夕暮BLUES   作:おぱんぽん侍

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原作:NARUTO第一部に置いて、うずまきナルトは「クリリン」のポジションで、通常の作品で主人公と言えるようなキャラはうちはサスケだったと思います。
ですがそのサスケも、主人公「と言える」キャラであって主人公ではない。元ネタとなった飛影のように、或いはドラゴンボールで言えばベジータのように、自分のアイデンティティとコンプレックスへの意識の塊です。
はて、コンプレックスの塊を前にしたナチュラル系煽リストの悟空は何をするでしょうか(ゲス顔)

リー? リーはヤムチャでしょ(適当)。


始まる!! SHINOBI・SURVIVAL

 

 悟空が狩りに入った森林は、リーがやっているように多くの忍や、忍の卵達が隠れて特訓の為にこぞって来去する場所だ。立地上人里と離れ、適度に開けた広地がぽつぽつとちらばって組手や大技の練習に持って来いの立地で、雑木林は忍具の取り扱いやサバイバル術、不安定な足場での闘い方を知ることができる。そんな場所には、悟空好みの大きな獲物は居なかった。当然特訓途中の忍が追い払ったり、里に降りては困る者達が根絶やしにしているからだ。すっかり腹をすかした悟空であったが、救いはある。細いが、清るる川が見つかった。パオズ山のように大きな魚は捕れないだろうが、得意の気の察知で狩り捕れるだけ捕る。ものの数分で三十尾が陸に揚がった。軽い気功波で魚を炙る。皮はパリパリ、焦げ目がついた魚から美味しい油の匂いがする。頭の骨まで綺麗さっぱり頬張って、バリボリとスナック菓子でも噛み砕くような音を立てて食べつくす。内蔵の苦い部分がこれまたうまいと、やや爺臭いことを考えながら次の魚に手を伸ばした。

 チン、と鉄の弾ける音がする。近い。木々に気をやると、赤く跳ねる火花の光りがいくつもちらりとヒラついている。どこかの忍が修行中のようだ。興味がわいた悟空は、落ちていた枝木を手刀で綺麗に剥ぎとって串代わりに、残りの魚を連れ刺して物見遊山を決め込むことにした。

 連鎖するように音は鳴り止まない。これはクナイ同士がぶつかる音だろう。刀ほど長くなく弛まないそれ独特の断つような響きの後、木で出来たであろう的に突き刺さる空洞音。見える距離まで来て、ようやく正体がわかった。

 

「リーの記憶で見たやつだな。たしか名前は……うちわモメオだっけ?」

 

 暗闇の中、赤い残影を残す瞳が妖々輝いている。身体中泥だらけにしながら、肩で息をする程練習しているらしい。うちはが得意とする手裏剣術の修行……と言うよりは、ルーティーンワークだろう。考え事をする時、うちはサスケはよくこうして一人自分の身体を動かした。

 

「へえ。器用なことすんだなあ、あいつ」

 

 そんな冷やかしの感想を言いながら、自分が見えていないのを良いことに、ズケズケとサスケの領域に入り込む。悟空は樹上に座って暫しの見物をすることにした。サスケが身体を捩り指をひね上げると、的にあたったクナイが全て引っ張られ、サスケの手元に帰る。ワイヤーでコントロールしているらしい。変幻自在の必中術はこうして生み出される。悟空はサーカスのジャグリングを見ている気分だった。若葉の青々しい訓練に、自分も若返った気がして、気が緩んだのか、持っていた串をおとしそうになる。慌てて尻尾で掴んだはいいものの、刺さっていた焼き魚だけがポトリと音を立てて落下した。

 

「ッ!! 誰だ!!」

 

 軽く小さな音だったが、寂寞の森では悪目立つ。サスケに悟空は見えずとも魚は見える。悟空が下を見遣れば、まだ温かいそれに触れて調べている。その存在がバレることは無いだろうが、ふと黙考した。

 

「気配は感じないが……、まだ近くに居ることは分かっている! 出てこねえなら力づくで叩き出すぜ!」

 

 喧嘩腰で勇む少年は、おそらくリーと闘うことになるだろう好敵手の一人だ。リーより未熟で、一般的な戦士に毛が生えたような強さしか今は持たないが、リーと同じ分の努力でリーを上回る才能を持っている。こうしてリーを放って置いてなんだが、悟空は少しだけ。いや、大いに興味を抱いた。と言っても、サスケは神龍に選ばれていないのでは組手も出来ない。それに、どうせなら体術だけでなく、独特の技『忍術』をその目で実際見てみたい。基本脳筋の悟空は、取り敢えずサスケを追い詰めてみることにした。

 

「ぐっ!!!」

 

 地面に向けて、木の頂点から掌を向け、悟空から見て柔らかく、そっと押し出す。ただそれだけで、踏みしめられて硬いサスケの立つ地面に暴圧が襲い掛かる。瞬く間、大岩石でも落ちたような地響きと、クレーターを作る威力を避けられず、立ち構える形でぶつけられたサスケは重量で押し付けられたかのごとく潰れた。全身の空気が抜け、口を解いた風船のように力が抜けていく感覚。これ程まで重い一撃を、サスケの短い忍人生の中で受けたことが無かった。なんとか這って攻撃範囲から抜け、頭上から受けたことだけは把握できた為か、サスケが天を見る。引っこ抜けた株のように転がり抜け、片手で地面を掻き掴みバネにして体勢を直し、頭上目掛けて飛び上がろうとするも、もう一度、今度は悟空がスクリューパンチを繰り出せば、宙空で無防備のサスケの小さい身体が回転しながら吹き飛んだ。

 鴻大な樹幹を三つ、四つ貫きながら弾け飛ぶサスケを悟空は遠くの物でも見るように手を陰にして態とらしく除く。全く動かない。悟空はまあまあ感心した。

 

「はあーっ、あの状況で変わり身したんか。」

 

 当てずっぽうで飛んできた手裏剣を掴み取り、自分の居場所を伝えながらそう言う。サスケの狙いは狙いをつける牽制が目的だったのだろうが、悟空は敢えて受けてみた。木にぶつかった感触も無く、肉や地面に突き刺さった音もしないことに、樹影に潜んで息を整えていたサスケは生きた心地がしない。自分の攻撃がまるで効いていない、どころか児戯のようにあしらわれている事実に、再不斬レベルかそれ以上の強さを察したからだ。投げた手裏剣は九ツ。一点に投げたわけでもないその全てを、この宵闇の中で音も無く取られた。どんな手を使ったかも知られず行われた絶技に、忍具『は』通用しないことを悟る。サスケは悔しさに襲われながら、この場を脱出する算段をつけることにする。暗闇の中でも自分の攻撃が見える程の心眼を持ち、されど生命を奪うような攻撃はしていない。明らかに相手は遊んでいるようだ。ならば逃げるだけなら出来るかも知れない。『かも知れない』や『ようだ』などという不確実な感傷に頼るなど忍者としては愚の骨頂だと自嘲するが、ここでやられるようでは自分などそんな物だったと言う実証に他ならない。

 乾いて仕方がない喉で空気を嚥下し覚悟を決めた。ポーチから愛用のワイヤーと手裏剣を取り出し、搦手に動き出す。

 

 ―― 操 風 車 ! ! ――

 

 八方から投げ付けられる手裏剣が悟空の周囲を覆う。これだけで下忍レベルならば後撃を避けられない。だが間断無く攻撃が続く。クナイを回転させて投げ先陣のクナイに当てると、流れるように弾けてお互いが絡み合い、ワイヤーが悟空を縛り上げた。

 

「捕えたッ―― 火 遁 ・ 龍 火 の 術 !!」

 

 サスケが印を結び頬を膨らませ息を吐きつける。すると悟空まで弦を張ったように硬く伸びたワイヤーに、油でも塗ったが如く火脚が伸び、かぎろいを作る程に燃え上がった。命中はした。だがこれで大人しくなるとはサスケも考えない。指で括ったワイヤーを外し、緩まないよう木に深く釘刺した棒手裏剣に全て移してから、出来るだけトップスピードで走れるよう地に降りて離脱した。

 

 とうの悟空はサスケが逃げる後ろ姿を眺めながら、鋼鉄でできたワイヤーを鬱陶しそうに引きちぎる。燃え移った火の手をその身に受けながら、さも冷涼そうにする自然体の悟空は、なんとも曖昧な苦笑いを湛えていた。目論見通りうちはサスケの忍術を見ることが出来た、どころか火遁の術を実際にぶつけられて、悟空の頭に浮かんだ言葉は『残念』の一言だった。

 見た目にも火傷を負いそうなこの炎だが。悟空は見ていた。サスケがチャクラと呼ばれるエネルギーを何らかの方法で炎という姿に変えたところを。悟空にとってこれは良い意味でも悪い意味でも『微妙』なことなのだ。気は基本的に気のまま放出され、魔術的、あるいは種族的な技を使わなければその性質はそう変化しない。そして多くの武術家はそれをしない。何故ならば、偏に言って非効率的だからだ。気功波を出せるなら炎や雷にする必要性は薄い。もし変えたとして、自分を上回る相手であればその特徴も意味を成さないことが多い。実際、サスケが放った龍火の術を食らっても悟空は痛痒一つ感じていない。そしてチャクラは悟空が思っていた以上に体系化された物であったことも悟空を困らせた。気のように分かりやすい体感的な物で無いのならば、体内チャクラの動きが見えない悟空ではリーのチャクラコントロールを鍛えてやることが出来ないのだ。リーの修行のヒントを得る為と、ついでにライバルへの探りを入れる斥候目的、そしてほんの少しだけ、いや大部分を占めていた悟空にとっての新たな『強さ』に繋がる武術でも見つからないかという儚い欲望が見事打ち砕かれたのだった。

 

「それにしても忍者ってのは器用なんだなあ。みんなこんな隠し球を持ってるなら、きっと闘ったら楽しいぞ! リーの試験も楽しみだ!」

 

 脳天気な悟空の笑いが木霊する。すっかり冷めた焼き魚の香りを嗅いで空きっ腹を思い出し、悟空は落ちた魚も拾い上げてリーの下に戻るのだった。

 

 

 

 かくして一夜が明けた。小鳥のさえずりがチリチリと高鳴りを上げ、悟空に言われたままの場所から数センチも動かず座っていたリーの肩に止まっている。どうやら自然を一部にする修行の薄皮一枚分だが、リーは学べたようだ。天に床でもあるように寝っ転がって魚骨をしぎる悟空が歯をシーッと言わせていると、今まで動かなかったリーがぴくりと目を覚ます。その数秒後、木枯らしと木の葉を逆巻いて、ガイがリーの前に現れた。

 

「おはようリー! 今日も青春してるか!?」

「ガイ先生……、おはようございます」

「なんだあリー、いつもの元気はどうし、た……」

 

 微睡むような返事に不思議がってリーを見たガイは活目した。苔生す石のようにリーを幻視したのだ。そこにあるのにそこにない、そんな自然体の無気に気取られ見えなかった物が見えてくる。今、リーの心身は『気』に満ちていた。

 

(お前……大きくなったなあ!!)

 

 ガイの胸にこみ上げてくる物があった。それは涙ではない。嬉しさと、ちょっぴり悲しい。そんな悲喜こもごもの情動の根性。

 

(いや……、違うな。大きいことに、俺が気づけていなかっただけか……)

 

 本来ならば自分が気づいてやらなければならなかったリーの努力。自分が過保護だっただけだ。カカシに言わせれば、カカシの班員はガイの班員など直ぐに超える逸材らしい。だが、ガイはそうは思わない。リーだけでなく、ネジもテンテンも、いずれ木ノ葉を支える幹となるだろう。ガイに出来ることは、皆が譲れぬ忍道を守り通せるようになるまで、この青葉を愛で育むこと。改めて、ガイは自分が置かれた状況を再確認できた気がした。

 

「これが青春か……!!」

 

 一人盛り上がるガイを見ながら、リーは自分の浮つくような心身が怖かった。今の自分はまるで自分じゃないようだ。言われた通りに瞑想を続け、自然と一体化する修行を始めてから、暫くは恐怖との闘いだった。こんなことをしていていいのか、座して待つよりもっと強くなる方法があるんじゃないか。そんな焦りと、瞼の裏に広がる闇の中で対面する時間は長かった。それがある瞬間、暖かい木漏れ日のような光が胸を差したかと思うと、目も開けていないのに景色が見えた。雑踏の音がすぐそこで聞こえ、花の香りや川水の匂いが強く感じられる。徐々に広がって、そしてはっきりと位置関係がわかるようになった。距離もわかる。前後の運動も理解できた。流れのように連綿と続くエネルギーの動きが人の形になった頃、自分がよく知る色を持ったエネルギーが、自分に寄ってくるイメージが湧いたのだ。そして目を開くと、その後直ぐにガイが現れた。リーの心境に驚天は無かった。何故ならば、ガイが来ることをわからない内に、ガイが来るとわかっていたからだ。

 

「今のが、気……」

「そうだ」

 

 百日紅でも滑るように転がり落りてきた悟空が告げる。リーがガイの気を察知したことに悟空は気づいていた。ある意味これは試金石のような物であった。完全な朝になる内に、自分が一番よく知る相手の気の存在に気づけ無いようであれば、リーの才能では試験に間に合わない。勿論、今の修行方法ではだが。そしてリーは見事及第点を上げた。自分も嬉しくなって、悟空は頭の後ろで手を組んで笑う。

 

「ま、その調子でやってりゃ気は直ぐ理解できるさ!」

「はい!」

「あ、おいおい。力込めっからすっかり失せちまったぞ? まだ自然体でいつでも気をコントロールできねえんだ、今のうち感覚憶えとけよ」

「あっ、あああっ!」

 

 気がつけば元の元気なリーに戻っている。悟空が言う通り、一夜かけて気の存在を少しだけ理解できただけのリーでは、常に気を感じるまでには至っていない。自分の意識から消感するように失光して行く気の感覚に慌てて取り成す、が元には戻らない。悔しがって地面を殴るリーを放って、悟空はマイペースにガイに質問した。

 

「んで? ガイのおっちゃんは用があって来たんだろ? どんな用だ?」

「おおそうだ! リーよ、そろそろ中忍試験が始まるぞ! ネジとテンテンは先に向かっているから、リーも急いで向かえ!」

「わっ、もうそんな時間ですか!? 急がなきゃ、悟空くん、修行ありがとうございます! またお願いします!」

「おう、またな! 気張れよ、リー」

 

 悟空がそう言って手を差し出す。握手だ。リーが歯を見せて笑い受け取った手は、太陽にずっとあたった時のように熱い掌だった。

 

 

 

 

 中忍試験、第一次予選会場はアカデミーで行われた。試験官は森乃イビキ。いきなりのテストで、知識はそこそこのリーはネジの手を借り、どうにか突破する。最後の設問に関してはルーキーの一悶着あったが、なんでもかかって来いと言うリーの正直な感情に火を灯すものであった。

 恙無く、とは言わないまでも順調に進んだ一次予選は、順調に進みすぎた。窓をかち割って現れた闖入者、第二試験官・みたらしアンコ曰く、通常篩いにかけられ消える人数は今よりずっと多い。二次試験はもっときつい物になるだろう。どことなく思い詰めたようなネジと、昨日の今日でテンション高いテンテンを後ろに、リーは張り詰めた空気に武者震いが止まらない。

 通過した面々をアンコが連れ出した場所は、木ノ葉隠れの里に置いても立ち入り禁止区域に指定されている危険地帯、通称死の森であった。柵に覆われ隔絶した自然の中でサバイバルを行い、五日間の内に天と地、二つの巻物を集めて中央の塔に向かう。これが合格の決まりごと。同意書に各々が名前を記し覚悟を示した後、チームごとに隠された場所にて巻物を受け取って行く。リーは最初のチームがカーテンに包まれた直後、ネジに話しかけた。

 

「ネジ、白眼を使ってください。一次試験と同じく、情報戦は既に始まっています。天と地の巻物、どのチームがどの巻物を持っているかを今把握して置いた方がいい」

「お前にしてはもっともだな。テンテン、リー、視野を隠せ」

「オーケー」

 

 ネジの直線上に誰も入らない場所に移動して、横から隠匿するようにリーとテンテンが壁を作る。こうすることで列者やカーテン裏からは把握されず、横や後ろからは白眼で見ていることを気取られない。ついでに相手の基本的なチャクラ量や携帯している忍具・食料・薬品の種類や個数を把握できる。リーが言う通り、彼らの第二次試験は既に始まっているのだった。




※本来一次予選はサスケとの組手の直ぐ後でしたが、この作品では一次予選カットするので時間をずらさせて頂きました。
イビキさん、ごめーんね(m´・ω・`)m?
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