「何のために。ミニスカートなの」   作:高尾のり子

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第3話

 

 荊は手足も動かせず、下着も脱がされ、絶望しかけていたけれど、助けが来てくれたので心から感謝した。

「おおきに、ありがとうな」

「ホントに感謝してる? 呼んだ男子と違うから、期待外れだったとか思ってない?」

 歌音が電磁力で飛んできて降り立った。

「かわいそうな姿ね」

「……ぅぅ…」

 筋弛緩剤のおかげで指一本満足に動かせない、作業員たちを薙ぎ払ってもらっても、開脚したまま寝転がっているので丸見えだった。

「おしっこで濡れてるけど、パンツあげてあげようか?」

「……お願い…します…」

 恥ずかしそうに荊は頼んだ。歌音が足首までおろされていた荊の下着を戻してくれた。

「さてと。って……詩音……あなた…」

 歌音は話を進めようとしたのに、妹の小津詩音が作業員たちと気持ちよさそうに抱き合っているので、うんざりとした。

「詩音………かわいそうな子……食欲にも、性欲にも負けやすい……」

「ああ、気持ちいい! 生きてるって感じするよ、お姉ちゃん。リストカットより、ずっといい。男の人、いっぱいいる! 第一師団より多いかも! あの人たちが都外に行ってから淋しかったァ! ここ最高だよ!」

「あの子を、あんな風にしたのも……コッペリオンの……くっ!」

 憎々しげに歌音は二葉を睨んだ。

「卑口、あなたもまた被害者だってこと気づけば?」

「う~ん……与えられた役目を頑張って務めるのは、いいことだよ? 人の役に立つなら、なおさら」

「言っても無駄なようね」

「だね!」

 そう言った瞬間、二葉は早撃ちで拳銃を撃った。

 パスン!

 弾は正確に歌音に当たった。けれど、歌音は倒れない。

「オレの能力は電気だぜ。そして筋肉を動かすのも脳からの電気信号。筋弛緩剤は、それを遮断するだけの薬。んなものオレに効くわけないじゃん。でもって、成瀬も!」

「あぐう?!」

 荊は中程度の電撃を受けて痙攣したけれど、身体を動かせるようになった。

「ううっ……乱暴な回復、おおきに…」

 よろよろと立ち上がるとスカートの裾を直した。二葉が両手を挙げて言う。

「降参します!」

「ちっ……」

 荊は舌打ちして、これ以上の争いをやめるつもりだったけれど、歌音は強烈な電撃を二葉に浴びせる。

「きゃあああああ?!」

「降参しますで、許すわけねぇだろ! 成瀬を、どんだけ傷つけたと思ってんだ、ボケ!」

 さらに電撃を浴びせ続けながら語る。

「ああ、そうだよ! お前の言うとおりコッペリオンには、そんなゲスな狙いもあったろうさ! こんな短いスカート強制しやがって! どんだけ厚着に慣れてからスカート丈を伸ばそうとしても太腿が暑くて、この極ミニしか履けねぇしよ!」

「あんたが厚着してたん……そんな理由があったんや……」

「無意味に厚着してると思ったのか?」

「いえ……ファッションかな、と。それとも静電気も利用して充電してるのかな、とか、余計な放電をしないように絶縁してるのかなみたいな」

「静電気は電圧は高くてもエネルギー量はしれてるし、放電を避けるなら両方の太腿を出してたら意味無いだろ」

「たしかに……。あんたは肌を露出したくなかったんやね……このスカート、ホンマに短いし……ほぼ無人の都内やから着られるけど、人の多い都市部やったら盗撮志願女子やもん」

「妹なんて、かわいそうに薄着が好きで、すぐ脱ぎたがる。うっかりしてるとガキみたいに靴下まで脱ぐし、胸元が見えてても、おかまいなしだ」

「……嫌な遺伝子操作されたんやね……」

「オレなんか電気ウナギだぞ! 粘膜からヌルヌルの粘液を出すのも得意だし! 電撃を微弱にすりゃ相手に最高の快感を与えられるから、コッペリオン最高の名器とか言われる始末だ! ざけんな! 人の身体を何だと思ってやがる! 人助け?! 救い?! 慰め?! やってられるかっ!! 遺伝子が許しても女のプライドが許さねぇ!!」

 歌音が涙を流しながら言ったので荊も胸が痛くなった。

「………そうやった……あんたが一番……コッペリオンである自分を……否定して……逆らって……誇りをもって…」

「おうよ! 何が最高の名器だ?! だったら、このまま誰にも使わせず突然死してやる! 最期の最期まで抵抗してやる! 人を新開発の電気刺激付きローション内臓のオナホみたいに設計しやがって! 絶対ゆるさねぇ! 何があっても、この身体は誰にもゆるさねぇ!」

 歌音は叫びながら、コソコソと逃げだそうとしていたマコにも電撃を浴びせた。戦闘が終わり、しばらくして一定の満足を得た詩音が戻ってくると、歌音は悲しそうに囁く。

「詩音……もう、お腹いっぱいか?」

「うん、ごちそうさま」

「そうか……よかったな」

「お姉ちゃんは、やらないの? 気持ちいいのに」

「ああ……オレは、そういうの……嫌いなんだ」

 歌音が肩を落としているので、荊は優しく撫でた。

「おおきにな。二人とも、ずっと、うちらから、あまり離れず見守ってくれてたやろ?」

「たまたま行く先が、いっしょだっただけだ」

 歌音が照れくさそうに否定し、香菜が近寄ってくる。

「荊先輩、これから、どうします?」

「………」

 荊が黙っていると、香菜が触れてくる。

「荊先輩、聴いてます?」

「私に触らないで」

 触れられる前に荊は避けた。

「荊先輩?」

「花澤さんとは、もう……」

 どんなに争っていた相手でも受け入れる荊が嫌悪感を結晶化させた瞳で香菜を見た。

「っ……荊先輩? そんな目で香菜を見て……関西弁も……」

「…………部隊編成を変えます。私と歌音が前衛。他の三人が後衛。前衛と後衛は100メートル以上離れて行動すること。お互いの視界に入らないように」

「えーっ! それって香菜たちと、いっしょにいるのが嫌ってことですか?!」

「…………」

「ねぇ、荊先輩! さっき笑ったこと怒ってるなら謝りますから! ごめんなさい、許してください!」

「…………」

 タエ子も謝ってくる。

「ごめんなさい。すみませんでした」

「…………。顔を近づけないで」

「っ……」

「………………」

 荊が黙って進み出した。歌音が訊いてくる。

「おいおい、勝手に班割り変えたら教頭に、どう説明するよ?」

「………もうやだ……あの子たちと……同じ空気……吸ってたくない……」

 荊が顔を伏せてつぶやくので、歌音は額に手を当て空を見上げた。

「あ~~っ……だいぶ重症だね……関西弁も消えるくらい……」

「お姉ちゃん、ボクと別々なの?!」

「可愛い子には旅をさせろ、って言うしな。しばらく離れてろ」

「うぅ…」

 詩音が離れていき、荊が黙り込んだまま歩くので歌音は、あえて話題を変える。

「オレさ、新しい必殺技を編み出したんだ」

「……そう……」

 最低限の相づちをくれたので話を続ける。歌音はコートのポケットから十円玉を出した。

「オレの電磁力で、この十円玉を音速の20倍に加速して撃ち出すんだ。名付けて、レール・カノン! 歌音なだけに!」

「……その喋り方……大っ嫌い……二度としないで…」

「うん……ごめん……」

 あまりにも荊が傷ついた顔をしているので、そっと歌音が抱きしめると、今度こそ荊は声をあげて、わんわんと泣いた。

 

 

副題「コッペリオン女子を忖度した結果」

 

 

 





風紀員の卑口二葉と給食係の深海マコはオリキャラです。
 
 
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