新世紀エヴァンゲリオン・鉄華。   作:トバルカイン

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どうしよう、思いつかない。オリジナリティが思いつかない・・・・・書きたいのに書けない。表現がどうすればいいのか分からない。自分はただ、好きなのをビルドしたいだけなのに。アイディアが思いつかない。しかし、書きたい。阿頼耶識。蟲。巨人の鎧。聖なる旧支配者。光の巨人。荒ぶる王と調和の女王。狂気。ならべろ。並べろ。ビルドしたい。


第12話・語る男。現れる者。

「シンジ君。俺と葛城は君の想像通り、昔つき合っていたんだ。でも・・・・長続きはしなかった」

 

「どうして?」

 

「俺じゃあ、葛城を幸せに出来ない・・・・葛城も思うところがあって自然とな」

 

シンジは今、加持の車に乗せてもらい。自宅へと帰路を走る。その中で二人は主に加持はシンジに自分の過去を話す。

 

「俺はセカンドインパクトによって生まれた浮浪孤児達のグループの一員だった。地獄だった。両親は死に、俺と4つしたの弟が残った。親を亡くした子供が溢れ、小さな施設はすぐパンクした。食料も衣類も不足して、寝る場所だって奪い合いだ。やがて我慢ができなくなり俺たちは養護施設から脱走した。その後は何でもした。盗みもひったくりも、生きる為に必死だった。ちょうど食糧が足らなくなった時が来て。駐留軍の倉庫に食糧を盗みに入った際に捕えられ拷問を受けた。そして俺は自分が助かりたいが為に仲間も・・・・弟も、全部話した。その後、俺はスキを見て脱出したが結果は・・・・もう、わかっているだろう?」

 

「加持さん・・・・」

 

「葛城は好きか?シンジ君」

 

運転しながら加持はシンジに尋ねる。助手席に座っているシンジは少し考えた後、ミサトの事を口にする。

 

「だらしない所はあるけど、それでも嫌いじゃない。それに、ミサトと一緒にバカ騒ぎしたりするのも楽しいから、だから・・・・ミサトとはこれからも一緒が良い。僕に何処まで出来るかわからない。だけど、絶対に守る」

 

「そうか・・・・ありがとう。シンジ君」

 

そうこう話してる内に、加持の車は葛城のマンションの近くに着いた。

 

 

 

 

その頃、ゲンドウと冬月は、月面に展開するゼーレ関連施設の上空を飛んでいた。

 

「月面のタブハベースを目前にしながら、上陸許可を出さんとは……ゼーレもえげつないことをする」

 

「マーク6の建造方式は他とは違う。その確認で充分だ」

 

 ゲンドウは流れに逆らわずに落ち着いた態度で話す。

 

「しかし、5号機以降の計画などなかったはずぞ?」

 

 ゲンドウと冬月は、宇宙船の小さな窓から月面の様子を覗き見ながら話す。そこでは、“Mark.06”と呼ばれるエヴァに拘束具を取り付ける作業が行われていた。

 

「おそらく、開示されていない死海文書の外典がある。ゼーレは、それに基づいたシナリオを進めるつもりだ」

 

「だが、ゼーレとて気づいているのだろう。ネルフ究極の目的に」

 

 二人の乗った宇宙船の前を、ロンギヌスの槍を運ぶ巨大な輸送船が通り過ぎて行く。

 

「そうだとしても、我々は我々の道を行くだけだ。例え、神の理と敵対することになろうとも」

 

 その時、ゲンドウはエヴァの指の上に座っている少年の姿を確認する。少年は上半身裸の状態で、宇宙空間に存在していた。

 

「人か?まさかな・・・・」

 

 冬月もゲンドウが見ている方を確かめる。

 

「初めまして、お父さん」

 

 月面の棺から目覚めた少年・渚カヲルは、ゲンドウたちが乗る宇宙船を見てそっとつぶやく。

 

 

 

「社会科見学?加持が?」

 

 帰宅したシンジがビールを飲んでくつろいでいたミサトに話をする。

 

「うん。みんなの事も誘うといいって。行こうよ」

 

シンジはダイニングテーブルの上に鞄を置いて荷物を整理する。

 

「アイツに関わると、ロクなことないわよ」

 

「でも、楽しそうだよ。今回の社会科見学。二人も行こうよ。いざという時、僕がなんとかする」

 

ミサトはビールの缶をテーブルに置いてシンジの話しを聞く。アスカもゲーム機をプレイしながら聞く。

 

「僕は昔、魚が苦手だった。何故かって?目がこっちをずっと睨みつけてる感じがして好印象が持てなかった。だからその頃は目ん玉くり抜いて魚を食べてた」

 

「わー。変わった、食べ方―(棒)」

 

ミサトがその光景を想像してしまった。

 

「もちろん、なんか怒られた。それ以降、食べ方を改めた」

 

「そりゃあ、ね」

 

シンジの話すオチにアスカもなんか思う所が声に出る。

 

「今は、どうなのよ?」

 

「普通に食べられる様になった。ただ・・・・やっぱ少し苦手。でも料理は出来る」

 

「ふーん。アンタ、ホントに変ね。それで?どうしてアンタの魚が苦手な話が社会科見学と関係あるの?」

 

荷物の整理を終えて、改めて二人を見るシンジ。

 

「なんでも、日本の海洋?生物の研究所なんだ。色々な海の生物が見れるって加持さんが教えてくれた。海の生物がどんなのか気になるから、見てみるのも損はないよ。行こう?」

 

「うーん。ごめんなさいシンジ君。私、その日仕事入ってたの思い出しちゃった。ごめんねっ!」

 

「えっ!?」

 

ミサトが手を合わせて謝る仕草をシンジに見せる。

 

「だから、二人で行って来て?」

 

「・・・・そうか」

 

シンジはミサトの発言に少し残念そうに答える。

 

「ごみんっ!!この埋め合わせ必ずするからっ!」

 

「じゃあ、私パース」

 

 アスカはゲームをプレイしながら言う。

 

「だーめ。和をもって尊しとなーす。アスカも行きなさい」

 

ミサトはアスカも参加するように促す。

 

「・・・・それも命令?」

 

アスカはプレイ中のゲームを持ちながら、不満そうな顔を覗かせる。

 

「そんな事言わずに行こうよアスカ。僕、弁当も作るし海の生き物なんて滅多に見れないって加持さん言ってた」

 

「ふーん」

 

「だから楽しみ。行ってみようよ?弁当、美味しく作る」

 

シンジもまた、アスカの参加にしてほしい様に促し更に『弁当』を引き合いに出す。

 

「だから、行こう。海洋生物研究所」

 

(妙な圧感じるな~シンジ君)

 

 

日本海洋生態系保存研究機構。

 

「凄い!凄すぎる!失われた海洋生物の永久保存と、赤く染まった海を元に戻すという、まさに神のごとき大実験計画を担う禁断の聖地!その形相の一部だけでも見学できるとは!まさに持つべきものは友達ってカンジ!」

 

ケンスケは海に浮かぶ巨大な施設を目の当たりにして、まるで羽が生えたように飛び回っていた。

 

「ホンマ感謝すんでぇ」

 

トウジはシンジの肩に腕を回して、満足げな顔をしている。

 

「お礼だったら加持さんに言ってよ」

 

アスカは不満そうな態度で腕を組んでいた。レイ以外は私服姿だが、レイは制服姿で参加していた。

 

そして何故かペンペンも同行していた。既に施設の中に入っていた加持が窓の向こうで手を振って合図を送る。管理区域のゲートの前に到着した一同に向かって、モニター越しの加持が事前に断りを入れる。

 

「もっとも、こっからがちょいと面倒だけどな」

 

「ん?」

 

──長波放射線照射式滅菌処理室

 一同は下着姿にされ、レントゲンのようなフラッシュを浴びる。次に、熱蒸気による滅菌室に入れられて、熱い思いをさせられる。

 

──有機物電離分解型浄化浴槽式滅菌処理室 LEVEL-01

 

続いて一同は、巨大な水槽に張られた液体の中に放り込まれる。次に、低温による滅菌処理で寒い思いをさせられる。

 

──有機物電離分解型再浄化浴槽式滅菌処理室 LEVEL-02。

 

 再度水槽の中。更に、巨大な送風機が壁を埋め尽くす部屋で強風に晒される。

 

──有機物電離分解型再々浄化浴槽式滅菌処理室 LEVEL-03。

 

再々度水槽の中。……チン♪まるで電子レンジで料理が出来上がったかのような音が鳴る。

 

全滅菌処理工程完了

 

人間 - 5名

 

 鳥 - 1羽

 

入室 可(第3段階滅菌区域まで)

 

入念な滅菌処理で、シンジたち一同は施設に入館する前から体力を奪われたぐったりとする。しかし、そんな気持ちを一気に吹き飛ばしてくれる美しい光景が目の前に広がっていた。色とりどりの魚の群れ、イルカが踊り、クジラがゆっくりと泳ぐ巨大な水槽。

 

「うほー!でっかい水槽やなぁ!」

 

トウジとペンペンははしゃいで走り回り、ケンスケは早速ビデオを回す。

 

「凄い!」

 

シンジは少し身体を解し、水の世界を見つめる。

 

「これがセカンド・インパクト前の生き物か・・・・」

 

その水槽には、クラゲや海ガメ、サンゴまでもが生きていた。

 

「クワーッ!」

 

 ペンギンの群れを発見してペンペンが大喜びする。ペンペンが身振りを加えて姿勢を正すと、ペンギンたちから拍手喝采を浴びる。

 

「ほえー!生きとる!」

 

「凄い!凄過ぎる!」

 

「おっ背中に何か背負ったやつもおるぞっ」

 

「カメって言うらしいよ」

 

トウジとケンスケはテンションを上げて施設を歩き回る。

 

「子供がはしゃいじゃって、バッカみたい」

 

アスカは、一人でその輪から外れて配管の上に座り込んだ。その時、アスカは円柱の水槽を眺めていたレイの傍にシンジが歩み寄っていく光景を目撃する。アスカは持ってきたゲームを取り出すと、不満そうに「ふんっ」と言って電源を点けた。

 

「レイも来れて良かった。・・・・身体は大丈夫?」

 

シンジはレイに声を掛ける。

 

「うん。ノルマは終わったから、碇君と一緒にいられる」

 

「そうか・・・・」

 

レイは天井まで伸びる円柱の水槽に手を当てて中を眺めていた。

 

「何か、狭そうだなぁ。もっと広い所で泳げれば良いのに」

 

「無理。この子たちは、この中でしか生きられないもの。昔の私と同じ」

 

シンジも水槽を見つめて、レイに問いかける。

 

「今は?」

 

「今は・・・・そう、碇君となら一緒に何処へでも行ける気がする。碇君の言っていた、居場所にも。碇君、私最近身体の具合が良いの」

 

「ほんと?」

 

シンジが水槽から視線を外し、レイを見る。

 

「うん。全部、碇君のお陰。ありがとう碇君」

 

レイもまた、シンジを見て感謝を口にする。

 

「いっただっきまーす!」

 

 昼食のためにシートを広げて、一堂はシンジが用意した弁当を囲む。

 

「んんっ!」

 

 おもむろにおかずをほおばったアスカは、思わず声を上げる。

 

「やっぱり・・・・ウマいわね」

 

「おお、見事な焼き方と味付けだなぁ」

 

 加持もシンジの料理を誉める。

 

「あの9割人造肉が、調理次第でこうも美味しくなるとは、まさに驚愕だよ」

 

 ケンスケもその味を絶賛する。

 

「シンジぃ、隠れた才能やなぁ」

 

 シンジは間に受けないようにして、水筒の味噌汁を紙コップに注ぐ。

 

「ミサトはレトルトばかりだから、僕が作るしかないんだ。ヤレヤレ」

 

「シンジ君、台所に立つ男はモテるぞぉ」と加持が箸を振って言う。

 

「だってさ!」

 

 ケンスケはトウジの方に話を振る。

 

「ん……いいやっ!ワシは立たんぞぉ!男のすることやないっ!」

 

 ベンチに腰掛けていたトウジは、おにぎりを急いでたいらげると、腕を組んでそっぽを向いた。

 

「前時代的、バッカみたい」

 

 アスカが軽蔑するような目でトウジに突っかかる。

 

「なんやとぉっ!ポリシーは大事なもんなんやで」

 

「益々バカっぽい」

 

「んんなんやとぉぉっ!」

 

「いいから、食べよう。それからトウジ。後でシメるから」

 

「セ、センセっ!?」

 

シンジは弁当箱を差し出し、その場を鎮めた。トウジはシンジの台詞を聞いて驚き、固まった。彼の未来を知ったのかケンスケはトウジに合唱。

 

「大丈夫だよトウジ。ただ僕は料理が出来る事は良い事だって教えたいだけだよ。ホントに大丈夫、手加減するから」

 

「センセっ!!目が笑ってないでぇっ!!わかったワシが悪かったっ!!セやからジャーマンは堪忍してぇ!!」

 

シンジはトウジに笑みを見せるがその目は笑っていない。

 

トウジは直感した。この後、シンジが自分をどんな目に合わせるか・・・・曾てワンパンチで峠を見て来た様に。そして彼は謝った。とにかく謝った。その様子をレイは小さな弁当箱の料理を食べながら見ていた。今日も彼女はシンジの料理が美味しいと思うのだった。

 

「あら?アンタ、変わった弁当ね。肉入ってないじゃない」

 

ふと、アスカがレイの弁当を見ると自分達とは違うのを食べてる事に気づく。シンジはトウジを諫めた後、アスカの方に意識を向ける。

 

「アスカ。レイはベジタリアンだから肉は食べられないんだ。だから、海藻とか大豆とか野菜寄りにした」

 

「ふーん。アンタ人生の半分を損してるわよ?コイツの作った肉料理も食べれないなんて、いずれ食べれる様になった方が良いわよ。生き物はね生き物食べて生きてんのよ!全部食べつくしなさいよね」

 

立ち上がったアスカはレイを見下ろして持論を展開する。しかしレイは何も言わずに少し困った表情を向けるだけだった。

 

「碇君、私・・・・肉も食べた方が良いの?」

 

次にシンジへと申し訳なさそうに言う。

 

「大丈夫、無理しなくて。レイはまだ食べられないだけだから、それにレイはちゃんと食べてくれてるよ。海藻も、大豆も、野菜も、同じ命の一部だから。レイも僕達と同じ健康に生きてるよ」

 

「うん・・・・私もちゃんと碇君の料理、全部食べられる様になる。お肉、食べられなくてごめんなさい」

 

「気にしてないよ。僕も色々工夫するから」

 

謝るレイにシンジは彼女の傍に腰を降ろし頭を撫でる。それを見たアスカは不機嫌な態度で腕を組む。

 

「バッカみたい」

 

シンジは水筒を取り出し二人分のカップに注ぐ。一つはレイに、もう一つは

 

「アスカ、とりあえず落ち着いて腰を降ろそう。まだあるから」

 

「何よソレ?」

 

「味噌汁。弁当のオカズにベストだって、温まる」

 

シンジは自分にカップを差し出す様子を見て、アスカは席に着きシンジのカップを受け取る。隣でレイがカップを受け取り味噌汁を口の中にゆっくり入れて一口飲む。

 

「・・・・美味しい、碇君」

 

レイはカップを両手で包み込むように持って、豆腐とわかめが浮かんだスープを嬉しそうに眺めた。 その様子を見てアスカも口の中に入れて一口飲む。

 

「!何よ・・・・ホントに美味しいじゃない」

 

 

その頃、ゲンドウたちの乗った宇宙船は、地球を背景に無重力空間を飛行していた。

 

「これが母なる大地とは……痛ましくて見ておれんよ」

 

 冬月は、南極点付近にぽっかりと穴を開けた地球を眺めていた。

 

「だがしかし、この惨状を願った者たちもいる。人さえ立ち入ることのできぬ、原罪の汚れなき浄化された世界だからな」

 

 ゲンドウは、冬月とは違って窓の外を見ずに天井を見つめていた。

 

「私は人で汚れた、混沌とした世界を望むよ」

 

 冬月は地球をまじまじと見続けている。

 

「カオスは人の印象に過ぎない。世界は全て調和と秩序で成り立っている」

 

 ゲンドウは瞬きもせずに一点を見つめている。冬月は、ゲンドウの言葉で顔を機内に戻してつぶやく。

 

「人の心が、世界を乱すか」

 

シンジは、加持と一緒に海の水を浄化する施設の開閉ゲートの上に来て、潮風に吹かれていた。

 

「僕が生まれる前はこの海が青かったなんて想像出来なかったよ」

 

シンジは青くなった水が溜まっているプール側の手すりに捕まってダムを覗き込んでいた。

 

「こうして人が生きていける環境だけでも、よくも復元出来たものさ」

 

加持は後ろ向きになって手すりに肘をついてタバコをふかしていた。

 

「この潮風・・・・死の臭いがする。腐った感じ。好きじゃない」

 

シンジは犬のように鼻をクンクンさせて風に乗ってくるにおいを嗅ぐ。

 

「海の生物が腐った匂いだ……生きていた証なのさ。あの何も無い赤い水とは違う。本当の海の姿なんだよ。本来、この世界は広くて、いろんな生命に満ち満ちている。その事を君らに知っておいて欲しかったんだ」

 

加持はそう言って水のある方に視線を向ける。

 

「そうか・・・・ミサトも来ればよかったのに何でかな?」

 

「葛城は来ないよ……思い出すからな」

 

「それって・・・・」

 

シンジが何かを察したのかそれを見た後、遠い目をして空を見上げる。

 

「そう、セカンド・インパクト」

 

 

セカンドインパクト。それは、かつて15年前に起こった地球規模の大災害だった。地球面に巨大な穴が開き、そのとき4体の光の巨人が観測されている。光の巨人は、まるで天使のような羽と、頭上には光の輪を持っていた。そして4本の槍。幼い頃のミサトは、父親と共にその光景を目の当たりにしていた。父親は、ミサトを脱出用のシェルターに非難させると、十字架のペンダントを彼女に託す。その直後に父親は爆風に巻き込まれて帰らぬ人となってしまう。

 

「葛城が、なぜネルフに入ったか聞いたかい?葛城の父親は、研究……夢の中に生きる人だったそうだ。彼女はそんな父親を葛城は嫌ってた。憎んでさえいたという」

 

加持はシンジにミサトの過去を話して聞かせる。

 

「ミサトはお父さんが苦手なんだ・・・・だからあの時」

 

シンジが前に車で送ってくれた時の表情を思い出す。

 

「だが、最後はその父親に助けられた。生き残るっていうのは、色んな意味を持つ。死んだ人の犠牲を受け止め、意思を受け継がなきゃいけない。それが一人だったら尚更だ」

 

加持は海の向こうを見つめながら、目には見えない大切なことをシンジに伝えようとする。

 

「受け継ぐ・・・・か」

 

シンジが海を見ながら考える。ミサトの事、父親、これからの戦いの事も。自分に出来る事を。

 

「僕は大丈夫。ミサトの事、信じてるよ。だから、僕は『前に進む』だけ」

 

「シンジ君・・・・」

 

シンジも手すりに肘をつき、空を見上げた。

 

「進んだその先に、必ずあると信じる。僕達の本当の『居場所』が、ね」

 

加持は煙草を掴んで取り、口から煙を吹かす。

 

 

NERV本部・第1発令所。

 

 

「3分前にマウナケア観測所の補足。現在、軌道要素を入力中」

 

 マコトがモニターに映し出された情報を確認する。

 

「目標を第3監視衛星が光学で捕らえました。最大望遠で出します」

 

 シゲルが使徒の姿を主モニターに回す。

 

「光を歪めるほどのA.T.フィールドとは、恐れ入るわね。で、落下予測地点は?……当然、ここよね」

 

 ミサトは分かってるわよといった体で、苦笑いを浮かべる。

 

「MAGIの再計算。NERV本部への命中確率、99.9999%(シックスナイン)です」

 

 マヤが目標の軌道予測を参照する。その頃、遥か上空では既に使徒への攻撃が始まっていた。

 

「N2航空爆雷もまるで効いてません」

 

 マコトが言う通り、使徒は全ての爆発をA.T.フィールドで完全に防いでいた。

 

「軌道修正は不可能か……」

 

 モニターを見つめるミサト。

 

「A.T.フィールドを一極集中して押し出してますから。これに、落下のエネルギーも加算されます」

 

 マヤがミサトの方を見る。

 

「まさに使徒そのものが爆弾というわけね」

 

「第8使徒直撃時の爆砕推定規模は、直径42万GY-1万5千レベル」

 

「第3新東京市は蒸発、ジオフロントどころかセントラルドグマも丸裸にされます」

 

 マコトがミサトの後ろに立ち被害規模を推測する。

 

「碇司令は?」

 

「使徒の影響で大気上層の電波が不安定です。現在、連絡不能」

 

 シゲルはノートパソコンのモニターを見て答える。

 

「ここで独自に判断するしかないわね……」

 

 ミサトは意を決して姿勢を起こすと、周りにいたスタッフに通達する。

 

「日本国政府および各省に通達。ネルフ権限における特別非常事態宣言D-17を発令。半径120キロ内の全市民は速やかに退避を開始」

 

 するとシゲルが苦笑いしながら、冗談のように言う。

 

「問題ありません。既に政府関係者から我先に避難を始めてますよ」

 

その言葉通り、第3新東京市上空には、イナゴのように大量発生した関係者の航空機が飛び立っていた。陸路は車の列で大渋滞が発生。海の上も艦隊が群れを成して離れていく。

 

『市内における民間人の避難は全て完了。部内警報Cによる非戦闘員およびD級勤務者の退避完了しました』

 

 素早い対応によって、最悪の事態を想定した対策は完了した。

 

「MAGIのバックアップは松代に頼みました」とマヤが報告する。

 

「で、どうするつもり?」

 

 リツコが冷静な口調でミサトに質問する。

 

「いくらエヴァといったって空が飛べるわけではないですし」

 

「空間の歪みが酷く、あらゆるポイントからの狙撃も不可能です」

 

「こんなべら棒な相手じゃ、手の打ちようがありませんよ」

 

 残ったスタッフたちは、消極的な意見を並べる。

 

席を外して資料室の通路で立ち話をするミサトとリツコ。天井の高さまで立てられたラックが整然と並んでいる通路では、ロボットが世話しなく動き回っている。

 

「本気なの?」

 

 リツコはミサトの作戦内容を聞いて驚く。

 

「ええ、そうよ」

 

「作戦と言えるの?このプランが。MAGIの検証でもしくじる可能性は99%強。たとえ成功しても、エヴァ3体を損失。技術部として、到底受け入れられません」

 

「可能性ゼロではないわ」

 

ミサトはリツコに背を向けたまま、自分の主張を通そうとする。

 

「奇跡を待つより地道な努力よ!リリスと初号機の保護を最優先とすべきです」

 

リツコはミサトを論理的に説得しようとする。

 

「待つ気はないわ。奇跡を起こすのよ、人の意思で」

 

 しかし、ミサトは降りようとはしなかった。

 

「葛城一尉!」

 

リツコはミサトを睨みつけて声を上げる。

 

「現責任者は私です。私が判断するわ。それに、使徒殲滅が私の仕事です」

 

ミサトはあくまで自分の主張を通そうとする。それは、作戦以前に自分自身に課した目的を達成するための執念にも見えた。

 

「仕事?私怨でしょ?あなたの使徒への復讐は!」

 

その台詞にミサトの脳裏にシンジの顔が過ぎる。自分を迷いもなく見るシンジの表情を思い出す。罪悪感が胸の内を締め付ける。しかし

 

「そこまでにしなさい。赤城博士。どの道、あの使徒を倒さねば、この都市が無くなり、住人達がセカンドインパクト様な地獄を味わう事になるかもしれないから彼女は『戦う』選択を選んだ。ただ、それだけだよ」

 

すると一人の軍服を着た男性が姿を見せる。口元に髭を生やした、オールバックの特徴が彼を紳士へと思わせる印象を見せる。何よりもその男の風陰気が何処か異質を感じさせるオーラを纏ってる感じだった。彼こそは

 

「初めまして、私。戦略自衛隊の中将・・・・・御神徳四郎と申す」

 

「貴方は、何故こちらにっ!?」

 

「なーに。逃げ場なんて何処にもないと思ってね。我々も手を貸しに来た所存・・・・赤城博士、いま第三東京市を失えば国への打撃は大きい。君の言う地道な努力は確かに賢明な判断だ。しかし、今の世界は君が思うほど正解ではない。時間が足りない。我々には地道な努力を許される様な星と世界に立ってないのだ。住民がそれぞれ別の都市へ移ったとしてもパンクして暴動や略奪の様な更なる混乱を引き起こす事受けあいだ。ヒトは新しい環境にいきなり慣れろと言われても直ぐには慣れんものだ。我々は葛城一佐の作戦に協力しよう」

 

そう言って御神徳四郎は敬礼をする。




もっと書きたかったが、今回は、これにて限界です。すみません。プルス・ウルトラッしたい。

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