俺がいる戦国時代   作:龍@pixivでも活動中

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六「あたしが何でこんな、腐った目をしたやつの面倒を見なけりゃいけないんだ…」

 

隣を馬に乗って歩く六が愚痴る。

俺はあの信長もどきに気に入られたようだ。

大将は北へ北へ意気揚々と進行していく、俺と六はその二、三列後ろにいる。

その大将の後ろ姿を見ていたら俺は重要な事を忘れていたので六に聞いてみる。

 

八幡「なあ」

 

六「なんだよ?」

 

八幡「アンタんとこの大将、何て名前なんだ?」

 

六「はっ!?え、今までついて来ててずっと知らなかったのか!?」

 

八幡「聞くの忘れてた」

 

信長だとは思うのだが戦国時代において織田性何て腐る程いる。

もしかしたら信長の父、尾張の虎かも知れない。

今川義元が女になっていたのだ歴史自体が大きく変わっていてもありえない事ではない。

 

六「まったく仕方ないなあ。あのお方は織田家の長女、織田信奈様であらせられる」

 

信奈?

そんな武将いたっけ?俺が知らないだけか?

もしかすると信長の女バージョンが信奈なのかも?

 

八幡「そうか、サンキュ」

 

六「産休?な、何言ってるんだよ!///あたしはまだ子供を産んでないよ!///それに子供を産んだくらいで休んだりする程、あたしはヤワじゃない!」

 

八幡「何言ってんだお前」

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

それからしばらくとぼとぼ進軍していた。

すると信長?あらため信奈が振り向いて前方を指差しながら大声で叫んだ。

 

 

信奈「着いたわよー!蝮の待つ、正徳寺へ!」

 

 

八幡「蝮?」

 

それを聞いた俺の疑問を、隣の六が答える。

 

六「美濃が大名、斎藤道三だよ」

 

斎藤道三。

通称蝮。

僧侶、商人となり最終的には城持ち大名に成り上がった戦国時代前世紀最大級の下克上大名。

そいつに今から織田の当主が会いに行く。

 

俺は織田軍の後ろの方を背伸びするように見る。

鉄砲の銃身が連なって見える。

これだけ武装しているのは道三が攻撃してくる恐れもあると言う事だ。

 

六によるとこれから行われるのは織田家と斎藤家の同盟会談。

織田は内紛寸前の国、危機的状況の中。

だが待ってと言っても時代は進む。

東の今川が京に向けて進軍しようという動きがある。

内側で争っている場合ではないのだがどうやら信奈のご家族は強情で頭の固いお人らしい。このままでは何も出来ずに今川に踏み潰される。

そうならないためにも、北の強豪斎藤家と同盟を結ぼうと言うのが信奈の考え。

 

六「それで、道三との会合が美濃の寺、正徳寺であるんだよ」

 

八幡「ほー」

 

超重要な会じゃないか。

なのにあの信奈の格好はふざけているようにしか見えない。

頭は茶髪のまげ(……これからまげっ子て呼ぼ)、湯帷子を着崩し片側の袖を脱いでいる。そこから何故か……その……見せブラが見えている。

綺麗な白い肌が丸見えだ、はしたないまったく。腰には虎の毛皮、縄でひょうたんをぶら下げている。

そしてそのまま正徳寺の門前に直行している。

 

信奈「よっと」

 

門の前で馬を降りた信奈は六を見る。

 

信奈「六、外の護衛は任せたわ」

 

六「御意」

 

きっ、と六に睨みつけられた。

 

六「おいお前!あたしがいない間は姫さまを守れよ!」

 

八幡「え……」

 

俺が何か言う前に六は去って行き、入れ代わりに信奈の草履が顔に飛んで来た。

 

八幡「あいてっ」

 

信奈「わたしの草履、会合が終わるまで持ってなさい」

 

そう言うと小姓らしき女の子と一緒に寺の中へ入って行く。

持ってろって言われても……。

 

八幡「ん?」

 

その時、顔に草履を投げつけられたからか俺の頭の中に何かが引っかかった。

とても重要な事を忘れているような…?

頭を傾げているとさっきの小姓が戻って来た。

 

「……信奈様に言われた。ハチを本堂の庭に連れて行けって」

 

八幡「そこにいればいいのか?」

 

犬千代「……犬千代と一緒に大人しく待ってる」

 

小姓の女の子は犬千代と言うらしい。

こっち、と腕を引かれて行ったのは広い庭。そこには俺と犬千代と、あと斎藤側の小姓であろう女の子が立っていた。

刀を携えているって事は護衛だろう。SPだSP。

 

犬千代「……私語厳禁」

 

静かにしないといけないらしい。

まあこっちが怪しい動きをしたらあのSP少女に切られるだろうからな。

黙っていよう。それにしてもこれずっと立ってなきゃいけないのかなー。

 

本堂には既に斎藤道三が座っていた。

見事な風格がある。

流石歴戦の強者、しかし格好は着流し姿。

なんだか気だるさを感じる。

恐らく信奈の格好を目撃したのだろう、あのふざけた格好を。

それを見て相手がそう来るならこっちも格好を気にしない。そういう腹心算なのだ。

道三は扇子をパチパチ開いたり閉じたりを繰り返し信奈の登場を待っている。

 

☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆

 

道三「信奈とやら…遅いのー」

 

大あくびをしながら道三は言う。

同感。

立つのが苦になるくらい信奈は全く来なかった。

どうしよう帰ろうかな。

 

信奈「待たせたわね!蝮!」

 

道三「ぶっ!」

 

蝮の口から毒霧が!ではなく、信奈の登場に道三が飲んでいたお茶を吹いた。

 

信奈はここへ来た時の格好ではなかった。

ちょんまげにしていた茶髪を下ろし(……あ、まげっ子って呼べない)美しい着物を着こなす。

白くてすべすべした肌、顔のパーツも全てが完璧だった。

だがその顔に浮かぶのは男勝りな豪気さ。

その姿は花か天女か妖精か、とにかく可憐で気高き風貌。

姫の姫らしい格好に道三は慌てて、

 

道三「な、な、なんと言う美少女!!あ、あわわ」

 

大声で包み隠さず叫んだ。

 

八幡(あ、あわわ…)おろおろ

 

それと同時に俺も慌てる。

とんでもない衝撃の事実に気づいてしまったのだ。

口元を押さえてキョロキョロ辺りを見回す。

そんな中で、信奈は優雅に座る。

 

信奈「わたしが尾張の織田信奈よ!」

 

道三「う、うむ、儂が斎藤道三じゃ」

 

年甲斐もなく道三は照れてしまったらしい。

だがそんな気持ち悪い事を気にしている余裕はない。

 

 

八幡(お、お、俺、織田家に士官してねーーー!!)

 

 

さっきの頭に浮かんだ忘れていた事ってこれか!

そう言えばあのおじゃが池の一件が'解決"してから一度もそんな話しが一切なく、流れに乗せられてここまで来てしまったのだ。

 

信奈と道三の話しは続いて行き、同盟組めやこのやろー!テメェ次第じゃぼけー!的な話しから鉄砲の数やら天下を取るために道三が美濃を狙ったとか話してるけど、それ俺が聞いていいのか!?

よく考えて?織田家に士官しておらず、ましてや斎藤家ともなんも関係ないやつ、そんな部外者がここにいていいの!?ダメだよね!

 

八幡(ど、どど、どうしよう、この事がバレたら…こ、殺される…絶対に殺される…)おろおろ

 

幸い隣にいる犬千代は緊張した面持ちで会談を見ていて俺の慌てた様子に気づいていない。

さっき信奈の考えている事に同調して道三に諌められたSP少女も同じ。

そして信奈と道三だが。

 

道三「天下盗りのために美濃が欲しいという話しじゃったの」

 

信奈「そうよ、美濃がわたしにもらわれたがっているの」

 

道三「ふふ、儂は美濃の蝮、それはできぬ相談」

 

信奈「わたしもタダでもらえるとは思っていないわ」

 

道三「一度くらいは、お主のような一代の英傑と合間見えてみたいのお」

 

信奈「望むところよ」

 

一触触発。戦を交じえる気満々。

やっべぇ、あっちもやっべぇこっちもやっべぇ、アレ止めた方がいいかな?

 

あ、よく考えたら関係ないじゃん。

 

信奈と道三の睨み合いを端に俺の思考はどんどん楽な方を取りにいく。

それはこの緊張からくるものなのか、考え方が縮んでいく。

 

八幡「あーもういいや」

 

その一言に全員が俺の方を見る。

ガシガシと頭をかいてどがっ、とあぐらをかく。

ずっと立っていたから楽になったわ。

てか寝てしまおうかな。

うんそうしようと仰向けに寝っ転がる。おお凄く綺麗な青空だ。

 

信奈「ちょっとハチ!何してるの!失礼でしょ!」

 

八幡「失礼?何に対して?」

 

一喝してくる信奈に横目で答える。

 

道三「む?信奈殿、その珍妙な格好をしておるのは誰かの?」

 

道三がそう言う。

 

信奈「こいつは……」

 

八幡「比企谷八幡です」

 

信奈が答える前に言う。

 

道三「何者じゃ?」

 

八幡「部外者です」

 

道三「なに?」

 

信奈「え?」

 

八幡「織田家にも斎藤家にも関係のない者です。本当は織田に士官しようと思ってたんですが、ここに来るまで忘れてまして。今は天涯孤独の身、全てからの独立体現者(要するにぼっち)、なのでアンタらに礼を尽くす必要がないんすよね」

 

信奈の戸惑っている顔が気になったが、話しはこれまでと目を閉じる。

 

道三「信奈殿、どう言う事じゃ?」

 

信奈「い、いやアイツはわたしの…」

 

道三「十兵衛」

 

十兵衛「はい」

 

SP少女の名前は十兵衛と言うらしい、ツカツカとこちらに来る足音が聞こえる。

目を開けると十兵衛が俺を見下ろしていた。

広いおでこがキラーンと光る。

 

十兵衛「ここは重要な会議の場です。そのような態度はお控えください」

 

八幡「でもさ、あそこにいる蝮とやらは大きな口であくびしてたじゃん。だったら俺だっていいんじゃね?」

 

十兵衛「立場が違いまする。道三様はこの美濃を治める大名です。されど、あなたは美濃にも尾張にも無関係と言うではありませぬか。ならばさっさと立ち去った方が身のためです」

 

八幡「立ち去る……ね」

 

ちら、と信奈の顔を見る、それから道三の顔を見た。

 

道三「………」

 

八幡「そうした方が良さそうだな。このまま織田家の者と勘違いされる立場にいたら、くっだらねぇ戦に駆り出されちまうかも知れん」

 

そう言って立ち上がり犬千代の後ろを通って正徳寺を出ようと歩き出す。

 

道三「待てい」

 

道三に止められた。

振り返るとこちらを見つめる道三が、

 

道三「くだらない戦とはどう言う事じゃ?」

 

八幡「……ああ、俺は戦が嫌いなのでついそういった言い方になってしまいました」

 

道三「そうではない、お主は儂の顔を見た時、何かわかった様な顔をしておった。もしかするとお主は儂の考えを読み解いたのではなかろうか」

 

八幡「何を根拠に?」

 

道三「儂は様々な人間を見てきた。じゃからわかるんじゃ、なんとなく顔を見れば相手が何を考えているのかが」

 

八幡「それで俺がアンタの心理を解いたと?」

 

道三「うむ、ほぼ勘じゃがの」

 

俺は少し考えてから道三を見つめる。

 

八幡「……礼は?」

 

道三「なに?」

 

道三の顔が険しくなる。

図々しいと思われたか。だがこちとらアンタを助けるために動くんだそれくらいの事はして欲しいね。この頑固ジジィ。

 

八幡「そうですね、とりあえず金を用意してもらいましょうか」

 

十兵衛「こら!無礼です!」

 

十兵衛が俺を刀で切りつけようと鞘に手をかける。

 

道三「待てい、十兵衛!」

 

それを道三が一喝で止め、俺を威圧するように睨みつけてくる。

 

道三「お主……この蝮に金を払えと?どこぞの馬の骨かも知れんくそガキが、調子に乗るのも大概にせえ」

 

それを冷えた目で見つめ返す。

 

八幡「調子に乗って金が貰えるならなんぼでも調子に乗りますよ。美濃の蝮なんて大層な肩書きを持った老害が、偉そうにしてんじゃねーよ」

 

俺と蝮の睨み合い。

正直怖いです。

俺は信奈の顔を見る。

 

八幡「アンタにはそこの茶髪とやりあえるだけの資金があんだろ?だったらそんな事に金を使うくらいなら俺にくれって言ってんですよ」

 

道三「何故一銭にもならん事をせんといかん。美濃の金は儂が人生をかけて溜め込んだものじゃ、主のような小物にやるわけにはいかん。それに儂は主の話を聞きたい、と言っただけじゃ。そんな事に金を使うバカがどこにおる」

 

八幡「俺は天涯孤独って言いましたよね?だからそう言う情報も金に換えないとやって行けないんですよ。あ、そうだ。どうせなら尾張辺りまで行ける馬も欲しいですね、アンタんとこには沢山馬がいるんじゃないですか?だったら1頭くらい……」

 

道三「馬は戦において最も重要な道具じゃ、誰かにあげる余裕はないわ。儂の息子達が全て使っておるからの」

 

八幡「だったらその息子から取り上げて、俺にくださいって。それにどうせ、使う間も無く馬はアンタが売り払ってしまうんですから。ほらほら、さっさと俺に金を貸しあげますって紙に書いて下さいよ」

 

道三「そんなもんガキに書いたとあっては、この蝮、地に落ちたかと面子ががた落ちじゃ」

 

八幡「もう地に落ちていますよ、老いぼれ」

 

信奈が立ち上がった。

 

信奈「ハチ!」

 

土で足が汚れるのも気にせず俺の方へ歩いて来ると、

 

バチーン!

 

平手打ちを頰にもらった。

 

信奈「蝮に謝りなさい」

 

ジンジン痛む頰を抑えながら答える。

 

八幡「……何でテメェの言う事を聞かないといけない?俺は織田のもんじゃねぇぞ」

 

信奈「いいから、謝りなさい!斬られないうちに!」

 

八幡「やだね、あのジジィに頭下げるくらいなら逃げるわ。ほれ、お前の草履だ」

 

俺は預かっていた草履を信奈の足元に置く。

信奈に背を向ける。

 

八幡「じゃあな」

 

そのまま正徳寺を出て行く。

それを止める者はいなかった。

 

 

 

信奈「ばか…」

 

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