俺がいる戦国時代   作:龍@pixivでも活動中

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天下人

八幡「くそ、軽々しく外に出るんじゃなかった……」

 

道沿いに草木が生い茂る夜の道を歩いていた。

末森城から清洲に帰っていたはずが気づけばどこかも分からない場所にいた。おっかしいなー。六と来た道をそのまま戻ってたはずなのに……はっ!

まさかまた別の時代に飛ばされたのでは!?

 

八幡「……な訳ないよなぁ」

 

はぁ……。

俺は足を止める。これ以上進んでいたら本格的にヤバい迷子になってしまう。三重県とかに出たらシャレにならん。

 

八幡「いっぺん戻るか……」

 

俺的には末森城から真っ直ぐ歩いて来たつもりだ。

そのまま後ろに戻って行けば末森城に戻れる。情け無い話しだがそこで六とかに道を聞こう。

 

八幡「というか迷子キャラはうちの部長で間に合ってんだよ……ったく」

 

愚痴りながらも振り返る。

 

八幡「うっわ、真っ暗」

 

道が見えないくらい暗かった。頼りになるのは月明かりだけ。

 

八幡「ありがとうお月様」

 

長年俺たちを見てくれている月に手を合わせる。それからトボトボ歩き出す。

30分くらい歩いただろうか、それでも一向に末森城が見えてこない。

そもそも来た道を戻っているはずなのに全く見覚えのない道を歩いている。

 

八幡「あ、あれ?」

 

不思議に思い後ろを振り返る。

そこは俺が歩いていた道。だが道沿いに生い茂っていた草木が無くなっていた。

 

八幡「……ええ?」

 

周りを見渡す。

暗くても分かるくらいに開けた丘に立っていた。何も無い。あるのは月明かりと乾いた地面だけ。

足元にあった道も消えていた。

 

八幡「……なんだこれ」

 

俺の身に一体何が起こっている。

まるでタヌキに化かされているような……。

 

八幡「……ま、まさかな」

 

この現代社会にそんな非科学的なものがあるわけない。

なーに言ってんだよ俺、あははは。

あ、この時代は現代じゃないじゃん。戦国時代だった。

 

…………

 

八幡「あ、あわわ、助けてゴエモーーン!!」

 

相棒に助けを求めるが何の反応もない。それどころか動物の気配もない。や、ヤバいですっ!このままだとお化けに食われてしまう!うわーん!

あんなボンクラ王子なんかほっといて犬千代とうっふきゃははしてれば良かったー!そんな恋愛フラグなかったけど!

 

八幡「ど、どうしよう……。このままここに居てもしょうがないけど、真っ暗だからすっごく怖い。ううう…やだよー戸塚に会えないまま死にたくないよー」

 

 

 

『バッカモーーーーン!!!』

 

 

 

八幡「うわああああああ!?」

 

突然、大地を震わせる程のデッカい声が轟いた。

耳がキーンってなる。

身体が振動で揺れて気持ち悪い。

 

八幡「な、なんだ!?」

 

耳を抑えて声のした方を見る。

 

八幡「は?」

 

なんと眉間にシワを寄せて怒っているじじいが空に浮いていた。

白い髪と髭がじじいの身体よりも長く、ルイー○みたいに長い顔。

頭には金色の大きな簪、服は白い着物、肌は浅黒く腰には贅沢にも刀を3本携えていた。

ルイー○じじいは俺を見つめていた。

 

八幡「な、なんだアレ……」

 

『このワシを見てアレとは、礼儀を知らん小僧のようじゃな』

 

八幡「はあ……すみません」

 

『まあいい、取り敢えず座れ』

 

なんか偉そうなじじいだな。

言われた通りに地べたに正座する。

じじいはスー…と降りて来て、俺と向き合うように胡座をかいた。

 

八幡「あの、俺に用ですか?」

 

『ふん、無ければ神隠しなどせん』

 

八幡「神隠し?」

 

『気づいておらんか?お主は今、ワシの作った空間におるのじゃ』

 

周りを見る。さっきも言った通りに何も無い。

草も木もなく、動物の気配もない、あるのは月明かりのみ。

 

『さて、お主を連れて来たのは他でも無い。この世界での1日でお主のとった行動についてじゃ』

 

八幡「この世界……?」

 

『ふむ?それも気づいておらんかったのか?』

 

八幡「そうではなく、別の世界と言う事は、ここは過去の時代では無いんですか?」

 

『お主は織田信奈と言う歴史上の人物を聞いた事があるか?』

 

八幡「いえ……」

 

『それが証拠じゃ。確かにこの時代は戦国時代と呼ばれる。しかしこのまま時代が流れてもお主のいた時代にはならん。同姓同名の男は生まれるかも知れんが、お主自身は生まれてこん』

 

つまり今立っている時代のライン上の先に俺が存在していた時代はやって来ないと言う事か。

タイムスリップをしたんじゃなくて異世界間を移動したと捉えた方がいいかも。

わーい、これで俺も異世界チートの仲間入りだー……チートがあっても小町がいないんだよな。

 

『もう本題に入ってよいかの?』

 

八幡「その前に、アンタの名前は?」

 

 

『龍神じゃ』

 

 

八幡「りゅ、龍神って…」

 

龍神『雄蛇ヶ池に住んどった龍神、覚えておるじゃろ?』

 

八幡「え、な、何でその龍神が俺に……?」

 

龍神『何で?それは……』

 

もったいぶって髭を撫でながら告げる。

 

 

龍神『ワシがお主をこの世界に転移させたからに決まっておろう』

 

 

八幡「はあ!?」

 

このルイー○じじいが俺をここに!?あ、龍神なんだっけ。

 

八幡「な、何のために……」

 

龍神『あの雄蛇ヶ池はワシの住処であると同時に、ワシを縛りつける重しだったんじゃ。長年住んどったが、それはそれは退屈じゃった。その上、変な人間どもが女子を池ん中に投げ込んでくる。もう飽き飽きして来たから、お主にワシを雄蛇ヶ池から解放して貰おうとな。どういう仕組みか知らんが、異世界の者でなくてはならんかったようでな。お主が喋っていた途中で、頭の中に浮かんで来た言葉があったじゃろ?それはワシが念話で語りかけたものじゃ』

 

八幡「俺である必要は?」

 

龍神『ある程度知恵があり、その中で暇そうな奴を適当に見繕った』

 

俺はこめかみを抑える。

…俺じゃなくてもいいじゃん。他にもその条件に当てはまる奴はいるだろ。

 

八幡「どんだけ自分勝手なんすか……」

 

龍神『ふん、責任は自覚しておる。ワシが解放された暁には、ちゃんとお主を元の世界に帰すつもりじゃった』

 

八幡「……じゃった?過去形?」

 

やな予感……。

 

龍神『そこで本題じゃ。お主、やってくれおったな?』

 

八幡「な、何をっすか」

 

龍神『お主のした行動のせいで、歴史が大きく変わってしもうた』

 

八幡「え!」

 

龍神『主を庇って死んだ木下藤吉郎、あの者がどういう人物かお主も知ってあろう』

 

八幡「は、はい。後の豊臣秀吉、天下人です」

 

龍神『その者は歴史に残る偉業を成し遂げるはずじゃった。だがその前に死んだ。歴史はメチャクチャじゃ。木下藤吉郎のして来た事が全て無くなった。全てじゃ、分かるか?』

 

八幡「つまり俺が関わった所為で、日本の歴史が変わったと?」

 

龍神『その通り』

 

八幡「け、けどアンタが勝手に呼んだからでは?」

 

龍神『……ちっ、いらん知恵を持ちおって』

 

龍神さんは舌打ちをすると空を睨みつける。

 

龍神『それが咎められて、上から命令されたんじゃ』

 

八幡「上?」

 

龍神『神にも上や下があるんじゃ。それで、上が出してきたのは…」

 

八幡「神の上司が出した命令……ごくっ」

 

 

 

龍神『ワシがお主を補助し、お主をこの世界の天下人にすると言うものじゃ』

 

 

八幡「やだ」

 

何でそうなるの!?豊臣秀吉の代わりになれって事だろ?

そりゃあ木下さんの一国一城の夢は叶える約束をしたけど、天下人って……無理に決まってんだろ。

 

龍神『そうしないと帰れないとすれば?』

 

八幡「ここで暮らす、天下人なんてかったるいっす」

 

龍神『……ワシが全面的に協力すると言っても?』

 

八幡「めんどくさい。そもそも、天下人なんて俺に出来るわけが……」

 

龍神『その協力の中に、お主の向上心を持たせると言うものがあっての。もし天下人になると言うなら……』

 

八幡「向上心があっても出来ないものは出来……ん?」

 

スッと、龍神さんはどこかから時代錯誤なパソコンを取り出した。

 

 

 

龍神『戸塚彩加がウサギと戯れている動画を見せてやろう』

 

 

八幡「天下人なんか楽勝ですわ」

 

 

こうして俺と龍神の天下人への道が始まった。

 


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