諜報部隊タコさんチーム   作:生カス

1 / 11
導入部分ですが、時系列的にはまだ先のお話なので、ここを飛ばして1話から読んでも問題はありません。


??:【概】ある日ある時

「もし、ここがアニメや映画の世界だとしたら、俺たちはこれからどうなると思う?」

 

 ある日、ある時、とある場所、流行りのポップスが流れる喫茶店の席で、小柄な少年は言った。少年とは言っても、そのとっつきにくい表情を補って余りある端正な顔立ちは、知らない人が見れば少女と見まごうほどだった。

 

「……そもそも、俺たちはどういう役回りなんだ? メイン、サブ、モブ……それで扱いなんてどうとでも変えられそうだけど」

 

 少年の隣にいる、メガネをかけた長身で細身の男がそう答える。男はけだるげな表情と、光を全く感じさせない目が相まって、いまいち何を考えているのかが読み取れない。答え終わるとその問答にあまり興味がないのか、男は頬杖をついて、窓の外を見始めた。

 

「多分、モブか良くてサブですよ。これがアニメだとしたら、メインは間違いなく戦車道の女の子たち」

 

 今度は向かいの席にいる、目の隠れた男が遠慮がちに口を開いた。無造作にぼさぼさと伸びた髪型と、少し幼い顔立ちのせいか、男の内気な性格が外見としても現れているようだった。

 

「というかまず、俺達みたいなのはアニメだったらいらないと思います。女の子たちが戦車に乗っているのを見るのが楽しいのであって、それに男なんか出しゃばったら、蛇足もいいとこですよ」

 

「そう? 僕はいいと思うけど」

 

 「まあ、アニメのことはあまり知らないけど」と続けながら、内気な男の意見に異を唱える。声の主はその隣、腰まである長い髪を軽く結っている人物だ。その柔かい笑みは、美男子と言っても差し支えないような男だった。

 

「女の子が主役の作品だって、たまには男性が出てきてもいいんじゃない? 女性をエスコートするのは男性の役割だよ」

 

「……そういうキザったらしいのが蛇足だっていうんだよ」

 

「あはは、手厳しいね。ね、服部(ハットリ)はどう思う?」

 

「知らん」

 

 巻き込まないでくれと言わんばかりに、服部と呼ばれた男は腕を組んで目を閉じ、そっけなく言う。その大柄ながら細く、無駄を削ぎ落とした筋肉質な体格と、鷹のような鋭い目つき。彼のことを知ってる人間でなければ、その佇まいだけでも威圧感を感じることだろう。

 

「……小山(コヤマ)先輩、いつまでこんな無駄話を?」

 

 服部は小山……一番最初に口を開いた、小柄な少年に対して苦言を呈した。それを聞くと小山は「そうだな……」と言いながら、内気な眼隠れの男を見る。

 

斎藤(サイトー)、次にこの学園艦に連絡船が近づくのは?」

 

「45分後ですね。でもさっき、艦の監視カメラにデカいコンテナ船が近づいてるのが映りました。あれなら多分10分後くらいに来ます」

 

「そうか」

 

 眼隠れ……斎藤は手に持っているスマートフォンを操作して、件の映像を小山に見せる。小山はそれを少しの間見て、今度は先程の問答からずっとぼんやりと外を眺めている、気だるげなメガネの男に話しかけた。

 

雨水(ウスイ)、学園艦の左端に行くルートは?」

 

「ん? ああ、さっき走ってた時、建設中の架け橋が見えた。あそこなら多分、追っ手も撒ける」

 

 雨水と呼ばれた男はそう答える。光のない目で、ただ淡々とそう答えるので、いまいち彼がそれについてどう思っているのか、というのは計りかねた。

 

「あそこって、まだ繋がってないじゃないですか。大丈夫なんですか、雨水さん?」

 

 髪を結った美男子は雨水にそう質問する。

 

「ダメなら高校生がバカやって死んだで終わる話だよ」

 

「はぁ、そう言うと思いましたよ」

 

「不安か? 天宮(アマミヤ)

 

 そして、このやわらかい笑みの美男子は天宮という名らしい。雨水にそう言われた天宮は、人懐こそうな微笑みを絶やすことなく、しかし何も言い返さなかった。

 

「天宮、ちゃんと戦車と生徒、把握してきたか?」

 

 小山は少し呆れた顔をしながら、天宮に頼んでいた調べ物の内容を聞いた。

 

「もちろん、みんな可愛かったですよ。アッサムって子が個人的にはお気に入りかな」

 

「お前な……」

 

「冗談ですって小山さん、恐いなぁ。……いろいろ『試して』みましたけど、あのダージリンって人、危機察知能力と洞察力がずば抜けてる。あれを試合で出し抜くのは骨ですよ」

 

「おまけに実戦経験豊富で、指揮能力も高い、か……思った通り、デカいお山の大将なだけあるってこった」

 

「本気で会長は勝つつもりなんですか? こっちは全員素人ですよね?」

 

 斎藤はそう疑問を口にするが、それはこの場にいる5人全員が考えていたことだった。それは質問された小山も決して例外ではない。

 

「西住以外はな……大体にして、なんで会長がいきなり戦車道に手を出したのかがわからない」

 

「……何か、のっぴきならない事情があると?」

 

 服部のその質問に、小山は「さぁな」とだけ返して、手元にあったオレンジジュースを一気に飲み干した。

 

「なんだっていいさ、今はな」

 

 それを最後に小山は席を立ち、上着を着て店から出る支度を始めた。

 

「もう出るのか?」

 

「ああ、『彼女ならそろそろ気づく』だろう。お前らも早く片付けろ」

 

 そう言われると、小山以外の4人は早々に飲み物を空にする。その後、それぞれ飲み物代の小銭を会計係の天宮に渡し、彼が若い女性の店主に支払いをする間に支度を整えた。

 

「ありがとうございます。とても美味しかったです」

 

「はい、ありがとうございます。ところで、お客さんたちあまり見ない人ですけど、観光ですか?」

 

「ええ、そうです。美しいところですね、聖グロリアーナ女学院は。こうして、きれいなお姉さんにも会えたわけですし」

 

「や、やだもう、お上手なんですから! ……でも、気を付けてくださいね、なんかついさっき、侵入者だか何だかが入ってきたらしくて、今学院がてんやわんやなんですよ」

 

「……へえ、それは物騒ですね」

 

「確か、何だっけ……? 戦車道? の情報だとか……」

 

「おい、まだ終わんねえのか」

 

 女性の店主と天宮が話し込んでいると、とっくに支度を終えた小山が少し強めの口調で天宮に言った。それに対し天宮は、大仰に肩をすくめる。

 

「やれやれ、無粋な人だ。顔は可愛いのに……じゃあお姉さん、また来ます」

 

「え、は、はい……お待ちしてます……」

 

 惚けた女性店主に天宮は笑顔で返し、そして5人はゆっくりとした足取りで店を後にした。

 

「……あれ、なんであの人たち、わざわざ裏口から出たんだろう?」

 

 

 

――喫茶店の外

 

「天宮、その女癖は恥ずかしいからやめてくれよ」

 

「無駄だ斎藤。コイツはきっと、刺されて死ぬまでわからんだろうな」

 

「酷いなあ、斎藤も服部も、女性に優しくするのは男としてのマナーってだけだよ」

 

 雑談する3人をしり目に、小山は道を真っ直ぐ見る。彼の頭は最も効率的に目的地に着く方法と、その可能性を考えていた。

 

「雨水、目的地まで車でどのくらいで着く?」

 

「性能的に4分……て言いたいとこだけど、あのクルマ、思ったより『怖がり』でな。少しセーブしてやりたいから、6分くらいか」

 

「わかった。じゃあ、早いとこ、車取りに行こう」

 

 

 

 

「騒がしくなってきたし、頃合いだ」

 

 そう言って、彼は通り過ぎる車両を眺めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「HQ! HQ! 未だ侵入者発見できず! 対応を願う!」

 

『こちらHQ了解、逃走経路の予想ルートを送る。各員、持ち場から一番近い場所にバリケードをつくれ』

 

「なんで誰も気づかなかったのよ! あれだけ人がいたのに!」

 

「それらしい人は見当たりません。先回りして逃げたのかと」

 

「全部後手後手になってるわね、姿すら見えないなんて……」

 

「とにかく草の根分けても探すのよ! あれが流れたら、我ら聖グロの戦車道チームはおしまいよ!」

 

「誰なんだ? 黒森峰かプラウダか、それとも……」

 

 

 

 

 

 けたたましい怒号、道を塞ぐ数多の車と、そして戦車。それを物陰で見ていた斎藤は、思わず呟いてしまう。

 

「お、思ったよりはやい……大丈夫なんですか、このままじゃ、道路が閉鎖されちゃうんじゃ……」

 

「ああ、知ってる。『だからずっと喫茶店で待ってたんだ』」

 

「え……」

 

 その言葉に困惑する斎藤をよそに、小山は服部に聞いた。

 

「服部、手に入れたのは?」

 

「部員のプロフィール、保有戦車及びその整備記録、1年分の練習メニューと、弱点、反省点がまとめられたワードファイル。全てこのUSBにコピーしてあります」

 

「よし、斎藤に渡せ。斎藤、確認しろ」

 

「は、はい……」

 

 USBメモリを渡された斎藤は、変換ケーブルを繋いですぐにスマートフォンに接続し、歩きながら内容物の確認を始めた。

 

「……なあ、小山」

 

 雨水がふと、小山に話しかけた。

 

「なんだ?」

 

「さっきサ店で話してた。この世界がアニメだったら俺たちはどういうキャラだって話」

 

「ああ、それが?」

 

「あれ、お前はどう思ってるんだ?」

 

 単に緊張をほぐすためか、それとも今の状況はその問答に関係があると思ったのか、雨水はそんなことを小山に聞いた。

 それに対し、小山は「そうだな……」と一拍置いてから、とても淡泊な雰囲気で、こう答えた。

 

「画面には出ないだろうよ」

 

「画面『には』?」

 

「ああ、どのシーンにも映らない。映っても、姿を変えてるか、じゃなきゃいるのかいないのかわからない程度。最後まで俺たち自身は知覚されず、(視聴者)の記憶にも残らない」

 

「……」

 

 

 

 

「けど、確実に存在する」

 

物語(ストーリ)をかきまわしてる」

 

「それが俺たちだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺たちはそれだけだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




次回から、何がどうしてこうなったのかをかきたいと思います。もしよろしければお付き合い頂ければと思います。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。