動にも仲さんは俺から目を離さず、首を傾げていた

首を傾げたいのは俺のほうだよ

 

仲「…………、ふ」

 

数秒ほど俺の顔を見つめた後、小さくため息をついて

気を取り直したように話し始めた

 

仲「比企谷様はお腹が減ったのでご飯を食べたいと言う事でしたね。大した物はお出しできませんが、よろしいでしょうか?」

 

八幡「あ、いえ、俺はいいですよ。腹減ってるのはコイツだけなんで」

 

秀勝「ふぇっ?」

 

仲「そうなのですか?前田様は?」

 

犬千代「……わたしも、いい。別にお腹空いてないから」

 

そう言う犬千代は相変わらず無表情…あ?

いま気づいたが、さっきからずっと無表情無表情って言ってたけどよく見たら上の空なだけだ

どこか虚空を見つめている

なんにも無い空間をずーっと見てんだけど、何、何かいんの?

お化けか?

まあいい、コイツの感情が読めないのは今に始まった事じゃない

 

八幡「そんじゃ、腹減ってんのは秀勝だけか」

 

秀勝「しょ、しょーがないでしょ!お昼食べるの忘れてたんだから!」

 

八幡「何で?」

 

秀勝「そっ、それは……急いで……会いに……ゴニョゴニョ///」

 

小声でゴニョゴニョ言ってると思ったら顔を真っ赤にして俯いてしまった

どうした?お腹痛いの?

…いや、チラチラこっち見てるから違うな

俺に原因があるようだ

しかし無害な俺が何かするわけないし

俺の後ろに何かがいるんだろう

何、何がいるの?

お化けか?

まあいい、コイツの行動が読めないのは今に始まった事じゃない

 

仲「ほう…」

 

何で仲さんは納得顔で俺と秀勝を交互に見てんだろ

それとも何かが高速で動いてんのか?

何、ほんと何がいんの?

動くって事は、ハエか?

えっ!?虫いんの!?

ヤバイ、どどど、どうしよう…

ま、まあいい、アイツ(ハエ)の動きを読めないのは今に始まった事じゃない……怖いなぁ…

 

小一「どーしたのハチ?ふるえてるよ?」

 

八幡「だ、大丈夫だ。問題ない」

 

ああ〜

隣で心配してくれる小一が癒しだ

小さいのに…いや、小さいからこそ癒しの力が大きい

やはり子供はいいなぁ

…ろ、ろりこんじゃねぇよ?ただのこどもずきです

 

ちなみに嫌いな言葉は事案

 

……じょ、じょうだんにきまってるだろ!

 

仲「では、溝口様に差し上げればよろしいのでしょうか?」

 

秀勝「ええっ!?あ、あたい1人で食べるのは…。や、やっぱりあたい、いいです!」

 

仲「はい?しかし、清洲へ戻るのにも腹が減っては苦労しますでしょう?遠慮せずとも召し上がってよろしいですよ」

 

仲さん、小一と同じこと言ってるな

 

秀勝「だ、大丈夫です!多分なんとかなるの…」

 

くうぅぅ…

 

秀勝「あっ…///」

 

口では断っているが、腹は正直のようだ

顔を真っ赤にして腹を抑える秀勝を見てため息をつく

しょうがねぇなコイツ

 

八幡「すみません仲さん。やっぱり俺も少しだけ頂いていいですか?犬千代、お前もちょっとぐらい食べないか?」

 

犬千代「……」

 

犬千代は俺の言葉を聞いて、何も無い空間から俺の顔へ視線を移した

それから秀勝の顔を見て、また俺の顔を見てきた

 

犬千代「ふぅ…」

 

ため息つかれた

 

犬千代「……わかった。私も食べる」

 

八幡「…おう。あの、そう言う事なので、大変だとは思いますが頂けますか?お礼は必ずしますので」

 

仲「いえ、お礼は結構です。それより…」

 

仲さんは俺と秀勝、そして犬千代の顔を見て言った

 

仲「ふふ、お三方は仲がいいのですね」

 

八幡「へ?」

 

秀勝「え?」

 

犬千代「…む?」

 

仲がいい?俺たちが?

 

八幡「いや、そんな事はないですよ」

 

仲「そうですか?わたくしにはとても仲が良いように見えたのですが。まあ、わかりましたわ。只今準備いたしますのでそれまでごゆっくりどうぞ」

 

仲さんは立ち上がり、家の奥にある台所へと向かった

それからテキパキした手つきで料理してくださっている

その間、ゆっくりしていってね!と言われても俺と犬千代は話すのが苦手だから会話が起こらない

なので秀勝が話す相手を探してあたふたし出した。

しかし誰も話してくれなさそうなので拠り所を無くし、仕方なく黙り込む

そして誰も喋らなくなった

ここ最近この3人でいる事が多いが、大体この状態に行きつく

これを見て仲良いと感じるやつが、さて何人いるのか

 

小一「ねーねー!」

 

だがいつもとは違い、今日はイレギュラーがいる

俺たちの沈黙した暗ーい雰囲気にも入ってきた小一が俺に話しかけてきた

 

小一「ハチってさ、信奈様が連れてきたんだよね?ここに来る前はどこに住んでたの?」

 

八幡「未来の千葉だ」

 

小一「みらい?未来って明日とか明後日とかだよね。そこから来たってどういう事?」

 

八幡「えっと、どう言おうか…」

 

そう言えばこの時代に何たら世紀とかの概念ってあるのか?

もしかして1日ずつ数えて説明しないとダメかな

何日後から来たのか、だから…

えっと、確かこの時代は16世紀で、俺がいたのが21世紀だから

えー…、1世紀が1年から100年で…

21世紀引く16世紀で5世紀

100年が5世紀分で500年で…

えー…えー…それを1日換算にすると……

1年が365日…それが100年分だから…36500日、かな?

あ、閏年もあるのか!

だったら365日が366日に…

1日増えるのが4年毎で、えー?えーと…あれ?

それを500で…4で…あれ?あれ?

 

八幡「うーん、うーん」ぷすぷす…

 

小一「は、ハチ?頭から煙が出てるよ…?」

 

秀勝「ごめんね小一ちゃん。ハチは算数が苦手なんだよ」

 

気づけば何故か秀勝が小一に謝っていた

 

小一「へぇ〜、そうなんだ〜…。にやっ」

 

あれ、小一ちゃんがわっるい笑顔でこちらを見ている

やな予感…

 

小一「ハチ、ハチ!50300掛けるところの369は?」

 

八幡「え、え?えっと…50000が先ず300個あって…15000000…」

 

小一「それから!700掛けるところの700掛けるところの600は?」

 

八幡「ふぇ!?え、えー、7で7が…14…それから9を50000…あれ?」

 

小一「それからそれから!23掛けるところの230掛けるところの2300掛けるところの23000は?」

 

八幡「23…23…にー、さん、にーさん、にーさんにーさんにーさんにーさん…」ぷすぷす

 

あれ…おれってにーさんだっけ?

いや、たしかに俺は小町の兄だ

しかし本当にそう言い切れるか?

先に生まれたからって兄として扱われなかったら、それはもう兄でないのでは

違う!小町を…妹を思う気持ちは誰にも負けない!

だが…小町は俺のことを兄だと思ってくれているのか…?

俺は…俺は…

 

八幡「にーさん…おれはにーさん…」くらくら

 

小一「あ、あれ?やりすぎちゃったかな?」

 

秀勝「あ、あはは」

 

八幡「おれは…にーさんが、ろく?ろく…。俺は…俺は六幡…!?」

 

犬千代「てい」

 

がすっ

 

六…八幡「あいた!?」

 

はっ!?

あ、危ない危ない!

危うく六幡になる所だった…!

 

八幡「さ、サンキュー犬千代。でも…ちょっと…いや、結構痛いんだが…」

 

さっきガキ共に殴られたやつより遥かに痛いんだが

比べるのもおかしいと思うけど、手加減して欲しかった

 

小一「ごめんね、ハチ」

 

八幡「え?いや、別に気にするな」

 

小一「いつものくせでいっぱい問題出しちゃった…」

 

八幡「あん?いつもの癖…?」

 

小一「うん。おいちゃんにやってるみたいに…つい…」

 

八幡「…おいちゃん」

 

仲「わたくしの息子でございます」

 

仲さんが雑炊を持ってきてくださりながら、俺のふと出た疑問に答えてくれた

息子…?

 

八幡「息子さんがいたんですか」

 

仲「はい、今は出稼ぎに家を出ているのですが…」

 

小一「おいちゃんったら、全然帰ってこないの」

 

小一は落ち込んでしまった

それほどそのおいちゃんに懐いていたのか

俺は仲さんから雑炊を受け取る

その間に仲さんは愚痴っていた

仲さんが作ってくださった雑炊は米だけをお湯につけている

うーむ、何か味気ない気がするが…

この時代では当たり前の食生活なのだろう

食生活と言えば俺はとても不安に思っている事がある

そう、マッカンの存ざ———

 

仲「全く、どこで何をしているのか…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

藤吉郎

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

———ハチッ!」

 

 

八幡「はっ!?す、すみません!いただきます…」

 

犬千代「もう食べたよ、ハチ」

 

八幡「へっ?」

 

よく周りを見ると俺は外にいた

前に犬千代と秀勝が歩いていて、心配そうな顔でこちらを見ていた

 

八幡「あ……あれ……?」

 

確か俺は仲さんの作ってくれた雑炊を食べようとしていたはず

なのにいつの間にか外に出ている

 

秀勝「どうしたの、ハチ?ずっと上の空だったよ?」

 

八幡「え、あ、いや…」

 

犬千代「……ハチ」

 

八幡「な、なんだよ」

 

犬千代「……無理してない?」

 

八幡「してねーよ。したくもねーし…」

 

犬千代「………そ」

 

うーん?どうなってんだ?

だけど、確かに腹には何かを納めたような感覚がある

だからあの雑炊を食べたのは本当だ

なのになんで覚えていないんだ?まさか記憶障害?

もー、しっかりしろよ八幡!

俺は自分の不甲斐なさにガッカリしながら、犬千代と秀勝の後ろを歩いて行く

 

誰も何も言葉を発せずに

 

 

……

 

………

 

…………

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

わー、わー!

ぎゃあぎゃあ!

 

しばらく黙って歩いていると、村の中が騒がしくなった

 

八幡「ん?」

 

どうやら騒いでいるのは村の人達だ

後ろの方から大きな声や悲鳴が聞こえてくる

何かあったのか?

 

八幡「何だ?」

 

秀勝「っ!!ま、まさか……!」

 

犬千代「くんくん…くんくん…。うん、間違いない」

 

全く状況がわからない俺に対して、2人は何かに気づいた

秀勝は目を大きくして後方を警戒している

犬千代は臭いを嗅いで、分かったように頷く

2人は身体を強張らせて、今にも逃げ出しそうだ

そんな2人を見て俺も不安になる

 

八幡「えっ、な、何があるんだよ」

 

秀勝「ハチッ!逃げるよ!アレに絡まれたら最後、人生が終わる!」

 

犬千代「あ、あれは…黒歴史…」ぶるぶる

 

あのいつも冷静な犬千代が怯えている、だと!?

そ、それほどまでのものが迫ってきているのか!?

後ろで騒いでいる村人達の声が聞こえてきた

 

村人A「う、うわ〜!!」

 

農民「お、お助けー!!」

 

村の子供C「うわぁ〜ん!かあちゃーん!」

 

まさに阿鼻叫喚

あの棒でしばいてきたガキも泣きながら逃げてきている

 

八幡「ほ、ほんと何が来るんだよ…?」

 

秀勝「恒興だよ!」

 

恒興?

それって犬千代が言ってた、昔信奈と一緒に遊んでいたってやつか

ここに来てから何回か聞いたことのある名前だ

確か俺たちの同僚なんだっけ

 

犬千代「ほら、逃げるよハチ」

 

走ってくる恒興から逃げるように走り出す犬千代とヒレカツ

置いていかれないようについていきながら、後ろから走ってくる恒興を見た

見える、誰かがとんでもない速度で走って来ているのを

 

どどど…!

 

大きな足音をさせながら走っているのは女の子だった

身長は信奈より少し大きいくらいで、髪の色も信奈と同じ

違うのはその髪が長く、結ばれていなくて派手にボサボサなところくらいか

同僚のヒレカツや犬千代が危険視する程の人物

そんなに恐ろしいのか、その恒興ってのは………

 

 

 

恒興「う◯こーーーーーーーーーー!!!!」

 

 

あ、やべー奴だ

俺は一目散に逃げて、村を後にした

 

 

 

 

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

 

八幡「……な、何だったんだアイツ」

 

空が透き通る橙色に染められた夕暮れ

俺と犬千代と秀勝は清洲の町を歩いている

 

秀勝「恒興はね、ああやってしょっちゅう暴走するやつなの。お城の中だろうが、村のど真ん中であろうがあんな感じになるの」

 

犬千代「……あの恒興に捕まったら最後……詳しくは言えないけど……全身茶色になる」

 

うん、だいたいわかった

恒興は暴走グセのある要注意人物だと

 

 

 

 

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

 

犬千代「……ねえ」

 

 

八幡「…ん?」

 

秀勝「何?」

 

もうすぐ家に着こうとしている頃に犬千代が話しかけてきた

俺と秀勝は犬千代の方を見る

すると犬千代はどこかを指差して言った

 

犬千代「……行こ」

 

八幡「行く?どこに?」

 

犬千代「……焼き鳥」

 

犬千代が俺の手を握る

焼き鳥……?

あー、もしかしなくてもあそこか

俺が信奈の元に来てから直ぐの頃(と言っても1週間前)、服を買うついでに町をぶらぶらとしていたら、どこかからいい匂いがして来た

気になってその匂いを辿ると、そこには年季の入った食事処があった

店はご主人1人で切り盛りしていて、特に鳥料理を扱っているらしく

焼き鳥や親子丼、手羽先などがあった

手始めに焼き鳥を頼んで食べてみれば現代の焼き鳥技術(?)にも負けないくらいに美味しい

それからその店に焼き鳥を食べにちょこちょこ寄っている

最初は俺が1人だけで食べる場所、いわばベストプレイスとして周りには秘密にしていた店だったが、アッサリと犬千代に気づかれて問い詰められた

服についた焼き鳥の匂いでバレるって何だよ

貧乏生活を送っている犬千代としては俺が贅沢しているのが気に入らず、そんで犬千代から秀勝にチクられ

結果、一昨日には3人で焼き鳥を食いに行った

俺の奢りで←ここ重要

 

八幡「いや、焼き鳥を食べに行くのは賛成だが、それってまた俺が奢る羽目になるだろ。今の俺には生活費と貯金しかねぇから無理だって」

 

そしてそろそろ手を離せ

ドキドキすんだろ

 

犬千代「……私の方がお金無い。無理」

 

八幡「…だったら我慢しろよ。何でわざわざこんな時に行くんだよ」

 

金もねぇし、こんな気分で行ってもしょうがねぇだろ

この、なんていうか、なんとも言えない気持ちで

それにもう家に着くぞ

 

秀勝「んー、まあいいんじゃない?ハチだって家に帰ってもする事ないでしょ?」

 

八幡「は?いや、それ以前に俺の金…」

 

犬千代「……まあまあ」

 

八幡「まあまあじゃねーよ。俺にとっちゃ生活がかかって…」

 

秀勝「行こーよ!私、またあの親子丼を食べたい!」

 

秀勝が犬千代の握っている手とは違う方の手を握ってきた

だからやめい!

 

八幡「あー、お前あの親子丼スゲー美味そうに食ってたな。って、そうじゃなくて…」

 

犬千代「……目指すは焼き鳥」ぐいっ

 

八幡「ちょ、引っ張るな!」

 

秀勝「いこいこー!」

 

2人に手を引かれて店に連れて行かれる

あの、俺の意思は……無いですね

意思は石並みってか?

 

 

 

…………………………………古いなこのギャグ

 

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