諜報部隊タコさんチーム   作:生カス

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mix:混ぜる、混合する等


5 : 【混】Mix

「……ということで、戦車道のサポートチームとして彼らを用意した。力仕事などで補助が必要な場合は、遠慮なく頼むように」

 

 ……あれから時間は明日まで飛んで、戦車道の授業中。第1回目ということもあり、今は履修者の顔合わせの時間だ。俺たちは5人並んでつっ立って、他の履修者たちと対面していた。

 戦車道は女のものってのは本当らしい。確認できるのは21人、全員女子だ。

 

「ほら、何ボサッとしているんだ。挨拶しろ!」

 

「……よろしく」

 

「よ、よろしく……」

 

「よろしくー」

 

 河島に言われるも、順じたのは俺と斎藤と、あと天宮。雨水と服部は、黙ってただ会釈をして済ませた。

 俺たちを見ている生徒会以外の女子たちは、それぞれ異なる種類の目を俺たちに向けてざわついている。

 奇異、困惑、興味、恐怖。それが好意か嫌悪かに関わらず、この扱いを見て一つ言えることは、俺達みたいなチームはやはりイレギュラーだということだ。

 

 

「ねぇ、ちょっと恐くない……?」

 

「えー? でもあのローポニーの人かっこいいじゃん」

 

「ほわー……凄いガタイいい、あの金髪の人」

 

「ブロッカーとしてスカウトしたいな」

 

「いや、その前にウチ、女子バレー部だから……」

 

「……なんでサイトーがいるんだ?」

 

「真ん中の彼、さながら馬詰柳太郎ぜよ……」

 

「ネロの妃スポルス……」

 

「森成利……」

 

「フランスのスパイ、シュバリエ・デオン」

 

「「「それだ!」」」

 

 

 ……女三人寄れば姦しいと言うが、なるほどここまでとは思わなんだ。こういうものが苦手な身としては、いるだけで頭痛がしてきそうになる。

 

「あれ? なんで小山がいんのよ。こういうの参加するキャラだっけ?」

 

 ただでさえ頭が痛くなりそうなとこに武部がそんなことを俺に言ってきた。

 

「仕様がねぇだろ。こちとらお前ほど暇でもわがままでもないんでな」

 

「んな……! 小山ってホンットに性格悪いよね。だから彼女できないんじゃないの?」

 

「そりゃ良かった。お前が彼氏できない理由よりはマシかもな」

 

「アッンッタッね~っ!」

 

「ハイハイ、夫婦漫才はその辺でねー」

 

「ちが、そんなんじゃないし!」

 

「……やっぱ今日だけでもサボっちゃだめか?」

 

 やたらと突っかかってくる武部にもおちょくってくる会長にも辟易としながら、俺は小声で隣にいる雨水に話しかけた。するとコイツは少し考えたようにワンテンポ遅れてから、「なぁ」と言いつつ、顔の向きは変えずに応じた。

 

「よかったのか? ホントにこれで」

 

「……知らねえよ、けったクソ悪い」

 

 良いも何も、会長が何をしたくて俺たちを巻き込んだのか、そもそも何をさせたいのか、それすらわからないのだ。どうとも言えない。

 ただ、あの女があそこまで焦る何かがある。それだけは、なんとなく察していた。

 

「そういや、今日って何すんだ? ホントに顔合わせだけ?」

 

「いや、確か……」

 

 雨水に言おうとしたが、その前に不意に他の誰かの声が聞こえた。

 

「あ、あの。授業に使う戦車はなんですか? ティーガーですか? それとも……」

 

 少しぎこちない声でそう言ったのは、癖毛の強い女子だった。斎藤といい勝負かもしれない。名前は何だったか……秋山(アキヤマ)……そう、秋山(アキヤマ) 優花里(ユカリ)だったか。

 

「ふむ……よし男子、早速仕事だ。倉庫の戸を開けろ」

 

 河島は目の前にあるデカい倉庫を指さして指示した。扉は錆が目立ち、長年使われていないことが見て取れる。開けるには少し労力が要りそうだ。

 

「ハァ……やるか」

 

「うはァ、大変そ……」

 

 俺も天宮もそう愚痴を言うが、当然言っても何も始まらんので、大人しくその重苦しい戸の前に向かう。戸に触って力を入れてみると、案の定錆のせいでほとんど滑らず、かなり重かった。

 

「……」

 

「雨水、ぼーっとつっ立ってないで手伝えよ」

 

 倉庫を見ながら動こうとしない雨水に言うとようやく気付いたらしく、「あー悪い」と言ってこっち側の戸に手をかける。「せーの」と掛け声をしてから5人総出で戸を引っ張ると、重くはあるが思ったよりかは順調に開いた。サビの侵食は最初の部分だけだったらしい。

 

「何ぼーっとしてんだ?」

 

 俺が雨水に聞くと、少しだけ間をおいて、そして喋り出した。その目はまだ見えない倉庫の中を見ているようだった。

 

「……いや何と言うか、久しぶりだなって思って。こういうの」

 

「はぁ?」

 

「なーんて言うんだろうな……外からでもわかるくらい元気だというのか、扉が数十年ぶりに開いてはしゃぎだしてるというか……とにかくそんな感じの奴だ」

 

 雨水が何を言ってるのかいまいち要領を得ないが、そうこうしているうちに戸が開き、倉庫の中が陽の光に照らされた。その中の『あるもの』を見つけて、ようやく雨水が誰のことを言ってるのか察した。

 

 あれのことだろう。ボロボロの、多分戦車。

 

「なにこれぇ……」

 

「ボロボロ……」

 

「ありえなーい」

 

 戦車を見た他のやつがちらほらと思ったことを口にする。俺も似たような考えだ。ホントにこんなのでまともに戦えるのだろうか。

 

「どう思う、雨水?」

 

「イケるさ」

 

 聞くと軽い口調で、しかし雨水は即答した。珍しい、コイツがここまで断言するだなんて。

 雨水は何と言えばいいのか、車と意思疎通ができる奴だ。コイツは時々車とかの機械を生き物みたいに思ってるふしがある。車と対話してるかのように接しては、女の身体を弄るみたいに丁寧に扱うのだ。

 車は人間とは違った生き物で、意思も感情もある……というのが雨水の持論、というよりも、そう感じているというのをいつか聞いたことがある。

 これだけならただのイタイ奴なんだが、これが本当に車を良い状態に持ってけるのだから一笑に付すわけにもいかない。土屋曰く雨水は、車を一番気持ちよくできるらしい。その雨水がここまで断言したということはきっと、あの戦車は雨水に『そう言った』のだろう。俺にはよくわからないが。

 

(にしても雨水のやつ、中学の頃はこんな特技もってなかったはずだ。いつこんな変態になったんだ?)

 

 そう思っていると、一人、戦車の前に立つ奴が現れた。西住だ。

 西住は戦車に近づいて、色々な部分を見始める。戦車が動けるかどうか調べているようだ。他の履修者が見守る中、俺たちはそれを後ろで静観していた。

 

「……装甲も転輪も大丈夫そう。これでいけるかも」

 

 西住がそう言うと、他の奴から「ワァッ!」という短い歓声が起こった。

 

「ほらな、戦車道ベテランのお墨付きだ」

 

 他には聞こえないくらいの声量で、雨水は俺に言った。その顔はどこか得意げだ。

 

「楽観はできねえだろうが。どっちにしろボロ1台じゃ話になんねぇ」

 

「その通りだよ、蜜柑ちゃん」

 

 と、いつの間にか傍にいた会長が俺達の会話に交じってきた。コイツがどうするつもりかはこの寒気のするにやけ面を見れば何となくわかる。俺と雨水は顔を見合わせてため息をついた。

 

「足りない分は探そっか!」

 

 そんなこったろうなと思える言葉が、会長から出てきた。

 

 

 

 

 

 

「戦車を探す?」

 

「どぉ言うことですか?」

 

 生徒会からいきなり提示された戦車捜索に、他の人たちは困惑を示していた。それは俺もおんなじ気持ちだ。今この場にいる戦車道参加者は20人余り、この数だったら最低でもあと4両はないといけない。というのはわかるんだけども、だからっていきなり探そうって言うのも無茶じゃないだろうか。犬や猫を探すのとはわけが違うんだし。

 

「わが校の戦車道は何年も前に廃止になっている。だが、当時使用していた戦車がどこかにあるはずだ。いや、必ずある。明日は戦車道の教官がお見えになるので、それまでに残り4両を見つけ出すこと」

 

 追い打ちをかけるように河島さんがそう言ってくる。明日までに見つけなきゃか……いやまてよ、教官さんが来るってことは、動ける状態にしなきゃいけないってことだから、見つけてさらに5両全部修理しなきゃいけないってことか。

 ……絶対自動車部にお鉢が回ってくるだろうな。辟易する仕事量だ。今日は何か言われる前にサボってしまおうか。……やめとこう、後が恐い。

 

「して、手がかりはどこに?」

 

 という人の質問に、杏ちゃんはこう答えた。

 

「いやー、無いから探すの」

 

「何にも手掛かりないんですか?」

 

「ない!」

 

 元気にそう言いきった。こういうところは昔から変わってないな。ホント、身に染みてそう思う……。

 

「では、捜索開始!」

 

 河島さんの言葉の後に、履修者の人達からは不満そうな声を漏らしながらも、ぞろぞろと外に出て捜索を始めた。そんなに転がってるもんなんだろうか? まあどうにしろ探すしかないのは確かだけれど。

 

「それで、僕たちはどうします、リーダー?」

 

 天宮がいつも通りの薄い笑顔で小山にそう聞いた。

 

「誰がリーダーだよ。けどそうだな……俺達の場合は集まって探すより、散らばったほうがいいだろう」

 

「どうしてです?」

 

「集団で行ったって途中で好き勝手に寄り道してんのが目に見えてんだよ。なら最初っから単独の方が、お前らのお守りしなくて済む」

 

「お、俺も……ソロの方が性に合ってるかな……」

 

 小山の案に、斎藤も賛同する。まあ俺も賛成だ。確かに俺たち全員、集団行動に適しているような奴じゃないし、俺も一人で行った方が気が楽だし。

 

「そうですね、服部もいつの間にかいなくなってるし」

 

「あ! あのヤロ……」

 

「い、いつの間に……」

 

 早速小山のいう通りになったわけか。

 昨日見たスリ技術もそうだけど、すごいな彼。時代が時代ならスパイとか忍者とかでやっていけるんじゃないか?

 

「……ま、リーダーの許可も得たことですし、僕も好きにやらせてもらいますよ。女の子でも誘って」

 

「サイトー!」

 

「ゲッ!?」

 

 と、天宮が言っていた言葉を、大きな呼び声が遮った。斎藤を呼んでいるようだ。スポーツウェアを着た女の子がこちらに向かってくるのが見えた。

 

「誰だっけ、小山知ってる?」

 

磯部(イソベ)だよ。磯部(イソベ) 典子(ノリコ)。斎藤、知り合いか?」

 

「い、いや、なんか知らないけど絡んでくるんすよ……ヤダって言ってんのに体鍛えさせようとするし、こないだなんて昼休みにスマホ弄ってたらいきなり絡んできて、バレーやらされるし。なんで俺に突っかかってくるんすか、ホント何なんすかあの人……」

 

「何をぶつぶつ言ってるんだサイトー! まあ君が戦車道を履修していたのは好都合だ! さあ今日こそはそのだらけきった心身を鍛え直さしてもらう!」

 

「勘弁してくださいよマジで! ……ええと、そう! 今日はこの人たちと一緒に行動しなきゃいけなくて」

 

「勝手に連れてけよ」

 

「嘘でしょ……」

 

「ありがとう小山君。よし行こう!」

 

 小山にお礼を言うなり磯部さんは斎藤の襟を引っ張って連行して言った。なんだか俺と中嶋先輩の関係に似てないこともない感じだ。お互い苦労するよな……。

 

「……じゃあ俺も行くか」

 

「僕も。ちょっと気になる子がいるし」

 

「本分を忘れんじゃねぇぞ天宮」

 

 さっきまで斎藤の行方を見守っていた小山と天宮も、言い合いながら外に出て捜索に向かった。と言っても、俺たち5人のうち真面目に取り組むやつがいるのかは謎だけど。

 

「……俺もそろそろ行くか」

 

 捜索ついでにどっかで甘い物でも食べようかな。そう思いながら出ようとする。

 すると、クイクイっと、不意に裾を引っ張られる感覚に襲われた。

 

「……」

 

「……ん?」

 

 振り返ってみると、何やらぼんやりとした女の子が俺の学ランの裾を引っ張っていた。

 ……いつから居たんだ?

 

「……どうしたの?」

 

「……」

 

 聞いても返事はない。ただ女の子はぼんやりとした目で俺を見ながら、袖をクイクイと引っ張ってくる。さっきまで他の子たちと一緒にいた子だよな。はぐれたんだろうか。

 というか名前なんだっけな、この子……?

 

「……ん」

 

 俺がそう思っていると、彼女は何を思ったか制服のポケットから生徒手帳を取り出して、俺に差し出してきた。もしかして俺の考えてることがわかるのだろうか。

 

「あー、ありがと……えーと、丸山(マルヤマ)沙希(サキ)さん?」

 

 そう聞くと、彼女は表情を変えずに、コクンと首を縦に振った。この子は1年生の丸山さんというらしい。忘れないようにしよう、なるべく。

 

「……それで、俺に何か用かい?」

 

「…………」

 

 返事がない。何なんだこの子……? どうしようかな、流石に見知らぬ下級生と一緒じゃ道草もしにくいし……。

 

「あの、離してもらえません?」

 

 言うと、丸山さんが首をフルフルと横に振った。ダメらしい。どうしろというのだろうか。

 

「……」

 

 仕方ないのでそのまま歩き出す。すると丸山さんは袖を離さないまま俺にくっついてきた。もう一度彼女の方を見ると、彼女もまた俺をじっと見つめてきた。何がしたいのかさっぱりわからない。

 

「……」

 

「……はぁ」

 

 とりあえず最初はこの子の友達を探して引き取ってもらったほうがいいだろう。俺はため息をついてそう思った。

 俺以外の4人はどうしてるだろうか、もう見つけているのか、それとも俺みたいに妙なトラブルに巻き込まれているのか。

 そんなどっちでもいいようなことを考えながら、俺は戦車と……あと丸山さんの友達を探しにゆっくりと艦を徘徊することにした。




Q:どうしてアニメだと2分で終わったところをわざわざ1話使うの?

A:作者のint値が足りないから
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